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異能ランクEの絶対皇帝≪Absolute Emperor≫  作者: 堂道廻
第三部

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13/54

13 ファーストミッション

「ではまず注意事項を伝える前に……、こっちのファイルが異能管理対象リスト、それからこっちが異能者リストです。これらを出来るだけ早く全て覚えてください」

 

 朝のミーティングが終わり、咲と照は応接用のソファーに向かい合って座っていた。二人の間にあるローテーブルには幅10センチメートルにもおよぶ分厚いファイルがいくつも積み上げられている。

 ニヤニヤと二人を眺める直人とネイサンの視線に照は気付いていたが、咲は全く気付いていない。

 

「これ全部!? いくらなんでも無理だろ……、それにこういう情報ってあのデバイスに記録されているんじゃないの?」

「ええ、もちろん記録されています。ですが、まだ管理官補のアナタにはデバイスは与えられません」

「じゃあ、いつ管理官になれるんだ?」

「教育担当である私がアナタを一人前と認めたときです」


「……なぜだろう、そんな日は永遠に来ない気がする……」


 ふて腐れる照の姿に咲は目を細め、自然と笑みをこぼす。

 それを目撃した他の管理官たちがどよめき、事務所内がざわついた。


 しかしそんなことには全く気付かずに咲は続ける。

「それと、異能結集罪については知っていますね?」


「異能者は如何なる理由があろうと三人以上集まっちゃいけないって法律だっけ?」

「ええ、この規定は異能者の物理的接触はもとよりネットなどのチャットにおいても適用されます」


「要は国のお偉いさん方が僕たちにビビっているってだけだろ? それが異能グループを乱立させている原因だと僕は思っているんだけどね……」


 照の言い分に対し咲は特に反論する様子は見せなかった。


「……例外としまして、異能管理官はこの規定から除外されます。現にこのような組織があるくらいですからね。しかし我々といえど理由なき異能の使用は制限されていますので不用意に使用しないでください。それからここでは仲間内の異能について詮索することはタブーになっていますので気を付けてください。もし知りたければ本人から直接訊くように」


「じゃあ咲の異能を教えてよ」

「お断りします」

「あ、そう」


「参考までにあなたの異能マリオネット・ホリックについては監視対象だったため職員全員が知っています」

「なんだか不公平だなぁ」

「……まあ、レイドに参加すればいずれは知ることになるでしょう」



『―――ただいま速報が入ってきました』


 BGM程度に付いていたテレビから緊急速報の音が鳴り響くと異能管理室にいる職員全員が一斉にテレビ画面を注視した。

 女性アナウンサーが緊張した面持ちで原稿を読み上げていく。


『先ほど午前十時三十分頃、西都銀行本店において立てこもり事件が発生したとの情報が入ってきました。拳銃を所持した男が行員を人質に取っているとのことです。繰り返します―――』


 机に頬杖を付いてテレビを眺めていた直人が口を開く。

「室長、これ要請かかるんじゃないすか?」


「ん? ああ、おそらくな」


 ちょうどコーヒーを補充しに室長室から出て来ていたマークがテレビ画面を見ながら答え、その僅かな間に事務所中央に鎮座するレトロな黒電話がけたたましく鳴り響いた。


「ほーら、来たぞ」

 直人がケラケラと笑い出す。


 マークは受話器を上げて電話の向こう側の相手と数回程度の短いやり取りをしてから、再び受話器を置いた。


「警視庁から支援要請が入った。直人、お前の班で姫とルーキーを連れて現場に行ってくれ」


 マークから指示を受けた直人はバンッと自席を叩いてから立ち上がり、

「りょーかい。よーし、行くぞお前ら」

 異能管理室のドアを開けた。





 直人、咲、そして照を含む計六人の異能官はエレベーターで地下駐車場まで降りてから赤と青のパトランプが付いたワンボックスカーに乗り込んだ。自動運転ではなく運転席に座る大柄の白人男性がギアを入れてアクセルを踏み込み、急発進で走り出したワンボックスカーは地下駐車場から地上へ飛び出していった。


「現場に着く間に自己紹介を済ませておこうか」

 助手席に座る直人が振り返る。


「俺がこの班のリーダー、西寺直人だ。呼び方は直人でいいぜ、俺たちは同じチーム、いわば家族だからな。んでこの無口な運転手がエリオット・ステングレー」


 運転席でハンドルを握る二メートル近いアングロサクソンの男は特に反応する訳でもなくただ前方を見つめている。


「それから、お前の隣にいるとびきり美人だが超デンジャーなお姉さんがリサ・ナイトレイ」


「『超デンジャー』は余計よ。よろしくね、あなたのことは咲から良く聴いているわ」


 最後部席に座るリサが照を見て微笑んだ。中央の座席に座る咲が振り返り抗議する。

「ちょ、ちょっと変なこと言わないでよリサ!」

 

「で、そこの全身も脳みそも筋肉なのが吉川・ネイサン・紀明くん」

「なんで俺だけ〝くん〟付けなんだよ……。そんな訳でヨロシクな、ルーキー」


 咲の隣に座っていたネイサンが振り返って照に握手を求めてきた。照は差し出された手を握り返す。筋肉隆々の外見からは想像できないほどソフトに手を握られた照の全身がゾクッと粟立つ。


「ああ、最後に我らが姫様だが……、いまさら紹介する必要もないか」

「姫はやめてください」


 咲は鬱陶しそうに直人に抗議するが、

「じゃあサキサキで」

 からかう様に直人は言い返した。


「サキサキ言うな!」


 照は咲と直人のやりとりに苦笑しながら他のメンバーに尋ねる。

「立てこもってる犯人は異能者なんですか?」


「いや、普通人さ、ただ俺たちの方が警察よりスマートに解決できるってだけ。だから良く立てこもり事件なんかは呼ばれんだよね」


 照の問いに答えたのはネイサンだった。



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