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~転生孤児ANOTHER~「殺し屋と勇者の事情」  作者: 壱弐参


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第二十五話「異質」

 ――風の国西部ストールの町――


 別名「レッドタウン」と言われるこの町は、その名の通り、赤いレンガの家々が並び連ねる町である。

 現代と比べると雑ではあるが、石畳にも赤を(もと)とした石が使われている。

 盛大な爆笑からニ時間、アイザックとレティーは人が歩んだ道と思われる踏み跡を発見し、ストールの町へたどり着く事が出来た。


「んー、こりゃやっぱり知らん世界だわな」


 やはりこれが取り柄なのだろうか、アイザックが楽観的に呟く。


「ぬー、こりゃやっぱり知らん町なのだ」


 アイザックの真似をして、レティーが自分の脳から似たような単語を並べ替えて呟く。


「ま、なんとかなるべ」

「なるべなるべ、なははははは!」

「レティー、何かの縁だ。暫くは面倒みてやんぜ」

「アイザツク、何かの縁だ。面倒みられてやるのだ!」

「ハッハッハッハ、まずは情報収集だ! 情報を制する者は全てを制する!」

「よくわからんが、なんかカッコいいのだ!」


 目をキラッと光らせ、カッコいい言葉に対して要らない憧れを感じるレティー。その喜びようは、幼さの中に不思議な魅力を含ませていた。


「ちゃんと付いてきなぁ、俺様のミッションに!」

「なははは、お任せあれなのだ!」









 以下は殺し屋アイザックの本日のミッション、「ガキと女と女と女」に関する脳内レポートである。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~


 あぁ、変な世界へ来ちまった。

 やれやれ、変なガキを拾っちまった。

 残弾もゼロ、頼りになる太郎の援護は無し。謂わば孤立無縁ってやつだ。ま、なるようになるってもんよ。


 ガキの名前は「レティー」、銀髪で八重歯でオッドアイの……ガキだ。

 どうやら人攫いに飼われていたようだ。孤児院育ちの俺と太郎に似てるっちゃ似てるが、自分の境遇については全く関心がないみたいだ。

 俺様がザバッと湖から爆誕した時に、こいつがなんか変な豚ゴリラ野郎に襲われてたんだ。

 そこを俺様がちょっとしたシューティングゲームの主人公を演じてやった。へん、ちょちょいのちょいだったぜ。

 ま、これで残弾が無くなったんだけど、ガキが食われたら俺様も襲われそうだったから助けたまでだ。


 そっから懐かれたように付いて来られて……今ここだ。

 さて、これから情報収集にかかるかね。

 おし、ミッションスタートだ。



 目が痛くなる程真っ赤な街並だぜ。

 頭おかしいんじゃねーか、ここの住人は? お、いい女発見。……そうだ、俺は今子連れじゃねーか。このガキがいる限り女を口説く事が出来ない。

 これは死活問題だ。よし、とりあえずこいつをどっかに置いてこよう。


 一時ミッション中断だ。


「おいレティー、ここはバラけて情報収集した方が良さそうだ。暗くなる頃にここに集合だ、いいな?」

「それほど過酷なミッションなのだな! お任せあれなのだ!」


 ちょろいぜ。

 まずはさっきの女からだ。俺様フィルターに引っかかった女は玉砕するまでは網から外れねぇんだ。

 お、目標(ターゲット)発見。これよりナンパ(ミッション)再開。

 手作り製の買い物カゴを持ち、中々豊満なバストをお持ちの茶髪レディだ。スレンダー……いやグラマラスと言うのが正解だろう。なるほど、素晴らしい。


「お嬢さん、チョット宜しいですか?」


 あらゆるミッションの攻略手口は無数だ。しかし、攻略方法がないミッションは絶対にない。真実は一つでもそこに辿り着くまでは様々な変化はあって然るべきだ。

 あの手この手で引っかかりを見つけるんだ。いや、引っ掛けてるのは俺なんだがな?


 ……おいおいおい、旦那持ちかよ。

 なんかタラコ唇の筋肉マッスルに絡まれたぜ。しかしここはめげない。めげちゃいけないんだ。

 弱肉強食の世界で最後にモノを言うのは……腕力だ。


「オラの嫁になにすっだ!?」

「うるせぇボケ、その阿保面にゃ馬か牛がお似合いだぜ。死ね」


 グチャッ


 金的に成功。

 男はカマみてぇな悲鳴をあげて去ってった。

 女は男を追いかけようとしたが、さっき言った腕力を使いホールド。女の奪取に成功。人気のない路地裏へ連れて行く。

 あの手この手で口説き、女の口から「アイザック」という言葉を出させれば成功したようなもんだ。


「で、でもアイザックッ!」


 ちょろいぜ。

 耳元で何回も女の名前を囁き、如何に自分が見られて……視られているのかを認識させる。

 ………………よし、女の家に行く事に成功。


 ここからはお楽しみの時間だぜ?












 ……ふぅ。

 待たせたな、情報収集に成功だ。

 女はベッドの上じゃ正直なもんだ。如何に着飾っていても丸裸にされたんじゃ隠すもんがねぇ。

 心に錠が掛かっていてもそれを(ほぐ)していくのが俺の役目。ま、それを今ヤってたんだがな。


 この世界の名前は「オルネイン」。

 どうやらスキルだとかジョブだとか存在するふざけた世界だという事だが……ジャパニーズゲームを極めた俺に死角はない。

 スキルってのは(中略)で、ジョブってのは(中略)って事らしい。ランクが上がる度に体組織の向上が出来るってのがこの世界の素晴らしいところだな。

 女の構造も同じだったから数年後、どこかに俺様の子孫達がこの世界を闊歩してるかもしれんな。


 しかし教会か……。イマイチ信じられねぇが……とりあえず行ってみる事にしよう。

 太郎も俺も、ガキの頃「神なんかいない」と言いふらしたもんだ。

 言いふらしては孤児院の先生に怒られたもんだ。因みにその先生は俺の初めての女だ。

 先生は「神よお許しください」とか叫びながら部屋を揺らしてたぜ。


 おっと、これまた真っ赤なレンガの建物……十字架じゃなく、何故ハート型なんだ?

 世界が違えば文化も違う……そういう事だろう。

 なんでもこの世界の神は魔神で、レウスっていう野郎らしい。

 ほぉ、中々にイケてる野郎じゃねーか。俺様には及ばねぇがな。


 さてさて、ここで目を閉じるっと。


「魔神レウス様、どうか迷える子羊をお救いください!」


 迷ってねーし。


『何の用だ?』


 女の声だった。力強くハキハキした、しかしどことなく美しい声だった。


『レウスってのは女なのか?』

『私はレウスではない。レウスは今……説明は苦手だ』


 どうやら変なサポートセンターシステムを採用しているようだ。

 神々も人間から学ぶ事を覚えるのだろうか?


『お嬢さんのお名前は?』

『……セレナだ』

『今フリーかい?』

『どういう事だ?』

『旦那さんとか彼氏いるのかって聞いてんだよ』


 ま、いても関係ねーがな。


『そ、そういうのは……困る』


 なかなか初心(うぶ)な反応……いる可能性は低いな。しかし、相手がこういった性格でこの反応となると、攻略には時間が必要だな。

 本日のプロファイルはここまでにしておこう。


『ははは、冗談だよ冗談。結構可愛いぜセレナちゃん』


 引き際のジャブを忘れてはいけない。これを忘れると、次回に話した時には振り出しに戻ってるもんだ。


『……な、なんの用だ』

『ここへ来ると天職ってやつをもらえるって聞いてるんだが?』

『しばし待て………………ほぉ』

『いいねいいね~、そんな言葉遣いが(さま)になる女ってのは、イイ女って相場が決まってるんだ』


 引き際の後のサブミッションを入れる事で、より意識をこちらへ向ける事が出来るようになる。

 勿論こういった女ならでは、という限定付きだがな。より的確に、より速くが重要なんだ。


『お、お前の天職は「用心棒(バウンサー)」だ』

『へっ、昔ちょっとやった小遣い稼ぎが天職ってか。ま、この世界なら悪い天職じゃねぇってこったな。……んで、徳の確認を頻繁にヤると良いって聞いたんだが、そいつぁどうすりゃいい?』

『500だな』

『おいおい、あんだけモンスター倒して500ぽっちかよ』

『これがお前への徳の割り振りだ』


 《マウンテンゴブリン5匹=500 少女救助=100 暴行=-100 寝取り=-200 女を幸せにする=徳制限解除》


 少女救助はレティーの事だろう。しかし暴行ってのは何だ? 俺はそんな事…………あぁ、あのブ男か。これが原因でレティーを助けた徳の100ってのが消えちまったんだな。

 それ以降に暴行と……ブ男の女房と寝たせいで徳が入らなくなってるのか。しかし最後のは……おし、付け入る隙があるかどうかわからんが言うだけ言ってみるか。


『おいおい、こりゃ間違ってるぜ?』

『何っ? どこがだ?』

『暴行は確かに働いた。しかし向こうが先に喧嘩売ってきたんだぜ?』

『む、しかしお前は男の女房に手を出そうとしただろう?』

『おいおい、それじゃ最後の「女を幸せにした」ってのはなんなんだよ? あの男とじゃ幸せになってなかったって事だぜ? つまることのこりゃ、俺が女を幸せにする為のプロセスの一つだったって事じゃねーのかい? 途中の寝取りにしたってそうだぜ?』

『むっ……確かにそうかもしれない』


 ちょろいぜ。

 結果が違ったなら俺も甘んじて受けたが、結果が善になるのなら、その過程も善にならなきゃおかしいってもんだ。


『しばし待て…………。マカオ、これを見てくれ』

『……やだ、寝取り~? 良いじゃない良いじゃない、ドンドンおヤりなさ~い♪』

『いや、実は……な。…………説明は苦手なんだが、カクカクシカジカなんだ』

『ふんふん……うん、良いんじゃないかしら~? 離婚調停中だったみたいだし問題ないわよ~♪』

『そうか。…………待たせたな』

『どうでもいいが、裏の声が聞こえちまうのはどうなんだ? 保留音とかねーのかよ?』

『あ…………またやってしまったか』


 なるほどなるほど、セレナちゃんは中々可愛い属性のようだな。

 ジャパニーズエロゲームをコンプリートした俺様に死角無しだ。恥ずかしそうにしてる態度も悪くない。むしろ需要があるだろう。


『ハハハハハ、良いって事よ。さぁ、どうなったんだい?』

『う、うむ…………このようになった』


 《マウンテンゴブリン5匹=500 少女救助=100 暴行(女を助ける)=100 寝取り(女を助ける)=200 女を幸せにする=300》


『したがってお前の総徳数は1200だ』

『ちょっと待った』

『ま、まだあるのかっ?』

『あるもある、大有りだぜ。少女の救出で100ってのはわかった。しかし少女を保護し、町まで連れて来てやった事が「これ」に全て含まれてるのか? となると、他の割り振りを見てもその割り振りは非常に低いと思うんだが……?』

『むっ、確かに……そうかも……しれん』


 ちょろいぜ。

 俺は嫌々ながらもレティーを町へ連れて来てやった。ま、正確には勝手について来たんだが、例え勝手について来たとはいえ、俺を抑止力として護衛に使った結果は変えられないはずだ。となると俺の善良な心にもう少し徳を割り振ってもいいだろう。


『しばし待て…………。アーク、これを見てくれ』

『……ふむふむ……なんと、素晴らしい心の持ち主ですねっ! そうなるとここはこうなりますねっ!』

『そうか。…………待たせたな』

『保留音忘れてるぜ?』

『ぁ…………今日の私は、ダメダメだな……』


 どうやらセレナちゃんは一点の事にしか集中出来ないタイプのようだ。心越しに落ち込み具合が伝わってくる。

 ふっ、中々に新鮮な女だな。


『だいじょーぶだいじょーぶ、失敗は誰にでもあるもんさ』


 ここでフォローを忘れる男は友達止まりだ。隙を逃さず、弱点を狙え……どんな戦いにもコレがつきものだ。


『……すまない…………これがお前の徳の割り振りだ』


 《マウンテンゴブリン5匹=500 少女救助=100 少女保護=100 少女を安全地帯へ誘導=200 暴行(女を助ける)=100 寝取り(女を助ける)=200 女を幸せにする=300》


『したがってお前の総徳数は1500となった。次の中から希望スキルを3つ選ぶと良い』


 《フォース操作・索敵・金剛・疾風》


 女からの情報では大体のスキルはフォース操作を習得しなければ使えないらしい。

 という訳でそれが最優先になる。その次は……ま、索敵だろう。そして最後は……疾風はわかるが金剛ってのはなんだ? おそらく防御に関するスキルだとは思うが……一応聞くだけ聞いておくか。


『金剛ってのは?』

用心棒(バウンサー)のユニークスキルだな。無論他の天職でも高ランクになれば取得可能だが、この段階で取得出来るのは非常に有益なはずだ。効果は一定時間の鋼鉄化。その間動く事も可能だ。制限時間と硬度はフォースの錬度次第だな』

『悪くない。……フォース操作と索敵と金剛を頼む』

『承知した』


 キィイイイイインッ


『……へぇ、本当に身体能力の向上が感じ取れるんだな』

『うむ、精進すると良い』

『サンキューセレナちゃん、また声聴きに来るからな!』

『……早く行け』


 こうは言ったものの、さっきの感じから別の奴が出るとかあるんだろう。

 指名制度はあるんだろうか? 嫌な奴が出てもチェンジは可能なのか? ……要考察というところか。

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