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トリックアクターズ  作者: 光井テル
Act.2 三章 赤の再起
93/94

2.3.5

 ◇   ◇   ◇


 今では島内最強となっているリライズだが、そうなった道程は少し特殊だった。

 区画抗争の頃、舞識島には各区画に多くの不良チームが存在し、それぞれの区画に『最強』が存在した。言わば、その区画でトップまで上り詰めた――区画の顔役になるチームである。


 C区画の場合だと、それがリライズだった。

 そして、区画抗争当時、リライズと互角に渡り合っていたチームがA区画には存在したのだ。


 その名を『仕掛人(しかけにん)』。


 A区画に根を張る少数精鋭のチームで、具体的な人数や、構成メンバーの詳細がよく分からないという、謎が多い事で有名なチームだった。そのチームの詳細を知るのは一部の者達だけだ。リライズに居る数名は、その『一部の者達』になる。

 しかし、その謎のチームの筆頭に居る男の名だけは、不良たちの間で広く知れ渡っていた。


 黒子幹弥(くろこみきや)。仕掛人の代表格である不良男だ。


 もともと『仕掛人』というのは、その男個人に対する呼び名だった。市販の花火を改良して作るオリジナルの爆弾を使い、不良たちの抗争に裏から介入しては、荒らすだけ荒らして帰っていく……はた迷惑な男として知られていた。


 その爆弾も火力は殆どない遊びのような代物で、扱い方を誤れば怪我の恐れはあるが、所詮はその程度だ。拘りがあるのか、爆発するときに七色に発光する妙に手の込んだ造りをしていた。

 その爆弾を使い、不意打ちまがいの嫌がらせをやるだけやって、最終的には勝ち逃げしてく事から、『仕掛人』とあだ名が付いていた。


 そんな『仕掛人』なのだが、いつからか、黒子幹弥以外にもその名を語る者達が現れだしたのだ。

 黒子幹弥に手を貸す者が出てきたのである。

 その時期から『仕掛人』という名が、個人から集団の名へと変貌した。


 そうして生まれた不良チーム『仕掛人』は、黒子幹弥を筆頭としてA区画で活躍し、A区画内の他のチームを抑えて一時期トップに立った。区画抗争の頃だ。


 しかし、それも長くは続かなかった。何があったのか――仕掛人は区画抗争後に解散したのだ。

 理由は、黒子幹弥が舞識島から姿を消したからだった。その事情を知る者は誰もいない。

 この黒子幹弥の不在がきっかけとなって、残されたメンバー達はチームの解散を決断したらしい。その後、彼らがどこで何をしているのか。それは彼らの詳細を知っている者達しか知らない。

 こうして、『仕掛人』は、A区画に存在していた伝説のチームになったのである。


 故に、リライズは、実力で真に島内最強となったわけではなかった。

 ライバルが勝手に勝負から降りただけ。島内最強の座に暫定で収まっているに過ぎなかった。


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