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トリックアクターズ  作者: 光井テル
Act.1 七章 演目【九月一日】 (後編)
71/79

1.7.14

 ◇   ◇   ◇


 何かになる。俺以外の何かになりたい。

 違う。そうじゃない。そうじゃないんだ。俺が本当に求めていたのはそれじゃなかった。

 俺は……ただ自分を認めてやりたかった。自分を認められる人間になりたかった。

 他人なんてどうでも良い。役なんてなんでも良いって。俺は俺なんだと、ただそう言えるようになりたかった。人生の脇役でしかないなんて……俺が勝手にそう思っていただけだった。

 だから、ありのままの俺を認めろ……きっとそれだけで何にでもなれる。

 分かってる、今更もう遅い。でもなッ! それでもなッ!

 これで最後なんだよッ! どうせなら、九十九の思惑くらい阻止して終わってやる。

 そんで、ざまぁみろって笑ってやる。俺ごときに……邪魔されて……ざまぁみろって……。

 そうだ、あぁ……やってやった……やってやったぞ……! こんチクショー!

 こんな俺でも……この世界に……爪痕を残せただろうか。最期に、俺の……生きた証を……。

 俺は脇役なんかじゃない。そうだ……脇役で終わる……『エイジ』じゃない。

 俺の……。俺の……名はッ—―。

 ……————。


 ——。


 ————。


 ——————。





「………」



 ——————。



「……二さん」



 ————……あ?



「……さん、いい演技でした。でもそろそろ起き上がってもらわないと、その~……」


 …………。

 ……なんだ……誰だ……。

 もうじき死ぬんだから今くらい邪魔すんなよ。今いいとこ……。


「昨日言ったじゃないですか。『大丈夫だから何とかなります~』って」


 この声は……千条か……。大丈夫ってお前……銃で撃たれて大丈夫な訳が……

 ……。……ってあれ? ……なんだこれ?

 ちょっと待てちょっと待て、なんだこれ?


「まぁ、すぐには起き上がれないですかね~。でも、貴方は既にそういうのは『大丈夫な身体』になってる筈です。だってほら、身体の傷はもう治ってるでしょ~?」


 治ってるって……。は? 何で……確かに治ってる。……死ぬ程痛いけど……。

 何でだ……不完全な不死は……傷を治す為に寿命が消費される筈じゃ……。


「さてさて、色々と面白いものが見れましたよ。皆さん本当にありがとうございました。という訳で、私たちはこの辺りで退散しようと思います。ウツロ君、先輩をお願いね」


 ……おい待て……。クソ……なんだよ……また意識が……。

 何だ。千条の奴、俺に何をした……? 何で俺は死んでないんだ……。

 ……おい。……この……待て……待……て……。

 ……——————。

 —————。

 ——。


【七章 演目【九月一日】 (後編) 】終

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