1.7.14
◇ ◇ ◇
何かになる。俺以外の何かになりたい。
違う。そうじゃない。そうじゃないんだ。俺が本当に求めていたのはそれじゃなかった。
俺は……ただ自分を認めてやりたかった。自分を認められる人間になりたかった。
他人なんてどうでも良い。役なんてなんでも良いって。俺は俺なんだと、ただそう言えるようになりたかった。人生の脇役でしかないなんて……俺が勝手にそう思っていただけだった。
だから、ありのままの俺を認めろ……きっとそれだけで何にでもなれる。
分かってる、今更もう遅い。でもなッ! それでもなッ!
これで最後なんだよッ! どうせなら、九十九の思惑くらい阻止して終わってやる。
そんで、ざまぁみろって笑ってやる。俺ごときに……邪魔されて……ざまぁみろって……。
そうだ、あぁ……やってやった……やってやったぞ……! こんチクショー!
こんな俺でも……この世界に……爪痕を残せただろうか。最期に、俺の……生きた証を……。
俺は脇役なんかじゃない。そうだ……脇役で終わる……『エイジ』じゃない。
俺の……。俺の……名はッ—―。
……————。
——。
————。
——————。
「………」
——————。
「……二さん」
————……あ?
「……さん、いい演技でした。でもそろそろ起き上がってもらわないと、その~……」
…………。
……なんだ……誰だ……。
もうじき死ぬんだから今くらい邪魔すんなよ。今いいとこ……。
「昨日言ったじゃないですか。『大丈夫だから何とかなります~』って」
この声は……千条か……。大丈夫ってお前……銃で撃たれて大丈夫な訳が……
……。……ってあれ? ……なんだこれ?
ちょっと待てちょっと待て、なんだこれ?
「まぁ、すぐには起き上がれないですかね~。でも、貴方は既にそういうのは『大丈夫な身体』になってる筈です。だってほら、身体の傷はもう治ってるでしょ~?」
治ってるって……。は? 何で……確かに治ってる。……死ぬ程痛いけど……。
何でだ……不完全な不死は……傷を治す為に寿命が消費される筈じゃ……。
「さてさて、色々と面白いものが見れましたよ。皆さん本当にありがとうございました。という訳で、私たちはこの辺りで退散しようと思います。ウツロ君、先輩をお願いね」
……おい待て……。クソ……なんだよ……また意識が……。
何だ。千条の奴、俺に何をした……? 何で俺は死んでないんだ……。
……おい。……この……待て……待……て……。
……——————。
—————。
——。
【七章 演目【九月一日】 (後編) 】終




