1.7.13
◇ ◇ ◇
終わった。全てが……。
俺の……唯一の希望が。あと少し……もう少しだったのに……。
あぁ……そうか、今ようやく実感した。
俺の人生は、ここで終わるんだ。
……。あっけないもんだな。俺の最期はこんなもんなのか。
結局何にもなれなかった。
俺は何者にも……。
◇ ◇ ◇
誠一の覚悟は、ミリアムの覚悟の前に敗れ去る。
不死薬はなくなった。もうエイジの寿命が戻る事はない。このままいけばあと数時間、いや一時間もしないうちにエイジは死ぬだろう。
小瓶が砕けてから数秒。ホール内には静寂が流れていたのだが—―
それを最初に破ったのはある男の怒声だった。
「クソッ、クソクソクソッ‼ このヤロオオォォォォ‼」
ステージ上で倒れ伏していた九十九だ。麻酔で意識が飛びかけている中、気力だけで片膝で起き上がっている。
「全員ブチ殺してやる。殺す殺す殺す! チクショーがぁぁ‼」
その目は、見えるもの全てを殺すと言わんばかりに血走っていた。朦朧とする意識で、足元に転がる銃を拾い上げる。
そして、九十九が狙いを定めたのは—―
「クソッ! しまった、律ッ!」
焦りを見せる誠一。九十九が銃を向けた先は—―ステージ上の成瀬律。九十九の対面で身動きの取れない状態にいる少女だった。
誠一は足を負傷していて動けない。他の者も千条以外はステージを降りている。今から反応していてはとても間に合わない。
もう九十九を止められる者は誰もいなかった。彼は己の思うままに引き金をただ引く。
時は止まらない。無情に流れ、その銃弾は真直ぐに律へと向かっていった。
しかし、ただ一人だけ——。
誰よりも早く動き出していた者がこの場に一人だけ居た。
その男は、九十九と律を隔てるように、ステージ中央に一直線に向かって駆け上がる。
他の役者達が動けずにいた中、その男だけは違った。
その瞬間だけは、間違いなく脇役の殻を破っていた。そして—―
薄い月明りが照らすステージの中央で、役者——エイジは凶弾に撃ち抜かれた。




