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トリックアクターズ  作者: 光井テル
Act.1 七章 演目【九月一日】 (後編)
70/79

1.7.13

 ◇   ◇   ◇


 終わった。全てが……。

 俺の……唯一の希望が。あと少し……もう少しだったのに……。

 あぁ……そうか、今ようやく実感した。

 俺の人生は、ここで終わるんだ。

 ……。あっけないもんだな。俺の最期はこんなもんなのか。

 結局何にもなれなかった。

 俺は何者にも……。



 ◇   ◇   ◇


 誠一の覚悟は、ミリアムの覚悟の前に敗れ去る。

 不死薬はなくなった。もうエイジの寿命が戻る事はない。このままいけばあと数時間、いや一時間もしないうちにエイジは死ぬだろう。

 小瓶が砕けてから数秒。ホール内には静寂が流れていたのだが—―

 それを最初に破ったのはある男の怒声だった。


「クソッ、クソクソクソッ‼ このヤロオオォォォォ‼」


 ステージ上で倒れ伏していた九十九だ。麻酔で意識が飛びかけている中、気力だけで片膝で起き上がっている。


「全員ブチ殺してやる。殺す殺す殺す! チクショーがぁぁ‼」


 その目は、見えるもの全てを殺すと言わんばかりに血走っていた。朦朧とする意識で、足元に転がる銃を拾い上げる。

 そして、九十九が狙いを定めたのは—―


「クソッ! しまった、律ッ!」


 焦りを見せる誠一。九十九が銃を向けた先は—―ステージ上の成瀬律。九十九の対面で身動きの取れない状態にいる少女だった。

 誠一は足を負傷していて動けない。他の者も千条以外はステージを降りている。今から反応していてはとても間に合わない。

 もう九十九を止められる者は誰もいなかった。彼は己の思うままに引き金をただ引く。

 時は止まらない。無情に流れ、その銃弾は真直ぐに律へと向かっていった。

 しかし、ただ一人だけ——。

 誰よりも早く動き出していた者がこの場に一人だけ居た。

 その男は、九十九と律を隔てるように、ステージ中央に一直線に向かって駆け上がる。

 他の役者達が動けずにいた中、その男だけは違った。

 その瞬間だけは、間違いなく脇役の殻を破っていた。そして—―

 薄い月明りが照らすステージの中央で、役者——エイジは凶弾に撃ち抜かれた。


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