1.7.10
◇ ◇ ◇
一時間前 慎の自室
「ミリアムさんと協力関係を結び、グロースを舞識島から追い出す。ここまでがテイマーから使命を与えられた『私』の目的。……そして、ここからが『僕』の—―如月慎の個人的な頼みです」
「……ん? なんだよその言い方。まだなんか他にあるのか?」
「無視してくれても構いませんが、聞いてもらえると有難いです。……助けたい人がいます」
慎は話した。誠一がカゲナシと共謀した昨晩の裏で何があったのか。それに巻き込まれた一人の男の話。余命が残り少ない不死身の身体となった男の事を。
「なるほどな。まぁ用件は分かった。でもいいのかよ。そいつが薬を持ってきた張本人なんだろ? この島の敵って奴じゃないのか?」
「それなら多分心配要りません。先程話しましたよね。第七感を持つ者は最終的に人の深層心理まで読み取れるようになると。残念ながら僕にはそこまでは出来ませんが、この島にいる人の感情の色とでも言いましょうか……思考を抽象化したものを少しだけ感じ取れるんです。人の内面はそう変わるものではありません。そこから判断すると、その人は……多分この島に敵意はない。害はないと考えました」
「だから助けたいって? オイオイ、俺も人の事言えねぇけど随分甘い考えだな」
「そうですね。僕もそう思います。……でも、出来る事ならそうしたい。都市伝説エクス。この島に広まったそれは、『困っている人を助ける情報屋』なんです。勝手に作られた噂でしたけど……出来るなら僕はその期待に応えたい」
「…………」
「すみません、何言ってるんだって感じですよね。結局のところ、僕は死ぬとか生きるとか、殺すとか殺さないとか……そういう事が単純に嫌いなだけなんだと思います。でも、こんな事言っておいて今まで見捨ててきた事も多くあるんです。それでも救えるなら救いたい。無茶苦茶な事を言ってるのは分かってるつもりです。……でも、お願いします。協力してもらえませんか?」
慎の考えは確かに甘いのだろう。それは本人が一番分かっている。それでも彼は『救いたい』と口にしていた。エクスとして、自分に向けられた期待に応えたいと。
「あぁそうか。お前はそういう奴なんだな」
慎の言葉に何を思ったのか。誠一はそれだけ言うと、キャップ帽を被り直してから立ち上がった。
ただ、その表情はどこか嬉しそうな、楽しそうなものだった。
「さてと、そろそろ行くとすっか。と、その前に……そういえばお前、俺に言ってくれたよな。『光を見た』って。あれ漫画みたいで気に入ったよ。だから、俺も相応しい台詞で応えねぇとな」
誠一は笑顔で応える。その台詞は逆境を跳ね除ける漫画のヒーローのようで、あらゆる不安を消し飛ばしてくれるような力強さを感じさせた。
「やってやろうぜ相棒。光を見せてやる」




