1.7.7
◇ ◇ ◇
「さて、ミリアム・ハーネット。奴との話は終わったか?」
電話越しにエクスと通話するミリアム。その彼女に誠一は不敵な笑みで問いかける。
丁度通話を終えたミリアムは静かにスマホの電源を落とし、誠一の問いに答えた。
「いつかこういう日が来るとは思っていた。不老不死に纏わる問題が舞識島を襲ってくると。その覚悟はしていたわ。……貴方達もそれは同じと思っていいのね?」
「当然。その為にここに来たんだからな。島を脅かす敵を倒す。エクスと俺もそのつもりだし、その一点にかけて、俺達は互いに手を取り合える。そうだろ?」
「……。分かった。なら、こちらも共同戦線に異論はないわ」
「お、話が早いな。助かるぜ。オーケー、それじゃ今からは協力関係って奴だな」
どうやらエクスの説得は無事に成功したようだった。というより、ミリアムも最初からそのつもりでいたのだろう。
ミリアムは今回の件を同幹部の春日井にだけは話しており、彼の協力を得る事に成功している。
ミリアムの理解者は組織内にも一応居るのだが、春日井のような存在は稀な事だった。彼だけが特別理解があると思った方が良い。
それに協力と言っても、あくまでミリアムの行動に目を瞑っていてくれているだけなのだ。
その春日井のお陰で自由に動けてはいるものの、組織の力無しで舞識島を護るには力が足りない。
ナジロ機関に気付かれる前に不老不死の問題を片付ける事。
その為には、島の情報を把握しているエクスの力が必要だと、ミリアムは分かっていた。
ミリアムもエクスも、互いに島に抱いている想いは同じ。ならば協力関係を結べる筈だとエクスは考え、彼女に接触する機会をずっと伺っていた。そして、その目的は遂に果たされたのだ。
こうなればグロースに勝ち目はないだろう。誠一はステージ反対側の彼らに視線を向けた。
「っつーわけだ。俺たち、手組む事にしたからさ。薬もこっちにあるし……要はあれだ。もうアンタらの負け。分かったら島から退いてくれると有難いんだがな」
この島で戦う事、人殺しをする事自体が誠一たちにはリスクになる。殺した後の処理でナジロ機関に勘付かれる可能性があるからだ。グランミクスが管理するこの島において、組織に気付かれずに何かを為すというのは容易な事ではないのだ。
昨晩のように春日井を通せば上手く処理出来るかもしれないが、それもかなりリスクがある。昨晩は運が良かったに過ぎない。
故に、誠一たちは可能な限りグロースを島外に追い出したかった。殺しを行うのは本当に最悪の事態になった時だけだ。今は見逃すしかない。その考えはミリアムも同じだった。
そんな事を背景に発せられた誠一の言葉に対し、九十九は怒りの籠った声色で答えた。
「テメェ、半年前はよくもやってくれやがったなこのクソ野郎! 勝手な事ばっか言いやがって。俺たちの負け? 退けだと? ふざけるのも大概にしろ。俺たちはまだ何も終わってねぇ!」
「まぁ……そう簡単には退いてくれねぇよな。でもよ、どうやらそっちの女は違うみたいだぜ?」
「あ?」




