1.7.3
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九月一日 十八時 C区画 アウトレット建設地 イベントホール内
C区画は島内における歓楽街としての側面が強い街だ。島外から来る観光客の影響で、ホテルや娯楽施設が多く、その街並みは他の区画に比べるとやや煌びやかな印象がある。
そのC区画では、現在区画の拡張工事が東端で大きく行われていた。メガフロートの増設自体は既に終わっており、今はそこに建つ予定のアウトレットモールの建設工事が行われている最中になる。その作業も終盤に差し掛かっていて、ほぼ完成間近といった状態だった。
新たな娯楽施設となるこのアウトレットには、ヒーローショーなどのイベント用に小さなステージホールが作られている。開放的なアウトレットの趣向に合わせ、ホールの天井部は開閉式になっており、催しがある時は天窓が開いて陽が直に入る設計になっていた。
このイベントホールも殆ど完成されていて、今は天窓が開かれている状態で放置されている。
ショーの為に作られたイベントホール。この場所は本来こうした用途で使われる筈だったのだが、外部から中を確認しにくい事や人目に付きにくい事に加え、今現在この周辺に作業者がいないという状況を利用し、ある者達がこの場を拠点として活用していた。
「おい、千条……。これはどういう事だ」
「どういう事って何がです?」
グロースのリーダー――九十九蒼麻は怪訝な表情でステージに立ち、横にいる千条に尋ねた。
「何がですじゃねぇ。何で誰も戻ってこない?」
「そんな事言われても。ちゃんと呼び戻した筈なんですけどねぇ……。何かあったんでしょうか」
グロースの構成員にはアタッシュケースの回収と裏切者の捜索を指示しているのだが、一日かけても未だ解決には至っていない為、一旦呼び戻そうと千条が招集をかけたそうなのだが……。
「戻ってきたのはウツロだけだぞ。……他の連中が誰もいないのは明らかに異常だろ」
「まぁ確かにそうかもしれませんね~。でも、そうは言っても待つしかないですし」
「何でお前はそんな余裕なんだ……。しかも何だ。ウツロが連れてきたあの女は」
千条の後ろにはウツロが控えている。その足元には、意識を失って倒れている制服姿の女子高生がいた。ウツロがホールに来た際に、その女子高生を抱えて連れてきたのだ。
「おい、お前に訊いてるんだぞウツロ。何か答えろ」
九十九がウツロを睨み付けるが、ウツロは全く反応を示さない。
「まぁまぁ、そんな怒らないで下さいよ先輩。この辺をウロウロしてた人が居たから、念のため捕えといたって事みたいですよ。放っておく訳にもいかないじゃないですか~」
少女の手足は紐で縛られており、口元にテープが張り付けられている。仮に目を覚ましても自由に身動きを取れない為、問題はないだろう。だが、今はそんな事よりも他に気にする事があった。
「クソッ、何だ? 何なんだ。一体何が起きてる。……ふざけるなよクソが。一族の……俺の長年の成果がこんな訳の分からない事で……」
本当なら半年前に計画は達成されていた筈だった。だが、その計画は潰され、こうして半年もズレる羽目になっているのだ。もうこれ以上挫かれる訳にはいかなかった。
「こんな事で俺の夢が潰えてたまるか。……ケースさえ……そうだ、あの不死薬さえあれば……」
九十九がそう口にした――その時だった。
「その話、もっとよく聞かせてくれる?」




