1.interlude.2
◇ ◇ ◇
九月一日 十七時 C区画
「なぁ、逃げてきたはいいが……。こんなとこで俺たちはどうするんだ?」
バス停での一件後、グロースの面々は、C区画のとある工事現場付近に辿り着いていた。
現在、その一帯はアウトレット施設の建造によるメガフロートの増設工事が行われており、そこに建つ予定の建築物なども既に着工している最中にある。ただ、今は工事計画の都合なのか、現場作業者がおらず、散在している材木と鉄骨群に囲まれているだけの静かな場になっていた。
グロースを組織する九十九蒼麻は、そのアウトレット施設の一角――完成間近のイベントホール内部に陣を取っており、そこをグロースのアジトとして機能させていた。
しかし、今彼らがいるのは、アジトから少し外れた海岸に接する屋外駐車場の予定地だった。
A区画の一件から逃げてきた彼らは、千条から指示を受けて、この場に来ているのだが――
「何でこんなとこで待機なんだ?」
「さぁな。千条様の指示だ。俺たちが知る必要などないだろう」
そうは言うものの、グロースの多くの者達は困惑している様子だった。
そんな彼らを工事現場の陰に隠れて見ている存在がいた。A区画から跡を追ってきた成瀬律だ。
――こんなところで一体何を……。
彼らの正体を知らない律は、この付近にアジトがある事も当然知らない。それ以前に、こんな何もない開けた場所にいる事の意図が全く読めずにいた。
それから暫くして、A区画からやって来た面々以外のグロースも駐車場にやって来た。別働で動いていた彼らも、どうやら千条からの連絡を受けてこの場に集められたようだ。
人数にして二十人弱。九十九と千条以外のグロースの人間全員がこの場にいる状況だった。
全員集まった後、律の隠れる場とは反対の方角から、ある人影が姿を現す。
「……ウツロ?」
工事現場の鉄骨の陰から、白いレインコートを纏った怪人――ウツロが現れ、ゆっくりとこちらに近づいてくる。沈みゆく夕陽を背にして、その仮面は真っ直ぐに彼らを見つめていた。
そして――更にその向こう側に隠れる少女の姿をも捉えていた。
【間章 虚 】終




