表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリックアクターズ  作者: 光井テル
Act.1 六章 演目【九月一日】 (前編)
54/78

1.6.16

 ◇   ◇   ◇

 A区画 住宅街通り


「よーしっ。この辺まで来れば、もう大丈夫だろ」


 広場での一件から、慎を連れ出してA区画の街を走っていた誠一。

 慎はただ訳も分からず誠一に手を引かれていた。

 気付けば住宅街に辿り着いていた。人通りが少なくなった場所に出たところで慎が尋ねた。


「あ、あの……助けてくれてありがとうございます。でも、何でこんな事を?」

「いやぁ、あの女に『何とかしてやる』って言っちまったからな。キミを無事に家まで送り届けるって。……まぁ、そんなもんは建前なんだけどさ」


 あの女というのは、律の事だろう。この男とはちょっとした知り合い程度の間柄らしいが、何故ここまでしてくれるのかの説明は一切なかった。

 その彼女も気付けば姿を消していて、あの騒動を最後にはぐれている。

 ここに至るまでの流れに慎は困惑している様子だったが、誠一はそのまま話を続けた。


「まぁアレだ。もういいんじゃねぇか? そろそろ惚けるのはやめようぜ」

「……惚ける? 何をです?」

「何って……。正直俺も驚いてるけど、キミなんだろ? エクスって」


 その発言で、二人の間に静寂が流れる。

 誠一の発言の意味が分からないのか、慎はやはり困惑の表情だった。


「言ってる意味がよく分からないんですが……エクス? エクスってあの都市伝説の……?」

「あー、あくまで惚けんだな。ま、それでもいいけどよ。なら、もう一度確認しようか。俺がお前にアタッシュケースの事で質問したこと覚えてるか?」

「は、はい。それはまぁ……。どこで手に入れたのかってやつですよね?」

「それそれ。で、こう答えたな。『変な星マークのロッカーにケースがあった』って」

「確かに言いましたが」

「だよな。でも、それはおかしいんだよ」


 そう言われても尚、慎の様子は変わらない。だが、誠一にはその根拠があった。

 そして、彼は己の取った行動と、慎の発言の矛盾点について話し始める。


「その星マーク書いたのも、ケースを隠したのも俺なんだけどさ。俺はただカラースプレーで落書きしただけで、星のロッカーになんて入れてない。その三つ隣のパスワード式の普通のロッカーに鍵かけて入れてたんだ。星マーク書いたのは、大まかな位置を知らせたかった親切のつもりだったんだけど……。だからまぁアレだ。あの時、お前が嘘ついて答えたのが何より怪しいんだけど、それ以前に……何で鍵付いてるロッカーを開けれるんだ?」

「……」

「そりゃ当然パスワードを知ってたからだよな? じゃあ何で知ってるのか。その方法はやっぱり分からないが、多分いつも俺をどこかから見てるのと同じ理屈で――」


「もういいですよ、その辺で大丈夫です、はい」


 その瞬間、慎が豹変した。それまでの雰囲気とは打って変わり、まるで別人のような口調で誠一に応える。それと同時に顔も無表情となっており、明らかに今までと様子が違っていた。

 そんな目の前に立つ異質な少年を前に、『やはり間違いない』と誠一は確信を抱き――

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「やっぱりお前だったんだな。ようやく捕まえたぜ」


 誠一によって正体を暴かれた慎は、それでもやはり無表情のまま淡々としていた。


「ついてきて下さい。約束を果たしますから。あっ、でもその前に……」


 そう言うと、慎は何かに気付いた様子で虚空を見上げ――制服のポケットから小型の変声器とスマホを取り出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ