表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリックアクターズ  作者: 光平 照
Act.1 プロローグ
3/76

p.3 キャップ帽の男 02

 ◇   ◇   ◇

 数時間前 東京都郊外 廃倉庫


 それはフェリーが出航する二時間前。東京都郊外にある、とある廃倉庫内での出来事だった。


「最近の漫画って凄いよなぁ。どれも超面白い!」


 都市近郊に位置するその周辺は、交通機関のアクセスが良いとはいえ、人通りは少ない。また、倉庫としての機能も既になく、人が立ち寄ることは殆どないのだが……。


 清々しいほどに澄み切った青空の下。それとは打って変わり、陽の光が少しだけ差し込む薄暗い廃倉庫の中で、キャップ帽の男は漫画雑誌を手にして語っていた。


「やっぱランズマガジンにハズレないね。俺この雑誌一番好き。単行本買おうか悩むのが幾つかあってさ。あ、でも買っても置き場所ねぇな。仕方ない、今度漫画喫茶行って読んでくるか」


 シャッターの開いた廃倉庫の奥。そこに位置するコンテナに座り、男は漫画雑誌を読んでいた。

 彼の口にした『ランズマガジン』とは、若者に人気の週刊漫画雑誌であり、今まさに持っているのがソレだ。薄く陽が差す倉庫の中で男は雑誌のページを捲り、目を輝かせている。


「バトル漫画は特に好きでさ。ほら、このページの描写とか超カッコよくない? まず描き込みが凄い! 見てよこの迫力! 躍動感! この一コマに賭けた作者の熱量はしっかり受け止めさせてもらいましたって感じ。っつーわけで、アンタらも読もうぜ。俺なんてもう五周もしちゃったよ。今日買ったばっかなのにねー」


 キャップ帽の男の前には、十名程の男女の集団が立っていた。服装は全員私服であり、年齢もバラバラ。組織としての統一感はなかったが、どこか団結している雰囲気がある。

 その集団の先頭に立つリーダーと思しき男が前に出て、キャップ帽の男の問いに応えた。


「……何が言いたい?」


「え、五周もしたのに俺の熱量が伝わってない? ……こんなにプレゼンしてるのに」


「そうじゃない。いや、違わないんだが、そうじゃない」


 明らかに苛立っている声色だった。言っている事の意味がまるで分からないのもそうだが、問題はそこではないのだ。


 同じ事は他の面々も思っており、集団全体の意思を代弁するようにリーダーは、この場において最も重要な問いを投げた。


「そもそも――――お前誰だ?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ