1.3.7
あぁ……熱い。腹が熱い。どうして俺は地面に横になって……。なんだこれ? ……血? え。
血が……あぁあぁぁ……アァァ……。アァァァァァ! なんだこれなんだこれ…アアァァ苦しい……あれ……誰だ? 前に……もう一人いる? お……んな? ……いや、もう誰でもいい……。たすけ……。誰か助けて。あぁ人影が離れて……ヤバい……なんとかしないと。これ、ホントにヤバい。何かないか……何か……。あれ? あぁ、そうだ。そうか、そうだった。
……俺……あの時の瓶を……。
………。……………。もうこれしかない。賭けるしかない。
考えてる暇なんてない。やれ。やるしかないんだッ! やれッ……!
「何が……起きた……?」
気が付くと、俺は地面に横になったまま、確かな意識を保っていた。それだけじゃない。ウツロに貫かれた腹の傷も綺麗に塞がっていた。ただ、俺から流れた血の痕跡だけは辺りに拡がっている。
「助かったのか?」
俺はゆっくりと起き上がって、自分の身体を確認した。
身体はどこも何ともない。足も手も普通に動く。でも、腹を貫かれていた服は破けていた。
……。いや、考えるのは後にしろ。それよりも今は……ここから逃げるんだ。そうだ逃げろッ!
アタッシュケースはもうその場になかったが、そんなことはどうでもよかった。
俺は走ってその場から逃げようとした。その時、地面に倒れているグロースの少年が目に入った。
少年は息をしていない。ただ赤い血だけが拡がり続け、その上で少年は横になっていた。
「……ごめんッ……!」
俺は名前も知らない少年の死体を残して、自分だけその場から逃げ去ったんだ。
舞識島を開放するとか、不老不死がどうとか、そんな事は俺の知ったことじゃない。
そうだ。知ったことじゃなかった。俺はただ、この状況から抜け出したかっただけだ。
自分の事で精一杯だった。……どうしようもなかった。仕方なかったんだ。
でも、そうやって状況に流され続けた結果、俺は舞識島に不死身の薬を運んできてしまった。
俺は……この島を危険に晒す計画に手を貸した。どんなに自分を正当化してもそれは事実なんだ。
だから、きっと神様は俺を許してくれなったのかもしれない。天罰が下ったんだ。
俺は、その夜ウツロに殺された。
そして――――そこから蘇った。




