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一日一回は風呂に入らないとダメ

 

 清々しい朝が来ました。異世界での初の朝ですよ……まだ掃除が終わっていない場所から芳しい香りが漂ってきてますが……今日こそは根絶して差し上げますよ。フフフフフフ……



「朝から血圧に悪い臭いですよね……皆さん良く我慢してましたよね……鼻が機能してるのか心配になりますよ」


「アハハハハ……」



 この壊れた玩具みたいに笑っているのは下っ端団員のジューンさんです。私よりも3歳程年下なんですが……口惜しいことに私よりも5㎝ほど背が高いんです。



「年齢的にももう絶望的ですよね~」


「何ですか…?恨みがましく見ないでくれますか……」


「失礼。その背を分けてもらえたら私の機嫌も直ります」


「女性がそこまで気になくても…」


「………は?」


「え?」



 完全に私が女性だと思ってます?



 全くどいつもこいつもその目は飾りですか?節穴ですかね?



「着ている服はこれしかサイズがなかったので……私は歴とした男です」


「(゜_゜)」




 まぁ、前の前の前辺りに女性だった記憶はありますが……それが家事や縫い物が得意な理由になってるんですよね……。あの時の記憶が強烈すぎで一人称まで私に固定されましたしね。父親も周りも皆一人称が俺なのに……大人たちには首を捻ってましたっけ……。




「えぇぇぇぇ!!!!?!?」


「煩いですよ ジュンさん」


「――あ、すみません……それと俺はジューンですけど」


「さぁ朝食をとってさっさと仕事にいってください。私はこの後も腐海の掃除という仕事がありますから」


「本当にアリガトウゴザイマス」



 なんか言わせた感があっていやだぁ……






 そして苦労して風呂場と応接室……他諸々の掃除を何とか終えて――団員数名が使い物になら無いほど疲労困憊してぶっ倒れてますが――無事終わりました。



 ―――が、奴等はまたやらかしました。




「私は言いましたよね? お風呂に入る時は体を洗ってから湯船に入って下さいと……確かに言いましたよね?」


「は、ハイ…」


「でも、疲れてたので……」


「今日ぐらい良いかなぁ……と」


「見て分かりませんか?あなた方よりも此方で一緒に掃除していた彼らの方が疲労困憊してますよ。その彼らの苦労をそんな理由で台無しにしたのは……別に良いと?えぇ、疲れたでしょうね。今日は熊の退治でしたか?畑を荒らす熊を退治するのは結構ですけど明日は暇なんですよね?なら掃除の方を手伝ってくれますよね?勿論……ねぇ?」


「………」

「………」


「返事はッ!!」


「ハ、ハイ!」



 全く。私だってまだお風呂に入ってないのに……大きな浴槽にお湯を溜めるのも苦労するのに……時間もかかるんですよ……



「あぁ……まだ団長も入っていないんですよ……簡単に掃除するにしても30分……お湯を溜めるのは二時間……無駄に広いですからねぇ……それだけの浴槽のお湯を泥水にしたほど……いやぁ…スゴいですね……悪い意味で」



 アハハハハ……と私が乾いた笑いで内心焦っているともっと青を通り越して白くなってきた問題児(それなりの歳)の皆さんは見ていて滑稽でした。私だって彼らをフォローする暇なんてありませんから放置します。あ、この人たちの処遇そちらで決めてください私は今余裕無いので。




 そして記録的な早さで掃除してお湯を溜めて団長が帰って来る前に元通りになりました……やれやれ無駄に疲れましたねぇ……誰かさん達のお陰さまで。




「何を怒っているんだ……」


「いえね、少々ありまして。万事解決したのでもういいんですけど……そもそも躾がなってなかっただけのことです。これからキッチリ躾ときますからご安心を」


「安心できる要素が何一つ無いのだが?」


「まぁ、団長も早めにお風呂に入っちゃってくださいよ……女性のお宅にお邪魔するくらいならお風呂も入ってきてくださいよ……薪と水の無駄ですから」


「――あぁ……ん?今なんと?」




 耳が遠くなったのか、はたまた聞きたくない単語を無意識に遮断したのかは定かではないが、聞き返してきたので私も素直に言い返す。



「ですから服を1度脱ぐならお風呂に入ってきてくださいと、」


「な、何を言ってる!?」


「別に隠すことでもないでしょうに……お付き合いしている異性のお宅にお邪魔するならお風呂も貰ってきてください。団長の為だけに今後お湯を沸かすのは大変なんですよ……それか小さい個室のシャワー室でも使ってください。水ですけど。」



「あ、あの……ユウキさん?違くてだな……その」


「別に恥ずかしいことでもないでしょ。団長程の歳なら付き合っている女性の一人や十人……別に不思議ではないでしょ?」


「いや、十人は多いぞ…」



 どうやら団長も団長なら団員も団員で鈍いようです。こんなに悪臭漂う空間に暮らしていても臭いがついてないって事は……他所で寝泊まりしたりお風呂入ってたってことでしょうに……



 団員たちのブーイングと羨望の眼差しを受けて団長は居心地悪そうに書斎へと引っ込んでいった……私に後で来るようにと言葉を残して。



 ―――それよりも早くお風呂に入ってしまってほしいんですが? 誰がそのあと片付けると思ってるのですかね。






「何ですか私がその手の話をするのがそんなに意外ですか?」


「異性に興味があるのは分かるがそうやって大人ぶった話をしても大人になれるわけではないぞ」


「あの………何か勘違いしてません?」




 団員も団長も私を何歳の子供だと思っているのだろう。日本人特有の童顔と身長の低さは認めるが、声だってもう声変わりしてちゃんと低いのに……何が私を子供扱いをするに至るのかサッパリですね。



「私は17歳で彼女も普通に居ました」


「・・・・・え?」


「だから私には彼女も普通に居ましたよ。公共の電波に乗せられない行為もしましたし……何ですかその呆気に取られた顔は…」


「・・・・はい?」


「頭腐ってますか?」



 ポカーンと口を開けてる姿がバカさを増しているのでとっても面白いんですが……余程私を怒らせたいんでしょうかね?




「まだ17歳だと……」


「此方の標準的な知識では17で成人でしょうに。何をそんなに驚くのですか?」


「――あ、いやすまん……お前みたいなヒョロイのが良く付き合えたと…」


「首と一緒に大切な部分も捻じ切って殺りましょうか?」


「スイマセンデシタ」



 分かれば良いんですよ。


 それと今ので誤解してる様なので一応説明するとこうやってこの世界に来るその時まで付き合ってましたよ……今は帰れるかも不安で……何年かかっても待っててくれるのなら……今でも付き合っていることになるんでしょうがね~。


 彼女も私など待っていないで他の彼氏でも作ってくれた方が私も……癪ですが、心は軽くなりますね……ダメ男だったら呪います(相手の男を)




「………いや待て、お前は記憶喪失……だったよな?」


「あぁ、設定ではね。その方がなにも知らない世界では都合が良いでしょ?」


「知らない世界?」



 まぁ、団長には話しておいた方が良いでしょうかね。



「実はかくかく然々……」


「かくかくうまうま……でわかるわけないだろ」


「大丈夫です。この話はギャグなのでそこら辺は補正されてます」


「なあ、頼むから俺の分かる言語で話してくれないか?」


「それも含めてギャグなので」


「訳がわからん……orz」



 良いんですよ。今の下りだって作者が面倒で省いただけですから。説明なんて面倒ですよね~。



「……まぁ、大体の事は理解できた」


「これがギャグで本当に助かりましたよ」


「………なあ、」


「なんでしょう?」


「悲しくないのか?」


「愛しの彼女と離れ離れになって嬉しい人がいますかね?」


「……いやすまん」



 まぁ、誰の所為かなんの因果か知りませんがこんな状況になったのなら楽しまないと……ねえ?




「私だって色々思うことはありますが、戻れるまでは楽しく暮らします……団長たちをからかい倒しますからご心配なく」


「果てしなく不安しかないのだが…」



 ま、楽しく暮らしますよ。何がなんでもね……



 それにしても……彼女はこんな世界に来てたりしませんよね? トリップするその時まで一緒にいたんですし……心配ですねぇ……










 お風呂好きと言われる日本人にとっては体を洗わずに湯船に浸かる行為は自分としては許せませんね。後の人が汚いお湯に浸かると思うと……自分に置き換えると甚だしいです。


 彼もそんな気持ちだったのでしょう。




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