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誰が大変な思いしてパンツ洗ってると思ってんだ!!

 洗濯ってとっても大変。洗濯機がないなんて……



 考えられませんね。



 はい、傭兵団の雑用係に就任しました悠葵ユウキです。イントネーションは勇気ではなく有機肥料の有機の方なんですよね実は。


 ま、そんな事は置いとくとして……




「あのですね……何度も言ってるでしょ? 汚れ物と色物と白いものは別の籠に入れてくださいって」


「あ゛ぁぁ? 雑用は黙って仕事してろ」


「大体弱い奴が俺たちに指図するな」


「モヤシっ子は黙って洗濯してればいいんだよ」



 ………おやぁぁ……これは……少々軌道修正が必要のようですね?



「おや、モヤシっ子……ですか。あなた方はあの腐海をどうにかできるのですね?結構。団長にはあなた方が率先して片付けてくれると報告しておきますので、お願いしますね♪ 勿論私も手伝いますが……この何日も溜めた洗濯物の仕分けに時間がかかるので今日の夕飯は無しってことになりますが…宜しいですね?」


「なっ!」


「団長に言い付けるとか子供か!」


「俺たちは仕事で疲れて帰ってきてるんだぞ!」


「しかも食事抜きって仕事しろよお前!」


「だからしてるじゃないですか……当初の目標はこの邪魔で臭い洗濯物と生活なんてとてもじゃないほど出来ない腐海の撤去ですから……私に文句を言う暇と体力が有り余っているんですからご自分の洗濯物くらいは仕分けできますよね?」


「ぐっ……」



 私の後ろには山積みにされた臭い洗濯物。それも色物と汚れ物と白いものをごちゃ混ぜにして。



 このまま洗濯すれば色物の色は落ちて白いものは素敵なアートになり、汚れ物は再起不能な色合いになることでしょう。そして繕い物も数多く……一人一人がキチンと仕分けしてくれるとこちらの仕事も減ります。ええ、確実に減ります。


 これでも私、男所帯出身ですから。父は家事全般下手で私がしてましたし、縫い物もできます。そんな私を見て仲間入りしたいと方向性を間違えた父は女装をしようとしたようですが……家事ができるからといって女性的とは限らないと父には釘を刺しました。



 さて、ここまで正論を言っているというのに従わないのはプライドがなせる技か……どちらでもいいですがそんなちっぽけなプライドなど叩き折って差し上げます。




「自分の服の仕分けも出来ないなど……子供でもできますよね?それになんですか、あの腐海……誰がやってくれると幻想でも見ましたか?ここに世話をしてくれるお母さんは居ませんよ。独り立ちしたのに自分の身の回りの世話も出来ないなんて母親に申し訳無いと思いませんか?え?親は居ない……なら今までどうやって生きてきたんですか?育ててもらったにしろ何にしろ良く今まで生きてこれましたね。そんなんだと女性も寄ってきませんよ。こんな腐った悪臭漂う場所を根城にしているのに…近付くとしたらネズミかゴッキーくらいですよ。良く見れば皆さんお風呂には入ってますか?臭い以前にお顔が泥だらけですよ。お仕事が大変なのはわかりますが、そんな格好では敵にも笑われます……袖の裾も解れてみすぼらしいったらない。なんですか?文句があるなら言ってくださいよ。それともご自分で直しますか?針と糸はありますのでどうぞご自由に。過去ここに働きに来てくれていたご婦人方を敬わないから私のようなひねくれた者が来なくてはいけなくなったんですよ。首を絞めたのはご自分たちです。ご愁傷さまですね♪」



 いやぁ…久しぶりに長々と喋ったわ~。あれ?皆さんお顔が真っ青ですよ?もしかてここまで面と向かって言われたことなかったですか?強面で腕っぷしも強いのにメンタル豆腐ですか?情けない……



「まだ言いたいことは有りますが私も忙しいので今日のところはこの辺で……さて、洗濯物を仕分けしなくては……あぁ…これだけでも一時間は掛かりますね……その後も腐海を浄化して……最低でも明日の昼までには終わりませんね。」


「ただいま……なんだこの状況」



 おっと、団長が帰ってきましたよ。お昼近くにここに私を置いていってお出掛けしていた団長。何処に行ってたのかは知らないが、多分野暮用ってやつだね。そこまで出張らないからそんな不安そうな目で見なくていいよ。



「なんの状況だ」


「いえね、この人たちが仕分けして籠に洗濯物を入れてくれれば万事解決なんですけど……嫌だと言うので明日の晩まで食事は作れないと言っていたんですよ」


「………そんな目で俺を見るな」



 団員たちは一斉に団長を「どうにかしてください!」と切実そうな目で見ていた。だが、私は間違ったとこは言ってない。

 洗濯のも早くサバかないと明日着るものも汚れ物……腐海を浄化しないと台所も使えない……こんな状況で効率のいい方法を提示しただけです。



「ユウキ……食事は無いのか?」


「材料もないのに?キッチンは腐海の真ん中ですよ。それにこんな臭い洗濯物と一緒に食事しても良いのなら私は作りますけど?……材料がないのでお粥オンリーですけどね!」


「……誰だ材料切らしてそのまま放置したのは」



 誰も手はあげなった。



「ま、これは監督不届きですね……誰がやってくれるってそもそも思ってるのが間違いですよ。ここは実家でもないんですし……自分のことは自分である程度出来なくてどうするんですか?野宿なんてした日には……」


「すまなかった」


「ま、今からでも変えてくださいその考えを。考えを改めてくれるなら明日の昼までには終ると思います……今晩と明日の朝の食事は外で取ってください。無理です今日中は」


「何だか本当にすまない」


「そう思ってくれるなら団長自ら洗濯物の仕分けにしてください……私は今申し訳程度に仕分けしてくれた分を洗濯してきますから……」



 別に全ての団員が仕分けしてくれないわけではなかった。年若い団員はちゃんとしてくれた。多分親御さんから離れてそんなに経ってないからまだ素直に従ってくれるのだろう。お利口さんですね。



 そして私は日が傾いてきた空を見ながら汚れ物を一生懸命洗っている。泥が何度落としても無くならない……繊維の奥まで染みてるなこれは。全く、どんな汚れも時間が経つと落ちないんだっての……手洗いは諦めて先ずは濯ぎの水がキレイになるまで足で踏むことにした。



「冷たい……井戸水って冷たいって本当だったんだね」



 一定の温度の地下から汲み上げられる井戸水はとても冷たかった……。


 ここまで泥で汚れた服を洗うのは初めてでしかも手洗いなんて初めてで……これは重労働だ。だが、知らない世界でこうして生きていけるだけでも私は幸運な方なんだろうね……生け贄として召喚なんて話もありそうで怖いし。


 一応固形石鹸も貰っておいたが……落ちるはずもなく……うっすらと茶色がかった模様が落ちない……もう叩いても何しても落ちないねこれは。ハイターも無いし、お手上げだわ。


 洗濯機欲しいなぁ……でもどちらにしても泥は洗い流してからじゃないと洗濯機で洗濯出来ないよね。泥が詰まったりして故障の原因になるから。



 こちらの染め物は何を使っているかも分からないし、落ちやすいのかも分からないので一先ず色物は保留にして後で誰が詳しそうなご婦人にでも聞こう。


 ま、色物はそんなに多くないからいいんだけど……



 問題は……そう、下着……パンツだ。



 異世界でもあまり変わらない形状だ。



 実は今私が穿いている下着は元の世界の物で……サイズが会うのが女性用しかなかった……なんて世知辛い理由があって……ハハハ…



「何が悲しくて他人の下着を洗わなければならないんでしょうね……仕事なんですから仕方ないですけど」



 何となく文句を言いたくもなる。




「ふぅ……さて、この泥汚れはもう無理として、白いものはキレイになった……これでもまだ大半が山積みなんて思い出したくもない……」



 脱水するにも手で絞るしか無いのは少々きついが、何とかそこは男としてのプライドでやり遂げ長年使われてないような物干し竿と急遽ロープで作った物干しに洗濯物を干して一息……つく暇もなくまた籠を持って山積みの場所に……



「これは色物か?」


「黒いっすね……」


「これ元は何色だったんだ?」


「て言うか…何れが誰のか最早分かりません」


「これが現状か……っ」



 団長共々絶望していた。ま、ご愁傷さま。みんな君らが招いた事だよ。



「泥汚れはもう捨てるか染め直すか雑巾にするかしかないですね。さっき洗ってみましたが染みは取れません。協力な漂白剤でもあれば取れるかもしれませんが……色物は絶望的ですね」


「orz」



 戦闘よりも初めて絶望感を知った団長と団員達であった。合掌。







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