遠慮してるとバカを見る……気がする
遠慮しない主人公ユウキさん。
いやぁ……美味しいねオムライス。
「モグモグ……」
「良く食べるな」
「食べれるときに食べないとこの先食べれるかわかりま…モグモグ……せんからね……モグモグ」
お兄さんは呆れ顔で箸が止まっている。ちなみにお兄さんが食べてるのはカツ丼?らしきものだ。等洋風ファンタジーにカツ丼はミスマッチな気がするがスルーの方向で。
ぶっちゃけどうでもいいんですけどね
「――で、お前はどうしたいんだ?」
「お人好しなお兄さんに何時までもくっ付いて居るわけにもいきませんし……モグモグ」
「……」
「出来れば衣食住確保したいですし……何か知りません?因みに闘えません、力も非力です。細かい作業も人並みにしか出来ません……平凡な人間を雇ってくれる安全な職場って知りません?」
「――贅沢な…」
「身の安全第一ですからね。―――さて、食べ終えましたので色々と説明お願いします」
「ハァ……」
お兄さんにお金の単一(この世界でも円が主流)と貨幣を教えてもらった。単一が同じでも貨幣は全くの別物なので今後も無一文だ。
お兄さん曰く、白き神が創り見守る世界とかなんとか……そんな設定してなかったよね確か。
となると……全くの別物の世界なのかな……その方が助かるけどクト〇ルフなんて堪ったもんじゃないし。
「あるにはあるぞ」
「何がです?」
「安全な職場」
「裏方でも全うな仕事なんでしょうね?嫌ですよ、実は表では大っぴらに出来ない仕事とか」
「安心しろ……傭兵団の裏方だ。丁度雑用係が欲しかったんだ」
「ほほぅ……するとお兄さんはその傭兵団の幹部クラスってことでいいんですかね?そんな簡単に雇ってくれるってことは」
「――一応、団長だ」
「――――……傭兵団の未来が心配だ」
「どう意味だコラ…」
主に詐欺に引っ掛からないかですがなにか?
「でもいいんですか?良く考えたら私身元不明の不審者ですよ。しかも押し掛けぎみの」
「自覚はあったんだな」
「背に腹は変えられませんので」
「ある意味スゴいなお前」
「お前じゃなくて悠葵です。お兄さん」
「ユウキか……勇気と言うより豪胆だな。」
「どうも」
「――俺もお兄さんじゃなくレオンだ」
「はあ……リオンさんですか」
「リじゃなくてレだ。レオン……」
「いえ、本場の発音はリオンって聴こえますから」
「お前の言っていることが良く分からない…」
いいんです、この話はギャグ主体ですから。多少話が通じなくてもかえって笑いがとれるかも知れませんし。
「ところでどんな仕事なんですか具体的に」
「雑用だ」
「――あの、雑用って言っても色々あるでしょ?食事を用意するとか洗濯物洗うとか……説明の仕方も色々とあるでしょ?」
「……その全部だ」
「……因みに構成員は何名ですか?」
「30人は居るな」
「大所帯じゃないですか! 10人でも大変なのに30人の食事と洗濯物その他諸々をたった独りでどうしろと!? 今までどうやって生活してたんですか!?」
「気が付いたやつが……」
絶句……男所帯の性か………
「OK……腐海と化した住み処の浄化が仕事なんですね。背に腹は変えられないか……腐海に呑まれて死にそうですけど」
「腐海……そこまでは酷くはない……ハズだ」
「因みに今まで雇った人は居ましたか?」
「一日と持たなかった……」
「おおふっ……終った……私の人生終った……腐海に呑まれて死ぬのか……先立つ不幸をお許しください父さん……」
「記憶あるのか?」
「いえ、ノリで言ってみました」
因みに私の母は小さいときに亡くなりました。男手ひとつで育ててくれた父には感謝しますが、最近の父の言動には疑問があったが……何だよ「大船に乗った気持ちで反抗期になってくれ!」だよ。
言われて反抗期になる訳じゃないっての。それに「派手に反抗期にならないなんて……お父さん淋しいっ」て……お父さん貴方は何を目指してるんですかね?
父の言動がさっぱり分かりません。
変な言動ばかりですがいい父親なんです。間違って変な方向に行ってしまってオカマになりかけましたが、何とか軌道修正して未だに父のままなので安心してください。
私は方向音痴ではないですが、父は精神的な方向音痴です。あの時は父の弟の叔父さんに軌道修正してもらわなかったらと思うと……偏見はないですが流石にショックはありますね。
「家に帰って父親が女装してたらどうします?」
「は?――おい、俺に分かる様に話してくれないか?なんで急に女装話に……」
「思い出したくない記憶ってありません?」
「………もうお前の突拍子がない話には突っ込まない……でもそうだな…自分の父親が女装してたら……問答無用でぶっ飛ばす」
「右ストレートでぶっ飛ばしますか?」
「まぁ、そうだな……」
「で、腐海の浄化の件ですが」
「また唐突な……で、なんだ?」
「お給金は弾みますよね?逃げ出すほどの腐海を浄化するんですから……ね?」
「腐海、腐海と……」
「男所帯のそう言った所は大抵腐海と化してるんですよ……」
「……否定はしない」
「で、いくらなんですか?」
「できる限りは」
「衣食住完備ですか?」
「あぁ…」
「職場環境は良好ですか?」
「――例えば?」
給料が良くても職場環境が最悪なら願い下げです。が、四の五の言っていられないのでできる限り改善を要求しておかないと……ね?
腐海に行くだけでも最悪なのに邪険に扱われるのは勘弁なりませんから。
特に男性は食事や洗濯物を洗う人に対して当たり前に見下してる人が多いよね。女性もそういう人は居るだろうけど……どうしても男性はそういう傾向が多い。特に年配の男性は特に。
腕っぷしの強い傭兵に私が叶わないのは目に見えて明らか……多少の権限を持っていないと仕事に支障が出そうだし。
「気の荒い傭兵に正論言っても殴られそうなのである程度の権限を下さい。勿論嫌なら他を当たりますけど」
「うちの団員はそんな事はしないぞ」
「それはどうでしょうね。貴方は団長でしょ。団員の裏の顔までは知らないでしょ。世の中目上の者に本性出すほどバカは居ないですよ…本物のバカ以外はね」
「……それは俺が……」
「役不足?いいえ、そこまでは言ってませんから。そこまで面倒見てやる義理なんてありませんって話ですよ。あ、でも私は申告してるのでキチンと面倒見てください。」
「………お前なぁ」
「私は腐海をどうにかして食事も用意します。口に合うかまでは断言できませんが仕事はキッチリ見返り分します。その仕事を邪魔されたくないのでお願いしてるんですよ。」
「いや、別にその事に関しては異論はない……」
若干落ち込みぎみなお兄さん改め団長のレオンさん。私に言われたことがそんなに落ち込むことか……あぁこの人は絆とか大事にする人なのね。
でも、所詮世の中ギブアンドテイク……絆で解決できるのは物語の中だけ……あ、これも物語の中だったね。でも私は絆、絆と宣う趣味はないのです。
「で?団長さんどんな権限くれます?」
「仕事に支障をきたす者に対して命令する権利を」
「勿論書名か何かにしてくださいますよね?」
「確りしているな」
「言質は形がないですからね……形で残しておかないと後から無かったことにされると困るので」
「……因みに……後から覆した場合どうなる?」
「書名を書いてくれるまで枕元に座って見詰めています……そう、書いてくれるまで」
「………」
何か恨み辛みを喋るよりも何も言わずに枕元に座って居る方がよっぽど怖いですよね?
「分かった。着いたら直ぐに書斎に行って書こう」
「よろしくお願いしますね♪」
こうして私は腐海の森改め傭兵団の宿舎の雑用係になることになりましたとさ。
腐海の毒で死ななきゃいいんですがね……
実際遠慮ばかりしていると知らない場所では危ないと思う。