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遊劇軍幕  作者: しゅい~
1/1

初めの遊び

ここはとある山の中。背の高い木が空を遮り、ジメジメとした空気が嫌悪感を感じさせる。

熱帯に似た気候のここは、グンマー(元群馬)と呼ばれる地域の旧演習場である。

かつて気象兵器を開発しようとし、機械の暴走によってグンマー一体が亜熱帯と化してしまった。

そんな人が近づかない場所を、彼らは拠点として活動していた。


「あう……暑いですねぇ…。」

「ほんとだねぇ…。あ、水あるけど飲む?」

「おお…いただきます。」


若干切れ気味に暑さに耐えながら歩くパピア・リスーシと、その隣で小柄な馬を数頭

率いる水無月聖桜である。

二人は互いに敵対しあう白軍と黒軍に所属していたが、それ以前に小さいころから同じ長屋に住む幼馴染であった。自ら所属軍を抜け、各軍から雄志を募り新たな勢力を建てようと計画している。

そのはじめの活動として新たなメンバーを各軍から極秘に勧誘するために、ここで待ち合わせというわけである。


「あ…あれかな」


聖桜が指差した先には白い煙が上がっていた。しかしそれは上空までではなく5メートルほど上がったところで壁に当たったように広がっていた。


「やっと見つけましたか!もうクタクタですよ…。」


白い煙と一緒に美味しそうな匂いが漂ってくる。これは…肉を焼いている匂いだろう。

煙の元が見えると、学生と思われる二人が鳥のような動物を串に刺して焼いていた。

一人は白を基調としたブレザーを着た女性。もう一人は民族風の衣装に赤いバンダナの男性。

彼らは今回勧誘するために呼んだ各軍のメンバーである。


「お!どうもどうも!!あなた達が呼んでくれた人達だね!私はペルー・ラケイルだよ、よろしく!」

「…こんちわっす、沢田です」

「初めまして、パピアって言います。えっと、とりあえず移動しませんか?ここすごく暑いですし…」

「んーそうだね、じゃあ近くの村にでも行こうか」


軽い挨拶を交わしてから、沢田は砂で火を消した。すると周りに広がっていた煙がすっと消えていった。

沢田が使っていたのはグンマーを亜熱帯に変えた気象兵器の携帯版のもので、気流を作り風の流れなどを制御できる代物である。それに反応したのか、聖桜の馬が反応して暴れだした。


「うわっ!?どうした!おちつけお前ら!!」

「わ、悪い…これのせいだ、今止める。」


機械を止めると馬たちも落ち着きを取り戻した。

と、その時―――聖桜の馬の首に一本、赤い矢が刺さっていた。


「ヒヒィィンンルブルゥ!!!」

「くそ!立て続けになんだってんだよ!!」

「いいから!早く走るよ!逃げ切らなくちゃ!!」

ペルーと沢田はその場を離れる体制をとった。するとパピアが左腕につけた腕輪に右手を添えて構え、攻撃態勢をとっていた。


「こんな暑いのに走るとか…やってられませんよぉ!!!」


パピアが右手を振りぬくと、その手には一振りの刀が握られていた。

鍔には何重にも重なったリングがついており、刀身は銀色。それは光を返すことなく重く佇んでいる。


「ぬぅぅん!!」


パピアは刀を地面に突き刺し、腕輪を構えて静止した。

次の瞬間、腕輪から太い光の光線が発射される。

周りの木々がすべて焼き尽くされ、ほとんどが消飛んだ。それに加えて、襲撃してきた敵も消飛んだらしく、少し先に弓矢と数本の武器が転がっていた。


「これで…いいですね。」


すっきりしたように言い放つと、ゆっくり村の方へ向って歩き始めた。

今の出来事に唖然としていた3人は、慌てて彼女についていく。

数日後、黒軍の兵士が数名行方不明になったニュースが流れ、一触即発の戦線状態から戦争の火蓋が切って落とされたことは、村についてから知ることになる。



彼らが建てた勢力は「遊劇軍」として、歴史に刻まれている。

その記録をまとめた物が、これである。




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