僕という人
僕は可愛いものが好きだ。
甘いケーキ、ふわふわなぬいぐるみ、フリルがついた服、気ままな猫ちゃん、恋する女の子。
世の中には可愛いが溢れてる。
そうだ、溢れてるはずなのだ。
なのに……なのに……
「僕のまわりはどうして可愛くないんだ!!! 」
見渡せば周りにいるのは男男男。それも厳つい顔したゴツいやつらだらけ。服装は黒スーツが基本。人様には言えないような物も持っているし、言えないこともしてきている。
そう、可愛いものが好きな僕はそちらの道では知らない者はいないであろう『鬼蛇組』の三男という立場であった。
三男であるから家を継ぐことはない……ということはない。うちは産まれた順番は気にしないから。だが、俺が継ぐことはないだろう。
腕っ節はなかなかであると自負しているし、頭もそれなりだとは思っている。それでもこの顔に産まれた瞬間可能性は0に等しい。
女の子のようにつるつるな白い肌。ぱっちり二重で睫毛バサバサな目。サクランボ色のぽってりとした唇。155cmという低身長に細い腕と足。マロン色に染めたさらさらなボブカットの髪。
誰が威厳を感じるというのか。恐れをなすのだろうか。これでは交渉などの際に嘗められてしまう。これもまた上に立つには大事なことなのである。
ただ僕はこの顔で心底嬉しい。
家を継ぎたいなどと願ったことはないし、むさ苦しい環境で唯一可愛いと感じられるのは鏡の中の自分だけなのだから。
僕は16年間生きてきて僕以上に可愛いものに出会ったことがない。