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2話異世界生物の特殊な能力

「それじゃあ、先ずは皆でって言っても女性陣だけだけど、疲れてるのか何なのか、未だに寝てるその子からお風呂に入れるわよ?護君と健太君はアイマスクをして覗かないようにね?」

「え?!俺らだけ?!渉は?!」


 ベルンの発言に護は憤慨するが・・


「はい。それにしても全然目が覚めないね、どの位逃げ回ってたんだろ?」


 無視された・・、しかもコルダにまで・・


「ああ、大凡三日は飲まさず食わさずで追いかけていたな。まあ、その娘も最小の魔力消費で済む様に自らの魔力で調整してたようだが。」


 無視された・・・


「え?魔力があったらそんな事出来るの?」


 更に追い打ちの如く再び秀美に無視され、何事も無かったかの如く、ベルンと話していた秀美にコルダが応え、その内容に秀美が驚く。


 魔力でその様な事が出来るなんて知らないベルンたちも同様に目を見開いて驚いていた。


「もういいよ、護さん。僕らは所詮その他大勢のエロガキ扱い何だ。さっさと目隠しして女の子たちの嬌声だけでも拝聴しよう?」

「そうだな、負け犬は負け犬らしくおこぼれにありつくしかないな。」


 護と健太は打ちひしがれてそのまま用務室にアイマスクを取りに行った。

 その間も女性陣と渉、コルダの話し合いは続く。

 

「普通の魔力量では無理だろうな。それに今は追いかけ回した所為でかなり擦り減っているが、本来のその娘の力はキサマら全員の魔力を足しても1割にも届か無い程の量だ。」

「なら・・・少しでも回復させてからの方が良いんじゃない?渉君の結界じゃー体力は回復できても、認識があまり出来ない魔力は恐らくは戻り方は変わらないわよ?」

「・・それもそうだな。・・・仕方ない。貴様らの分だけでも貰って、満足するか・・。」


 何とも納得できない感じだが、そもそもそうした方が己にも都合がいいとコルダも分かっているので仕方ない。

(場合に由っては全員の魔力を頂いて後、あの娘を浚って行けば住む事だ。)


 そう言う考えに達しているコルダは無闇に反論したりはしない。

 己は楽にして、小僧に身を任せ、回復すれば気の赴くままに行動すればいいのだから。

 そうして、女性陣が大きなサイズにしたコルダ風呂に裸で入り、魔力の代わりに体力を渉の空間で回復させていると、コルダの体に異変が起きた。

 それは、ベルンが入り、衛実、鏡花と続いて、秀美が入った直後の事。(渉の枕はそのまんまの枕に変わった。)


「おおお?なんだ!?この体から溢れ出る力は!娘、お前は何者だ!」


 イキナリのコルダの質問に呆気に取られる秀美だが、秀美自身は訳が分からない。

 自分は渉や健太、鏡花たちの様な東洋系の魔術師の家系ではないし、ベルンの様な、西洋魔術の名家でもない、極普通の家系なのだ。(テニス界では結構知られている家系が極普通と言うのも変なのではあるが。)


「そ、そんな事言われても分かんないよ。どうせ、渉君が僕の裸で興奮して結界の設定を変えたんじゃないの?」

「・・・渉君?幾ら自分の好みの子がお風呂に目の前で入るからってあからさまな欲情は頂けないわよ?」

「い、イヤイヤちょっと待て。俺は何にもしてないぞ?この結界の維持には結構神経使うんだから、そんな余裕は無いって!」

「・・・・」


 渉が抗議の声を上げると、何かしらんが鏡花が風呂から上がったばかりのバスタオル一枚の状態で近付いて来た。

 その所為で渉は改めて鏡花を間近で眺め為、思わず興奮した。

 確かに小動物の様な可愛らしさはあるが、こうやって見ると全体的に女性らしい丸みを帯びた艶妖さがあり、女性の象徴も意外と膨らみを帯びているのがタオル越しでも解かる。なるほどと、学校内の人気も頷けると感心してしまう位の美少女だった。

 しかし、近づいて来た鏡花が渉の股間に目線を向けた所で・・


「・・ふっ・・」


 と、鼻で笑われてそのままの状態でテクテクと戻って行かれた為、思わず


「ちょとまて、鏡花!今の反応は何だ!失礼にも程が有るぞ?」


 と抗議すると・・


「・・プフ・・まあまあ、渉君。失礼かどうかは置いといて、間近でこんなに可愛い子の下着も付けてないタオル一枚の姿がプールの時間でもないのに見れたんだから、役得だと思わなきゃ・・。・・いえ?プールでも更衣室は有るんだから普通は見れないわよ?・・・ねえ?」


 と、ベルンが笑いながら鏡花の幼馴染である健太に同意を求め・・


「そうだぞ、渉君!鏡花のタオル姿を間近で見れるなんて幼馴染の僕ですらないんだ。笑われるくらい我慢しろ!それより、僕にも見せてくれ!」


 と健太が羨ましそうに逆に今の状態について抗議してくる。更には護まで

渉の状況を羨ましげに思って魂の叫びを放つ。


「そんな事より、渉!お前はオカルト研究部をハーレムにする気か?巨乳のベルン先輩は部長だから兎も角、鏡花ちゃんや秀美ちゃんまで招き入れるなんて欲望が過ぎるぞ!更には俺の妹まで・・・羨ましい・・俺も入れろ!!そして、見せろ!!!」


 最初は渉の欲望を注意していた護のセリフが、最後は自分の欲望を言う辺り健全な男なのだろう。


「男が俺一人なら兎も角、健太も普通に入ってるのにハーレムは無いだろうが!お前の眼は節穴か!?」

「僕が鏡花以外には先輩たちに殆ど相手にされてないのは同じ部活の君がよく解ってるだろ!羨ましい奴に口を挟む権利など無いんだよ!!素直に怒られていればいいんだ!!」

「横暴だーー!!」


 そんな見苦しい男共の漫才を余所に、女性陣は全員風呂から上がり、替えの制服に着替えて「パンパン」とベルンが手を打ち鳴らし、渉達の番を告げた。(因みに制服は予備を常に置いてあるので全員分はある、今までは緊急事態でそこまで考えが回らなかっただけだ。予備が有るのは渉とベルン、そして、今日は家の用事で居ないが2年生の3人トリオが全国の有名魔術演目に参加して好成績を得ているので部費は結構降りてくるからだ。まあ、儀式や実験で制服が今回の様に無駄に成るのもしょっちゅうなので、降りてこないとマトモに実験も出来ないのではあるが。)

 

 

「はいはい、私達は入ったから男共もさっさと入る!・・あ、渉君は自分で設定してコルダに力を上げればいいからね?他の男共はさっさと入りなさい。私たちは向こうで秀美ちゃんの勉強を見てて上げるから、アンタらの汚らわしい物なんて誰も見たくないからね。」

「え?渉なら自由に僕たちの力もそいつに渡すこと出来るんじゃないんですか?」

「うんうん!」


 健太が護の考えを代わりに言ったようで、護も頷いてる。・・しかし・・


「あんたらね・・。さっきの私の言ってた事聞いて無いの?渉君の結界は渉君の解かる範囲での物事を設定できるけど、分からない物は出来ないの。そして、まだ完全に・・と言うか、半分も理解してない魔力の事は分からないから、自由には出来ないのよ・・。でしょ?渉君?」


 ベルンがこめかみを押さえながらやけに詳しい事を言ってから渉に問いかける。


「どうしてそこまで俺の力に詳しいのか分かりませんが、言ってることは有ってますよ。第一、全て思い通りに出来るんならお前らのどころか、秀美ちゃん達のだって俺が設定を弄れば一々裸になる必要ないだろうが!俺だって女の子の裸は自分一人で独占したいんだ!野郎になんてたとえ妄想でだって見せたくねえよ!!」


 前半はベルンにまたも抗議したい渉の考えだが、後半はモロに煩悩全開の健全な男子高校生の考えだ。


「・・確かに・・」

「・・・同じく・・」


 と、男子が項垂れて悲しさを共有する中。女性陣はと言うと・・


「・・お兄ちゃん・・そんなこと考えながら聞いてたんだ・・サイッテー・・・」と衛実がウジ虫を見る様な目で兄を見たかと思えば


「健太・・・言ってくれれば良いのに・・」と比較的幼馴染に優しさを見せる鏡花。


「あはは・・流石渉君。煩悩と独占欲全開だね♪」と予め皆の性格は把握している秀美は煩悩全開の男子にも好意的だ。


 だからと言う訳でもないと思うが、この中で一年生ながら男子女子の双方に人気が有るのも秀美がこう言う楚々とした大和撫子的な外見に似合わない社交的な性格が原因なのかも知れない。(衛実も活発な性格で男子に人気なのだが、護の妹であり、渉と仲が良いと言う理由で一部女子に嫉妬から毛嫌いされている。)


「何でもいいが、男共はさっさと入らんと時間が無いのではなかったのか?特にそこの娘は取りあえずココに置いておくとしても、娘の誰かは別室で残っていないとイカンと思うぞ?男だけでは錯乱して何をするか分からんという意味で。」

「・・確かにそうね。・・分かったわ。男子は続きをしていて?女子は鏡花ちゃんは用務室で待機して後は私に付いて来て。生徒会室で訳を言って泊まりの許可を貰うから。その帰りに秀美ちゃんの勉強を見る為の資料も貰って行きたいしね」

「え?ベルン先輩、泊まるんですか?」


 渉が皆を代表して質問する。その質問に対してベルンも


「仕方ないでしょ?渉君達は今更泊まらせられないし、私は一人暮らしで許可を貰ってるしね。それに、この子の事も何にも分からない状態じゃ、対処のしようがないでしょ?」

「そう言えばベルン先輩ってイギリスからの留学生でしたね?ホームステイとかじゃ無かったんですか?」


 ベルンの言葉に、思い出したかのように健太が問う。それに対して、ベルンも


「ああ、あれは一部嘘よ。私の家業が今度こっちでリニューアルオープンされるアミューズメントパークの重要な一部を担ってるから、私はその視察で一人先にこっちに来てるの。私が休日にほぼ家に居ないのは知ってるでしょ?」

「ええ、学校に調べて貰おうとしても、『個人の家の問題を他人に話すのは感心されないんだ。スマンな?』って、この前先輩の担任の先生に聞いて断られましたから。」

「え?!そうなの!!?」


 渉の言葉が初耳だったらしく、健太は驚いて渉に聞いた。


「ああ、一緒に鏡花も付いて行って聞いたから・・なあ?鏡花。」

「・・・」コクコク

「・・・それって先週の僕が風邪で寝込んでた時?」

「ああ。」


 健太の問いを渉が肯定すると、イキナリいじけだしてフローリングの床にのの字を書き始めた。

 その様子に、このままにした方が良さそうだと判断した(いいのかよ!)面々は、男性陣を残して鏡花は用務室、他は生徒会室に向かった。



 ☆ 残された者達は・・



「じゃあ、さっさと入れ。コルダは調子はどうだ?」

「我は問題ない・・と言うより、先ほどの秀美?と言ったか。あの娘が入ってから力が湧き出る感じだ。これならあと少しで形状変化も可能な位だ。」

「形状変化?何だそれ?」


 突然の聞きなれない言葉に、渉も、他の二人も戸惑う。

 単語が聞きなれないのではなく、明らかにこの地球外生物がどのような変化を持っているのか分からない為の疑問だ。

 その事を察したのか、コルダも説明の為回復した魔力を少量使って渉達が驚く事をした。

 それは、なんと・・


「な、なんだそりゃー!!」と護が驚き。


「わぁー、カッコいいじゃない!!と健太が喜び。


「・・ホント、何処から来たんだ?お前」と渉が真剣に疑問を表す。


 そこには重厚な、それでいて美しい白銀の鎧を纏った騎士が佇んでいた。

 しかし、未だ魔力が足りないのか大凡10秒足らずで先ほどのコルダ風呂に戻った。


「むぅ~、まだ無理か。だが、これなら万が一のキサマラの武器としては使えるぞ?」

「どういうことだ?」

「これは我の予想だが、その娘と我がこの世界に来た事で、色々な平衡世界の扉が開いたはずだ。まあ、僅かな隙間だがな。しかし、その所為で我の様なキサマラには考えも着かん様な生命体が少しずつ入り込んでくるだろう。そうなったときのキサマラと我の間の保身の為の戦う術だ。」

「なんだ?!それじゃあ、今からこの世界は化け物の徘徊する世界になるって事か?」


 コルダの説明に、護るが喚く。しかし、コルダは安心しろと言った感じで・・・


「我らの餌となる物は魔力のある物だけだ。そして、幸いと言うべきかこの世界にはそれ程多くは魔力を持つ者は居ないようだ。我が感じる物ではこの建物内でも、大凡50位か?それ以外はその辺の石ころの様な存在だ。躓いたり、邪魔だから蹴飛ばすという事は有っても態々見つけて喰らうことは無い。それは保障しよう。」

「・・・それなら大事には成らなそうだな。」


 コルダの説明に一先ず安心する渉。


「けど、この学校にそんなに魔術師の家系の人っていた?僕、渉、鏡花、ベルン先輩にさっき分かった秀美ちゃんは確実だけど、それでやっと5人だよ?可能性のある人なんて僕に心当たりないよ?」

「・・いや、先生たちも合わせると結構な数だ。社会の伏見先生は現代陰陽道の名家だし、国語の北大路先生はウソかホントか先祖がヴァンパイアだとか言って生徒をからかってるし。生徒会の人達も家がそこそこ有名な家だから、血統的に有りえなくもない。」


 健太が自分の心当たりを思い浮かべて否定し、護がその広い情報収集力で得た情報を出してコルダの意見を前向きに肯定する。


「まあ、なんにせよお前らは早う入れ。俺はお前らが入った後で結界を解除がてら帰るのに必要な分を残してコルダに力をやるから。・・コルダもそれでいいだろ?」

「我は問題ない。餌は待たされればそれだけ旨味も引き立つ物だ。特に貴様の得体のしれん力は我も興味がある。じっくり食すのは一番最後の方が良かろう。」

「・・俺、本当に生きてられるのか?」


 そう渉が零すと、醜い男の嫉妬合戦が勃発した。


「頑張れ、渉!もし死んだら秀美ちゃんは俺が貰ってやるから安心しろ!」と、護が渉に言ったかと思えば・・


「あ!ズルいよ?!護さんは衛実ちゃんって言う可愛い妹が居るじゃないか!僕に譲ってよ!」と健太が割り込む。そうかと思えば護もまた


「お前こそ可愛い鏡花ちゃんが幼馴染なんだ。それ以上何を望んでやがる!」と可愛い幼馴染がいる健太に譲るように罵倒する。


 それを渉と一緒に聞いていたコルダは・・


「醜いな・・・人とはかくも醜い存在なのか?」

「まあ、相手が可愛い子と親しかったらこうなるのが男ってもんだよ。まあ、仕方ないから黙らせて突っ込むわ。男に遠慮はいらんから制服ごと溶かして貰うもん貰っちまえ。」

「・・良いのか?」

「大丈夫だ。替えの服は十分にある。」

「・・・まあ、貴様がそう言うなら我は良いが・・」

「って事で・・待ってろよ?」


 コルダとの話し合いも終わって、渉が先ほどベルンに貰った杖を持ち天に掲げ、魔術師の証拠である詠唱を始めた。


「『血の盟約に従い、我、渉が行使する。大気を司る精霊よ、我の意に従い万物の理を捻じ曲げ意を起せ』≪浮遊≫」


 渉の詠唱が終わると、言い争っていた二人の体が持ち上がり、フワフワとコルダ風呂に押し込んだ。


「ぶわ!渉、イキナリはやめろ!ってか、服が溶けてるじゃねえか!!男の裸なんか見て楽しいか?!」

「ちょっと、渉君。男同士の乳繰り合いを見て楽しいかい!?せめて一人ずつ入れてよ!」

「んなメンドクサイこと出来るか。早うコルダに渡して、早う出てこい。ほれ、着替えはそこだ。」


 渉が二人の文句を無視して着替えを放り投げる。

 その着替えもコルダ風呂の遥手前に落ちたため、コルダ風呂から上がる際には二人とも全裸の状態だ。

 しかも、運が良いのか悪いのか、渉に用を思い出した鏡花が隣から出て来た直後だったので・・・

 二人の股間を凝視した鏡花は口に手を当てて・・


「・・・ぷっ・・・」


 渉の場合と同じく、いや、それ以上の反応で笑われてしまった二人は・・・


「「いやあああ!!お婿に行けないーーー!!」」


 と、見事に反応がハモっていたのであった。


「お、鏡花。どうした?」

「・・・」


 二人を無視して寝ている渉の前に来た鏡花は、無言で渉の魔術書のある部分を見せる。


「・・ん?これのやり方を知りたいのか?俺よりベルン先輩の方がマジックアートに関しては上だぞ?俺も半分は先輩に習いたくてこのオカルト研究部に入ったんだから。」

「・・ちがう、・・これを・・渉に・・やって見せて・・欲しい。」


 何故か鏡花が渉への催促を強調する。「なら、仕方ないか」と渉も渋々ながら承諾するが・・


「条件、一つ。」

「・・・なに?」


 渉の言葉に可愛らしくコテンッと小首を傾げる鏡花。

 その反応に、外野二人は


「「可愛い!!なんで渉ばっかり!?」」


 と血涙を流しながら訴える二人。・・まあ、それも無視されるのだが・・


「やって見せるから、膝枕して?立ち上がるのが辛いし、今の状態は少し頭が低い。少し上に上がりたいから。」

「・・分かった。」


 そう言って渉の傍に腰を落として膝立ちになり渉の頭を自分の膝に移動させる鏡花。

 そして、その感触を楽しんだ渉が試に鏡花のスカートの端をつまんで・・


「因みにパンツは?」

「履いて無い、・・・見たい?」

「見たい!!」

「どうぞ?」

「うん!!」


 短い言葉の応酬で即行動する渉だが・・


「スパッツ履いてるじゃん・・」


 その残念そうな渉の言葉に、鏡花はニッと唇を釣り上げ・・


「パ・ン・ツ・は、履いて無い。」

「詐欺だーー!!」

「・・ふふ・・渉、可愛いい・・」


 何故か絶叫する渉の額を撫でながらそんな事を言ってくる鏡花・・

 その甘々な空気を見る外野は・・


「なんだ?あのストロベリースペースは・・」と健太がヒソヒソと護に言えば

「鏡花ってあんなに可愛かったっけ?もっと無口で表情も無かった筈だが・・・」と護が驚きを露わにする。


 そんな二人を未だに無視し、鏡花は渉に魔術の見本を促す。


「・・これ・・」

「おう、『血の盟約に従い、我、渉が行使する。風と水と氷の精霊よ、我の意に従い、事象を呼び起こせ』≪スノウダスト≫」


 渉が詠唱を終えると、その指先から魔法陣が現れ、魔法陣から雪の結晶が部屋一杯に広がり、更に風が雪の結晶を舞い散らせ、さながら雪のダイヤモンドダストを髣髴とさせる神秘的な空間になった。


「・・きれい・・」

「ああ、だがやっぱりまだまだだな。ベルン先輩の方がもっと無駄なく出来る。俺も早く先輩の様なアーティストに成りたいもんだ。」


 渉のそのセリフを聞いていたコルダが、何故か突然否定し始めた。


「いやいや、我がお前たちの感覚が分からんと言っても、これが美しい光景だと言うのは理解できるぞ?しかも、小僧の使った魔なる力は先ほどの女の物より質も悪くなかった。しかし、魔方陣を使った先ほどと、今の状態では何故か明らかに使っている時の方が格段に質がいい。・・何故だ?」

「さあ?俺もそれは分からん。・・鏡花は分かるか?って俺自身が分からんのに無理か。」

「・・ゴメン・・」


 冗談半分に言った渉のセリフに、本当に申し訳無さそうに謝る鏡花。


「あ、いや、スマン。鏡花が悪いんじゃないから、無理な事言って悪かったな。・・で?お前らは如何いう感想だ?」

「いやいや、こんなの見せられたら文句の言い様もないぞ。・・一言で言えば流石って奴だな。これで満足してないって言うお前は逆に嫌味に聞こえるぞ?」


 渉の質問に護るがあっけなく降参の意志を示す。更に健太も


「僕も同じだよ。マジックダンスとの違いは有るが、前に鏡花が僕にもやってくれって言った時に試にやってみたけど、只周りが水浸しになるだけだった。微妙な水と氷の調和が難しいんだが、お前はよく出来るよな~?感心するよ。でもさ?」

「ん?何だ?」

「何で渉はそのマジックアートの技術を親父さんたちに見せないんだい?そうすればお前の会社のセールスにも少しはなるんじゃないか?ベルン先輩の所と被る可能性も無いし、遊園地と警備会社なんて、協力はしても競争も無いだろ同じような演目が有っても僕は良いと思うけど?」

「・・・」コクコクと鏡花も頷いている。


 しかし、皆に薦められても渉は別の理由が有ると言って断る。


「いや、俺はまだ親父たちに話す気はない。最低でも国家資格の2級アーティストの試験にこの秋合格してからだな。今は見習いの3級だから、こんな中途半端な実力じゃあ親父たちを納得させられない。俺は勉強でトップを取りつつ、2級のアーティスト資格を取る事で親父たちに認めさせる心算だ。」

「ほ~、その資格とやらがどれだけ過酷な試練か知らんが、意気込みは伝わるぞ。他の二人とは大違いの輝きを感じる。」

「・・・・」コクコクとまたも頷いてる鏡花。この子は何気に幼馴染に厳しい様だ。

「「余計なお世話だ!!」」


 言われた二人も反射的に抗議するが、自分でも分かってるだけに、するだけで明確な反論は無い。

 健太は既に2級の資格があり、鏡花と一緒にやれば双方の家の客寄せにも繋がるから、焦る必要もないのだ。

 護は護で色々なスポーツをやってはいるが、将来的な目標はない。言ってみれば、今いるメンバーで一番目的の無い人物だ。


 そんな一同の様子を眺めていたコルダは、そろそろ最後の力を貰おうと渉に声を掛ける。


「話は変わるが、そろそろ小僧の力も入れてみてくれ。先ほどの魔力といい、結界を作る力といい、極めて興味深い。実に楽しみだ。」

「分かった。・・やるぞ?」


 渉はそう言い、コルダに自分の内なる力、恐らく魔力でも霊力でもない、なにかの力を注ぐ。・・結果・・・。


「・・お、・・おおお!!?」


 いきなりコルダが唸りだした。そして、次の瞬間・・・ピカーーっと部屋中が光に包まれ、後には金髪金眼の美青年がその場に佇んでいた。


 その光景に、一同唖然。コルダ本(人?)でさえ己の体を凝視している。そして、やはりと言うか裸の格好の青年の姿を鏡花は顔を赤くさせながら・・・


「・・渉を・・大人にした・・感じ・・カッコイイ・・///」

「え!?そうか?!」

「・・うん・・・。・・あ、・・・渉も・・カッコイイ・・よ?」

「・・あ、ああ・・・ありがとな?」

「・・う・・ん・・」


 顔を赤くしたまま渉と話していながらも、目線はコルダに釘づけだ。しかし、それも無理はないかの如く今のコルダは何処か神々しく見える。

 しかし、事態の急変に驚いている二人とは別に、他の二人は・・・


「「なんで、タコの化け物までいきなりモテやがるんだ?」」


 と、別の意味で絶叫していた。それに対し、コルダは・・


「我も分からんが、確実に言えるのは小僧の力を受け取った途端に、先ほどの娘を越える得体のしれない何かが我の肉体に影響を及ぼしているのは間違いない。」

「・・・けど、なんで・・・渉にそっくり?まるで、未来の渉が居るみたい・・」


 ゆっくりと鏡花は渉とコルダの全身を見比べる。

 そして、もう少し視る為に渉を起こそうと思いっきり肩から掴んだが、力が足りずに二人一緒に倒れたのはお約束だろう。


「・・・痛い・・」

「おいおい、鏡花、大丈夫か?立てるか?」

「・・起こして・・・」


 なんか幼児化した鏡花に困った渉は、健太に代わることにした。実際健太はこういう場面はよくある事なのだそうだから、やり方はよく分かってるのだろう。


「おーい、健太。お姫様がお呼びだぞ?」

「分かった。今行く。」


 そうして、来た健太は鏡花の脇の下を持って、抱き上げる様に起こして・・


「ありがと・・・お礼・・」


 チュっと少しだけ触れるキスを鏡花は健太にしてやる。羨ましいと思う光景だが、これは結構鏡花と健太にはよくある行為なのだ。その理由が鏡花と健太のマジックダンスの練習だ。

 マジックダンスはバレエや社交ダンスの様に密着しながらの場合も良くあるので、失敗したら顔同士が触れ合う事はよくあるのだと言う。

 流石に今は失敗も少ないが、始めた当初はよく失敗してキスをする羽目になっていたらしい。

 その為、さっき健太がタオル姿をマジかで見るという事は確かに無いが、お互いでキスをするのは自然と出来る事だったりする。

 余り大勢にキスをするのは頂けないと鏡花の両親が、パートナーは厳選しているらしいが・・


「しっかし、健太たちの競技も色々と大変だよな?相手が女の子の健太は良いけどさ、居なかったら男同士でヘタしたらぶちゅっ!だろ?俺はそんな危険を冒してまでやりたくはないな。確かに合法的に女の子とキスできる可能性が多くなるけどさ?リスクも並じゃないぜ?」


 渉がいかにも嫌そうに言うと、健太は苦笑しながら・・・


「それは最初にパートナーが決まることが殆どだから心配はしてないよ。それに、僕も近くに居た幼馴染で、同じ競技をやろうとするのが鏡花で無ければやろうと思わなかっただろうし・・ね?鏡花?」

「・・・・」コクコク


 鏡花も健太の意見に同意なのか、頷いている。確かに気の合う者同士でないと、この手の競技は嫌悪感が先に出るだろう。その意味では二人は運が良かったのだろう。お互い家族の繋がりもそこそこ良いのだから・・


「そう言えば、鏡花はどうしてあのコルダが渉に似てると思ったんだ?僕から見たらそれ程似てるとは思えないけど?」

「・・・感じがそっくり。それに気の質も・・渉の・・不思議パワーが・・入った所為かもしれない。」

「・・ふ~ん?まあ、なんにせよ、あの恰好じゃ下が気になって仕方ないからなんか着る物取ってくるわ、先生の服が被服室にあるだろうから、一寸行ってくる。・・・鏡花はどうする?」

「・・渉に・・もう少し・・色々見せて・・貰ってる。」

「分かった、護さんも置いていくから、暇だったら遊んで貰え。」

「うん、行ってらっしゃい。」


 健太は鏡花との話を終えて、コルダの服を取りに行った。

 そして、鏡花はふとコルダの服装に付いて気になった事を聞く。


「コル・・・服・・自分で・・・作れ・・ない?」

「ん?キサマラの様な物か?」


 鏡花は片言で言うが、コルダには通じたらしい。


「・・できる?」

「無論だ。何故か知らんが小僧の知識も我に入り込んでおるから、流行とやらも出来るし、先生とやらの物も出来る。」

「ホントか!?なら、秀美ちゃんに成ってメイ「渉・・それは・・秀美に直接いえばいい。今は服装が先。」・・はい・・・。」

「・・やって?」

「うむ。」


 鏡花の言葉にコルダが端的に応える。そして、その次の瞬間にはコルダの全身が光に包まれ・・・無駄に格好の良い男性教師になった。


「・・なんか出鱈目な便利さだな・・・。」

「やっぱり・・渉といい勝負。」

「そんなに俺って便利か?」

「・・・」コクコク


 そうやって渉と鏡花は謎の少女が気を失っている事も忘れ、ベルンたちが帰ってきて、コルダに対する質問を矢継ぎ早にされるようになるまでマジックアートなどの色々な練習をしていたのであった。

 

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