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東方 朧雪華  作者: めーりん
過去とこれから×過去との決着
41/44

戦争開始×無慈悲な執事と賢者の猛攻×急展開

‡‡‡‡


スキマを通過した無月。到着したのはモノクロの雑木林であった。


「・・・・ここは」


『桜花が構築した場所よ。博麗大結界の手前に位置するわ』


周囲を見渡した無月の隣(というか肩)から紫の声が発せられる。無月がそちらに目を向けると、そこには小さな鳥(恐らく烏)が。


『簡易的な使い魔ですわ。私と貴方の連絡役にと遣わせました』


「・・・・時間が惜しい。奴らの位置は?」


『ここから大凡(おおよそ)北西に1500(単位はメートル)、と言うところですわね。本丸、つまり皇帝がいるのは3000と言うところ。どちらも開けた場所です』


「分かった・・・・まずは仕込みを行いたい。頼めるか?」


『構わないわよ。容赦なしで行きましょう』


紫の簡潔な説明を受け、無月は改めて周囲を見回し、作戦を決めると行動を開始するのだった。


‡‡‡‡


雑木林の境目にある一本の木に、一人の兵士が小さく欠伸をしながら寄りかかっていた。



「おい、寝るなよ?」


「寝やしないって・・・・単に暇なだけさ」


そんな兵士を見た別の兵士が声をかける。両名とも手にはアサルトライフル"AEK-971"を持ち、ウエストポーチや手榴弾等の装備品を全身に効率良くなるように装備している。


「にしても半日位前に第五師団の方に化け物が襲撃したらしいな」


「みたいだな。ま、陛下の秘技で毛ほども被害はなかったらしいが」


話題の転換、と言うよりは暇つぶしと言うように木に寄りかかっている兵士が口を開く。注意した兵士も、暇であるらしくその話題に相づちを打つ。


「噂じゃ半日もしないうちに侵攻が可能らしいな」


「陛下のお力は真面目に凄いよな。これで世界が違えども化け物共からから人々を助けられるってもんだ」


注意をした兵士が手に持つライフルを肩に掛けながら若干興奮したように話す。木に寄りかかった兵士も軽く笑みを浮かべると、手にしたライフルを肩に掛けるとポーチからタバコを取り出し、一本をくわえる。


「火をくれねぇか?」


「ったく・・・・・ほらy」


タバコをくわえた兵士に、もう一人の兵士がポーチからライターを取り出し、火を着けるために近寄る。その瞬間、二人の首を鋭利な刃が貫き、二人の兵士はお互いの首を貫く漆黒の刃をポカンと見るしか出来ず、次第に意識を失っていくのだった。


‡‡‡‡


「ここが最適な突入口か・・・・」


『最初の襲撃と同時に並行して偵察を行わせ、それを解析した結果、ここが突入に最も適した場所だと思われます』


目の前の木を貫通しているスルトルを静かに引き抜くと、自らの初撃の結果を確認、ポカンとしたまま倒れていた死体二つを一応木の後ろに引きずり込む無月。


その手際の良さにある種の恐ろしさを感じつつ紫は自分の偵察結果を話す。


『先ほどの話しが本当なら猶予は余りないですわね』


「ああ・・・・。だが、奴らの力の大半は皇帝の能力に依存している。陽動後に狙撃して皇帝を"一時的に無力化する"フェーズ1、その後混乱から立ち直った連中をすべて排除するフェーズ2。最後に皇帝を完全に封印するフェーズ3の三段階で行う。極論を言ってしまえば皇帝さえ排除すれば後は烏合の衆に過ぎんよ」


『それにしても随分手慣れてるのね』


「元々単身で圧倒的な数を相手取る事が多かったからな、最早慣れだよ」


まだ他の兵士にバレていないことを木の陰から確認していた無月に、紫は感心した様に声をかける。


無月は敵に気づかれて居ないことを確信すると、ポーチから幻想郷に来てからは一度も使うことのなかった端末を取り出すと、画面を起動する。


「さて・・・・開始する。(10、9、8、7、6、5、4、3・・・・)」


手早く画面を操作する無月。そして端末をポーチに入れ、武器を構えると心の中でカウントし、残り3秒を切った瞬間にその場から"消え去る"


そしてカウントが"ゼロ"になった瞬間敵の再外縁部から一斉に火の手が上がる。


「スキマってのも便利だな。こうまで簡単に仕込めるとは」


『とはいえこの様な使い方、予想してなかったでしょうね。連中に私が見せたスキマの運用法は"武器を射出する"か"何かをその場に出現させる"程度ですし』


風に乗ってあちらこちらから聞こえる声を聞き取り、ニヤリと笑みを浮かべる無月。その言葉に肩に止まった使い魔を通じて紫も若干寒気を感じつつ同意する。


無月は紫からスキマの大体の特性や今まで自分の行ったスキマを使った攻撃内容を説明してもらうと、即座に作戦プランに修正を入れた。それがスキマを利用した爆発物(C4)設置である。


スキマ特性を最大限利用し、無月は紫から聞いた敵の皇帝の索敵範囲外に手当たり次第に爆発物(C4)を設置して爆破、その混乱に乗じて狙撃を行うことにしたのである。なお、設置された箇所は大半が武器置き場だったり宿舎だったりする辺り、無月と紫がいかに容赦する気がないかを理解できる。



「さて・・・・」


皇帝の索敵範囲(これは紫が単体で襲撃した時に割り出した結果、約1400mだと判明。十分人外である)ギリギリは謂地雷原となっていた。しかし無月は紫に頼んで地雷をスキマにて転送してもらい、地雷のない地点を作り出してもらうと、隙間から二丁の銃を受け取り、狙撃体勢になる。


「・・・・・・」


スキマから輸送されたその二丁のライフルの二脚(バイポッド)を展開し、その内の一丁のスコープをのぞき込むと、無月はスコープ越しに皇帝を確認する。


その男は周囲の軍人(恐らく軍団の指揮官)から報告を受けているのか、時折指示を出している。


「(弾道落下・・・・よし)」


以前の経験を基に紫に無理を言って頼んで用意してもらったライフル二丁(その運用方法を聞いた時紫は割と本気で無月の正気を疑った)の最終調整を完了させる無月。"この時だけ"と云う限定条件で紫の術式によって己の肉体にかけられていた(恐らくは影光の手によるもの)封印も解除、さらに本来は失われた筈の右目"も"使って微調整を行った彼は、紫の支援(ライフルの空間固定)を受けつつ完全にこちらに気づいていないであろう皇帝の全身を"粉砕"するために引き金を引く。


紫に無理を言って無月が用意してもらった銃はKBP OSV-96。"外"の世界で運用されるセミオートマチック式の対物(アンチマテリアル)ライフルであった。


一発にしか聞こえなかった轟音と共に放たれた二発の弾丸は、寸分の狂いなく皇帝の頭と胸を"粉砕"する。そこでようやく周囲の連中が慌てたように壁になるが、無月はそんな事は知ったことかと云わんばかりに二丁の対物(アンチマテリアル)ライフルを交互に倒れた皇帝目掛けて"連射"する。


『どうかしら』


「目標の一時無力化を確認。これよりフェーズ2に移行する」


弾倉内の弾丸を全て叩き込んだ無月は傍らの使い魔を通じて紫と会話する。


『無月、6時方向から敵正反応よ。数は30』


「立ち直りが早いな・・・・・よほど優秀な奴が司令官にいるのか。紫さん、兵装の7番を」


『了解よ。これからは遠慮なく指示して頂戴』


"紅符「血之歩兵群(ブラッディーポーンズ)」"


全弾撃ち切ったKBP OSV-96をスキマにに収容した無月に紫が報告する。それを聞いた彼が紫に武器を要求すると紫はそれに答え、彼の手に新たな銃器を転送する。実は様々な"仕込み"をする合間に無月は紫に頼んで用意してもらった銃器を戦闘用途に応じて区分けし、素早く扱えるようにしてもらったのだ。これは紫の優れた頭脳と記憶力に着目した無月の作戦であり、それを聞いた瞬間、紫はこの己よりも若い青年の作戦立案能力に感心した。


さらに彼は封印を解いてもらったことで完全に自身の能力(ちから)をある程度理解し、それをも作戦に組み込んだ。発動したスペル(これは後々スペルカード勝負にも使うつもりで構成した)により、事前に仕込んでおいた無数の銀筒を破壊し、多数の人型が出現。周囲の兵士に形成した緋色の剣や槍、戦斧といった多種多様の武器で攻撃を開始する。


それを確認しつつ紫が無月の手に新たに"転送"した銃はUS.AS12のドラムマガジン装備したもの、20発のフルオート射撃が可能な散弾銃であった。そうとは知らずに走りながら射撃(恐らくは牽制射撃)している連中に向けて本来は不可能な二丁フルオートショットガンによる弾幕を展開する。


『次、4時方向から大型反応。恐らくは戦車』


「兵装の9番、その次に10番。残りを殲滅する」


『了解よ。私達の幻想郷に手を出したことを後悔させてあげましょう』


12ゲージの雨がもたらす結果を見届ける前に紫が自身の索敵範囲(皇帝より倍以上広いため初動を抑える事が可能)に侵入した敵に向き直ると、背中から翼を出す無月。上空に飛び上がった彼は足元が爆発して周囲一帯が紅蓮に包まれたのを視界の端に収めつつそ、れを引き起こした125mm砲を放った敵戦車"T-72"に両手に持ったパンツァーファウスト3を発射、トップアタックを受けて爆発した戦車には目を向けずに投げ捨てたパンツァーファウスト3の代わりに手にしたRPK軽機関銃(75連発ドラム型弾倉装備)を随伴歩兵に向けて連射する。


「残りの仕込みを起動。さらに連中の認識をずらしてくれ。兵装の6番、8番」


『了解。敵性反応、11時方向』


全弾撃ちきったRPKをスキマに落としつつ新たな銃器を受け取り(結果は紫が確認済み)、索敵担当(紫)の指示した方向に銃を向ける無月。そこで彼は顔を顰める。


「これを見よ!」


「死神め、死んだのではなく化け物の手先になっていたのか!!」


そこには十数名の"女子供"が立たされており、その背後には(恐らくは最後の)指揮官が銃を構えて立っていた。無月が顔を顰めたのはその外道さに、ではなく立たされていた人物に一部に見覚えのある人物が立っていたからである。


『(死神って何のこと?)』


「(俺に連中が付けた渾名らしい。いつの間にかそう呼ばれるようになっていたのさ)」


『(で?あの人質は?)』


「(民間人たちだ・・・・俺が兵士になってまで助けたかった人たちさ)」


『(ッ・・・・・外道ね。操られていたりすでに死んでいるってこともないし私"達"に任せて頂戴)』


口頭ではなく頭の中で妖術を使って会話する両名。紫も無月の心を踏みにじるような行いに、珍しく激怒していた。


「こいつらを死なせたくないなら今すぐ武装を解除」


「黙れ外道」


無言の無月を見て調子に乗った指揮官。しかしその背後にスキマが開かれる。中から現れた女性"八雲藍"は殺意と共に爪を振るって人質のそばにいた敵を切り裂くと、狼狽える残りに狐火を射出、敵を全て焼き尽くす。


「これで敵対者は私が組んだ式や貴方の仕込みで全て死んだようだな。後は"あれ"の封印と聞いてるが・・・・・というか"あれ"は生きているのか?私にはすでに肉塊にしか見えないんだが・・・・」


「念には念を入れ、というやつだ。封印は可能か?」


『問題ないわ。桜花や(しじま)も協力してくれるからね』


指揮官を全て焼き尽くした藍が無月に歩み寄ると最早原型を留めていない"皇帝"を見やる。無月も死んでればいいが、以前の経験から念のために封印してもらうことにする。


「警戒は怠らず監視していよう。どれくらいで準備できる?」


『およそ30分というところね。桜花と黙で別次元に能力を完全に封じた状態で飛ばすそうよ』


「了解した。人質になっていた人たちはあのゲートから送り返そう」


少し息を吐きだし、人質になっていた人々の元に歩み寄る無月。人質になっていた人々も歩み寄るのが自分たちの知る人物だとわかり、ほっとしたような表情になる。


「・・・・・一人妙に小奇麗なのがいるな・・・っ!?」


「ん・・・・?」


少し怪訝そうな声と驚いたような声。藍がそちらに目を向けると、一人の男にナイフを突き立てられた(様に見える)無月の姿が映ったのだった

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