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東方 朧雪華  作者: めーりん
過去とこれから×過去との決着
39/44

賢者の苦悩×紅き月の決意

‡‡‡‡


一瞬視界が暗くなり、次に視界が開けた時、無月は"妖怪の賢者"と呼ばれる大妖怪、八雲紫の前に居た。


「いきなり呼び出して申し訳ないわね。でも、事態は一刻の猶予もないの」


紫が本当に申し訳なさそうに目を伏せる。その表情から、無月は先程"楽園の最高裁判長"こと四季映姫・ヤマザナドゥと話していた事が現実になったのだと理解する。


「"奴ら"が来た、と言うことか?」


「ええ。数は一万と一人。私が迎撃に出たのだけれど、そいつの前では何故か能力が使えなくてね。この様よ」


無月の問いに、紫はやや悔しそうな声音で事実を述べる。


「・・・・"向こう"で出来なかった任務を完遂するときかな」


「私の話しを聞いてなかったの?"奴"の前では能力は・・・・!」


「俺は"向こう"ではこの身一つで戦場に居たんだ・・・・・。"向こう"での戦いに戻るだけだ」


無月の呟いた言葉に反論しようとする紫。しかしその途中で、彼女は自分の目の前にいる青年(出会った時はまだ幼さを感じさせた少年だった)の"向こう側"での立ち位置を思い出し、言葉を止める


「貴方・・・・いえ、無月・・・・。死ぬつもり?」


自身の作り出した空間の中、自信でも驚くほど震えるように紡ぎ出したその問い。その問いに、無月は鼻で笑うように返す。


「まさか。様々な人と約束した事が多い。それを破る訳にはいかないさ」


その言葉に、紫は少しホッとした。少なくとも彼は命を捨てるつもりはない、と理解したからだ。


「やつらは現実と幻想の境界を抜けただけよ。桜花の特殊結界もあるから、僅かでも猶予はある。だから私も一緒に紅魔館に行き、もう一度説明するわ。あのお嬢様も幻想郷のパワーバランスを担う一角だし、なにより"従者"を主の許可なしに勝手に借りるわけにはいかないわ」


(この場に彼女を知る人物が居れば驚くほど)珍しく真っ当な事を述べ、スキマを開く紫。


紫と無月はスキマを通り、紅魔館に移動するのだった。


‡‡‡‡


「つまり貴様は私の妹の従者を死地に向かわせると?ふざけているのかしら」


「彼自身は了承しているのだけれど?」


「はっ・・・・。ふざけるなよ八雲紫。本人が了承していようが"私達"は認めるわけには行かん。少なくとも私は"直接の"ではないにしろ部下を死地に向かわせ、自分は安全な場所で待つなど認めん」


紅魔館の主"レミリア・スカーレット"の執務室。そこで八雲紫と、その部屋の主であるレミリアは真正面から対立していた。


唐突な来客にもかかわらず、件の花騒ぎから帰還した十六夜咲夜は対応し、紅茶を淹れた。そしてその紅茶を手にレミリアが急な来訪(しかも自分の妹の従者と共に)の理由を質問し、それに紫が答えた瞬間、手にしていたその白磁のカップは持ち主の静かな怒りと共に発せられた莫大な妖気を受けて四散、そして彼女はそのまま殺意を込めた目で紫を睨みつけながら述べるのだった。


「大体だ・・・・貴様ご自慢の境界を操る能力、それで排除できないのか?」


「それが出来るならこうして彼の力に頼ろうとは思いませんわ。無月の話しと私の目で見た限り、敵の皇帝の能力は"他者の命を媒体に自信が把握した事象を自分の都合の良い事象に置き換える力を行使する"ようです・・・・・様々な制限はあるみたいですが。奴の力は言わば神の御技の再現。私の力では対処が利かないのです」


自分の感情が高ぶっていると理解しているのか、深く息を吐き出してから椅子に改めて深く腰掛けたレミリアが尋ねる。対する紫も、かなり悔しそうな声音で事実を述べる。


「はっ・・・・妖怪の賢者様が情けないね。能力が封じられるなら物理的な力で叩き潰せば良いじゃないか。奴らは幻想郷のルールに従うつもりは毛頭ないんだろう?」


「そうですわね。奴らは幻想郷のルールに従うつもりは毛頭ないみたいですわ。しかし、敵の大半は雑魚とは言え銃火器を持つ一万以上。しかも弾丸はかつて無月に埋まっていた妖怪殺しに特化したものです」


レミリアが吐き捨てるように案を出す。しかし紫も賢者と呼ばれるように、その頭脳を持って幾つもの案を出していたため、当然レミリアの考えは出しており、実際に超遠距離から攻撃を行っていた。



「奴らの射程外からの攻撃は?」


「その皇帝サマが、奴隷らしき者達を犠牲に、撃ち出したモノの事象を書き換えて兵士たちを守るのですよ。しかもその皇帝サマの背後にはご丁寧に"向こう側"への穴がありましてね。そこから奴隷を補充するみたいなのです。何よりも雑魚どもはいくら殺されようがその皇帝が残っていたら良い、と云うような教育をされているらしく、文字通りの肉壁を展開するのです。さらにはそいつら一人一人が何かしらの・・・・恐らくは皇帝の力でしょうが、補助を受けているような感じもしました」


かつては"外"に居たレミリアも銃火器の存在は知っていた。幻想郷に来る前は友人のパチュリーが、使い魔に持たせていたのを見たことはあるし、彼女自身も実際に手にして扱ったことがある。


だからこそその弱点は知っていた為一応、と言う形で問いかける。紫も既に試した事だったため、妖怪としても吐き気がする内容と共に答える



「穴を塞げないのか?」


「塞ぐことは自体は可能ですわ。ただしかなり複雑な術式である上に数式が変化しており、その計算のために私がその穴を塞ぐまでその穴に"触れ続けている"必要がある。敵がそれを許すとはとても思いません」



レミリアの問いかけに、力無く首を振る紫。本当は紫自身、彼に頼りたくはなかった。彼の過去(兵士としての実績)が原因で、彼が周囲に"人"として扱われず、結果として"道具"、または"化け物"扱いされたまま忘れられるのを良しとしなかった為、幻想郷に招き入れて彼に"人"としての生を楽しんでもらおうと思っていた。


だからこそ最初そいつ等が来たとき、文字通り全力で能力を行使し、消し去ろうとしたのだ。


「私も効率が良く、即効性の高い方法は全て試しました。しかしそれは全てその男に防がれたのです。彼の力を借りて武力でその男と周囲を消す、と言うのは正直に申しましても下策中の下策。・・・・しかしこれしかもう、手段が残っていないのです」


「そのままには、やはり出来ないのか」


「はい。"今は"魂魄桜花の結界が押しとどめていますが、無月から聞いたその男の能力から"侵攻"は時間の問題であり、その掲げる思想から考察するに、決して私達とは相容れないかと」


本当に悔しそうに語る紫。レミリアは目の前にいる賢者が、ありとあらゆる手段を持って、障害を排除しようと試みたことを理解した。だからこそ"レミリア・スカーレット"は深く息を吐き出すと、決意する。


「いいわ。ただし条件がある」


"彼"を


"赤羽無月"を


"今"


"この瞬間"


"部下"でもなく


"従者"でもなく


"大切な友"と認めたからこそ


「私も無月と共に戦わせてもらうわ」


彼女は"確固たる決意"と共に


戦う意思を告げるのだった

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