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東方 朧雪華  作者: めーりん
過去とこれから×過去との決着
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第三十二章 花咲き乱れ×風対風

―――幻想郷が蘇生した


冬の白色は春の日差しに彩られ、幻想郷は完全に生の色を取り戻していた


冬の間眠っていた色の力が目覚め、幻想郷を覆う


花と同時に妖精達も騒がしくなる


その異常な美しさの自然は、幻想郷に住む人々全てを驚かせた。



彼女たちはいち早くその異変(・・)に気が付いた



桜、向日葵、野菊、桔梗・・・・


まだ春だと言うのに、一年中全ての花々が同時に咲き出していたのだ


大多数の人々と全ての妖精は、自然からのプレゼントと受け取り、暫くその光景に浮かれていた


そのお祭り騒ぎに、霧の湖の近くに建つ赤い屋敷の執事は、念のためと様子見に行くことにする


そこで彼は過去との決着を付けることになるとは、まだ知らなかったのだった・・・・

‡‡‡‡


紅魔館 中庭


「これは・・・・」


その日、紅魔館の執事"赤羽無月"は地下図書館でそこの主"パチュリー・ノーレッジ"の指示の元、その使い魔である小悪魔二人(こぁとリトル)と共に蔵書の整理や手入れを行っていた。


そこに彼の主"フランドール・スカーレット"が現れ、とても嬉しそうに無月にこう告げたのだ。"庭に来て"と。


‡‡‡


先に行ってしまったフランを追いかけて庭に出た彼の眼に飛び込んできたのは、同僚であり友人でもある(ほん) 美鈴(めいりん)が管理している中庭の花畑を彩る様々な花と、そこで嬉しそうにはしゃぐ主の姿だった。花畑の傍らで美鈴も驚いているように立ちすくんでいるため、これが手の込んだ悪戯であるという可能性は完膚なきまでに消え去った。


「美鈴、これは一体?」


「あ、無月。それが分からないんですよ・・・・朝起きてみればご覧の有様でして」


無月の問いかけに困ったように美鈴が答える。どうやら管理人である美鈴ですら朝起きたらこのように花が咲き乱れている事態に、呆然としていたらしい。


「関係しているかは不明ですが、幽霊を時折見かけました。あと霊夢さんや魔理沙さんが無縁塚の方に飛んでいくのが見えましたね。咲夜さんも様子を見に行ったようです」


「俺も支度して様子見に行ってみるか・・・・・」


美鈴から話を聞き、無月はフランに一言声をかけると一度館に戻る。すると無月の部屋の前でレミリアと出会う。


「無月、貴方も異変の様子見かしら」


「ええ・・・。何か不味い事でも?」


レミリアの問いかけに頷く無月。するとレミリアが少し難しい考えをするような表情になる。


「少し違うわね。・・・・その、かなり不安定な運命が視えたのよ・・・・。ただ、不安定すぎて視る事ができた内容がかなり断片的でね。うまく言葉にできないけど”何かが起こる”これはほぼ間違いないわ」


「分かりました・・・・。まあ、まずは目下の問題から片づけます」


レミリアが少々自信がないような口調で話す。無月もレミリアの言葉を心の片隅に置いておくと伝えると、武器を持って外に出るのだった。


‡‡‡


花が咲き乱れる原因を探していた無月。しかし無縁塚の場所が分からない彼は当てもなく辺りを探しつつ歩き回っていた。


「あややや!!無月さんじゃないですか!!」


そんな彼の元にここ最近は最早馴染みとなりつつ声と共に文が降りてくる。


「もしかして無月さんもこの花騒ぎの様子を見に来たんですか?」


「・・・・ああ」

どこか憎めない笑みを浮かべ、近寄った文が問いかける。


無月は若干警戒をしながらも、それを気取られないように返事を返す。


「無縁塚までの道、私がお教えしましょうか?」


「ただし、私と手合わせしてくれたら、か?」


笑みを浮かべたままの文だったが、自分の言葉を引き継ぐように述べられた無月の言葉に、笑みが凍る。


「何故?と問われるだろうから先に答えておく。まあ、理由は簡単だ。上手く誤魔化してはいるが、その葉団扇をすぐに持てる位置から手を動かしていないからだ」


「あはは・・・・参りましたね。随分と"猫"を被っていたつもりだったんですが」


追撃をするように述べられた理由に、文は降参するように無月から離れる。


「さて、と。改めて言わせてもらいましょうか。道を知りたいなら私を倒してみてください!」


「・・・・そうさせてもらおう」


文が風を纏いながら空に浮かぶと同時に右手に持った葉団扇を振るう。


小手調べと言わんばかりの弾幕は、無月が左手で抜いたリヴォルヴァー"スコル"から放たれた二発の散弾に相殺される。


「(なるほど、かなり強いですね)ふむ、もう少し速度を上げてみましょうか」


(様子見とはいえ)それなりの密度と速度で放った弾幕を簡単に相殺された事を見て威力より速度を重視する事にした文は宣言通り、無月の周囲を高速で飛びつつ弾幕を放つ。


「(これも防ぐ・・・・補佐役とはいえ、流石は門番ですねぇ)」


その放たれた弾幕を右手に持ったスルトルを使って舞うように叩き落としてゆく無月。文はその様子を見て、少し感心する。


「偽符「ミスディレクション」」


対する無月は未だに様子見としか思えない弾幕を張る文を驚かそうと、慎重に霊力を練ってゆくと、一枚のスペルを宣言する。


発動したスペルには魔力や妖力は使われていない。理由としては文は"普段"の弾幕勝負で無月が魔力を使う弾幕を目にしているからであり、妖力は文が最も慣れ親しんでいる力だと判断したからである。


‡‡‡


「あや?スペルカードも不発だったみたいですし、無月さんってばもしかして防戦一方ですか~?あ~や~……少し予想外ですよぅ」


弾幕勝負が始まって約15分程が経過したが、先ほどから自分が放つ通常弾幕を右手の刀で防ぐばかりの無月に、文は拍子抜け、と言うように挑発する。


"あの"三日おきの宴会が収束したと宣言がなされた前日、一瞬だけ感じ取れた力。自分の"勘"がその正体が眼前の青年だと思っていただけに、自分がスペルカードを使ってすらいない今の状況は文自身にとって不完全燃焼だった。


「むー……どうやら私の勘違いだったんですかねぇ……?私に"一撃"でも入れられたら無月の勝ちで良いですよぅ?」


普段から力を抑えて勝負をしてきた文は"少しでも"楽しくなればと思い、そんな提案をする。


「ん?それで良いのか?」


「……あや?」


その提案をした直後、何故か自身の真後ろから聞こえた声。文はポカンとした表情てゆっくりと後ろを向く。


自分の背後にはいつの間にか無月がおり、右手にはリヴォルヴァー"スコル"が握られている。


「あや・・・・?」


「種明かしはなし、だ」

ポカンとしたままの文に、ニヤリと笑みを向けるとスコルのトリガーを引く無月。


撃鉄が落ち、持ち主の意思通りに放たれた弾丸は、ポカンとしたままの文の額に若干痛そうな音と共に着弾するのだった。


‡‡‡


「あやー・・・・完敗ですよ。まさかあんなに容易く背後を取られた上に実力が全く分からなかっただなんて」


「まあ、咲夜のとはスペル名自体は同じだが、内容は違っていてな。何度か経験した魔理沙曰く"意地の悪い初見殺し"なスペルらしいからな。それと、だ・・・・"実力"を隠すのは当然だろう?」


額に赤い跡を残した文が苦笑する。そんな彼女のボヤキを一蹴し、スコルに弾丸を装填する無月。


どうやら文は既にこの騒ぎの原因も知っているらしいが、彼女は"その説明も含めて無月さんもあの方には一度会ってみるべきですよ"という言葉と共に、その人物に会うことのできる、無縁塚入口までの案内を買って出た。


「その人物に会うにあたっての注意とかはあるか?」


「あー・・・とにかく嘘は厳禁ですね。あの方は閻魔様ですから。後は一般的な常識が備わっていれば口うるさくは言われないかと」

無月の問いに、普通なら無視できない内容を含めて答える文。無月にとっては"閻魔様"とは所謂(いわゆる)"地獄の裁判長"という知識しかないため、何を今更?と首を傾げる。


‡‡‡


決着が着き、他愛もない話しをしながら歩いていた二人だったが、とある地点で文が足を止める。


「私の案内は此処までです。この先に"閻魔様"はいらっしゃいますよ」


「・・・・そうか」


文の言葉に小さく頷く無月。そんな彼を見ていた文は、その足元に微かに風が集まっている事に気が付く。


それは天狗の中でも特に風に慣れ親しんでいる文だからこそ気がつけた事実。そして文はそんな無月を見送りつつ、小さな目標を立てた。


「(いずれ"私"の風を貴方に必ず届けて見せます。覚悟しておいてくださいね)」


決意を固めた文は小さく笑みを浮かべると、地を蹴って空に舞い上がる。そして自身の住まいに向けて飛翔するのであった。

どうも 遅筆作者事めーりんです


やっと来ました東方花映塚こと"六十年周期の大結界異変"の発生です


この異変は本作"東方朧雪華"の中でも重要な位置付けの異変となっています


そこで現在(2014年5月1日)、2014年4月29日の活動報告にてアンケートを実施しております。

このアンケートの結果次第で初期のプロットの流れか、プランBの流れか(プランBはジョークです)になります。

読者の皆様にはお手数をおかけしますが、是非ともアンケートにお答えください

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