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東方 朧雪華  作者: めーりん
過去とこれから×過去との決着
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第三十一章 紅魔館の日常×嵐の前の静けさ

今回は平和な日常をお送りします

‡‡‡



永夜異変後の宴会から約一ヶ月が経過

紅魔館 門前


雲一つない晴天の空、その空を無数の流れ星が飛翔する。


「(畜生、全然当たんねえぜ・・・・!!だったら・・・・!!)」



普通の魔法使い"霧雨魔理沙"は普段の倍近い魔力を使って発動したスペルが殆ど意味を成さないことに歯噛みしながらも、次の手を文字通り"撃つ"為に自身の武器に充填してゆく。


無数の流れ星の合間を縫うように飛翔しつつ、回避しきれない流れ星を左手の武器で叩き落としているのは執事服を身に纏う長髪の男性。


「(ッ・・・・・八卦路との組み合わせで密度が増してるのか・・・・!)」


紅魔館の執事たる青年"赤羽無月"は精度と密度が以前より高くなっている彼女のスペル、魔符「スターダストレヴァリエ」と八卦炉から放たれる星の弾幕を以前よりも丁寧に捌いてゆく。魔理紗の思いとは裏腹に、無月は追いつめられつつあった。


「(八卦炉に魔力を充填しているのか・・・・。勝負を急ぎすぎたな、魔理沙)」


八卦炉から放たれる弾膜の密度が若干薄くなり、代わりにスペルの弾幕が目立つようになったのを見て魔理沙の次の手を予測する無月。


「今回は私の勝ちだぜ無月!恋符「マスタースパーク」!!」


「詰めを誤ったな魔理沙・・・・鏡符「ペンタプリズム二重奏」」


魔理紗がスターダストレヴァリエの効果時間が切れると同時に、自信満々の笑みと共に八卦炉を突き出してスペルを宣言する。対して無月は両手を突き出しつつスペルを宣言。


次の瞬間、()魔法である魔理沙のマスタースパークは、唖然とした表情の術者本人にとある軌道を描きながら跳ね返るのだった。


‡‡‡


紅魔館 地下図書館


「だー・・・・今回は完敗だぜちくしょー」


「珍しいわね魔理紗。貴女が"完敗"を認めるだなんて」


地下図書館にどこか悔しげな声が響く。その声の主"霧雨魔理沙"は若干ズタボロの状態で椅子にもたれかかる。魔理沙は対面に座る魔女”パチュリー・ノーレッジ”に顔を向けると、少し不満げに口を開く。


「無月のやつにマスタースパークを破られたんだよ・・・・ちくしょー・・・・私があいつに勝てる数少ない手なのによー」


「馬鹿正直にそれを決め手にしてばかりいるなら仕方ないわよ。誰だって対策を練るのは当然だと思うわよ?」


魔理沙の愚痴をバッサリと切り捨てるパチュリー。暫く上を向き”あー”だとか”うー”とか唸っていたが、パチュリーの言葉に納得がいったのか、手探りで帽子を手繰り寄せると顔を覆う。


「・・・・無月は貴女のことを少し照れくさそうに、あの辻斬り侍と同じ"ライバル"であり"大切な友人"だって言っていたわ。・・・・頑張りなさいよ」


「そっか・・・・妖夢と同じ、ライバル、か・・・・負けてらんねーよな」


少し呆れたようにパチュリーが発破をかける。無月の意外な本音を知ることができた魔理沙は、決意を固めた表情でパチュリーに向き直る。


「とりあえず無月が使ったスペル対策からしねーとな!パチュリー、手伝ってくれよ!」


「やれやれ、私もそこまで暇じゃないのだけれど」


笑顔で魔導書(グリモワ)を手にする魔理沙に、少し笑みを浮かべてパチュリーは別の魔導書を手に取る。


無月の戦い方は、紅魔館の住人の中でもスペルの種類が豊富なパチュリーにとっても参考になることが多い。この、弾幕勝負のたびに見たスペルの傾向など、攻略法をメモする友人と話していれば、恐らくは自分の為になると考え、パチュリーは魔理沙から話しを聞くのだった。


‡‡‡


三日おきの宴会が終結した辺りから魔理沙はパチュリーの友人として紅魔館に入ることを許されていた。なのにも関わらず彼女は毎回の様に無月に勝負を(時には奇襲という形をとりながら)挑み、勝敗に関係なく図書館に向かう、というのが紅魔館の日常となっていた。


そんな関係からか、無月にとって魔理沙とは友人であり、よきライバルの様な存在であった。


「ところで無月、あの時のスペルについて教えてはくれないのですか?」


「ん?まあ、別に構わんよ」


そんなお約束となった勝負で自分の技を受けることになり、気絶した魔理沙を担いで図書館から戻った無月に、美鈴が問いかける。


「美鈴は時折紅魔館にくるブン屋を覚えているか?」


無月の問いかけに美鈴は無月が言う"ブン屋"が誰なのか、即座に思い浮かべる事ができた。


「ああ、烏天狗の"射命丸(しゃめいまる)(あや)"さんですね」


美鈴が無月が言いたい人物を思い浮かべる。初めて無月が彼女に出会ったのは2004年の6月、紅魔館に"赤羽無月"が来た日を誕生日とし、パーティーが行われた時であった。


その時に"何か"を感じ取ったらしい彼女がパーティー翌日に訪れ、無月に妙に馴れ馴れしくインタビューをして来たのが、彼"赤羽 無月"と"射命丸 文"が出会った経緯である。


それ以来彼女は時折自作の新聞"文々。新聞"をこの紅魔館にわざわざ届けにくるようになった。


どうやらレミリアに話しを着けていたらしく、その旨を伝えられ、彼女に応対するのは門番である美鈴や、その補佐役である無月であった。


「そう。射命丸の「あややや!!私のことは"(あや)"と呼んでくださいと言っているじゃないですか!」・・・・」


無月の言葉を遮り、無月の前に勢いよく着地する一人の女性。黒のフリルが付いたスカートと白のフォーマルな長袖シャツを身に纏う彼女こそ無月達が話をしていた"射命丸 文"その人であった。


「ところで何の話しをしていたのです?丁度私の名前が聞こえたので来てみたのですが」


「いや、魔理沙のマスタースパークを破ったスペルを作るきっかけがあ―・・・・文のカメラだった、と言うだけだ」


小さく首を傾げる文に対し、無月が説明する。途中、無月が文を名字の方で呼ぼうとしたと思ったのか、文が無月に視線を向け、その視線を受けて無月は彼女のことを名前で呼ぶ。


どういう事か、彼女は名前で呼ばれる事を好み、無月が名字で呼ぼうとする度に注意をしてくる。無月が名字で呼ぶか名前で呼ぶかの区別は本人もあまり意識していない事を文はそれとなく理解している為、そこまで強くは注意せず、軽く視線を向ける程度だが、無月はその都度ちゃんと訂正している。


「ペンタプリズムっていうのは一眼レフカメラのファインダーに使われている五角柱のプリズムのことさ。これは光を内部で二回反射する特性を持つ」


「二重奏、ということはそのプリズムが二つある状態。で、魔理沙さんのマスタースパークは光魔法・・・・どおりで魔理沙さんの元に跳ね返ったんですね」


「あやー・・・・無月さんって結構博識ですねー」


無月が地面に簡易の図を描いて説明する。それを見た美鈴と文は各々納得したようにうなずく。


「あ、これが今回の文々。新聞です。中々の出来だと思うんでぜひ読んでくださいね!!では!!」


「・・・・・元気だな」


「それが彼女のいいところだと思いますよ?」


思い出したように肩から下げていたバックから新聞を取り出すと、無月に手渡す文。無月が受け取ったのを確認した彼女は、空に飛びあがると、一気に加速し二人の前から消えるように去って行った。


無月は嵐のように去って行った文を見送ると、美鈴と会話を少し交わすと、美鈴と別れ、館に入ってゆく。


「(この平和がいつまでも続きますように・・・・)」


空を見上げた彼女の眼には普段通りの平和な幻想郷の空が映っており、美鈴はいつまでもこの平和が続くようにとただただ願うのであった。

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