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東方 朧雪華  作者: めーりん
過去とこれから×過去との決着
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第二十八章  屋台での一幕×平和な日々

‡‡‡


非常に濃い一日となった休暇初日、博麗霊那の家(場所はスキマでないと基本的に行けない)の一室をあてがわれた無月と咲夜。


休暇中は料理位はやらせて欲しいと申し出た二人の料理に、霊那が何故か感動したり(後に霊那が料理が苦手であることが発覚)、家の裏側に露天風呂があったり("流石スキマ"と無理やり納得した)、二日目早朝に何故か無月の寝泊まりしている部屋に寝間着姿の妖夢が荷物と一緒に送り込まれたり(後に犯人が桜花だと発覚)と紅魔館で過ごすとき以上にハプニングや騒ぎが起きていた。


そしてこの日はミスティアの屋台に食事に行くことになった三人。玄関には霊那が立ち、術式を作動させる。


「ここまで楽しい日々は本当に久しぶりです」


「・・・・いいの?あんなこと言ってるけど」


「・・・・本人がいいならいいと思う」


「私も良いんですか?」


落下する直前に呟く霊那。彼女が作動させた移動用の通路に落下する三人。無月も咲夜も、そして何故か妖夢も落下に慣れてしまったのか、気にした様子もなく話し合う。


無月の手には、三日前にミスティアから渡されたチラシがあり、通路の出口から光が見えてくると、念のため三人は注意をする。


‡‡‡


その日、永遠亭の住人”鈴仙・優曇華院・イナバ”は珍しく師匠である八意永琳に外で食事をするよう勧められ、丁度近くでミスティア・ローレライが屋台を開くという情報を得たため、そこに向かっていた。


滅多にない師匠からの勧めに、鈴仙は期待半分不安半分といった具合でミスティアの屋台があるであろう場所に向かう。


「・・・・反応?」


ふと立ち止まると周囲を見回す鈴仙。自分の能力を応用したレーダーに何か反応があるため、一応警戒しておく。


「あ」


「え」


立ち止まった鈴仙は、自分が何かの影に入ったことに気が付き、確認の為に頭上を見上げる。そこで鈴仙が見たのは、妙な空間のねじれ、そこから吐き出された無月の顔。そこまで確認したところで鈴仙は頭に鈍痛を感じ、そこで意識をトばすのだった。


‡‡‡


「ん………痛ッ…(誰かに抱えられている?)」


「まだじっとしてなさい」


誰かに抱えられているのか、体に伝わるゆれに、目を覚ましながらも体感時間としては大体10分くらい気絶していたのだと判断した鈴仙は、若干ぼんやりしたまま抱えられている体制から離れようとする。


しかし頭に響く鈍痛に急速に頭が覚醒し、痛みに顔をしかめると、そんな彼女に気付いたらしい咲夜が話しかける。そこで鈴仙は一体誰が自分を抱えているのかが疑問として浮かんでくる。


「目が覚めたか?」


「大丈夫ですか?」


「……あ…(確か私はいきなり落下してきた無月さんと頭をぶつけて気絶して……って、え!?なんで私を無月さんが抱きかかえてるの!?)」


そんな彼女をのぞき込むように妖夢が、鈴仙を抱きかかえたまま無月が話しかける。


そこで鈴仙はまだ痛む頭の中で状況を整理し、自分の状況を思い出してパニックしてゆく。


「簡易的にだが看させてもらった。若干脳震盪になっている可能性がある。暫くは動くな」


「あ…う……」


冷静な無月の言葉はパニックになっていた鈴仙を落ち着かせるには十分であり、鈴仙は(恥ずかしさもあるのだろうが)大人しくなる。


「おおかたミスティアの屋台に行くんだろう?だったら目的地は同じなんだ、このまま運ばせてくれ」


「ぇと……お願い…します」


本当に申し訳なさそうな無月の声音に、恥ずかしそうに鈴仙は頷く。


そんな二人を傍目に、咲夜と妖夢は何故無月だけ逆さまに通路を出てしまったのかを論議したり、無月や咲夜の強さの秘訣を妖夢が問うたりしていた


‡‡‡


「あ、いらっしゃい。おにーさん」


「ん。4人だが大丈夫か?」


「へーきだよ~」


屋台に到着した4人(赤面している鈴仙は未だに無月に抱きかかえられたまま)を迎えたミスティア。無月の問いかけに笑顔で答えると、慣れた手つきで4人分の椅子を準備する。


「ぇと…その…ありがとう」


「気にするな」


鈴仙を椅子に座らせると、顔を真っ赤にしたまま消え入りそうな声で鈴仙が礼をいう。


(理由はどうあれ)自分が原因で気絶させてしまった事に申し訳なく感じている無月は軽く笑みを浮かべるとミスティアの用意してくれた椅子に座る。


「(……この感情は、何なのよ…)」


「(この感情…まさか……)」


そんな様子を見ていた咲夜は自分の中に生まれた感情に戸惑い、無月の顔が直視できずに下を向いたままの鈴仙は自分の感情を多角的に判断し、それを必死に否定しようとする。


「ご一緒してもいいかな?」


そんな無月達に朗らかに話しかける女性が現れる。声の方を向くと、そこには八雲紫の式"八雲藍"が居た。


「俺は構わない」


「私も構いませんよ」


「私も同じく」


無月と妖夢はミスティアから手渡されたお品書きを片手に藍に向き直ると、各々小さく笑みを浮かべる。咲夜は藍にお品書きを手渡すと、ミスティアが椅子を持ってくる。


鈴仙は少し警戒と見慣れない人物に、思わず無月の隣に寄り添うように隠れる。


「休暇はどうかな?」


「まだ三日目だ…実感が湧かないな」


「私もです。無月さんや咲夜さんと手合わせをするくらいしか思いつかなくて…」


「私も同じですわね。こう…どう過ごすべきか分からないというか」


咲夜からお品書きを受け取った藍が椅子に座りながら問いかける。


無月が若干苦笑しながら椅子に腰掛けてから答えると、その隣に自然と妖夢が座る。


妖夢と藍の間に咲夜が座りながら答えると、藍は顎に手を当てながら苦笑する。


「やれやれ……私が言えた義理ではないが、三人とも一種の職業病だと思えるよ」


藍の言葉に思い当たる節があるのか、苦笑しかできない三人。そこにミスティアが声をかける。


「ご注文は?結構旬の食べ物が手に入ってるよ~」


笑顔のミスティアに促されて御品書きを見て注文してゆく五人。当然のようにお酒も頼んでいくが、これが後に悲劇を起こすことはこの時は誰も予想だにしていなかった。


‡‡‡


ささやかな飲み会が始まって一時間程度が経過


「・・・・・」


「・・・・あはは・・・」


頭を抱える無月と困ったような笑みを浮かべるミスティア。屋台に備えてあるカウンターに腰掛ける二人の前では、目が妙に据わった鈴仙、咲夜、妖夢の三人が睨みあっており、無月が常識人だと判断していた藍に至っては無月の隣で酒を片手に先ほどから愚痴をこぼしている。


「この三人がここまで酒癖が悪かったとは・・・・」


「結構強いお酒だったからねぇ・・・・でもこれは私も予想外だよ」


額に手を当てて肩を落とす無月。ミスティアもこれは予想外だったのか苦笑するしかなかった。


ことの発端はささやかな飲み会が始まって30分余りが経過したときだった。アルコールが程良く回ったのか、頬が少し赤い妖夢が(日頃のストレスもあったのだろうが)アルコール度数の高いお酒が入ったコップ(竹を加工した物)を一気に飲み干し、鈴仙を挑発した。


その挑発に酔いが少し回っていた鈴仙が乗り、その酔った鈴仙が咲夜を挑発してしまい、咲夜も普段とは違い酔いが回り始めていたことも手伝ってか挑発に乗ってしまい三人はなし崩しに飲み比べを開始。


止めようとした藍の口に目の据わった妖夢が一升瓶を突っ込んだため、藍もあえなく撃沈。無月とミスティアは被害にあってはたまらないとばかりに立ち上がって屋台から離れた三人に関わらないようにする。


「・・・・あの三人は何を言い争ってるんだか・・・」


「最初は愚痴だったけど・・・なんか今はおにーさんの事で言い争ってるみたいだよ?」


呆れたように徳利から御猪口に酒を注ぎながら無月が呆れる。ミスティアが無月に聞こえてくる内容を教えると、無月はますます巻き込まれないようにと三人から目を逸らす。


「それにしてもおにーさん、結構イケる口だねぇ・・・」


「兵士だったころに散々飲まされたんだよ・・・・」


ミスティアが少し感心したように無月から頼まれたヤツメウナギを焼きながら語りかける。無月は少し寂しそうな笑みを浮かべるが、直ぐにとある会話を思い出し、苦笑しながら答える。


「兵士って・・・そういえばおにーさんは外来人ってやつだっけか」


「まあ、な・・・。隙間妖怪に問答無用で幻想郷(ここ)に連れてこられたんだよ」


他愛もない会話を続ける無月とミスティア。いつの間にか妖夢たち三人は完全に酔いつぶれたのか仲良く寄り添うように眠っていた。


「やれやれ・・・・あの咲夜までがこう酔っぱらうなんて予想外だ・・・。なに飲んでたんだ?」


「ん~?最初に飲んでたのは鬼殺しってお酒だったんだけどねぇ・・・・最後に飲んでたのは赤兎馬っていう芋で作ったお酒だよ」


無月が呆れたように三人にミスティアから受け取った毛布を掛ける。無月の疑問にミスティアも苦笑しながら答え、その告げられた種類に無月は深く深くため息をつくしかなかった。


いつの間にか藍も熟睡していたので彼女にも毛布を掛けると、無月は月夜を見上げながら小さく御猪口を掲げながら呟く。


「平和な日々に・・・」


無月の呟きを聞くことができたのは、彼に焼きあがったヤツメウナギの串焼きを手渡したミスティアと、空に浮かぶ月だけだった。


こうしてある意味波乱に満ちた飲み会は静かに幕を下ろすこととなる。



‡‡‡


おまけ


「ところでこの三人どうするの?」


「咲夜と妖夢は一応休暇場所が同じだから何とかできる。鈴仙は俺が運ぶからその間二人を頼んだ」


「まかせてよおにーさん」


このあと永遠亭に鈴仙を運んだ無月が彼女の師である八意永琳にとんでもない頼みをされるのは内緒。そして熟睡している鈴仙にとっての受難(?)は続く

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