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東方 朧雪華  作者: めーりん
過去とこれから×過去との決着
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第二十七章 宵闇の妖怪"ルーミア"×語られない大異変"闇夜(あんや)異変"

‡‡‡


首を傾げていた無月と咲夜を見据え、霊那はまず確認するように問いかける。


「お二人は"ルーミア"という妖怪とは多少は認識がありますよね?」


「ルーミアって・・・・」


「"あの"ルーミア・・・・ですよね?宵闇の妖怪でいつも目的を持たずにふらふらしてる」


問われた内容に思わず顔を見合わせ、聞き間違えではないことを確認するように聞き返す二人。


「はい。宵闇の妖怪ことルーミアの髪にある赤いリボン。それは封印のお札であり"取りたくても取れない"と幻想郷縁起には記されている筈です・・・いえ、紫様が"そう編纂するように"指示したのです。まあ暫くしたら"彼女"や私のことも編纂させると言っていましたが」


頷きながら言葉を紡ぐ霊那。その内容は無月達にとって衝撃的な内容であった。


‡‡‡


黒玉が淹れなおしたお茶を一口飲むと、霊那は思い出すように口を開く。


「そもそもルーミアはこの日本の妖怪ではありません・・・桜花様と共に日本に渡ってきた妖怪なのです」


「まあ、名前からして予想は出来ていたわね。・・・・そんなに長生きだったのは予想外だったけど」


「普段の立ち振る舞いからは想像もできないな」


大前提として話された内容に、少し苦笑する咲夜。無月も"普段"のルーミアを知っているだけに、少し驚いている。


「ルーミアの頭のリボンは厳密に言えば封印ではなく、ルーミア本人が自分自身の力を制御するために私に自ら頼んで作った枷なんです」


所謂重りの様な物ですね、と語る霊那。その言葉では上手く想像が出来ないのか、首を傾げるしか出来ない無月と咲夜。


「私が初めてルーミアに出会ったのは、桜花様に出会った時でした。その時は桜花様がルーミア本人を外に出さないように封印するしかなかった為、その時出会ったのは所謂分体でしたが、その分体ですら当時未熟だった私ですら感じ取れるほどの妖気を持っていました」


「・・・想像もつかないな」


「ええ。ルーミアといえば妖怪としては強くもなければ弱くもない程度の力しかないと思っていたもの」


霊那の言葉に絶句する二人。分体からすら強力な妖力を持たせることが出来るルーミアの力。では本人の力はどれだけあるのか、想像がつかない。


「桜花様からは、本体は魔界に封じたこと、分体はルーミアが自分の力の一端を使って作り出したルーミアの"目"の役割を持っていること、分体は自分が見張ることを教えていただきました」


「魔界・・・ねぇ・・・」


「確かアリスさんがそこ出身だといっていたな」


「ルーミアの分体が暴走したのは私が二回目の博麗の巫女として活動していた時、丁度冥界の拡張が終わった頃の出来事でした。大体1988年頃だったと思います」


そこで霊那は一度言葉を区切る。そして右手だけで小さく合図を出すと、黒玉と白玉の両名が霊那の隣に歩いてくる。


「これからあなた方に当時の記憶をお見せします。桜花様と異なり、私の目線ではなく神玉の視点となるので見やすいかと思います」


「神玉というのは最初見た白黒の陰陽球か」


「そのお二人が、その神玉だと?」


「はい。黒玉も白玉も私の式で、私が初めて作った陰陽球の補佐として組み込んだんです。ですので当時のこともしっかりと記録してくれています」


霊那の説明に、納得出来たのか、一瞬顔を見合わせると、頷く二人。霊那が小さく頷くと黒玉と白玉の二人が無月と咲夜の手を握る。そこで無月と咲夜の意識は途切れる事となった。


‡‡‡


1988年 11月20日 22:37 博麗神社


その夜、新月でもないのに幻想郷は唐突に闇に包まれた。その異変の犯人に最初に気がついたのは"先代"の庭師である魂魄妖忌が突然幽居したため、まだ幼い彼の孫娘"魂魄妖夢"がある程度力をつけるまで暫定的に庭師役を務めていた魂魄桜花と、700以上生きている幻想郷の住人は、時に畏怖の念を持って接することもある博麗神社の巫女"博麗霊那"だった。


「この気配・・・・まさか・・・!!」


(あるじ)。桜花様が見えました」


その日の用事を済ませ、寝巻きに着替えた瞬間感じ取った濃厚なまでの妖気に、霊那は急いで巫女服に着替えなおす。着替え終わった頃、黒玉が桜花の来訪を告げる。


「桜花様」


「状況は最悪だ。・・・ルーミアの分体が制御を失った。これはルーミア本人からの情報だ」


言葉少なく準備を進める二人。黒玉と白玉も霊那に手を貸しており、神社の境内に複雑な陣が描かれてゆく。


「・・・この力を解放するのは約2000年ぶりだぜ・・・」


「桜花様。ルーミアの正体とはいったい・・・」


「"外"の世界でかつて神の子と呼ばれた男が居た。そいつが直接名を与えたのがルーミアだ」


ぼやきながら陣内で印を組む桜花。そんな桜花に霊那が問いかける。桜花の答えにあまり実感が沸かない霊那だったが、桜花の表情からかなり状況が悪いと理解する。


「紫には結界の維持を頼んだ。正直暴走した分体と紫の能力は相性が悪すぎるからな」


「私はどうすれば?」


「分体の滅殺の許可を本人から得たよ。今後は能力の制御もできる本人が表に出るそうだ」


淡々と呪を紡ぎながら答えてゆく桜花。呪が進むにつれて桜花の発する気が静まってゆく。


「さて・・・・構えろ霊那。・・・・・来るぞ」


「ッ・・・・」


見た目の変化はないが、その身から発せられる重圧が増した桜花が右手に大弓を出現させ、神社の入り口に向けて構える。霊那もお札を構えると、接近してくる禍々しいまでの妖気に息を飲む。


「よう・・・・随分成長したみたいじゃねーか」


「・・・・」


大弓の弦を引き絞りながら桜花が"現れた人物"に笑いかける。現れた人物は、見た目は18歳位の女性。右手には幅の広い、十字架のような文様が描かれている漆黒の大剣を携えており、自身の周囲には闇のような色の球体が浮遊している。髪の毛の色は金色、背中からは大剣と同じ漆黒の翼が生えており、瞳の色だけがルーミア本人と異なり翡翠と金色のオッドアイ。


「ま、ルーミア本人も懸念してた事だ・・・・何も対策をしてなかったと思ったら大間違いだぜ?」


「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


「桜花様!!」


ニヤリと挑発するようにルーミア(分体)に話しかける桜花。その言葉を挑戦と受け取ったのか、分体の姿がその場から掻き消え、桜花の頭上に出現する。霊那は慌ててお札を投擲しようとしたが、その前に桜花が動く。


「やはり本人と比べたら雑魚同然だな」


「がぁ!?」


一瞬で桜花の姿が掻き消え、分体の背後に出現。その無防備な背中に魔力で形成した矢を30発以上一気に叩き込む。しかし分体の背中に黒い靄のようなものが出現すると、放たれた矢の大半を飲み込む。


「やはりこれだけは厄介極まりねぇな・・・霊那、作戦変更だ。ルーミアがくるまでこの神社から出さずに時間稼ぎに徹すんぞ」


「はい」


舌打ちしながらも攻撃の手を緩めることなくその場に分体を張り付けるように攻撃を続ける桜花。霊那も桜花の作戦を信じ、移動しながらお札を投げまくる。


‡‡‡


一時間近く経過して最初に大きな動きを見せたのは分体だった。桜花と霊那の攻撃を鬱陶しく思ったのか、自身の周りに闇を集めて自分の姿を見せないようにする。


「・・・・何か大技でも出すのかねぇ・・・霊那、警戒は厳に」


「はい」


一度攻撃の手を休め、慎重に様子を伺う二人。分体は中の見えない黒いドームのような中から動いている様子はないが、どのような攻撃をするか検討も付かなかったため、周囲の警戒を怠らない。


「桜花、霊那後ろ…!」


「ちぃっ…!」


「くっ…!」


静寂を打ち破る一人の声。半ば条件反射の如く背後から襲い来る漆黒の槍を桜花は右手で張った結界で、霊那はお札を利用した盾で受け流す。


そしてその二人の頭上から大剣を振り下ろそうとしていた分体は真横から突進してきた影に弾き飛ばされていた。


「間に合ったわね」


「ルーミア…遅いぜ」


「ルーミア様、こうして直接話すのは初めてですね」


油断なく二人の間に着地する一人の女性。その金髪は腰の辺りまであり、女性としての魅力を存分に感じられるその人物に桜花は皮肉っぽい笑みを浮かべ、霊那は微笑みかける。


「悪かったわね。狙った箇所に道を開けなかったのよ…積もる話しはあるけど、まずはアレを消してからね」


「だな」


「そうですね」


右手に保持した漆黒の大剣"ダインスレイヴ"を構える女性"ルーミア"。桜花は弦を引き絞り、霊那は右手の五指にお札を挟み、左手の五指には真紅の長針を挟むと、分体に目を向ける。


「殺す…殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスゥゥゥ!!!」


「なに…っ!?」


「嘘…!」


膨れ上がった殺気と妖力が弾けると共に無数の大剣が"壁"の如く人里に向かって飛翔する。大慌てで攻撃を桜花とルーミアが迎撃する。しかし時間にしてみれば一秒に満たない時ではあるが、分体から僅かに意識を外してしまう。


そんな桜花とルーミアを守るように一瞬で防御結界を張った霊那ではあったが、右手のお札を媒体に使った為、刹那の時とはいえ自分のいる左腕側を張り終わるのが遅れてしまい、その結果として左腕は飛翔してきた漆黒の大剣が肩から抉ってゆき、結界の中は霊那の血で染まった。


「っ…なろ……!!」


「この……っ!!」


醜悪な笑みを浮かべた分体に向けて先程までの攻撃が生ぬるく感じられる質と量の魔力矢を、霊那の結界から飛び出た桜花が放ち、同時に飛び出したルーミアが桜花の矢を縫うように飛翔し、残像を残しながら分体に向かってゆく


「逃がしません……博麗奥義……夢想封印・餓狼…!!」


桜花の魔力矢を全身に受け、ルーミアの無慈悲な斬撃によって血こそ出なかったが、ど派手に吹き飛ぶ分体。


そこに霊那が右腕のみで放った博麗の秘術が発動。深紅の狼の頭の形を成した霊力がルーミアの分体に突進、最初に桜花が張り巡らせた陣に分体を叩きつけるように頭から飲み込んだ。


「桜花、今のは…」


「霊那…!!」


説明を求めるルーミアを半ば無視するように桜花が崩れかけそうになった霊那を支え、即座に術式で治療を開始する。


ルーミアは少し不機嫌そうな表情になるが、やがて諦めたようにため息をつくと、霊那が放った奥義の着弾点を見て頬をひきつらせる。


霊那が放った"夢想封印・餓狼"の着弾点は巨大なクレーターとなっており、分体は跡形もなく消え去り、 何も残りはしなかった。



‡‡‡


帳を下すように視界が黒くなり、無月と咲夜の視界が元に戻ってゆく。視界が戻った二人が正面に座る霊那に視線を向けると、霊那は少し苦笑しながら口を開く。


「あの後待機していた紫様が事態の収拾に動いていただいたおかげで大事には至りませんでした。それと同時に私はルーミア様に条件付きで封印を施し、次代の巫女を探していただくよう、紫様にお願いしました」


「そして見つけたのが霊夢・・・」


「何故貴女は霊夢に会わなかったの?霊夢は確かいつの間にか自分は博麗の巫女として神社に住んでいると言ってたわ」


左肩に手を置きながら話す霊夢。無月の呟きに、ふと気になったことがあるのか咲夜が問いかける。


「霊夢が博麗神社に来たのは御阿礼の子が生まれる二年前の事、当時霊夢が三歳の時でした。初めて熟睡していたあの子を見たとき私は・・・・あの子が様々な人妖に好かれ、妖怪たちと触れ合うことで幻想郷の巫女として愛されてほしいと願ったのです。そんな彼女の隣に妖怪から恐れられもしている私がいるのは良くない、そう考えて私は霊夢に合わないように姿を消しました」


少し寂しそうに笑みを浮かべる霊那。無月も咲夜も今の霊夢を知っているからこそ、霊那の行動が今の霊夢が形作ったのだと納得する。


「これが幻想郷縁起にすら記されていない、影の記録です。・・・・ですが私はこの幻想郷を愛しているからこそ、人を辞めるのさえ躊躇わなかったんですよ」


天井の木目を見上げながら呟いた霊那の言葉はとても穏やかであった。

どうも 遅筆作者ことめーりんです



東方二次創作の有名どころことEXルーミアです。


正直このお話は書いていて楽しかったです。


このルーミアに関しては『とうほう ろうせっか』に記すキャラ設定でご確認ください


しかしルーミアの元ネタは色々と夢が膨らみますね

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