表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方 朧雪華  作者: めーりん
紅霧異変
3/44

第一章 紅魔館×勘違い?戦闘×動かない大図書館

‡‡‡‡


チルノと大妖精と別れて歩くこと約一時間。その間に少年は今分かっている事を再確認する。


「(この地は幻想郷と呼ばれている地。俺の情報端末が正常に作動してないことから鑑みて・・・・・認めたくはないが確実に俺がいた世界じゃないということか。さっき一弾倉使ってしまったのはミスか?残弾はAK-47Ⅲ型が30発、コルト・キングコブラが18発か…。)」


「んぎゃ・・・・!?」


辺りが薄暗くなるなか、不意に少年の右前方から鈍い音と、女の子らしき声が聞こえる。


「・・・・・」


「きゅ~・・・・・」


チルノ達に出会った時の様に怪生物がいるかもしれないと慎重にコルト・キングコブラを左手に持った少年が音のあった方へ向かうと、一本の木の側に頭に(やや誇張気味の表現となるが)"たんこぶ"を作った少女が目を回して倒れていた。


「・・・・・大丈夫か?」


「・・・・んぁ?」


キングコブラをホルスターに納め、そっと肩を少女の肩を揺する少年。頭の赤いリボンが特徴的な少女は、パチリと目を開けると、あどけない表情で少年を見る。


「あなたは食べてもいい人間?」


「・・・・・・意味が分からん。」


「そーなのかー?」


少女の唐突な問いかけにうなだれながら答える。少女は純粋そうな笑みを浮かべると、両腕を広げて立ち上がる。


「無事そうで何よりだ・・・・・赤い館がどこにあるか分かるか?」


「赤い館なら後もうちょっとで見えてくる筈だよ。」


同じく立ち上がった少年の問いかけに両腕を広げながら笑顔で答える。少年はコンバットウェアのベルトに付いているポーチから棒状の包みを2つ取り出すと、片方の包装を破いて少女に渡し、もう片方の包装も破く。


「何?」


「携帯食という食べ物だ。無いよりはましだと思うぞ。・・・・・俺も冗談でも食われたくはないしな。腹が減ってるなら食べろ。」


そういうと少年は少女に背を向け、携帯食を食べながら離れてゆく。少女は手渡された携帯食をかじり、目を見開く。


「美味しい・・・・・。お兄ちゃんありがとうなのだ~」


驚いた表情の少年が振り向くと、片手に携帯食を握る少女は、満面の笑みを浮かべながら左手をぶんぶんと振っていた。それに軽く振り返した少年は歩き続ける。


「そういえば名前を聞いてなかったし教えるの忘れた・・・・・。また会えるかな?」


その場に残った少女はそう呟くと、美味しそうに携帯食を食べる。


‡‡‡‡



「(お兄ちゃん・・・・か。何故だろう。悪い気はしないな・・・・・)」


赤いリボンの少女と別れた少年は携帯食を食べながら歩き続ける。周囲は徐々に夜の帳を降ろしてきており、暗くなってゆく。


「(あれか・・・・・・。ふむ、確かに赤いな。)」


野宿を半ば覚悟しつつ、寒さを紛らわすためにフードを被った少年の前に、赤い外壁の巨大な館が姿を現す。館に通じる道の途中にはレンガで組まれた防壁があり、門の場所には人影が見える。


「そこの人~。何か用ですか~?」


「この館に図書館があると聞いて来たのだが…。」


門番と思わしき人影から声を掛けられた少年は歩み寄りながら答える。すると門番らしき人影の雰囲気が急激に変化する。


「パチュリー様の本に人間が・・・・用・・・・・?ハッ・・・・・!?まさか盗人ですか!!」


「は?まてまて。俺は・・・・」


「盗人なら問答無用!!この私、(ホン) 美鈴(メイリン)が成敗してくれます!ただでさえお嬢様は"例"の支度でお忙しいのです!咲夜さんの手を煩わせる前に私が敵を倒します!そして私は寝たいんです!ただでさえ寝不足でイライラしてるんですから!」


震える様に呟いた後、門番らしき人物は驚いたように理由を説明しようとした少年目掛けて弾丸の様に接近しつつ、切羽詰まった様に攻撃を仕掛けてくる。


「破ッ!」


「ッ・・・・・女性・・・・!?」


両目の下に特大の隈を作った女性、(ホン) 美鈴(メイリン)の初撃の右ストレートを辛うじて回避する少年。一瞬だけ肩に掛けているAK-47Ⅲ型や腰のホルスターに納めているコルト・キングコブラを向ける事も考えたが、相手が女性であると(美鈴の見た目から嫌でも)認識した少年は回避に専念する。


「どけッ・・・・俺はこの先の図書館にあると聞いて(この幻想郷に関しての情報がある)本を探すために来た・・・・あんたと争う気はない!」


「人間の割には強いですね・・・・・だからこそパチュリー様の本を盗ませる訳にはいきません!早く倒されてください!私は寝たいんです!!」


綺麗なまでに意志が交わっていない少年と美鈴。少年はひたすら回避に専念しつつ、ゆっくりと館に行けるルートに美鈴が来ないように誘導する。


美鈴は重度の寝不足から、自分の欲求である睡眠を取りたいが為に(普段の美鈴らしくなく)少年向かって行き、誘導されているとは気付かずに(普段の美鈴とは違い)大技ばかりを繰り出している。


「ッ!」


「あぁ!しまった!!」


美鈴の大振りの右フックをしゃがんで回避した少年はその勢いのまま美鈴の足を払い、バランスを崩させる。寝不足の影響で美鈴はバランスを崩し、門に向かう少年を止められない。


「(よし、抜けた)・・・・ッ・・・・ガッ!?(馬鹿な・・・・周りには誰も・・・・・ッ・・・・・)」


門を抜けた瞬間、少年のほぼ全身に無数のナイフが突き刺さる。周囲には誰の姿も見えないのに自分にナイフが刺さった理由が理解できない少年。そこで少年の意識は途切れた


‡‡‡‡


ドチャッ、という音ともに少年は地面に倒れ、即座に血が大地を濡らす。


「何をしてるの美鈴。妖怪をこんなに簡単に館に侵入させるなんて…」


そう言いながら少年の隣にいきなりメイド服を着こなしている女性が現れる。髪の毛は綺麗な銀色、瞳は何よりも澄んだ真紅。


「さ・・・・・咲夜さん!その方は人間です!!」


少年が倒れた時の音と血の匂いとで眠気が吹き飛んだ美鈴が慌てて駆け寄る。


「あら・・・・?」


「それにレミリアお嬢様を狙った妖怪じゃありません!盗人だと思われる人間です!」


目を丸くするメイド服姿の女性、咲夜に美鈴が駆け寄りながら話しかける。


「何故大図書館に用があるか聞くの忘れてたんです!ど・・・・どうしよう」


「・・・・・まだ生きてるみたいね。本当に人間なのかしら。とりあえず美鈴、処理をお願いね」


え?と驚く美鈴をその場に残し、咲夜の姿が消える。その場に残された美鈴は近くを通り過ぎようとしていたメイド服姿の背中に羽根がある女性に門番役を任せると、血塗れの少年を抱え、館に入ってゆく。


「・・・・・」


残されたメイド服姿の女性は暫くぽかんとしていたが、すぐに門の方へ向かい、門の近くに立っていた小屋から鋭利な槍を持ち出すと、門番として門のすぐ側に立つのだった


‡‡‡‡


「パチュリー様!夜分失礼します!」


「ひゃい!?美・・・・美鈴さ・・・・ッ!?」


切羽詰まった様子で両開きのドアを美鈴が蹴り開ける。その音に驚いたように一人の少女が肩を震わせながら振り向き 、声を無くす。


「小悪魔さん!パチュリー様は居ないのですか!?」


「騒がしいわね・・・・。何なの・・・・・?」


背中と頭に小さな翼を持つ少女「小悪魔」に美鈴は問いかける。すると本棚の間から一人の少女が空に座るような体勢で現れる。


「パチュリー様・・・えと、その・・・・・」


「・・・・・大体の事情は理解したわ。こぁ、魔法薬と包帯などの医療具を持ってきなさい。美鈴はその子をそこのソファに寝かせて、自室で服を変えてから門番に戻って。明日事情を詳しく話してもらうから。」


服を血塗れにした状態で少年を抱えた美鈴を見て即座にパチュリーと呼ばれた少女は指示を出す。弾かれた様に小悪魔が部屋の奥に向かい、美鈴も指示された通りに少年をソファに仰向けに寝かせる。更に向かい側のソファに少年の持ち物だと判断し、持ってきておいたAK-47Ⅲ型と、ホルスターに納められているコルト・キングコブラを置き、パチュリーに一礼すると部屋から出て行く。


「このナイフは・・・・咲夜のナイフね。スペルカードルールがあるのに忘れているなんて・・・・。咲夜らしくないわ。」


「パチュリー様ぁ~。持ってきました~。」


少年の全身に刺さっている銀製の刃を持つナイフを見てパチュリーは小さく呟く。そこに頭の上に器用に液体が入った瓶を、右手に救急箱らしき箱を、左手にタオルを持った小悪魔がふよふよと近寄る。


「ありがとう、こぁ。さて・・・・・美鈴が運んできたこの子・・・・もしかしたらレミィの言ってた事にタイミングとしても関係あるのかもしれないわね・・・・。可能性があるなら死なせる訳にはいかないわ。こぁ、手伝いなさい」


「はい!」


そう小さく呟くと少年の治療に入るパチュリーと小悪魔。この邂逅がどのような結果を生み出すのか・・・・・それはまだ誰も知る由はない


‡‡‡‡


「すまない・・・・・俺のミスで・・・・!」


「なぁに・・・・泣いてんだ・・・・ミスなんて気にすんな・・・・同じミスを次しなけりゃ・・・・・いいのさ・・・・。俺が・・・・死ぬのはお前ぇのミスじゃねぇ・・・・」


暗い木々の中、幼い子供の声が響く。それを慰める様に息絶え絶えに男の声が遮る。


「コイツをお前にやる・・・・お前の命を・・・・必ず・・・・必ず守ってくれる。だから・・・・・ロスト・・・・・お前は、絶対に死ぬんじゃ・・・・ねえ・・・・ぞ・・・・・」


「嫌だ!死なないでよ・・・・・!俺に体術で負けるまで絶対に死なないって・・・・・約束・・・・・したのに!死なないでよ・・・・・」


‡‡‡‡


影光(カゲミツ)ッ!」


「ふわっ!?」


『ゴチッ!!!』


「「ッ~~」」



叫びながら起き上がった少年と、心配そうに少年の顔を覗き込んでいた小悪魔。その両名はお約束の様に頭をぶつけ合い、小悪魔と少年は痛みから頭を抑える。


「あら・・・・起きたのね。予想より二日早いわ。」


「・・・・・あんたは・・・・」


起きた少年の元にふわふわと座った体勢で浮きつつ、数冊の浮かんだ本を隣に従えたパチュリーが近寄る。少年は目を丸くしながら言葉を失う。


「パチュリー・ノーレッジ、魔女よ。この図書館の(アルジ)にして貴方の命の恩人・・・・・と、いう所かしら。」


「・・・・・・魔女・・・・?」


「むぎゅ・・・・・」


名乗るパチュリーに対して少年はパチュリーの言葉の中の一単語を反芻する。その間にパチュリーは少年のすぐ側まで移動し、しゃがんていた小悪魔の頭上に手にしていた本の一冊を落とす。


「そうよ。私は"人間"じゃないわ。それに貴方が最初に出会った美鈴も妖怪だし、そこにうずくまってるこぁも種族は悪魔になるわね。質問は?」


「・・・・・俺を生かした理由を聞かせてくれ。そもそも何故俺は生きている」


パチュリーの説明と質問に答える少年。その言葉にパチュリーは(彼女としては珍しく)驚いた表情を見せる。


「意外ね・・・・・。てっきりパニック状態に陥ると予測していたのに…。そうね、まずは貴方を生かした理由・・・・。それは私の友人の気になる呟きが原因よ。」


「・・・・・・はっ・・・・・案外安い理由で命を助けたんだな」


少年は痛む体に鞭打って起きあがろうとするが、パチュリーはそれを手で制止しようとする。しかし少年は小悪魔の手を借りてソファに腰掛ける様に起きあがると、真正面からパチュリーの助けた理由を聞き、小さく呟く。


「理由として安くはないわよ。・・・・まあ、後は私の知的好奇心ね。この紅魔館に訪れた珍しい客に当たるのだから殺すには惜しいわ」


「……そうか。結果的に助けられた事には感謝する」


クスクスと小さく笑みを浮かべるパチュリー。それに対して律儀に頭を下げる少年。すると小さく少年の腹が申し訳なさげに音を鳴らす。


「二つ目の理由は・・・・そういえば人間は食事が必要なのだったわね・・・・。ちょっと待ってて頂戴。こぁ、咲夜に何か人間(・・)用の食事を作るように頼んで。できたら貴女が持ってきなさい」


「・・・・・不躾な質問になるが何故そこまでする?俺は一応侵入者に当たると思うのだが。」


「さっきも言ったでしょ?友人の気になる呟きと、私の知的好奇心が理由だって。」


思い出した様に呟くと、小悪魔に指示を出すパチュリー。それに対して少年はやや疑いながら質問し、パチュリーは再びクスクスと笑いながら答える。


「・・・・・とりあえずそちらから質問をどうぞ。」


「そう?じゃあ幾つか質問あるから答えられる範囲で答えて頂戴。」


ふよふよと浮かびながら小悪魔が退室したのをぼんやりと見送った少年は、パチュリーに先手を譲る。パチュリーはやや予想外だと思いながらも本を傍らに置き、少年を見据える


「まずは貴方の名前ね。それが分からないと呼びようがないわ。」


「・・・・・・俺に名前はない。」


「・・・・・・どういう事?人間なら名前が基本的にあるはずよ?」


パチュリーの狙いは少年をまず知る事だった。しかしそれは初っ端から頓挫する。


「それを話すには俺の居た場所?になるのか・・・・・。そこから話すことになる。長話になるが、構わないか?」


「構わないわ。私も名前がないって理由には大いに気になるしね。幻想郷(ココ)や妖怪の観点から見ても、私個人の観点から見ても・・・・・ね。」


少年はその幼さを感じさせる表情を動かす事なくパチュリーを見据える。自分よりも遥かに年下の少年から何かを感じ取ったパチュリーは小さく頷く。


「俺の居たのは帝国(テイコク)と呼ばれる国の中にある和国解放戦線と呼ばれる反体制勢力だ。」


「和国?それに帝国とは何かしら。」


少年の口から語られた名称にパチュリーが反応する。反応した理由は、膨大な知識を持つ彼女にも知らない単語と、かなり昔の歴史書に書かれている国名だったからだ。


「帝国の正式名称は大日本帝国と言うらしい・・・・・」


「ちょ・・・・・ちょっと待って。確かその国の名前は”外”で明治と呼ばれる時代の国名じゃなかったかしら」


「・・・・・・どういう事だ・・・・・?」


お互いの知識の"ズレ"に戸惑う二人。そこで二人はお互いの"ズレ"をはっきりさせる為に会話を重ねる事にした。


‡‡‡‡


「あの~・・・・・パチュリー様ぁ・・・・・」


「つまり"貴方の居た世界"と言うのは"私の知る世界"の所謂平行世界、もしくはパラレルワールドに当たるということになるわね。」


「あのぉ~・・・・・」


「信じられないがそうなるのか・・・・・・」


料理を運んできた小悪魔に気付かないほどパチュリーと少年は話しに集中していた。少年は自分が生きていた世界が此処とは全く違う世界だという事実に、パチュリーは此処とは異なる世界の住人がこの幻想郷にやって来た事にそれぞれ驚愕していた。


「最後に・・・・・貴方をここに導いたという女性。世界も超えてそんな無茶を行える人物を私は知ってるわ。こぁ、料理は彼に渡して。」


「・・・・・誰だ?随分胡散臭い女性だったが・・・・・。あ・・・・・感謝する」


「神出鬼没の妖怪、八雲 紫。この幻想郷の基礎を創ったとされる最古参の人物だそうよ。誰かに優しくされるのは慣れてないのかしら?」


長い時間話していた二人だが、今ある情報が全て出揃った為、お開きとする事にした。パチュリーは最後に、小悪魔から料理を渡され、戸惑った表情になっていた、目の前に座る少年に接触し、少年をここに導いたという人物を彼に教える。


「・・・・・八雲・・・・・紫。そいつが俺を此処に・・・・・?」


「確証はないけど、そんな無茶ができる人物はこの幻想郷ではその人物のみよ」


「そうか・・・・。こちらからの最後の質問だ。・・・・・パチュリーさん、で良かったか?あんたが言っていた、気になる事を呟いた人物ってのは誰なんだ?」


呟く少年に頷くパチュリー。少年は最後にパチュリーが言っていた人物について尋ねる事にした。食事として渡されたサンドイッチにはまだ手をつけていない為、パチュリーはそれを食べるように促すと、思い出したように語る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ