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東方 朧雪華  作者: めーりん
過去とこれから×過去との決着
29/44

第二十五章 過去×西行妖×関係

過去話です

‡‡‡


1200年頃の春 京の都 


平家と源氏の合戦も終わり武士が統治を開始した頃、京の都をふらふらと歩く青年が一人。

髪の色は新雪のような淡い蒼に耳元に桜色が入っており、一目でこの国の生まれでないと分かる。


しかし身に纏う服装はこの時代、武士も身にまとう直垂(ひたたれ)。色は闇のような黒であり、その容姿とよく似合っていた。


「戦乱の影響か、火車が時々見られるなぁ・・・・ま、身請けのない遺体を火葬してるだけ、見逃すか」


小さく呟きながら周囲を見回す青年。彼の目には妖術で素養のない人間には見えなくなった妖怪の姿がはっきりと映っていた。


「この辺りか……噂の"死の桜"がある西行寺家ってのは。西行法師が亡くなってから妖怪化したっつーのが専らの噂だけど……さてさて、真相はどうだか……」


呟きながら歩く青年。視線は周囲を見回しながらも、その歩調に迷いはない。


そもそも彼が西行寺家を目指すのは妖怪達の間でも噂になっている"死の桜"に危機感を持ったからである。


元を見れば人々の為に活動する"退魔士(エクソシスト)"だったため、行動の根幹に"力無き人々の為"と定めている彼は、危険であれば封印が必要だと判断していた。

‡‡‡


歩みを続けた彼の目の前には"西行寺"と彫られた立派な表札のある立派な日本家屋。


しかしその中からは生活感。つまり"人が生活している"という気配がなく、変わりに強烈なまでの"死"の気配が感じられた。


「こりゃあ……ヤバいな…。簡易的でもいいから急いで結界を張らねーと」


その濃密な"死"の気配を感じ取り、懐から取り出した数枚の(ふだ)に霊力を込め、屋敷の四方に飛ばす。


数秒後、彼の目には屋敷全体を薄い幕が覆うのが視認できた。


「ふぅ……。ひとまずは安心かな。しかしこの気配……ま、気付かれてることを大前提に警戒しとくかねぇ……」


一応の結界を張り終え、一息つく青年。その後屋敷内部から感じ取れた"4つ"の異なる気配から、警戒するべきと判断しつつも、彼はその門扉を叩くのだった。


‡‡‡


「…どちら様ですかな?」


「あー…そう殺気立たなくても良いと思うんだが?」


扉を叩くと暫くして扉が開き、一人の男性が姿を現す。しかしその瞳に友好的な色は感じられず、むしろ一般人ならそれだけで殺せそうなまでの殺気を青年に叩きつけている。


青年はそんな殺気を意に関していないのか、飄々とした態度で苦笑する。


「貴様…何者だ?いや、答えなくても良い。真実は斬れば分かる!」


「問答無用かい…。まあ、忠告な。相手との実力差見極めてからにしな、クソガキ」


こちらを馬鹿にしたような態度だと判断したのか、腰に穿いた刀を抜きはなった男性(と、傍らに浮いていた白い玉)が一瞬で青年の背後に回り込み、首を斬り裂こうと白刃を走らせる。


しかし青年は飄々とした態度を崩すことなく、男性の方を向くことなく振り抜いた右足で、その意識を易々と刈り取るのだった。


‡‡‡


「お邪魔するよー」


「あら、今日はお客様が沢山ね。あら?妖忌はどこかしら。紫と藍もいつの間にか居なくなったし…」


気絶した男性をきっちりと閉めた扉に寄りかからせた青年は、そのまま生活感が感じられない屋敷を抜け、"死の気配が濃い"中庭を目指した。


目的の中庭に着いた青年の目の前に現れたのは、春なのにも関わらず花びらを付けていない桜の木と、その桜を見ることが出来る部屋に座っていた一人の少女だった。


「はじめまして。私、西行寺幽々子って言います。貴方は?」


「や、勝手に入っちまってすまないね。俺はチェリー・L・ヨトゥン。流れの渡来人ってやつさ」


ややマイペースな少女の自己紹介に、苦笑しながらも答える青年"チェリー"。少女はチェリーの自己紹介に少し驚いた表情になる。


「貴方、海って言うのを渡ってきたの?珍しい物とかいっぱい見てきたの?どんな食べ物があるの?この国の言葉…で良かったかしら?どうしてそこまで流暢に話せるの?」


「まあ、そうなるかねぇ…ま、数年も過ごせば慣れるものさ。ところで妖忌ってのは?」


矢継ぎ早にチェリーに話しかける幽々子。チェリーも流石に苦笑を隠せないが、中庭側の廊下に腰を降ろすと、幽々子に問いかける。


西行寺家(うち)の唯一の使用人。少し喧嘩っ早いけれど、腕は良いわ。この近くに住みながらだけど一応、私の剣術指南役兼この屋敷の庭師をしてるの」


「……悪ぃ。そいつノしちまった」


ほんわかした笑みで話す幽々子に、チェリーが(彼としては極めて珍しく)本当に申し訳なさそうに頭を下げる。


すると幽々子は少し驚いた様子だったが、すぐに笑みを浮かべる。


「また妖忌ったらお客様かもしれない人に刀を向けたのね。むしろチェリーさん…で良かったかしら?私の方が謝らないと」


「あー、気にしてないよ。…できればレオンって呼んでくれっと嬉しいかな。ま、あんたみたいな美人さんならチェリーでも別に良いけどな」


幽々子の謝罪に軽い調子で返チェリー。幽々子はチェリーの言葉に頬を赤くすると、軽く笑みを浮かべる。


「ところでよ、何時まで隠れてるつもりだい?隙間妖怪さん?」


「え?」


「…何時から気づいた、と聞くのはもはや無粋ね。あんたの事だからこの結界を張った時点で気づいていたのでしょ?」


幽々子に笑みを返すと、不意にチェリーは虚空に向けて話しかける。幽々子はキョトンとするが、次の瞬間チェリーの視線の先の空間が裂け、その中から一人の女性が姿を現す。


「紫」


「下がって幽々子。こいつは危険なのよ」


「おいおい…俺はいつから危険人物になったんだっつーの」


座ったままの幽々子を背中に庇うようにチェリーの前に立ち、幽々子に影響がないようにコントロールした妖気と殺気をチェリーに叩きつける紫。チェリーは涼しい顔をしたまま、紫の方には見向きもせず、花を付けていない中庭に立つ木を見たまま反論する。


「俺はあの"死の気配"に満ちた木を何とかしようと思って来たんだが?別に幽々子さんをどうこうする気はこれっぽっちもねーよ。……それとも"あの時"みたいに無様に地べたに這いつくばりたいかい?」


「…っ」


紫の方を見ることなく答えてゆくチェリー。しかし最後の問いかけと共に、本当に刹那の時だけ紫にのみ向けて放たれた濃密なまでの殺気と妖気に、紫は全身に冷や汗をかき、その場にへたり込む。


「"あの時"と比べたら随分力を付けたみたいだな。"あの時"は自我を失ったのに、今回は痛みで自我を保てるくらいにはなったのか」


「……今だから分かるわ、貴方の底知れない力と強さが。もし時を遡れるなら"あの時"の私を半殺しにしてでも止めたいわよ」


少し満足そうな笑みを浮かべたチェリー。対して紫はチェリーからの殺気や妖気で自我を飛ばさないために唇を噛んだらしく、少し血を流しながらも苦笑する。


「で?この化け桜はなんだ?こいつの気配と幽々子さんの気配が似通ってる理由は?洗いざらい説明してもらうぜ」


「……分かったわよ…」


‡‡‡隙間妖怪説明中‡‡‡


「はー・・・そりゃ難儀な事情だなおい」


「ええ。しかも幽々子自身が徐々に桜に生きる意志を呑まれていってる。一応私が術式を組んでいるんだけど、現状は難航してるわ」


「・・・・すぅ・・・」


いつの間にか眠ってしまった幽々子に布団を掛けてやりながら説明を終える紫。チェリーも稀なケースに頭を悩ませている。


「・・・・一応、桜の封印くらいなら可能・・・・だと思う。ただし俺一人じゃ無理だ。知人を連れてくるから二、三日だけ待ってほしい」


「珍しいわね、あんたに友人だなんて」


難しそうな表情のまま言葉を搾り出すように話すチェリー。紫の皮肉にも返すことなく、彼は一度桜を一瞥すると、その場から煙のように姿を消す。


‡‡‡


和やかな雰囲気が似合う小さな神社。その神社の縁側でのんびりとしていた一人の女性の前に、チェリーは姿を現す。女性はいきなり現れたチェリーに驚くこともなく微笑み、問いかける。


「あら、桜花様。何か火急の用事でしょうか?」


「緊急の案件だ・・・西行妖、といえば分かるか?霊那」


‡‡‡


突如として幕が下りるように視界が暗くなり、徐々に目が慣れてゆき、辺りを見回す無月。隣の咲夜も同じように見回していることから、桜花の記憶の中から戻ってきたということだと判断する。


そして無月と咲夜はほぼ同時に桜花の方を見、説明をするよう視線で訴えかける。

どうも遅筆作者のめーりんです


あくまでも補足(基蛇足?)ですが、西行妖の元ネタとなっている西行桜は複数あるんですよね。


西行妖となったとされる西行桜は京都ー伏見墨染にあったとされる伝説の桜です



以上 補足でした

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