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東方 朧雪華  作者: めーりん
永夜異変
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第二十四章 二人の資質?×先代巫女×謎の多い男 魂魄桜花

今章から独自の設定が多数出現します。ご注意ください

スキマから落下した二人の前に建っていたのは、やや大きめの日本家屋だった。



「…随分と立派ね」


「…そうだな」


永遠亭と比べても遜色ない門を見てポツリと感想を呟く二人。


すると門が静かに開きだす。少しばかり警戒した二人の前に、宙に浮く一つの物体が姿を現す。


「……霊夢が使っている球体に似ているな」


「……そうね」


お互いに思わず顔を見合わせ、話し合う二人。無月と咲夜の目の前に浮いている球体は、白黒であることと、大きさ以外は、霊夢が異変解決時に傍に浮かせている陰陽玉とそっくりであった


「そなた達の実力、確かに見抜いたぞ」


「八雲のが送ってきた者故少し期待していたが、これほどとは」


「「ッ…!!」」


突然、周囲から聞こえてきた声に警戒して自然と背中合わせになりながら無月は右手に持っていたスルトルに左手を添え、咲夜は左手に投げナイフを持つ。


「そう警戒するな」


「我等はこの屋敷の主の守護役。そしてある役目を帯び、そなた達の"資質"を見極めたのだ」


「…(どこに居る…?)」


「…(私と無月が気配を感じられなかった…?一体何者…?)」


「ふむ…姿を見せないのは失礼だったか」


「ならば我等の姿を見せようか」


どこか楽しそうな声を警戒し、構えを解かない二人。声の主も、姿を見せない為に警戒されていると察したのか、二人の前に姿を見せる。ずっと二人の前に浮いていた、白黒の陰陽玉が光り、光が収まったとき、そこには一組の男女が立っていた。


「始めまして・・・・と言っておこうか」


「我等はこの地を守護する者。そしてこの館の主を補佐する役目を帯びている」


男性が丁寧に挨拶し、女性が中性的な話し方で補足を入れる。無月たちも挨拶を返すと、二人は少し満足そうな表情で話しを続ける。


「我は主に黒玉(こくぎょく)と呼ばれている者」


「私は主に白玉(はくぎょく)と呼ばれている者」


「・・・・赤羽無月。紅魔館、フランドール・スカーレット専属執事兼門番補佐役を勤めている」


「十六夜咲夜。紅魔館のメイドです」


お互いに自己紹介を済ませた所で門の向こう側から一人の人物が歩いてくる。黒玉、白玉の両名は、その人物に歩みより頭を下げる。その様子を見た無月と咲夜は、その人物が彼らの"主"であると理解する。


「主、八雲殿の(ふみ)にあった方達が見えました」


「ご苦労様、白玉。・・・二人とも先に戻って準備をしてて」


「「は」」


白玉、黒玉の両名が離れてゆくと、無月と咲夜にもその人物がはっきりと視認できるようになる。その人物を見た両名はどこか霊夢に雰囲気が似ていると思うも、その人物のとある特徴に目を見張る。


「・・・・隻腕・・・」


「ええ。とある異変で失ったのです。改めて自己紹介をしますね。私は先代の博麗の巫女を勤めていました、博麗(はくれい)霊那(れいな)と申します」


唖然とする無月達に隻腕の巫女"博麗(はくれい) 霊那(れいな)"と名乗った女性は優しげな笑みを浮かべるのであった。


‡‡‡


霊那に促されるがままに屋敷に入る二人。霊那は隻腕であることを感じさせない動きで二人を和室に案内すると、二人の正面に座る。


「それにしても急に紫の式が来たときは驚きました。彼女としては私の話し相手も兼ねてのことなのでしょうけどね」


「・・・・迷惑でしたか?」


「いえいえ・・・」


朗らかな笑みを浮かべる霊那に、少し申し訳なさそうにする咲夜。しかし霊那は笑みを浮かべたままそれを否定する。


「私はとある事情があり、ここに留まっているのです。そのため幻想郷での出来事は桜花や(しじま)が持ってくる天狗の新聞や彼らの話しでしか知ることができません。紫は目的のほかに私の話し相手にしたかったのでしょうね」


「意外な名前が出てきたわね」


「本当にあの男・・・・何者だ・・・?」


笑みを絶やさない霊那の話しを聞きながらも咲夜と無月は同時に疑問に思う。そんな二人を見て霊那はふと虚空に話しかける。


「居るのですよね?桜花様、出てきてはくれませんか?」


「本当に霊那の"勘"には恐れ入るよ・・・・」


霊那の言葉に答えるように霊那の視線の先が歪み、そこから困り顔の桜花が歩いてくる。スキマによく似た方法で移動してきた桜花にますます疑問を抱く両名。


「神玉は二人の資質を見極めました。決めるのは当人ですが、今の内に話しておいたほうが良いと思いますよ?」


「・・・・・そうだな。俺や(しじま)、紫の考案した計画に協力してもらえるかも知れないからな・・・・話すとしようか」


霊那の言葉にゆっくりと頷き、無月たちに向き直る桜花。


「せっかくの休暇だってのにいきなりすまんね。まあ今日だけはこの話しに付き合ってくれ」


「・・・・構わない」


「そうね・・・・どの道休暇は次の満月まであるから私も構わないわ」


霊那の隣に腰を下ろす桜花。無月と咲夜も話を聞くことにし、ちゃぶ台を挟んで向かい合うように座る。


‡‡‡


「まずは俺の正体から話さないとな…。この事実を知るのは極々少数だ。俺が今名乗っている"魂魄桜花"ってのは俺が西行妖の封印後に魂魄家に"雇われる"形で住み始めた時に妖忌に"魂魄"の名字を預けられてから名乗り始めた名前さ」


桜花はどこか懐かしそうに語りだす。その表情はどこか嬉しそうであり、本人にとっても良い思い出なのだろうと無月と咲夜は予測をつける。


「俺が生まれたのは今(2004年)から大体3000年位前・・・・・だったかな?"外"では北欧と呼称される地方だ。両親はそれなりに才のある"外"では退魔士・・・・所謂エクソシストってやつだったのさ。当然のように15の時に俺もその職についた。俺の戦い方は部下との連携を重視したものでね・・・・当時の同僚からは"腰抜けの戦い方"だなんて笑われたものさ。」


苦笑しながら話す桜花。しかしその瞳は少し寂しげに見える。


「着任して二年。部下との連携で数多の"異形の者"を屠ってきた俺は、本部からとある特務を言い渡された。それは長年とある地域を影から支配していた人狼・・・・所謂ウェアウルフの殲滅だった。・・・・俺と部隊はいつもの通りに綿密な準備と下調べを行ったうえでそのウェアウルフが潜んでいる洞窟に突入した・・・・が、そこで予想外の出来事に見舞われたのさ。・・・・後々に分かったんだけどな、本部が密かに人狼に情報をリークしてたんだよ。俺の部隊を捨て駒にして傷ついた生き残りを自分たちが倒して名声を得るために、な。おかげで奇襲は失敗、部下も皆戦死した。俺は最後の足掻きとしてその洞窟を根城にしていた人狼を巻き込んで自爆術式を発動したんだ。」


一息入れ、俯いた桜花。その表情は変化しないが、瞳には少しだけ悲しそうだった。


「自爆術式で大半の人狼はふっ飛ばしたんだが、一人だけ無事だった人狼が居たのさ。ま、自分の体のことは一番理解してたからな・・・・助かる見込みはゼロだった。当時の俺は"まだ"人間だったんだからな。瀕死の俺の傍らに立ったその傷だらけの人狼は俺にとある取引を持ちかけたのさ・・・・"彼女"は俺の命を助ける代わりに、本部の連中の抹殺を依頼してきたのさ。・・・・部下達の今際(いまわ)の言葉を思い出した俺は"彼女"の申し出を受け・・・・人間を止めた」


悲しそうな表情だった桜花だったが、一度言葉を区切ると、小さく呪を唱える。すると桜花の髪の毛が、耳元を除いて全て淡い青に染まる。驚いた表情で桜花を見る無月と咲夜。


「この髪は"彼女"の毛並みの色であり、俺本来の髪色でもあるんだ。"彼女"の手によって後天性の人狼に成った俺は契約の通り、元同僚たちを皆殺しにした・・・・躊躇いはなかったな。なんせ自分たちの利益しか考えてなかった連中だ。で、居場所を自ら滅ぼした俺はそのまま宛てもなくふらふらと旅をした。」


そこで桜花は言葉を区切ると、髪の色を元に戻してからちゃぶ台に置いてあった湯飲みを手に取る。


「今でもなぜ"彼女"が俺にそんな取引を持ちかけたのかは分からない。でも"彼女"を忘れないために彼女が契約のときに名乗った名前を旅の最中は名乗っていた。それがまさか"今"の名前の元になるだなんて予想してなかったけどな」


どこか遠くを見つめるような表情で話す桜花。そこで無月達は肝心な部分を聞いていなかった事を思い出す。


「あんたの本当の名前ってのは何なんだ?」


「ん?・・・・ああ、そうだったな。俺の本当の名は"レオル・グラフィス"ってんだ。旅をしてたときは"彼女"の名に俺の"本当の名前"を組み合わせて"チェリー・L(レオル)・ヨトゥン"って名乗ってた。"彼女"の一族は神話の時代からその地に住んでたそうだ」


本名を名乗る桜花。その名に込められた意味は桜花にしか分からないだろうと判断した無月と咲夜は、敢えて何もいわないことにした。


「当てもなくフラフラ旅をしながら人々を助けたり妖怪との仲を取り持ったりと色々してたら1500年位経過しててな・・・・俺はいつの間にかシルクロードを通って東に流れついたのさ・・・・で、ちょいと経歴を誤魔化して俺は仏教と共に海を船で渡って大和(やまと)・・・今の"外"でいう日本に渡ったのさ」


再び話しを区切り、お茶を飲む桜花。霊那も詳しい過去を聞いたわけではなかったらしく、桜花の話しに聞き入っていた。


「日本に来たとき俺は大体1500歳位・・・・だったかな・・・。日本を訪れたのは単純に暇だったからなんだがね、まさかその気まぐれが自分の道を決定するだなんて思いもしなかったさ」


「人生とは何が起きるかは分からない。これ、桜花様の口癖でしたね・・・まさか実体験だったとは」


苦笑する桜花。白玉と黒玉が持ってきたお茶菓子やお茶を手に聞き入っていた無月や咲夜だったが、霊那はしみじみと言いながらお茶を飲む。桜花は若干苦笑しながらもお茶でのどを潤すと、続きを語りだす。


「当時(大体500年頃)の"外"では妖怪が普通に跋扈し、人々はそれに怯えていた。今の幻想郷より妖怪は暮らしやすいといえば暮らしやすい環境だったって言っても過言じゃないかもな。まあそんな中俺は都の一角で万屋を開いて細々と暮らし始めたのさ・・・・当時の予定だと大体10年くらいそこに留まって路銀を稼ぐ程度だったかな。当時の俺はもう妖怪としても大妖怪クラスの力を持ってたから全然人を襲う必要が無かった・・・で、その間永琳さん達の逃げる手助けをしたり萃香に会ったり・・・・と予定外の出来事もあってずるずるとあちこちを旅しながら700年くらい滞在して・・・・。外で言うと大体1200年頃・・・・かな・・・俺が"彼女達"に出会ったのは」


どこか懐かしそうに語る桜花。そこに黒玉、白玉の両名がお茶とお茶菓子の追加を持って現れる。


「彼女達?」


「大体予想できてんじゃないか?幽々子さんと紫、そして黙の三人だよ・・・幽々子さんの方は"生前の"って前に付くけどね。そんで、その出会いとその後の出来事がこの計画の出発点だったのさ」


咲夜の問いかけに若干苦笑しつつも桜花が答える。その言葉に、若干霊那が反応したことに、無月は敢えて気づかないふりをすることにした。


「さて、ここからは口頭で説明するのが非常に難しい。だから俺の記憶を観させることにするよ」



気楽な感じで桜花が呪を紡ぎだす。気楽に言われた内容の難しさを理解した無月と咲夜だったが、何かを言う前に、二人の意識は途切れるのだった。

どうも遅筆作者ことめーりんです


まあレビューも感想もない本作なぞ、作者の意地と気力だけで執筆してるようなものですが(失笑)


さて、色々と設定やキャラクターなどが出てきていますがその辺りの詳細は本作の設定集である「とうほう ろうせっか」で詳しく説明しようと思います。


次回予告


桜花の術で彼の記憶の中に誘われた二人。そこで知る事実とは?


次回 東方朧雪華 第二十五章「桜花の過去」(仮)お楽しみに

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