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東方 朧雪華  作者: めーりん
三日おきの百鬼夜行
22/44

第十八章 異変解決×光る原石×謎多き男×新たなる波紋

半人半妖と鬼の戦いの結末は当事者の間だけの秘密とされた


当事者はこう語る「あの戦いほど美しい勝負はなかった」と・・・

‡‡‡


博麗神社


幻想郷最東端、博麗大結界の端に位置するこの神社では宴会が開催されていた。それは三日おきの宴会のようにどこか不自然な雰囲気ではなく、純粋に異変解決の祝いのための宴会であった。その宴会の発起人は意外にも妖怪の賢者"八雲紫"と白玉楼に仕えるもう一人の賢者"魂魄桜花"の両名であり、紅魔館、そして白玉楼近辺の人妖はこぞって宴会に参加した。


「・・・・凄い人数ね」


「・・・・全くだ」


朝から始まった宴会はいまだ続き、昼になっても収まる気配を見せない。そんな様子に紅魔館の従者である十六夜咲夜と赤羽無月の両名はやや呆れたように呟く。二人が居るのは博麗神社の縁側であり、宴会の様子を見渡すことが出来る。その中心には小柄だが存在感の大きな一人の鬼の姿があった。


「お嬢様も楽しそうね」


「いい加減フランと仲直りしてもらいたいものだ」


楽しそうにしている主を見て咲夜が珍しく微笑む。そんな咲夜の隣で無月はやや疲れたようにため息をつく。己の主"フランドール・スカーレット"も今回の宴会に誘ったのだが、変に固執しているのか姉が居るなら行かないと断られてしまった。どうも素直になれないようで、そんなフランのことを考え、無月は再びため息をつく。


「無月・・・」


「大丈夫だ・・・・お互いに仲直りしたいという気持ちはあるんだろうが・・・・お互いに素直じゃないと苦労する」


お互いに主のことで頭を悩ませる従者二人。そんな二人の下に一人の少女が訪れる。


「あら・・・・押し入り強盗」


「辻斬り侍か」


「その呼び方やめてください!!」


現れた少女"魂魄妖夢"を軽くからかう両者。そんな二人に対して妖夢は少し顔を赤くして否定する。そんな妖夢の手には3つの徳利とお猪口が乗ったお盆。どうやら騒ぎから離れていた二人のために持ってきたらしい。


「せっかくの宴会楽しみなさいと幽々子様に言われまして・・・・」


「他の人のところには行かなかったのかしら」


「大方からかわれるから俺たちの所に来た・・・・というところか?」


やや乾いた笑みを浮かべる妖夢。無月を挟むように座った彼女に無月の反対側から質問する咲夜だったが、妖夢が答える前に無月が予想する。現在宴会に来ている人物はかなり個性的であり、基本生真面目な妖夢はからかわれると思ったらしい。


「言わないでください!!・・・・まあその通りなんですが・・・」


少し恥ずかしさから頬を赤くして妖夢が否定しようとする。しかし根が真面目な彼女は結局認めてしまう。そんな妖夢の姿に無月と咲夜はどこか苦労人だと考えてしまう。


「とにかく今は宴会なんですから・・・楽しみませんか?」


「それもそうね・・・」


「そうするか・・・・」


宴会でテンションが上がったためかにぎやかになっている他の参加している人妖を見て妖夢が軽く首をかしげる。萃香に酒樽を直呑みさせられている桜花から視線を逸らした咲夜と無月はお猪口を持つと、頷く。従者三人の小さな小さな宴会は、参加者全員(萃香を除く)が酒で酔いつぶれるまでゆっくりと続くのだった。


‡‡‡


異変解決から約二週間が経過 2004年8月15日 紅魔館大図書館


「・・・・物覚えは凄いわね・・・まさかもうここまで動かせるなんて・・・・」


「・・・・結構コツが必要な上にアリスさんの人形と比べるとまだまだ動きが鈍い・・・」


紅魔館の大図書館に訪れた七色の魔法使いこと"アリス・マーガトロイド"は目の前で起きている現実に驚きを隠せないで居た。約二週間前に同じ魔法使い"パチュリー・ノーレッジ"が語った情報に興味を持ち、紅魔館に住まう外来人であった半人半妖"赤羽無月"にパチュリーと交互に魔法を教え始めたのが今から一週間ほど前。そんな魔法に関しては素人同然だったはずの無月は、師たるアリスが貸し与えた人形2体を、ゆっくりとだが動かして見せたが、これにはアリスも絶句するしかない。


「属性魔法に関してもある程度は発動していたわ。ここまで平均過ぎると逆に困るわね」


「適正魔方陣の反応は平均過ぎて参考にならなかったものね・・・」


パチュリーがアリスの隣に降り立つ。まだ人形を動かすことに四苦八苦している無月を見て微笑ましく思うも、前途多難な現状に小さくため息をつくアリス。通常、魔法を学ぶ場合自分に適した魔法を知るのが基本となる。一週間前、無月の適した魔法を知るために検査したのだが、反応が平均過ぎてどうすればよいか分からなくなってしまった。そこで魔法使い二人は毎日魔法を教える前に検査を行いながら魔法を教えていた。


「白玉楼のあの男を頼ってみる?」


「・・・・それしかないわね」


ため息をつくしかなかった二人が脳裏に思い浮かべたのは(二人からしたら)実力者とは見えない白玉楼の料理士たる男"魂魄桜花"だった。


「噂だと"あの"八雲紫より年上らしいわ。実力も勝っているとの噂よ」


「そうね・・・・噂でしかないって事が逆に不気味なのよね・・・・」


一応独自に調査していた両名だったが、書物に書かれている内容は全て噂でしかなく、魂魄桜花の実力を裏付ける内容がなかったのである。残る手段は幻想郷縁起であろうが、保管場所は人里の稗田家。人付き合いが苦手な両名にとって行こうという気にはなれなかったのだった。


「ま、こうなったら仕方ないわね…こぁ、白玉楼に使いに行って頂戴。今日はここまでにしましょう。無月は仕事に戻りなさい」


「はい、かしこまりましたパチュリー様」


「かしこまりました。では、また」


桜花を呼ぶためにこぁに指示を出すパチュリー。本の整理をしていたこぁは手を止めると頷く。無月も両名にお辞儀をすると、図書館から出てゆく。


「その必要はないぜ」


「…噂をすればなんとやら、ね」


「いつの間に…」



無月が出て行ってから不意に聞こえる声。気付いたパチュリー、アリスが声の聞こえた方に目をやると、本棚の一角に腰を掛けた謎多き調理師兼庭師補佐役、魂魄桜花が居た。


「…どうやって入ったの?」


「そりゃあ転移魔法さ。正規の手順で入らなかったのは悪かったと思ってるがね」


ジト目でパチュリーが質問する。対する桜花は飄々とした表情で答える。


「転移魔法…ですって…?その魔法の構成や術式は失われたと聞いているのだけれど?」


「あー…そうだっけな…。転移魔法は遺失魔法(ロストマジック)扱いになってんだっけか…。ま、それ以前から生きていたら知っていても問題ないだろ?」


やや怪訝そうな表情でパチュリーが問いかける。対する桜花はニヤリと笑みを浮かべると、腰掛けていた本棚から飛び降りる。


「今回の訪問はまあ、あれだ。お祝いも兼ねてっからな・・・・彼は居ないのか?」


「そのついでに私たちの質問に答えてくれるというのね?」


飄々とした態度を崩さない桜花に対してアリスが問いかける。声をかけられた桜花は、アリスを見ると一瞬だけ目を見張る。しかしすぐに表情を元に戻すと小さく頷く。


「まあまずは彼の魔法の適正を調べねーとな」


「私たちが調べたのだけれど?」


桜花が懐から一枚の羊皮紙を取り出しながら歩み寄る。それに対してパチュリーが疑問に思ったのか、話し掛ける。すると桜花は小さく笑みを浮かべると、パチュリーに手渡す。手渡された羊皮紙は、パチュリーやアリスが用いた魔法陣の他にもいくつか魔法陣が書き込まれている。


「とりあえず彼の血を垂らしてみな。俺特製の魔法適正診断用の魔法陣だ。血に反応する魔法陣を活用したから本人がその場に居なくても反応する」


「・・・・分かったわ」


やや楽しそうな桜花に促されてパチュリーが羊皮紙に無月の血を一滴垂らす。血は瞬く間に羊皮紙に滲み、結果は即座に現れる。


「・・・・」


「見たことのないパターンね」


「複雑すぎないかしら。私でも見たことないわよ?」


「こいつは驚いた・・・・そっちの魔法使いと似た魔力だから属性魔法に偏るかと思ったんだが・・・・彼、光る原石だぜ」


無月の手に持たれる羊皮紙を覗いて各々考え込む。そんな中桜花はそのパターンを理解できたらしく、若干額に汗を浮かべる。


「彼の適正は何?」


「・・・・彼の一番の適正は変化魔法。早い話が媒体を変化させて戦う遺失魔法(ロストマジック)だよ」



ジト目のままパチュリーが問いかける。すると桜花は言葉を選びながら答える。彼の口から飛び出た単語に首をかしげる両名。彼女たちが知る中にも武器を用いる魔法使いは数は少ないが居た。それとどう違うのかが分からなかったのだ。


「普通、魔法使いが武器を使う場合、自分に合った武器を用いる。どんな達人だろと数は多くても三つが限界だろう。だが変化魔法は特殊な媒体を用いて使われる。そしてその媒体は使用者の求める形に変化するんだ・・・・ここまでくればこの魔法がどれだけ常識破りな魔法だか理解できるか?」


「・・・逆に言えば媒体さえあれば自分の望む武器が作れる・・・・ということね。武器を使う魔法使いの魔法とどう違うの?」


「どうしてその魔法は遺失魔法になったのかしら」


桜花が説明するが、その説明でもいまいちピンとこない二人。桜花も説明するのが難しいのか、頭を数回掻くと手近な椅子に腰掛ける。


「アリスさんの疑問だが・・・・理由は簡単さ。"使い手が居なくなったから"だな。変化魔法は文字通り変化させた武器、それを上手く使いこなす奴が居て初めて活きる魔法だ。だが大抵の魔法使いってのは遠距離戦を好む傾向にある。だから使い手が居なくなっちまったのさ。そしてパチュリーさんの質問だが、一番の違いは千変万化ともいえる変化だな。変化魔法は媒体しだいで様々な変化をもたらす・・・・それこそ戦闘中にロングソードからダガー、ダガーからクレイモアへ・・・という具合にな。使いこなせる奴が使えばこの魔法を使う奴ほど近接戦で脅威となる奴はいねぇよ。使用者によって変化させる系統は偏るがね・・・俺が知っている奴はランス系に好んで変化させていた」


二人の質問に答える桜花。その答えの内容に、驚きを隠せない両名。無月は遠距離戦より近接戦を好む。そんな彼がその魔法を使いこなせば文字通り近接戦で彼に勝つ方法は限られるだろう。とはいえ遠距離戦がメインとなる弾幕ごっこではあまり意味を成さないであろうが・・・・。


「ところで媒体はどうするのかしら。やはり特殊な鉱石?それとも宝石?」


パチュリーが問いかける。大体魔法で触媒となるのは鉱石や宝石といったものが多い。自前の触媒にあれば良いが・・・と彼女が考えた辺りで桜花が少し困った表情になる。


「触媒だが・・・・実は変化魔法に使う触媒は使用者によって異なるんだよ。その知り合いは緋緋色金(ヒヒイロカネ)を触媒に使っていた。使用者にとって一番相性のいい触媒ってのはその時になってからじゃないと分からないんだ」


「つまり無月に適した触媒がもう入手できない物質である可能性もあるわけね・・・・」


桜花の答えにため息をつくしかないパチュリー。すると考え込んでいたアリスが顔を上げる。


「悩むのは無月に必要な触媒が分かってからにしない?今から悩んでも意味がない気がするわ」


「・・・・それもそうね」


「確かにな・・・・俺は準備のために一度白玉楼に戻らねーとな・・・・」


各々は今日は一度解散することにし、桜花はその場から霞のごとく姿を消すように転移魔法で去る。アリスは用事がなくなったこぁが直々に送り出す事となり、パチュリーは前途多難な現状に小さくため息をつくしかなかった。


‡‡‡


同時刻 紅魔館 レミリアの自室


「お嬢様、御用とは・・・?」


レミリアの自室に呼び出された咲夜。今回の呼び出しは咲夜がレミリアに使えて以来初めてとも言える仕事外の呼び出しであった。ゆえに咲夜はどんな用で呼び出されたのか疑問に思う。


「・・・・近い内に貴女は重大な決断を迫られるわ。それは無月にも関わる内容よ」


「・・・・重大な決断・・・・ですか・・・?」


目を閉じたまま言葉を選ぶように話し出すレミリア。彼女の能力として幻想郷縁起に記される"運命を操る程度の能力"は実際に運命を操るわけではなく、運命の分かれ道とその結果の一部を観ることができるという能力である。つまりはレミリアは訪れるであろう決断を前もって教えることが出来るのである。それは結果として運命を操ることに繋がる、そうレミリアは考える。


「その決断は貴女のこれからに大きく関わるわ・・・・無月もね。ここまで不鮮明な選択肢は私も初めて観る。だからこれしか言うことが出来ないの。」



「・・・・ありがとうございますお嬢様。心に留めておきますわ」


レミリアの言葉を受け、お辞儀をして感謝の意を示す咲夜。レミリアは暫く考え込んでいたが、考えを払うように頭を振ると、ドアに手をかける。


「少し疲れたわ・・・・今日はもう寝る。貴女も上がりなさい」


「はい。お休みなさいませお嬢様」


疲れた様子でベッドルームに入ってゆくレミリア。それを見送った咲夜は、少しの間考え込んでいたが、よい答えが浮かばなかったらしく、とりあえず翌日にパチュリーの元に向かうことにするのだった。


‡‡‡


翌日 紅魔館 地下図書館


「ずいぶん人が集まったな・・・・」


「目的は別々でもここまで集まるのは予想外よ」


次の日の夕方、紅魔館の地下図書館にはかなりの人数の人妖が集まっていた。無月とパチュリーは思わずため息をつく。無月の適正触媒を知るために必要な知識や魔法陣を描く魂魄桜花、パチュリーに相談に来た十六夜咲夜、無月に魔法を教えているアリス・マーガトロイド、何時もの様に本を読みに来た霧雨魔理沙、好奇心旺盛なフランドール・スカーレットと普段の地下図書館では考えられない人数がこの場に集まった。


「ま、とりあえず俺は俺の仕事をするかね・・・・この魔法陣の上に立って俺が合図したら魔力を流してくれ」


「・・・・分かった」


桜花が図書館中央の広い場所に魔法陣を描く。その魔法陣は複雑な陣を描いており、一瞬で描いた桜花の実力の高さをうかがわせる。そして無月が魔法陣の上に立つと、桜花は右手に魔法陣を出現させ、その魔法陣から一冊の本を取り出す。


「パチュリー・・・・あれって・・・・」


「間違いなく魔導書(グリモワール)ね。しかもあの厚さと形状・・・・禁書レベルの魔導書かしら」


「・・・・(あの文字・・・・一度だけどこかで見た気がする・・・・どこでだったかしら)」


興味を持った魔理沙がパチュリーに話し掛ける。パチュリーも小さく頷くとその魔導書の種別を予測する。パチュリーの隣に居たアリスは、桜花が取り出した魔導書の表紙に書かれていた文字を見た気がし、どこで見たかを思い出そうとする。そんな中、桜花が(じゅ)を紡ぎだす。彼の口から発せられる言葉は特殊で、魔法使いたるパチュリーやアリスですら理解できなかった。


「・・・・始めてくれ」


「・・・・」


呪をつむぎ終わり、やや疲労を顔に浮かべた桜花が無月に声をかける。無月は小さく頷くと、魔法陣に魔力を送り始める。パチュリーの使った魔法薬に含まれていた魔力を取り込んだ結果、無月は人間の血4割妖怪の血4割魔法使いとしての血2割という混血状態となっていた。幻想郷縁起では魔法使いも"妖怪"に分類されているため、無月は6割妖怪人間4割という微妙な場所分類されることとなる。


「・・・・結果が出たな」


「・・・・結果は?」


難しい表情で魔法陣に出た結果を読み取る桜花。結果が気になるのか、地下図書館に集まった面々は息を飲んで桜花の言葉を待つ。


「媒体は"血"・・・・。吸血鬼でもないのに血が媒体になるなんてのは異例中の異例だよ・・・・。ちなみに通常の魔法の適正はオールマイティーといってもいいな・・・・悪い言い方をするなら器用貧乏か」


やや信じられないような表情で呟く桜花。内容に一同は驚いていたが、桜花が付け足すように言った内容に少し顔を緩める。そんな中アリスとパチュリーが桜花に近寄る。


「血が媒体になった理由に心当たりは?」


「・・・・彼が半人半妖だから・・・・というのが一番しっくり来る理由だな。半人半妖ってのは前例が少ないんだ・・・分からないことのほうが多いんだよ」


「もう少し観察を続けてみるわ。何かあれば相談したいのだけれど」


アリスの質問にこめかみを押さえながら桜花が答える。その手に合った魔導書はいつの間にか消えていたが、それを気にすることなくパチュリーは桜花に提案する。彼もその内容には賛成なのか、小さく頷くと反対側の手に魔法陣を出現させ、そこから一冊の魔導書を取り出す。


「・・・・これは?」


「世には出回らなかった魔導書さ。変化魔法についても多少は書かれている。力になるはずだ」


受け取ったパチュリーの質問に答える桜花。その内容にパチュリーが驚き、詳しく問いただそうと顔を上げた時には既に桜花の姿は消えていたのだった。


「最後の最後まで謎の多い人物ね…」


ため息をつきながらもこぁに厳重に保管しておく様に指示を出すと、ショートヘアの小悪魔(呼び方は"リトル"にしたそうな)にもある指示を出す。そしてクルリと後ろを振り向くと、ややジト目でその人物を見据える


「で?咲夜はどんな相談なのかしら?」


「・・・・実は・・・・」


‡‡メイド説明中‡‡


「・・・・それはまた不明瞭な内容ね・・・でもレミィが警告したとなると無視はできないわ」


「・・・・というと?」


咲夜の説明を受けてため息をつくパチュリー。そんなパチュリーに質問する咲夜。するとパチュリーは少しの間考え込むと、言葉を選びながら咲夜に説明を始める。


「私も詳しくは知らないけれど、レミィの能力は彼女の母親から受け継いだ能力(ちから)らしいわ。でもレミィの力はまだ未熟、故に選択肢しか観えないらしいのよ。でも、重要な場面となるとその能力はレミィに力を貸している・・・・まるでレミィを守るかのようにね・・・・だからこそ無視できない。」


パチュリーの説明を黙って聞いている咲夜。そこにアリスが魔理沙、無月を伴ってやってくる。


「どんな話をしてるのか知らないけれど、こういう時は複数で意見を出し合ったほうがいい解決策が出ると思わない?」


「・・・・少しは力になれるはずだ」


「私だって力になれると思うぜ?」


「・・・・それもそうね」


アリス達の申し出をありがたく受けることにしたパチュリー。そこでまずはこれまでの事を三人に説明する。すると真っ先に魔理沙が口を開く。


「寿命関係の決断じゃないんだろ?そしてスペルカードルールが決闘の基本となってる以上どちらかの命の危機でもない・・・・じゃあレミリアが言う"重要な決断"って何のことだ?」


「そうね・・・・そこが一番不明瞭すぎる。どちらかがこの紅魔館を去ることも考えられない。一体どんな決断が二人のこれからに関わるのかしら」


魔理沙の言葉にアリスが同意する。そこにフランが参加する。


「それ、あいつ(レミリア)の口癖でしょ?判ってる振りとかじゃないの?」


「だとすれば咲夜に警告する理由にならないわ・・・・それにレミィの能力(ちから)は"ここぞ"という時には結果を残すのよ・・・・だから無視するのは危険かもしれない」


フランの言葉に言い返すパチュリー。そこで全員が考え込む。


「だーーー!!そもそも私ら無月や咲夜の事詳しく知らないのにどう考えろってんだ!!」


「ここは魔理沙の意見に賛成ね。私も詳しくは知らないもの・・・・考えようがないわ」


魔理沙が頭を掻き毟りながら絶叫する。アリスも目頭を押さえながら同意する。そこで今まで考え込んでいた無月が提案を出す。


「なら俺と咲夜の共通点を挙げてみるのはどうだ?そうすれば何か思い浮かぶことがあるかも」


「・・・・そうね。じゃあ無月、咲夜はお互いに共通点と思う部分を挙げていきなさい。こればかりは私たちには出来ないし」


「分かりました」


無月の提案に、少し考え込んだパチュリーが頷く。咲夜も良い考えだと判断したのか、了承する。


‡‡執事&メイド会話中‡‡


数時間後


「・・・・案外共通点多かったわね」


「・・・・・本当ね」


「・・・・こりゃあ以外だった」


「すー・・・・すー」


数時間後、両名の共通点を書き出した紙を見なが悩むパチュリー、アリス、魔理沙の三人。途中で眠気に負けたフランは無月が抱えて自室に運ぶ。咲夜も無月との共通点がここまで多かったことに目を見開いている。特に三人が注目したのは


・幻想郷の生まれではない事(厳密に言えば紅魔館自体外から幻想入りしたため内容としては微妙)

・高度な戦闘技術を生きる為に身につけたこと

・本当の生年月日と年齢が不明であること

・本当の名前がないこと。また現在の名前がつく前は暗号名(コードネーム)で呼ばれていたこと

・体術や暗殺術を得意としている事

等等etc...ここまで共通点が多かった為、三人は一瞬とはいえ運命というモノを信じそうになってしまう。


「こうして見ると共通点、多いわね」


「レミリアの言う重要な決断って何のことなんだ?」


「むしろこの共通点だらけの二人に関わる重要な決断ってどんなのなのよ」


アリスが困ったように口を開き、魔理沙が呆れたように椅子にもたれ掛かる。パチュリーもお手上げなのか、椅子に深く座りなおす。


「・・・・"その時"になったら考えれば良いんじゃないか?」


「結局そういうことになりそうですわね・・・・そういう覚悟が必要になる、とだけ心の隅に置いておくしかないみたいね」


無月が疲れたように呟く。すると咲夜もその結論に至ったのか、ため息をつく。こういう結論を出すのが早いことも二人の共通点である。そして咲夜と無月は心を切り替え、三人に向き直る。


「では自分たちは仕事があるのでこれで」


「パチュリー様、本日は相談に乗っていただいてありがとうございます」


お辞儀をすると二人は本日の業務に戻るために図書館を後にする。そんな二人を見て魔理沙がポツリと呟く。


「プライベートと普段の切り替えが早いってのも共通点だな・・・・思考回路が似通ってるんだろうな・・・・あの二人」


魔理沙の呟きに、アリスもパチュリーもただただ頷くしか出来なかった。


その後アリス、パチュリーは今後の無月改造計画(魔法を教える計画のこと)を考え、ついでに魔理沙の魔法も見直す事になり、解散する。魔理沙はやや不満だったようだが、妖夢に負けた事を指摘されると、渋々だが頷くのだった。

どうも作者のめーりんです


無月VS萃香の結末は前書きから皆様の創造にお任せしたいと思います。

ただ一言言うのならばその戦いで"萃香は満足した"

これがヒントであり、答えです



さて、そんな中また一つ無月の戦術が広がり、新たな謎が生まれ、波紋が生じました。これからどうなるか楽しみにしつつ読んでいただけたらと思います。


この話にも既に出ましたが、オリジナルの設定が出てきます。原作の話にさほど影響を出さないように気をつけながらですが。



アンケートの結果(とはいえ結果は判り切ってましたが)全部詰め込もうと思います。(盛大な自爆)


では次回もお楽しみに

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