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東方 朧雪華  作者: めーりん
三日おきの百鬼夜行
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第十七章 萃まる夢、幻、そして百鬼夜行

春雪異変が原因でその年の宴会が減ってしまった


彼女はそのことを不満に思い、幻想郷の住人たちの意識を集めて三日おきの宴会を行わせ、その騒ぎで嘗て共に騒いだ鬼の仲間を呼び戻そうとした




これはそんな御伽噺のような存在が起こした異変

‡‡‡


集まる妖力に無月が目を細める。右に立つ桜花の手で治療されてからというものの、妙に体の感覚が冴えている気がした、ということもあるが、無月の兵士としての"勘"が警鐘を鳴らしていた事が大きな理由でもある。


「・・・そんなに警戒するなよ・・・それとも俺が敵になるとでも思うのかい?そんな事今したら萃香に殺されちまう」


「・・・"今"という事はお前も闘いたくてウズウズしているという事か」


「桜花も相変わらず戦闘好きねぇ・・・」


苦笑気味に話す桜花。その言葉にどこか理解していたというように答える無月。そんな無月と桜花を見て、紫はクスクスと笑うのだった。


「紫、桜花、そいつが"外"からつれて来たって半人半妖かい?」


「そうよ萃香」


「お前のオーダーは叶えたんだ・・・今夜でこの宴会騒ぎも終わりにしてくれよ?」


無月の前に立つ小柄な少女。頭の両側から突き出ている角、そして何よりも発される強烈な気に無月は体の中で何かが暴れるのを感じた。そんな無月を傍目に幻想郷で見ることが出来なくなっていた種"鬼"たる少女"伊吹(いぶき)萃香(すいか)"は手に持つ瓢箪を一呷りすると、ニヤリと笑みを浮かべる。そんな彼女を前に桜花と紫は一言言うと、二人から離れて行き、神社の境内内に結界を張る。それは周囲に被害を出さないための手段であり、鬼の闘争に巻き込まれないための措置でもあった。


‡‡‡


「まずは自己紹介しとこうか。私は伊吹萃香。見ての通り鬼だよ」


「・・・赤羽無月。紅魔館フランドール・スカーレット専属執事兼門番補佐役。・・・半人半妖だ」


のんびりとした様子で萃香が無月に話しかける。お互いに自己紹介をした両者は、神社の境内の中心で向き直る。萃香は余裕があるのか瓢箪を呷り、のんびりとしているが、無月は自身の中の何かが"逃げろ"と警鐘を鳴らす一方、武人としての自分は"強敵"との戦闘に血が滾っていることも自覚できた。


「さて・・・紫が結界張ったみたいだし、そろそろ始めようか。あんたの事はずっと見てたよ?怪我してるのに宴会の手伝いをしてたり誰かに優しくしたり。正直あんたみたいな奴は私も始めて見たよ。」


「あの視線はやはり貴女だったか・・・」


「・・・そういえば血を使うんだったっけ?桜花に聞いたことがある。血は魂そのものだとね・・・鬼の力、萃める力、その血に教え込んであげるよ!」


肩をクルクルと回しながら萃香が言葉を紡ぐ。無月はスルトルを握り締めると、萃香を視界に納めながら腰を落とす。"先手必勝"その気迫が伝わったのか、萃香は目を猫のように細めると構える。そして萃香が嬉しそうに宣言すると同時に無月は大地を蹴り、一気に間合いを詰める。


「闇符「朧月斬」・・・!!」


「速・・・ッ!?・・・なーんてね」


速攻といわんばかりに宣言した無月のスペル。繰り出された居合いは目を見開いた萃香の胴体を真っ二つにしたかに思えたが、次の瞬間萃香の体は霧となり無月の目の前から消える。


「疎符「六里霧中」・・・しかし速いねぇ・・・まるで天狗みたいだ。でも今の私にただの攻撃は通じないよ?さあ・・・どうする?(今のは危なかったね・・・)」


「・・・」


無月から離れた位置に滞留する白い霧。そこから聞こえる楽しそうな萃香の声に無月は思考を高速で働かせる。そんな無月を見て萃香は内心では久しく忘れていた危機感を覚えていた。萃香が宣言したスペルである疎符「六里霧中」は自分の能力を最大限に生かし、相手の"ただの"攻撃を完全に避けることができるスペル。しかしこのスペルには大きな抜け道が隠されている。それに気づくかどうか、それを萃香は密かに楽しみにしていた。


「・・・」


「おや・・・スペルかい?今の私に攻撃通じないんだよ?あんたのスペルも今まで見させてもらってるんだ。無駄だと思うがねぇ」


無月が懐からスペルカードを取り出す。それを見てクスクスと笑みをこぼす萃香。無月が今までの戦闘で使用してきた攻撃系のスペルを霧となっていた萃香は全て見てきたため、通じることはないと笑う。


「銃符「炸裂弾丸(リアクティブバレッド)」」


「・・・へぇ・・・まだ手の内を隠してたんだね。私を楽しませてくれよ?」


無月が銀筒2本を投げてからスペルを宣言する。すると銀筒が炸裂し、無月の手に集まる。それを見て萃香は少し嬉しそうに話しかける。


「・・・」


「ガッ!?」


無月の手に集まった血液が主の求める形を形成する。無月の手に握られたのは深紅の銃であった。そして軽い動作でトリガーを引くと、銃が形を崩し一発の弾丸に凝縮、萃香目掛けて飛翔する。弾丸は霧状の萃香の手前で破裂すると。気が込められた弾丸となり霧に"直撃"する。萃香のスペルである疎符「六里霧中」の抜け道とは"ただの攻撃ではなく、霊力や妖力などが込められていたら直撃する"事。萃香の言葉からその点に気がついた無月の攻撃を受けた萃香は再び姿を現すと鼻を押さえながら立ち上がる。


「いたたた・・・まさかアレだけの言葉から今のスペルの抜け道を見抜くなんてね・・・よし・・・あんたにゃ下手な小細工は意味ないみたいだし殴りあうとしようか!!」


「ガッ・・・!?」


「ま、人間が鬼の力と純粋にぶつかり合えばそうなるわな。しっかし萃香も結構"キレてる"っぽいな・・・やっぱ満月の夜に闘わせようとしたの間違ったかな・・・」


どこか嬉しそうな声音で目が赤くなった萃香が突撃する。その深紅の目に見られた瞬間、無月は体の力が入らなくなる錯覚に陥り、次の瞬間後方に吹き飛ぶ。その様を見ていた桜花はやや顔を引きつらせながら呟く。


「まだ終わりじゃないんだろう?私を楽しませておくれよ」


「・・・ッ・・・!!」


カラカラと笑みを浮かべる萃香目掛けて土煙を突き破って無月が突撃してゆく。咄嗟に防御したのであろう右腕の部分の袖は弾け飛んでいたが、肉体に影響は出ていなかったようである。これは無月の執事服を作ったパチュリーの魔法の技術によるものである。鬼の剛力から無月を守ったその魔法の技術に桜花は内心感心する。


「・・くらえ・・・!!」



「お・・・?」


突撃する無月は、萃香の手前で石畳に踵落としを行い、土煙による目くらましと、攻撃手段として石畳を即席の弾丸として放つ。飛来する石礫を簡単に砕いた萃香は、無月の姿を見失う。見失った無月を探すために周囲をきょろきょろと見渡す萃香。


「血符「破城鉄槌」・・・!!」


「おおっ!?」


ふと萃香を影が覆う。何事かと萃香が見上げると、そこには博麗神社の半分程度の大きさになった深紅の鉄槌(銀筒12本分)を振り下ろす無月の姿が。ここで勝負を付けるかの如く振り下ろされる鉄槌、しかし無月の耳に、萃香の声が響く。


「鬼符「ミッシングパワー」!!」


「ガ・・・ふ・・・!?」


「おいおい・・・いくらなんでもやりすぎだろう・・・」


「無月・・・!?」


萃香がスペルを宣言した瞬間、無月のスペルである血符「破城鉄槌」は砕け、さらに無月は後方に凄まじい勢いでぶっ飛んでゆく。繰り出されたスペルの容赦のなさに、桜花は呆れたように首を振る。その場に立つ萃香の巨大さは凄まじく、高さだけでも4m近くあり、その巨大さでぶん殴られた無月へのダメージを考えると、下手したら死んだのではと心配になる桜花。そんな中突然聞こえる第三者の声。萃香がそちらに目をやると、そこにいたのは若干ふらつき気味のメイド長こと十六夜咲夜が見えない結界に両手を付けていた。



「意外な人物が来たな・・・・・・!?」


---ザワリ


桜花がやや驚いたように呟くが、何かを感じ取ったように無月が吹き飛んだほうを見る。土煙が一瞬で晴れ、それと同時に立ち込める異質な妖力。その妖力に、萃香はミッシングパワーの状態で警戒し、驚いた表情の桜花はほんの僅かに揺らぎを感じ取り、今まで戦闘を見守っていた紫は扇で口元を隠すと、密かに笑みを浮かべる。



「以外に時間が掛かったわね」


「理性で押さえつけていたのかもな・・・・で、萃香の一撃で"妖怪"としての力が活性した・・・・」


徐々に収まってゆく妖気を感じ取りながら話し合う紫と桜花。萃香は構えながらもどこか懐かしい感覚に陥り、見ていることしか出来ない咲夜は心配そうに無月がいるであろう方向を見守る。


「・・・・」


「緋色の翼・・・・?形状は鴉天狗のに似てるな・・・・そしてあの一撃から使用者を守る魔法か・・・・凄いもんだな」


「天狗が鬼に立ち向かう・・・・希少な光景ですわね」


砂埃が晴れた場所には、肩甲骨辺りから鮮やかな緋色の翼を生やした無月が立っていた。執事服は役目を果たしたのか全て吹き飛んでおり、白のワイシャツに漆黒のズボン(そして三つのポーチ)という軽装だが、むしろ萃香の、鬼の剛力を受けても最低限の傷で済ませることを可能にしたパチュリーの技術に桜花は深く感心する。


「いいねぇ・・・・これで決めさせてもらうよ!!百万鬼夜行!!」


「・・・・決めに掛かったか・・・彼がどう出るか・・・・だな」


「・・・・無月・・・・」


「あのメイド・・・・無月を心配してここまで来たのね。・・・・ここで負けたら男が廃るわよ?」


嬉しそうに萃香が大きさを元に戻して宣言する。爆発的に高まる鬼の妖力に、博麗神社の周囲に張り巡らされた結界がざわめく。微動だにしない無月を心配そうに見つめる咲夜。そんな咲夜を見て紫は誰に言うでもなく呟く。しかし紫の呟きは確かに無月の耳に届いた。


「これで・・・・終わりだよ!!」


萃香が号令を出す。それと同時に萃香の背後から無数の妖力弾が無月に向かって放たれる。


「無月・・・・!!」


微動だにしない無月を心配し、咲夜が何とかして結界を破ろうとナイフを振るう。


「さあ・・・・見せてみなさい。いかなる状況でも諦めなかった貴方の力を・・・・」


紫が扇で口元を隠しながら無月に語りかける。そして・・・・


「戦符「武神演舞」・・・!!」


今まで微動だにしなかった無月がスペルカードの宣言と共に動く。

どうも作者のめーりんです


今回は無月がスペルを発動したところで終わりです。理由?鬼に半分妖怪とはいえ天狗の血を持つ無月が挑むとどうなるか?それを皆様に想像してもらいたいと思ったからです。


そして無月の最後に発動したスペルですが・・・・正直これしか思いつきませんでした。最初は武神闘宴にしたろか思ったんですが、某狩猟ゲームの難関クエストと被るため没。他にも考えたんですが描写する内容から上手くフィットするのが浮かばなかったためシンプルにしました。


前回の更新でも後書きに書きましたが、次の更新までにアンケートの回答がレビューや感想になければ全部1の構想で行くことに・・・


ですのでそれはちょっと・・・という方は遠慮なんていらねぇ!!がんがん意見お待ちしております!!




次回!!勝負の結末と咲夜の決意(仮題)

お楽しみです



てかオリキャラ出してる時点で原作基準なんてあってないもんですがそれを言っちゃあ本末転倒ですよね

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