第8話「スサノオの追放」
こんにちは。
光を取り戻した世界は、ようやく平和を取り戻したかに見えました。
ですが、空気を読まないあの男——スサノオ。
彼の口から飛び出したのは、まさかの「俺のおかげ」アピール。
今回のお話は、神々の我慢がついに限界を迎える瞬間です。
真面目にシリアスな場面のはずなのに、どこか卒業式とバラエティ番組が混ざったような追放劇を、ぜひ楽しんでください。
光が戻った世界。
鳥は飛び、人々は田畑に戻り、子どもは校庭でサッカーを再開した。
神々も胸をなで下ろし、ようやく平和が訪れた——そう誰もが思ったその時。
「なあ、俺の功績も認めろよ!」
いきなり声を張り上げたのは、もちろん空気を読めない男だった。
「ほら、岩を押すの、俺も手伝ったし! あれ俺の腕力のおかげだろ! 神々の筋トレ部門では俺がエースだし!」
スサノオである。
神々の視線は一斉に冷たくなった。
「お前が暴れてアマテラスを引きこもらせたんだろ」
「田畑を壊し、堤防を崩し、馬まで投げ込んで……」
「どの口が言うんだ」
スサノオはむっと顔を赤くし、手をぶんぶん振った。
「細けえな。過去は過去! 今はハッピーエンドだろ! ていうか俺がいたからオチもついたんだし!」
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アマテラスが立ち上がった。
その目は太陽のようにギラリと輝いていた。
「スサノオ。あなたの暴走はもう限界。ここから出て行きなさい」
静寂。
神々の間に、ドキュメンタリー番組のBGMのような重い音楽が流れた気がした。
スサノオは絶句した。
「……は? マジで? 解雇通告? 俺まだボーナスもらってねえぞ!」
神々は静かに頷いた。
「追放だ。お前は地上へ降りろ」
「そこで己を知れ」
場の空気は、もはや学級会の決議だった。
「はい、じゃあ多数決とります。スサノオ追放に賛成の人?」
林立する手。
「反対の人?」……シーン。
「棄権は?」……誰もいない。
司会役のオモイカネがまとめた。
「はい、全会一致で可決。議事録に残しておきます」
パチパチと形だけの拍手が響いた。
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スサノオはしばらく黙っていた。
だが次第に口角が上がり、やがて鼻で笑った。
「ふん、いいぜ。俺が行けば、地上はもっと面白くなる! 俺がいないと退屈だって言わせてやるぜ!」
そう言って地面をドンと踏み鳴らし、無意味にポーズを決める。
「見てろよ。俺が本気を出したら、海も山も震えるんだ! あと祭りも毎日開催だ! 日替わりで! 今日はたこ焼きフェス、明日は花火大会、明後日は“世界最長の流しそうめん”チャレンジ!」
神々は顔を見合わせ、全員で同じツッコミを入れた。
「絶対ろくなことにならない」
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そのとき、ツクヨミがぼそりと呟いた。
「……ところで、荷物とか持ってかないの?」
「荷物? そんなもんいらねえ! 俺には拳と声量と無限のテンションがある!」
スサノオは胸を叩く。
「荷物まとめてゴチャゴチャしてたら、ただの“お引越しバラエティ”じゃねえか。
俺はそんな庶民的なの嫌だ。もっと“旅立ちのドキュメンタリー”みたいにカッコよく行く!」
アマテラスは額を押さえた。
「……つまり荷造りは他の神に押しつけるってことね。去る時まで迷惑なのね」
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神々は結局、スサノオを見送ることにした。
まるで卒業式のように整列し、形式だけの拍手を送る。
だがその拍手には、涙も感動もない。
「じゃ、行ってきまーす!」
スサノオは雲を蹴り、派手にポーズを決めながら地上へと降りていった。
BGMは勝手に脳内で流れる『旅立ちの日に』。
だが、途中で声を張るのを忘れなかった。
「俺が地上でバズったら後悔すんなよ! お前らが“フォロー外したこと”を絶対スクショして拡散してやるからな!」
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後に残された神々は、ため息をつき合った。
「大丈夫かな……」
「いや、不安しかない」
「次に被害届が出るのは地上だな」
ツクヨミがぼそりと呟いた。
「嵐は去ったようで……実は台風本番はこれからだな」
アマテラスは深く目を閉じた。
「……もう知らない」
だが心のどこかで、弟の行く末を案じる影が揺れていた。
空には再び太陽が昇り、世界を照らした。
しかしその裏で、スサノオの“迷惑行為シーズン2”が始まろうとしていた。
読んでくださりありがとうございます!
ついにスサノオが天界から追放されました。
彼の暴走ぶりはもはや「限界突破」でしたが、それでも出ていく姿はどこかコミカルで、完全に“迷惑系インフルエンサーの卒業式”でしたね。
この追放劇をきっかけに、物語は地上編へと移ります。
スサノオが何をやらかすのか、そして彼を待ち受ける試練とは?
次回もどうぞお楽しみに!