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第4話「禊 — 新しい光の誕生」

こんにちは。

今回は「禊ぎ」です。古事記ではここでアマテラス・ツクヨミ・スサノオの三柱が誕生します。

ですが本作では、朝ドラ演出・ナイトモード切替・水切り三十段といったカオス仕様で登場。

父イザナギの「ワンオペ・世界リブート作業」にぜひお付き合いください。

 川の流れはまだ若く、透明な水が岩肌をすべっていた。

 水面は光を映すというより、ただ空の青を借りているにすぎない。生命の匂いがまだ薄いその川辺に、イザナギは立っていた。


 黄泉帰りの身体は、まだ冷たい闇をまとっている。指先から肩へ、じわじわと鉛のような重さが残っていた。顔色も悪く、完全に「徹夜明けサラリーマン」だった。


「これじゃ世界を続けられない」

 ぶつぶつ独り言を言いながら、川へ足を突っ込む。冷水が骨に響いた瞬間、全身が跳ねる。


「うおっ……冷たっ!かき氷シロップ抜きで頭キーンした感じ」

 震えながらも膝まで沈め、やがて腰を落とす。


 とりあえず洗顔。ザバッと水をかけると、川面に散った飛沫が陽を受けて光り、そこから突然まぶしい輝きが立ち上った。



---


「私はアマテラス」

 きらきらした女神が登場。川辺が急に朝ドラのオープニングみたいに輝き出す。草木の葉脈までもが透けるようにきらめき、空気の湿り気さえも新鮮に感じられた。


「おぉ……太陽そのものじゃないか」

 イザナギは思わずサングラスを探した。


「光は隠さず、すべてを映します」

 アマテラスはポーズを決める。背後で川にかかる虹、効果音はキラリン。

 その微笑みには、人を包み込むような温かさと、少しだけ自信過剰な眩しさが同居していた。



---


 次に右目をすすぐと、静かな影が立ち上った。


「ツクヨミ」

 低い声とともに、夜の気配が漂う。湿った風が木立を揺らし、川面が静かに落ち着いていく。


「なんか急にナイトモードに切り替わったな……」

 画面がブルーライトカットされるみたいに暗くなる。


「夜には夜の秩序があります」

 落ち着いた声。だが妙に眠そうでもある。

「それと……0時以降は深夜料金です」


 川辺は一転して静まり返り、虫の声がぽつりぽつりと現れる。イザナギは肩を竦めつつも、その穏やかさに心が少し休まるのを感じた。



---


 最後に鼻をすすぐと、派手な水しぶき。


「俺はスサノオ!」

 ド派手に登場した青年は、川をザッパーンと揺らす。

「うおりゃー!」と叫びながら水切り石をぶん投げ、三十段跳ねた。


「いや、特技アピールの場じゃねぇ」

 イザナギは頭を抱える。


 スサノオは笑いながら魚を素手でつかみ、勝手に刺身を作り始める。

「腹減ったろ?黄泉帰りにはDHAだ!」


 だが、笑みの奥の瞳は妙に切ない。

「……母ちゃんに会いてぇな」

 と、急にしんみりするからタチが悪い。魚の匂いと涙の匂いが、入り混じって漂った。



---


 三人を前に、イザナギは肩を落とす。

「光と闇と嵐……バランス取れるのか、これ」


 それでも父として役割分担を始める。


「アマテラス、お前は空を照らせ。人々に希望を与えろ」

「はい。ついでに発電もします」


「ツクヨミ、お前は夜を守れ。人々に休息を与えろ」

「承知しました。Wi-Fiは深夜帯重くなります」


「スサノオ、お前は海をゆだねる。……だが、荒れるなよ」

「わかってる!……たぶん」

 そう言ってまた石を投げ、カモメを飛び立たせる。


 イザナギは深いため息をついた。疲労と安堵とが入り混じった呼気が、川面に波紋を広げた。



---


「三人で、この世界を支えろ。——俺の代わりに」


 朝日が川面に反射し、三つの影を長く伸ばす。

 それは、これからの世界に続く新しい道……というより、学級委員と副委員とトラブルメーカーが無理やり班を組まされたみたいな空気だった。


 それでも、確かに世界は息を吹き返した。

 光と闇と嵐が交錯しながらも、それは人の営みの根っこになるものだった。


 イザナギは川辺に腰を下ろし、濡れた掌をじっと見つめた。

 そこには、もう黄泉の冷たさではなく、新しい生命の熱が宿っていた。


 その未来がどう転がるか、イザナギ自身にもさっぱりわからなかった。

 ただひとつ、川の音だけが変わらず耳に響いていた。



第4話を読んでくださりありがとうございます!

禊ぎから生まれた三兄妹は、さっそく性格バラバラで、学級委員+副委員+トラブルメーカー感が漂っていましたね。

次回はさらに、この三人がどう関わり合い、どう「バズる」のかに迫っていきます。どうぞお楽しみに!

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