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覚醒編: 覚悟⑤


「放課後さ、ゲーセン行こうぜ」


斎――俺の祖父の知り合いである転校生であり謎の多い同級生が、昼休みにそう言ってきた。


「ゲーセン? 超ひさびさなんだけど〜!」

「いいじゃん、行こ行こ〜!」


双子ギャル、姉のミナ(白ギャル)と妹のカナ(黒ギャル)はノリノリだ。

そして、なぜか俺・そうもそのメンツに組み込まれていた。


(な、なんで俺まで……?)



島のショッピングモールにあるゲームセンター。

音と光が溢れる空間に足を踏み入れた瞬間、俺の神経は崩壊寸前。


「さて、なにやる〜? レース? 格ゲー? 音ゲー?」


ミナが笑いながら、キラキラした瞳で話し出す。斎もテンション高めに応じている。


(ヤバい、会話が陽キャすぎる……!)


体温が上がる。視界がゆがむ。

脳内警報が鳴り響き、もう少しで泡を吹いてぶっ倒れそうになった――その時。


「……ほら、水」


横から差し出された冷たいペットボトル。


「カナ……?」


黒ギャル・カナが無言で水を渡してくれていた。


「……大丈夫、っしょ」


そう小さく呟くと、彼女はすぐにミナたちの方へ戻っていった。


ペットボトルの冷たさが、現実に引き戻してくれる。

何故だか、心まで少しだけ落ち着いた。



レースゲームでは即クラッシュ、格ゲーでは連打で自滅、音ゲーは難易度“EASY”でもコンボ0。


(うわ……ついていけねぇ)


だが、笑い声は絶えず、俺がヘタでも誰もバカにしない。


そして最後、クレーンゲーム。景品のぬいぐるみをどうしても取りたいらしい。


「え〜全然落ちないんだけど〜!」

「ここのアーム、絶対弱いわ」


ミナと斎が何度も挑戦しては外していた。


「ちょっと、俺やってみていい?」


気づけば、俺が100円玉を投入していた。


集中。アームの動き、ぬいぐるみの重心。

数回のトライで――


「おおっ! 取れたーー!」


ミナが目を丸くする。


「ゲーセン、よく行くの?」


「あ……いや、転校する前までは……週1で一人で来てた」


「へぇ〜……意外!」


ミナは嬉しそうにぬいぐるみを抱えて微笑んだ。


不思議だ。

こんなに居心地が悪くて、不安だらけだったのに。

少しだけ、輪の中にいられた気がした。



時計の針が夜の7時を指した頃。


「じゃ、今日はここまでだな。また明日」


斎がまとめ役のように言い、自然に解散ムードになる。


家路に就く途中、斎と二人きりになった。


「……さっきの、お前の姿。いつもより輝いていたぞ」


「は?」


「その姿、大事にしろ」


意味深な言葉を残して、斎は足を止める。


「ちょ……おい! 待てって!」


斎を追って駆け出した瞬間――


「きゃああああっ!!」


悲鳴が夜の街に響いた。



声の方へ走っていく。ショッピングモール裏の路地――そこには、あの“異形”がいた。


モブBの欲に取り憑いた霊が、悪魔のような姿へと変貌した怪物。


「おいおい、マジかよ……!」


その近くには――双子ギャル、ミナとカナがいた。


怪物は唸り声を上げ、獲物を狩るかのようにゆっくりと2人に歩み寄る。


「動いてミナっ!」

「うう……足が、動かない……!」


恐怖に凍りついた姉妹は、逃げられない。


「やめろ……!」


俺の足が、勝手に動いた。


霊装の力が、俺の意志に応じて反応する。


白とグレーを基調とした、不完全な霊装が身体を包み込んでいく。


「俺が……守る……っ!」


走りながら叫び、拳を握る。

霊力が手に集まり、拳が淡く光を放つ。


ドガッ――!


怪物の顔面に拳を叩き込む。


「彼女たちには、指一本、出させねぇ!!」


叫びと共に、俺の一撃が怪物を後退させた。


荒く息を吐きながら、俺はミナとカナの前に立ち塞がる。


(守る……絶対に)


まだ、この戦いの意味も、真の力もわからない。

だけど――俺は、逃げない。


◆次回へ続く◆

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