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1.9月2日

 俺がこの装置を完成させたのは1ヶ月前のことだ。大学を中退し苦節10年。寝食を忘れ、たった1人で開発に力を注いできた。


 この装置は10センチ程度の立方体である。自家用車の中に置けば、外からスマートフォンでアプリを操作するだけで自動走行できる。車に乗っても運転せずに目的地にたどり着くことができるのだ。しかも、この装置は自家用車だけでなくバスやトラックも応用できる。この装置はカーナビを応用したAIが入っており、自宅を目的地にセットすれば自宅に見える影が人間であれば、それを認識し判断する。建物の中には人がいるだろう。当たり前なことだ。


 この装置を完成させた俺はさっそく有名自動車メーカーやバス会社に連絡し、さらに大学時代の恩師にも連絡した。しかし、誰一人として取り合ってくれる人はいなかった。


 この装置の何がダメなのか。自動運転車はもう実用化に向けて開発が進んでいる。俺はわからなかった。個人が作っているからなのか。自動運転車の実用化はまだまだ先のことだ。これは車内に置くだけで自動運転できる。画期的な装置なのに。これでトラックやバス会社の人手不足は解消するはずだ。


 しかし、誰も相手にしてくれなかった。


 そこで、俺は目的地機能にもう一つの工夫を行った。装置のカメラで建物を確認するのだ。目的地の多くは一戸建ての建物だ。だから、カメラで戸建ての建物を認識し、それを目的地とする。カメラで認識し、建物に人がいれば住宅として問題ない。


 俺はこの装置にKシステムと名付けた。単に自分の名前のイニシャルを付けただけなのだが。ここまでやればどこかの自動車会社が採用してくれるだろう。


 俺は再び動き出した。

 しかし、誰も取り合ってくれなかった。


 20万円という価格が高かったのか。

 安全性に問題があるのか。

 自動運転より運転した方が早いのか。


「無人で公道を走らせるのは国土交通省の認可が必要ですよ」と言った会社もあった。そんな許可なんてものは実際に走らせてからでよいのだ。その利便性に気づいてから、お役所がすり寄ってくるのだ。世界に名だたる発明なんてみんなそんなものだろう。

 しかし、この最高の発明は全く世間に受け入れられなかった。


 父にも相談した。


 大学を出て10年以上引きこもり状態で研究に没頭していたのだ。少しでも恩返しをしたい。恐る恐るKシステムを渡した。父は不思議そうな顔をして装置を眺めていた。


「よし、10台買おう。うちの経費から出す」


 そう言ってくれた。父は大手の運輸会社の社長を務めている。会社は常々人手不足で悩んでいたのだ。そんな会社を助けたい。そう思っての研究でもあったのだ。


 それまでだった。

 父の会社が一〇台買ってくれただけで、それから何度も営業活動を行ったものの全く売れなかった。


 どうしたら受け入れられるのか。俺は悩んだ。


 そして、ある作戦を思いついた。

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