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第15話:解決したところで睨まれるんだもんなぁ

「貴女でしょう!」

「ち、違います! ユーリィ様!」



 赤毛の竜人メイドがぶんぶんと首を左右に振りながら否定する。それでもユーリィは「貴女以外に誰がいるっていうのよ!」と怒鳴っていた。


 アメリはその光景をたまたま目撃してしまった。あぁどうして自分は運がないのだうと思ったのは言うまでもない。ユーリィの声は誰かが駆け付けておかしくはないほど宮殿の廊下に響いている。


 嫌われている自分がこの状況で見つかったら面倒なことになるだろうな、アメリはそっと離れようと一歩、後ろに下がった。



「なんだい、五月蠅いなぁ」

「騒がしいわね、何があったのよ」

「っ!シリル様とマリア様!」



 背後からの声にうわっと飛び退くとシリルは「アメリは反応が面白いね」と笑う。マリアは騒いでいるのがユーリィだと知って警戒しているようだ。そんな二人に気づいたユーリィは、はっと素早く表情を変える。



「シリル様にマリア様。お見苦しいところをお見せしてしまって申し訳ありませんわ」

「それはいいから、何で騒いでいたのさ」



 謝罪はいいからとシリルに促されてユーリィは実はと話し始めた。メイドたちに自身の装飾品などを持たせており、髪型などを整える時にはすぐに出せるようにしていたのだが、お気に入りの髪飾りがなくなっていたのだという。


 近くで落としたとは考えられず、家には置いてきていないことは自分が確かめているので間違いがない。なら、誰かに盗られたのではないかと思い、装飾品を持たせていたメイドを問い詰めていたということだった。


 赤毛のメイド以外に二人のメイドが側にいるのだが、彼女は疑わないのだろうか。そうアメリが思っていると、「そこのメイドはどうなのよ」とマリアが問う。



「この二人は昔から仕えていますし、そんなことするような……」

「なにそれ、贔屓じゃない。この子ばかりを責めるのはいただけないわ。疑うなら全員を疑わないと」



 マリアにそう指摘されて二人のメイドがびくりと肩を震わせた。あれっとアメリは気づく、反応がおかしいなと。


 ユーリィが「貴女たちは何か知っているの?」と質問した時、二人は「何も知りません」と答えていたのだが、妙に声が震えていたのだ。僅かな反応ではあるがアメリは気づいてしまい、彼女たちは何か知っているのではと考える。



「そこのメイド二人、何か知ってるだろ」



 シリルの指摘に二人は「し、知りませんよ!」と赤毛のメイドと同じように首をぶんぶんと左右に振る。どうやらシリルも気づいたようで、「キミら、声が震えてるんだよ」と指さした。



「わたしたちが知っている証拠にはなりません!」

「そうです、わたしたちは何もしてませんし、知りません!」



 確かにそれだけでは証拠にはならない。何かしらの物証がなければ彼女たちは口を割らないだろう。シリルはむっとしながら腕を組んで二人を睨む。王子のその圧はなかなかに精神にくるのだが、二人のメイドは何も言わない。


 どうしたものかなぁとアメリがきょろきょろと見渡してみると、丁度、メルゥがマリアのほうへと駆け寄ってくるところだった。


 にゃーんと足元で鳴くメルゥをマリアが抱きかかえる。アメリはなんとなしに「メルゥ様、何かしりません?」と聞いてみた。



『何かって何かにゃぁ?』

「あの二人のメイドが何かしてたとか」

『あいつらならさっき、物陰で何かしてたにゃ』

「え! 何をしていましたか!」



 アメリの声に皆がどうしたのと見遣る。そんなのお構いなしにメルゥは「なんかきらきら光ってたものをこっそり隠してたにゃ」と話した。



「あの、メルゥ様がお二方がこっそり何かを隠したのを見たと言っています」

「貴女たちが?」



 じろりとユーリィが睨めば、二人のメイドは目を泳がせていた。その反応に全員が何か知っていると察してしまう。アメリはメルゥに何処に隠したのかを聞いてから、「ポケット見せてください」と彼女たちに告げる。



「ポケットに隠していますよね?」



 皆が皆、注視する中、二人のメイドは隠し事ができないと判断したようで諦めたようにポケットから宝石のついた髪飾りを取り出した。



「どうしてこんなことしたの!」

「そ、それは……」

「この子がちょっと生意気だったから……」



 どうやら二人のメイドは赤毛のメイドに思うことがあったようだ。最近、入ってきた新人だというのに生意気だ。ちょっとユーリィによくしてもらっているからと。少し痛い目に合わせようとしたのだと話を聞いて、シリルは「くだらない」と一蹴した。


 あまりにもくだらない。たかだかそれだけで雇い主の大事なものを隠して場を混乱させるなど、召使いとしてどうがしている。常識というのがなく、一人の竜人の将来を潰しかねない行為だという自覚がなさすぎる、シリルは冷めた眼を二人に向けた。



「キミらのほうが調子に乗ってるよ。だって、ユーリィに贔屓されているのだから、自分たちが疑われることはないんだから。馬鹿なんじゃないの?」



 それに気づかない雇い主にも問題があるとシリルに言われて、ユーリィは何も言い返せずに黙ったしまう。赤毛のメイドが犯人だと決めつけてしまっていたのだから。



「で、犯人は見つかったんだからもう騒がないでくれよ。ここはキミたちの住居じゃないんだから」


「も、申し訳ございません」

「ユーリィはさっさとテオ兄さんのところに行ってきなよ」



 しっしっと追い払うようにシリルに言われてユーリィは「申し訳ございませんでした」と謝りながら、テオの元へと向かう――その間際、アメリはぎろりと睨まれた。


 あ、これはとアメリはひやりと背筋に寒気が走った。きっと、彼女は怒っている。王子と姫の前で恥をかかされたと思っているのではないか。


(きっと、次に会った時に何か言われるなぁ……)



 怖いなとアメリは項垂れるも、マリアに「どうしたの?」と首を傾げられて、「なんでもないですよ」と返すしかなかった。どうしても、ユーリィとのことが言えなくて。

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