転職して半年、新しい会社で起きた不思議な出来事
去年の九月、私は地元の小さなアパレルメーカーに転職しました。入社してからもうすぐ半年、この期間に色々と不思議なことがありました。
今日は私が転職先で体験した、不思議な出来事についてお話しさせていただきます。
都心部への長時間通勤と、毎日の残業に嫌気がさした私は、去年地元の会社に転職をしました。五階建てのビルに入った小さなアパレルメーカーで、オフィスは五階建てビルの四階のワンフロアのみ。ビルの他のフロアには印刷会社やビルのオーナーさんのオフィス、建築会社が入っています。
従業員数は少ないのですが、若い女性が多く、職場にはいつも活気が溢れています。そんな会社に転職して二週間が経った頃、不思議なことが起こりました。
商品開発に使う資材の発注について、会議テーブルにたくさんの資料を広げながら、私は四十路の男性上司から説明を受けていました。私は、説明を聞いてノートにメモを取りつつ、すぐに発注が必要な資材の名前を確認していました。使う資料があまりにも多いので、説明の途中から上司も私も椅子から立ち上がって話をしていました。
上司からの説明が終わり、資料を片付け始めようとした時です。理科の実験室で見るような白衣を着た女性が、私と上司のすぐ後ろを、すっと通ろうとしているのが視界の端に見えました。
商品開発の際に、染色試験を行うことがあるので、白衣を着ながら仕事をする人がよくいる会社です。そのため私は、なんの違和感もなくテーブルに体を寄せました。私が体を寄せるのとほぼ同時に、上司もテーブルに体を寄せるのが見えました。
体をテーブルに寄せてから、体感で二秒ほど経過した時、なんだか変な感じがした私は、通過した女性が誰なのか確認しようと振り返りました。私と同時に上司も振り返っていましたが、何故か私と上司の周りには誰もいませんでした。
「今、誰か通ったよな?」
「通りましたよね?」
「白衣着てたよな?」
「かなり髪の長い女性でしたよね?」
上司と私は顔を見合わせ、自分たちが見たものを確認すると、苦笑いをしながら資料を片付け始めました。職場にそれほど髪が長い女性がいないことに気がついたのは、その日の仕事の帰り道でした。私は背筋がひやりとするのを感じました。
次に不思議なことが起きたのは十月です。私がパソコンで事務仕事をしている時でした。
その日、私は社長のデスクの対面の席で仕事をしていました。社長のデスクにも、私が仕事をする席にも大きなデスクトップパソコンが置いてあり、私の席からは社長が座っていても頭のてっぺんしか見えません。顔がちょうどパソコンで隠れるため助かるのですが、それでも私は少し緊張しながら仕事をしていたのを覚えています。
17時頃だったと思います。社長が煙草とスマートフォンを持って席を外すのが見え、私はふっと気が抜けたんです。しかし、一分も経たない内に社長が戻ってきたので、私はすぐに気合を入れ直して仕事を再開しました。
「もう少し席を外してくれてもよかったのに」そんなことを考えながら私が資料を作っていると、前方からやたら力強くキーボードを叩く音が聞こえ始めました。もしかしたら社長に何か嫌なことがあったのかもしれない、そんなことを考えながらキーボードの音を聞いていると、後ろから「あー疲れた」と社長の声が聞こえました。
声が後ろから聞こえたことに驚いた私が振り向くと、スマートフォンと煙草を片手に、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる社長の姿が見えました。社長は私が勢いよく振り向いたので、不思議そうな顔で「どうした?」と聞いてくれました。
「いえ、特に何もないです」と言いつつも、頭の中が混乱した私は、席から立ち上がって社長のデスクを確認しました。すると、さっきまで社長の頭のてっぺんが見えていたはずなのに、社長のデスクには誰も座っていませんでした。もちろん社長のデスクの周りにも誰もいません。
「怖いこと言うなよー」
私はついさっきの出来事を社長に報告しましたが、社長は笑いながら信じてくれませんでした。
次に不思議なことが起きたのは十一月です。
その日は社長が休みの日でした。私がまた社長の前のデスクで仕事をしていると、突然誰かが私の座る椅子の背もたれにぶつかりました。
「おわっ!」
強い衝撃があり、私は思わず声を上げながら前に姿勢を崩しました。そして私の声を追いかけるように、椅子の背もたれに掛けていた私のコートが、どさっと音を立てて床に落ちました。
「こんないたずらをするのは誰だろう?」と、思いながら振り向いたのですが、後ろには誰もいませんでした。怖くなった私は、そのことをたまたま側を通りかかった上司に報告したのですが「まあ、そういうこともあるんちゃう?」と軽く流されてしまいました。
次に不思議なことが起きたのは、少し期間があき、年が明けて二月になってからでした。
資材置き場で私が作業をしていると、女性スタッフの楽しそうな会話に紛れて、誰かが泣く声が聞こえました。女性が多い職場なので、女性の話し声が聞こえるのは当然です。でも、明らかに場違いと言いますか、明るい会話に紛れて、おんおんと声を上げて泣く女性の声が聞こえたんです。
私はしばらく作業をしながら様子を伺っていたのですが、泣き声が止む気配はありませんでした。しかし、作業を終えて、私が資材置き場を出た途端、ぱたりと泣き声が止みました。不気味なことに、最後に泣き声が聞こえた方向は、女性スタッフが笑いながら仕事をしている辺りでした。
仕事を終えて帰る前に、念のために確認をしてみましたが、その日は社内で誰かが泣くような出来事はなく、誰も泣き声さえ聞いていませんでした。
女性の泣き声が聞こえた翌日のことです。
その日は、いつも最初に出社する上司が風邪をひき、私が会社の鍵を開けました。電気をつけなくても、窓から入る光でそこそこ明るいオフィスなんですが、中に入った途端何か嫌な気配がした私は、慌てて電気をつけました。
電気をつけてざっとオフィスを見渡した私は、誰もいないことが確認できると、ほっとして胸を撫で下ろしました。
「おおぅ!?」
私がほっとした直後、後ろから男性の大きな声がしました。びっくりした私は「うぇーい!」なんて変な声を出しながら大慌てて振り返りました。
変な声を出してしまいとても恥ずかしかったのですが、私の後ろには誰もいませんでした。すぐに確認しましたが、もちろんその時会社にいたのは私だけでした。
私が新しい職場で体験した不思議な体験は以上です。
私は不思議な体験をするたびにTwitterでツイートするのですが、先日あるフォロワーさんから「そのビル、事故物件じゃないんですか?」と質問をいただきました。
その視点がなかった私は、すぐに有名な事故物件サイトでビルの住所を調べてみましたが、幸いなことに何も情報はヒットしませんでした。
でも、気になることが一つだけあるんです。
私の会社の近くに、スタッフの歓送迎会や忘年会で使う居酒屋があります。そこは飲み放題のコース料金が安く、料理も美味しいことで有名な居酒屋なんですが、なんとそこが事故物件サイトで事故物件として名前が上がっていたんです。
事故物件の理由は殺人事件だそうです。
昨日、このお話を投稿する予定だったんですが仕事でトラブルが発生し、急遽19時に出社することになりました。
会社は定休日だったので当然真っ暗。さっさと仕事を終わらせて帰ろう、そう思って電気をつけて急いで仕事をしていたんです。
仕事を始めて30分ほどした頃でしょうか。聞こえたんですよね、スリッパを履いた人がフロアを歩き回るような足音が……
もちろん、会社には私しかいませんでした。
不定期になるとは思いますが、不思議な体験をしたら今後もTwitterに投稿していくつもりです。