カマキリ君の冒険
実際にあった事を書いてみたくなっただけの話です。
カマキリが大好きな方は読まないほうが良いかも。
突然ですが、私は車出勤です。
その日も出勤で、朝から「疲れたなー」とか思いながら、車の運転席に座り、シートベルトをして、そこで気付きました。
フロントガラスにカマキリがいました。もちろん、外です。
中にいたら、たぶんもっと早くに気付いていたでしょう。
我が家は住宅街の中にあるアパートで、車もアパートの駐車場に停めてあります。
どこから来た? と思いましたが、雑草が元気に生い茂っている場所もあるので、そこから来たのかなぁと考えます。
まあそこは別にどうでも良いんです。
何せこれから出勤。ギリギリなわけではないけれど、時間が有り余っているわけでもありません。「走ってるうちにどっか行くだろう」的に考えて、そのまま車を発進させます。
その雑草スペースに移してやれよ、ともし思った人がいたら、その考えはやめましょう。私は虫に触れません。
広い道路に出るまでは少し時間がかかるので、その間はゆっくり運転。
広い道路に出てからのスピードは、50キロから、下り坂とか場所によっては70キロくらい出ることも。
カマキリ君、車が走り始めると動き始めます。体勢を変えて、場所を変えて、運転席から姿が見えなくなることもありました。
走っている間、ずっとカマキリ君を見ているわけにはいきませんから、姿が見えなくなると「どっか行ったかな」と思うのですが、赤信号で止まるとワイパーのあたりからひょっこりと姿を見せます。
うまく隙間に入って、風を避けていたのでしょうか。「あ、まだいた」と思う瞬間です。
止まっている間に、カマキリ君は動いてワイパーの上に乗ります。乗った時点で青信号。出発です。
今度こそいなくなるかと思いきや、時々チラッと視線を向けると、ワイパーの上で悠然と風を浴びています。いや、悠然と、というのはあくまで私の感想ですが。そう見えたんです。
でも、次に止まったときにまたワイパーの影に隠れたから、やっぱりキツかったようです。
そうして仕事場に着くまでおよそ30分。
カマキリ君はずっとフロントに居座り続け、私と一緒に出勤したのでした。
なぜか感動した私は、何を思ったか記念写真でも撮ろうとスマホを向けました。ですがその途端、カマキリ君はスマホ画面から姿を消しました。
どうやら、どこかに飛び立ったようです。
どうせ飛ぶならもっと早くに飛べよ、とツッコミを入れた瞬間です。
けれど、30分間も風圧に耐え続けたカマキリ君。この先も強く雄々しく生きていけよ、と思いをはせたのでした。