神の存在
「いや、見せるわけないでしょ。」
彼女は怪訝そうに言った。
明らかに怒っていた。
「そこをなんとかさ。俺さ女の子のパンツ見ないと元気でなくてさ。」
彼は意味ありげな視線を彼女にぶつけた。彼女は明らかに怒っているように見えた。だが、そんなことは彼にとっては嬉しいのである。
彼は彼女を横目で睨んだ。
「ねぇ、いいでしょ?」
彼は土下座までして彼女に頼み込んだのだ。
「キモイ、いい加減にしてくれない?」
彼女は明らかに怒っていた。声も低くなり、彼に向かって思いっきり、憤怒ある視線を向けたのである。
「ごめん、ごめん。」
彼は立ち上がり、彼女に謝った。
「はぁ...」
彼女から出たのは、深いため息だった。
流石にこの気弱そうな男なら、自分の欲のまま自分を襲うこともないだろうと、彼女は思いこんだのである。だからそろそろ許してあげようと思った。
やっぱり彼女は思いやりのある優しい女の子だった。
だが....
彼女が油断した瞬間である。彼は彼女のスカートを思いっきり、掴んでめくり上げたのある。
「な、なにを...」
彼女のパンツが露わになった。
彼女はわけがわからなかった。当然である。謝ってきた男がいきなり自分のスカートをめくってきたのだから。
彼女はわけがわからないという感情と同時に恥ずかしさが彼女の頭を支配したのだ。
彼はというと、なにやら嬉しそうにしていた。まぁ男なら当たり前だ。
「黒か。いい色だな。」
彼はパンツを見た感想を彼女につぶやいた。
「な...な、な、、な...」
見られたあげく、感想まで言われた彼女は今にも恥ずかしくて死にそうだった。
「いやぁ...いい色だな。お、リボンまでついてんのか。どれどれ、リボンの色は...
お、赤か。この女めちゃえろいぞ」
彼はずっとパンツを観察していた。
そして、彼は未だにスカートをめくりあげている。
「いい加減死ねよ」
彼女から咄嗟に出た言葉だった。
彼女は怒りで彼に言葉をぶつけた。
「やれやれ、仕方ないな。」
ため息が彼の口から漏れた。
彼はやっとスカートから手を離したのだ。
彼としてはまだスカートをめくっていたかったし、なんならもっと怒らせたかったぐらいだ。だが、彼はそれをしなかった。彼はやはりどこまでいっても半端ものなのだ。
彼女はというと、やっと彼がスカートから手を放してくれたおかげで恥ずかしさは消えたが、それでもやはり彼に対する怒りは収まりそうになかった。
それは彼女がまだ処女ということも関係しているのだが、彼女はさっき会ったばかりなのにいきなりスカートをめくりあげるこの男のあまりの無礼な態度に落胆したのである。
彼女は、もう消えたい気持ちでいっぱいだった。一気に力が抜けた彼女は床に座り込んだ。
「はぁ..」
顔を下に向け、彼女は深いため息をついた。少し泣きそうだった。
「おい、空。お前はどこから来た?」
彼は座り込んでいる彼女に尋ねた。
「え、なに急に。どこって、私は日本からきたのよ。」
彼女は彼の質問に対して答えた。
愛媛という回答がでることに彼はそこまで驚きはしなかった。だって、彼女はどう見ても日本人だったから。髪も黒色だしね。
「そうか。なぁ空。俺の見解を今から話す。聞いてくれ。 まず、この不思議な世界。と行っても俺はまだこの世界のことを全くしらないわけだけど、ここは日本じゃない気がするんだ。建物だって、西洋風の建物ばかりだったし、ありえないことが起こっている。それだけでも、ここは普通じゃないんだ。普通じゃない世界に来ている。」
彼も考えたが、やはりこの世界のことを知る必要がある。と彼は確信したのである。知らないことは考えることもできない。つまり知る必要があるのだ。
「空、とりあえずこの家を一緒に探索しよう。」
彼は彼女に提案した。
「いいけど、あんたが前を歩きなさいよ。もう、スカートをめくられたらたまったもんじゃないから」
彼女はスカートを抑えながら、彼に対して警戒心をむき出しにして言った。
「わかった、わかった。」
2人は和室に到着した。
「う~ん、ぱっと見た感じここにはなにもなさそうだな。」
彼は和室に着いた途端にそんなことを言ったのである。周囲を見渡したが、この和室にはなにか珍しいものはなさそうだと、感じたのだろう。
「なぁ空、ここにはなにもないのか?」
「ここにはなにもないわ。どうする?他探す?」
彼女は彼に提案した。
「いや、まだ探そう。」
彼はこの和室になにかあるかもしえないという少しの希望に従って、探索をはじめた。
まずはテーブル。だが、テーブルにはなにもなさそうだった。
次に押し入れ。彼は押し入れの中に入り、中になにかないかを探したが、なにもなかった。
あとはタンスぐらいか。彼はタンスを開けた。だが、中にはなにもなかったのである。
(くそ、なんでなにもないんだ...)
流石にどこを探しても、なにもないんじゃ興ざめというものだ。
彼がタンスを動かした時だ。なにやら紙がタンスの下にあったのである。
「なんだ、これは」
と、彼は下にあったメモを拾い上げ、紙になにかないかと確認した。
見たところなんと、裏面に文字が書いてあったのである。
【神がいないから全てが許される。】と。
「なんだこれは...」
「どうしたの?」
彼女は彼が紙を一点して見ていることが気になったのであろう。
「いや、タンス動かしたら、この紙があってさ。裏面を見たらこんな文章が。」
彼は紙を彼女に渡した。
「神がいないから全てが許される。なにこれ、一体どういう意味なのかしら。そもそも神なんて、そんなものが本当にいるとは私も思わないけど...」
神。日本ではあまり親しみもない偶像の存在。神。という文だけでも彼らを悩ますには理由はいらないだろう。
無木島はこの神という存在に強く反応した。
神がいるなら、なぜ不平等な世の中というものが成立するんだ、と彼は常に思っていたのである。
神がいるなら、なぜ法の届かない場所で犯罪をしてるやつらに罰を与えない。
なぜ、泣き叫ぶ赤ん坊を斧で叩きつけた人が許される。
彼はずっと頭を抱えた。
「あなた、どうしたの?」
あんなことをされた彼女でも彼がずっと頭を抱えている姿を見て、流石に心配になったのだろう。
彼女は彼に向かって、心配してる眼差しを向けたのである。
「大丈夫だ。なにも心配はない。俺は無木島だ。」
「無木島って?」
彼女は彼に尋ねた。それもそのはず、彼女は彼の名前を知らなかったのである。彼は彼女に名前を聞いたが、自分は名乗らなかったのである。
「俺の名前だよ。俺は無木島 鳥っていうんだ。」
「変わった名前ね。」
「ははっ。さぁ、次んとこ探そうぜ空。」
先ほど、彼女が提案した通り、彼が前で彼女が後ろになっている状態で、彼らは2階に向かったのである。