並行世界とピアノと女の子
「ここは...?」
俺は目を覚ました途端、不思議な場所にいた。
誰かいないのか....
誰か...
彼は自分が不思議な場所にいたことに混乱し、人がいないかあたりを見回した。
(とにかく、あたりを探してみよう。いや、というか俺はなんでこんなところにいるんだ。
わからない...なにか重要なことを忘れてる気がする。
とりあえず、目の前にある建物に入ってみよう。)
彼は目の前の建物に向かった。
「誰か、誰かいないのか」
彼は建物の前に着くなり、誰かを探していた。
人間嫌いな男でも、外で人がいないと混乱するものだ。
人間は意外に環境にすぐには適応できないから。
「誰かいないのか?」
彼は誰もいないことが怖くて怖くて仕方なかった。
返事はない。とりあえず探索をするか。そう彼は決めた。
家の中に入り、家の中を色々歩きまわっているうちに彼はリビングに入り、驚きを隠せなかった。
(思ったより広いな。家具も普通だ。テレビ、テーブル、ソファー、ピアノなどがある。ピアノの上にはエリーゼのためにの楽譜が置いてある。)
座ってエリーゼのためにを弾きたくなった彼は椅子に座ろうした。
ピアノの前に座った瞬間の出来事だった。
目の前にあったピアノは意味もなく勝手に音が鳴った。エリーゼのためにだ。
(エリーゼのためにが流れてる。あいかわらずいい音楽だ。)
「そこのピアノには勝手に触っちゃだめだよ。」
後ろに誰か立っていた。
話しかけてきたのは女の子だった。見た目は中学生ぐらいだろうか。あまり胸も大きくなく、髪型もそれほど長くない。いわゆるショートボブというやつだ。
「君は?」
彼は彼女の顔を見ながら聞いた。
「とにかくそこの椅子から離れたほうがいい。」
彼は少女に言われた通りに椅子から離れた。
「で、あんたは?」
(というか俺、なんで女相手に話せるんだ。相手が餓鬼だからか。)
「私は空。苗字はないの。ただの空」
「了解。とりあえず空。お前はなにをやって、この家についてどれだけ知ってる。もしかしてこの家の家主か?」
彼は聞いた。
「私はちょっと前からこの家に住んでる。でも、家主じゃないわ。理由はそうね、ここには誰もいないからよ。とりあえずこの家で探索できるところは探索したけど、ここには誰もいなかった。ただ、この家についてわかってることはある。それはそこのピアノは触ってはいけない。今日はエリーゼのためにの楽譜が置いてあるけど、昨日は違った。昨日はショパンのetude10-4だった。そこに置いてあるピアノの楽譜は日が経つにつれ変わっていくの。そして、あなたみたいにそこの椅子に座ると勝手に曲が流れだす。置いてある楽譜の曲がね。」
「なんだそりゃ?気味が悪いな....本当に君だけしかいないなら、そんなことがあるはずがない。そもそも君はなんでそこのピアノを触るのはいけない、なんてわかるんだ?」
怪訝そうに彼は言った。
「それは私が最初にこの家に来た時にこの紙があったの。そこにはピアノだけは触るなって。」
彼女は紙を彼に見せた。そこには本当にピアノだけは触るなと書いてあったのだ。
「君はショパンは好きか?」
「えぇ、とても好きよ。」
彼女は嬉しそうだった。
「空、お前はどうやって俺に気が付いたんだ。」
「私はいつもしてるように2階から1階に降りたら、ドアが開いてるのが見えて、それで誰か来てるってことに気が付いたの。」
彼女はさっき自分が入ってきたドアを指で刺しながら、彼に説明した。
(ドアだと...あ、そういえば閉めるのを忘れてたな。)
「空、とりあえず俺はこの家をもっと知りたいんだ。あと、お前のことも。だから一緒に探索に付き合ってくれ」
「わかった。」
彼女は了承した。
「なぁ、空。とりあえずパンツ見せてくれ」
「え...」
(ははっ言ったぞ。前はあれだけ言えなかったのに、今は言えたぞ。
あぁ...この誰かに虐げられるかもしれないという快感はたまらない。
あぁ...最高だ。
俺は意地悪な人間だ。)