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第6回配信 紳士の咆哮

 ソロ配信は楽しかった。またやろうとも思った。しかし俺はやっていない。それは何故かって?

 疲れるからさ。

 いや、おっさんって生きてるだけで疲れる生き物なのよ。常にそこはかとなく具合が悪いんだよ。体の奥底から湧いてくるのは力じゃなくて疲れなんだよ。30歳はお肌以外にも色々曲がり角だからな。若いのは覚悟しておけ。


 今回は配信はなしでダラダラとゲームを楽しもうという訳だ。そこで今回はスペシャルなゲストを用意した。

 はい、この人です。ドン!

「さっきから奇妙な動きしてるけど何してんだ?」

 今回は虎紳士さんに来て頂きました。というか休みが一緒だったから会うことになっただけなんだけどな。他の2人は仕事だった。社会人になってから4人全員が集まるって滅多にないからな。学生の気ままさが懐かしいよ。


「いや、少し最初の心構えをだな」

「言ってる意味が分からん」

「大丈夫だ。俺も分かってない」

「それは大丈夫じゃないやつだよな」

 そうとも言う。


「それは兎も角虎紳士さんや、装備変えたのな」

 虎紳士の装備は初期装備ではなく鎧になっていた。

「おぅ。ブロンズアーマーに変えた」

 戦士っぽいぞ。顔は虎だけどな。

「頭は装備しないのか?」

「一度装備したんだけどな、虎の頭に兜だぞ、あれはない。あれは紳士の装いじゃない」

 力説するな。虎顔に兜って確かに間抜けだよな。


「シルクハットとかあったら装備するんだけどな」

「虎なのに?」

「紳士にシルクハットは基本だろう?」

 何言ってんだこいつ?みたいな目でみられてるけどさ。君の顔は虎なんだよ。虎にシルクハットはちょっとどうだ?ジト目になっても仕方がないと思うんだ。


「紳士を覗く時、紳士もまたこちらを覗いているのだ」

「違うよね?それ紳士じゃないよね。名状しがたい紳士のようなものだよね」

 こいつの中では紳士と邪神は同一の存在なのか?間違いなくこいつの紳士像はおかしいぞ。

「ふんぐるい ふぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん」

「やめろ。SAN値が下がる」

 だめだ。悪い笑顔になってやがる。理解して調子に乗ってやがる。


「お前も装備変えたな」

 あっ、急に普通の話題になるのね。この話題はもういいのね。分かりました。俺もこの話題には触れないよ。

「偶然良い店の情報を貰ってな」

 良い買い物だった。出来れば教えてやりたいが親方に駄目って言われたからな。約束は守らないとな。信用は壊れるのは一瞬だが得るのは凄い大変だからな。しかも今の世の中一度壊れた信用を取り戻すのは不可能に近いからな。


「そういえば何?澪配信始めたのか」

「見たのか?」

「アーカイブでな」

 何?凄い恥ずかしいんだけど。何だろう。秘密の趣味部屋を覗かれたかCドライブの中身をみられたかのような恥ずかしさが……。いやCドライブの中身見られたら俺なら吐血して死ぬな。


「コメントが凄かったな」

 あ〜、あれな。

「あいつらはきっとロリコンドリアに感染している。もう手遅れなんだよ」

「何?ロリコンドリア?」

「幼女趣味の奴らが感染するものだ。それに感染すると幼女を定期的に摂取しないと死んでしまう病に罹ってしまうんだ」

 あれは不治の病。あいつらはもう助かることはない。救われるには焼くしかないんだ。

「定期的に摂取ってw」

「ちなみに摂取方法は個人差がある。物理的に行おうとしたら俺がヤル」

 Noタッチ。これは絶対守らねばならぬ掟である。


「それはお前がしなくても社会が制裁を加えるから安心しろ。むしろお前は何もするな。問題が複雑化する」

 法とモラルは守れ。俺から言えるのはそれだけだ。

「でもお前も感染してるんだから問題なしだな」

 失礼な。俺は可愛い幼女でゲームをしたいだけだ。あいつらとは違う。

「これから定期的にヤルのか?」

「何?ロリコンどもを?」

 それは場合によっては俺はヤル事も辞さないぞ。


「違う。配信の方だ」

「あぁ、そっち。楽しかったからな。これからもやる予定ではいるな。でも定期的じゃなくて不定期配信って感じだろうな」

「なるほど」

「何?一緒にでる?」

 それはそれで面白いと思うのだが。俺はウエルカムだぞ。

「笑顔で手招きは止めろ。4人の時は配信するんだろ。俺はそれだけでいいな」

「そうか。まぁ、やりたくなったら言ってくれ」

「その時が来たらな」

 俺は待ってるからな。


「配信は取り敢えず置いておいて、今日はどうする?」

「何やろうかね?ただ時間が合ったから会おうってだけで何も決めてなかったからな」

 大体俺たちはいつもこんな感じだ。予定も決めずに会ってその場のノリで予定を決める。結構な確率でグダるけどな。

「それならレベル上げでもするか」

「それなら東に行くか?」

「そうなるけど、そこ以外行けるのか?」

「分からん。東以外の情報は全くない」

 俺は調べてすらいない。そういうのは白桜に任せると決めたんだ。あいつ調べるの好きだからな。言えば喜んで調べてくれるだろう。


「じゃあ、東に行くか。そうそう、行く前に聞いときたいんだけど澪って回復薬とかの消耗品ってどこで買った?」

 かいふくやく?しょうもうひん?

「その顔はまさか買ってないってやつか?」

「買ってないどころか今お前に聞いて初めてその存在に気がついた」

「お前ゲーム初心者じゃないだろ?どうして忘れられるんだ?それでやれるお前が凄いと思うぞ」

「よせよ。褒めるな。照れるだろ」

 頭を掻いて照れのポーズを取ってみる。

「分かってると思うが褒めてないからな」

 うん。知ってた。しかし回復薬とかの必需品を俺はなんで忘れてたんだろ?


「仕方ない。今回は俺の回復薬を分けてやる」

 虎紳士から回復薬を貰う。こういうフォローが出来るいい奴なんですよ。いい奴過ぎて恋人が出来ないタイプです。

「ありがとう。で、俺は回復薬を買ってないからお前の質問には答えられないが何かあったのか?」

「いや、店によって消耗品の値段が違うから何が違うか知りたかったんだ。安いの買って効果がないとか嫌だろ」

 それはそうだ。安いのには必ず何か理由があるからな。それに納得して買うのはいいが知らないで買うのはゴメンだ。


「俺も今度知り合いのNPCとかに聞いてみるわ。分かったら教える」

「知り合いのNPCとかいるのか?」

「数人だけどな。みんないい人だぞ」

「このゲームのNPCは中の人がいるんじゃないかって疑う時はあるな」

 それは俺も思う。


「仲良くなったら凄い情報を教えてもらったりとかいい事があったりすると思うぞ」

 俺が姐御にアーツ教えてもらったり、親方から装備を売ってもらったりとかな。

「それはいい情報だな。今度から仲良くするようにするわ」

「仲良くしようとしても子供はお前を見たら泣いて逃げるな」

 俺が子供だったら泣く自信はある。

「俺は紳士だぞ。子供が紳士を見て泣くわけがないだろ」

 いや、内面ではなく見た目の問題なんだが…。言っても分からないだろうから言わないでおこう。その場になって思い知ればいい。


「お前は下手したら誘拐されそうだけどな」

 幼女だからか。幼女だからなのか!?

「そうなったらイベント発生ってことで拐った奴をボコボコにしてやる」

 幼女に手を出すやつには死あるのみ。慈悲はない。

「幼子が笑顔で遊べる世の中。そういうものを私は作りたい」

「はいはい。頑張れよ」

 流された。俺は本気でそう思うんだが。


「ウサギとカブトムシばっかりだとダルいよな」

「猪と熊が出るって言ってたな。そっちに行くか?」

 この前は狼倒して満足してやめてしまったからな。本当は猪か熊と戦う予定だったんだよな。

「そういえば狼と戦ってどうだった?」

「1頭なら何とかなると思う。群れになったら晩御飯直行だな」

 勝ったとはいっても結構ギリギリだったからな。出来ればもう少しレベル上げしてから戦いたい。


「遭遇しないことを願おう」

 前回もそう思って遭遇してるしなぁ。期待はしないでおこう。




「すんなり来たな」

「すんなり来たな」

 出る前の警戒は何だったんだ?

「狼いなかったな」

「狼ないなった」

 いや、いいんだけどさ。猪とか熊とかと戦うために来たんだから。いない方がいいんだけどさ。だけどさぁ。あるだろう?普通こういう時はさぁ。


「猪か熊だろ。パッと見いないけど。どこにいるんだ?」

「そこまでは知らん」

 西って事しか聞いてないし。

「取り敢えず見つけるまで歩くか」

「あぁ、その必要ないかも」

「ん?」

 奥から何かが凄い勢いで走ってくるのがいる。


「虎紳士さんや。あれ真っ直ぐこっちに来てるように見えるんだけど」

「奇遇だな。俺にもそう見える」

 近づくにつれ何が向かってきてるのか見えてきた。

「猪じゃないか?」

「猪だな」

 うん、猪だ。さっきまで探してたやつだ。向こうからやって来るなんて可愛いところがあるじゃないか。


「あれ止められる?」

「やってみないと分からんが分は悪い賭けになると思うぞ」

 そうか、止められないか。あぁ、近づいてくるな。結構デカいのね。

「……このままだと不味くないか?」

「不味いな」

 猪はもう目の前に迫ってきているじゃないか。不味いぞこれっ!

「よ、避けろぉお!!」

「どわぁああああ!!」

 全力で横に飛ぶ。そしてすぐに通り過ぎる猪。音と振動と砂埃が凄いことになっている。猪は急には止まれないようでそのまま奥に向かって走っていく


「あ、危ねぇ…」

「今の俺ではあれは止められないな。ナイス判断だな、俺」

 頼む、もう少し早く判断してくれ。

 猪が離れた位置で反転している。また突っ込んでくるみたいだ。


「この距離ならガード出来るよな」

「流石にいきなりトップスピードにはならんだろ。多分大丈夫だ」

 猪が後ろ足で地面をかいている。如何にもこれから来ますよって動作だな。

「よし、アピール!ヘヴィガード!」

 虎紳士が猪に向かってアーツを使って構える。

「今のアーツ何?」

「この状態で聞くか普通?」

 気になることはすぐに質問する主義です。空気は読みませんよ。


「アピールは分かるよな?」

 頷いて返事をする。なんだかんだ言ってしっかり説明してくれるのよねこの人。

「ヘヴィガードは防御力UPとノックバック耐性大のガード技だな。デメリットとしてほとんど動けなくなる。その場で方向転換するのがやっとだな」

 なるほど。まさに壁だな。


「という訳だ。攻撃は任せたぞ」

「はいよ〜。任された」

 攻撃は俺の役目だからね。バトルアックスを構えて待つ。

 猪は敵視(ヘイト)が虎紳士に向いているので虎紳士に向かって走り出す。

 虎紳士に猪がぶつかり大きな音が鳴る。この音で衝撃が強いことが分かるが虎紳士は一歩も動かなかった。そのアーツ凄いな。猪の動きが止まった。これは攻撃チャンス!

「ダラッシャアァ!!」


 猪に向かってバトルアックスを振り下ろす。攻撃が当たって猪がよろめく。トップスピードになるとあの突進は脅威だが、こいつは急には動けないようだ。ここは畳み掛けるしかないな。

「ビートダウン!!」

 アーツも叩き込む。流石猪これだけでは死なないようだ。ならば叩き続けるのみ!もう一度バトルアックスを振り上げた。


「アッモーレッ!!」

 虎紳士が強力な袈裟斬りを決める。あっ、猪光になって消えた。振り上げたままの格好で固まってしまう。

「うむ、良いのが入ったな。剣のアーツ、スラッシュも使えるな」

 いや、ちょっと待って。今の叫びは何?


「虎ちゃん。急にどうした?」

「急にどうしたってヘヴィガードが切れたから俺も攻撃したんだが」

「いやいやいやいや。攻撃じゃなくってその時の雄叫び?咆哮?は何?えっ?紳士ってそういうキャラなの?」

 こいつの中の紳士はどうなってんだ?邪神でもないの?何か凄い自信たっぷりでいらっしゃるけど。

「こう、熱い思いをのせて攻撃しようとしたら叫んでいたな」

「どういう思いだよそれ?」

「熱い、熱い思いだ」

 そんな沁みる様な言い方されても。


「紳士との関係は?」

「全くないな。どこの紳士がアモーレ叫びながら斬り掛かるよ?現実にいたらただの危ないやつだろ」

 いや、今俺の目の前にこのゲームでは紳士になるって言ってた奴がやったんだが。

「猪は問題なくやれそうだな。もう少し探して狩るか」

「そうするか。うん、そうしよう」

 こいつの紳士については俺はもう触れない。触れたら負けな気がする。考えるな俺。感じても駄目な気がするが。


「にしてもさっきの猪随分遠くから走ってきたけど何なんだろうな」

「流石にあんな分からん距離からアクティブ判定あったらどうしようもないんだが」

 今回は1頭だったから良かったけど複数が突っ込んできたらミンチになる絵しか見えないんだが。


「でもさっきの以外突っ込んでくる気配はないな」

「何かのイレギュラー的なやつか?」

 そう簡単にイレギュラーって起こるか?

「考えても分からんな」

「そうだな。そしてだ。虎ちゃん。少し先に猪がいるんだが」

 30mぐらい先に猪がいる。


「こっちには気づいてないな」

「気づいてないな」

 呑気に歩いてるもんな。取り敢えず倒しましょうか。

「ハチェット!!」

「アピール!ヘヴィガード!」

 猪にハチェットが当たるが虎紳士のアピールが重なり猪は俺ではなく虎紳士に向かって走る。今回は横から攻撃してみるか。


 猪が横を走り抜く瞬間にバトルアックスで薙ぎ払う。攻撃が当たったことで猪の速度がガクンと落ちる。振り返りそのまま猪に向かって走る。ほとんど歩くような速度になっていたため簡単に追いついた。

「ビートダウン!!」

 後ろからビートダウンを叩き込む。尻を4つに割ってやんよ!

「ぬぅうううん!!」

 猪が走ってこないと分かったのか虎紳士がヘヴィガードを解いて走って来て斬りつける。猪は走れずにその場でもがいている。


「フルボッコだDON!」

 2人で攻撃を加えるとあっという間に猪は光になって消えていった。

「走ってくる時に攻撃決めれば簡単にやれるな」

 良い攻略法が見つかったな。この結果には思わず幼女もニッコリ。


「いや、良い攻略かもしれんが普通あれに攻撃は合わせられないと思うんだ」

「意外と簡単だぞ。今度やってみ」

「いや、無理だから」

 やらずに諦めるのは勿体無いと思うんだが。


「これだから天然は困る」

「えっ?何?」

 小声で何を言ったか分からんかった。

「もう少し周りを見てものを言えって事だ」

「?」

 どういうことかさっぱり分からんぞ。

「大丈夫だ。分かってもらおうとは思ってないから」

 じゃあ、俺にどうしろと?


「まぁ、今日はもう少し猪を狩ってみようじゃないか」

「おう、そうだな」


 この後いっぱい猪狩った。熊はいなかったよ。




名前 澪


種族 人間 女性

   LV10/1↑


職業 メイン 戦士LV5

   サブ  ーーーー


ステータス

HP 265/25↑

MP 22/2↑

STR 82/6↑

VIT 57/5↑

DEX 50/4↑

INT 17/2↑

MIN 27/3↑

AGI 44/4↑

LUC 64/6↑


スキル

斧術LV5

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― 新着の感想 ―
[一言] バトル描写も読みやすくて面白かったです。更新待ってます。
[一言] ノリとテンポがとても良く、楽しく拝読させていただいています。 更新楽しみにしています!
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