第34回配信 クマさんフルボッコ配信 その4
「いざ探し始めると出て来なくなるって事よくあるよな」
はい。次に狼出たら狩ろうと思って移動してるんですけどね。全く見つかりませんのよ。
「よくあるわよね」
「カ○タロスとかブナ○ブラとかな」
「残り1匹見つからなくて10分経過とかあったね」
うん。思い出したくない記憶だな。
にしてもモンスターが全く出ないなぁ。風の気持ちいい草原をただ走るゲームになっとるなぁ。
「竜子さんに狼の群れがいる場所に連れてきてくれって言ったら出来るかしら?」
全く出てこないからってそれは……出来るか?
「竜子さん。狼の群れの場所に連れてって。って言ったら出来る?」
聞いてみると竜子さんが立ち止まり周囲を見渡し始める。
「急に止まってどうした?」
3人が立ち止まった俺の周りに集まってくる。
「いや、竜子さんに狼の群れの場所わかるか聞いたらこうなった」
「探してるのかしら?」
「まぁ、そうなるのかな」
周囲を見渡した後ある方向を見て竜子さんがひと吠えするとそちらに向かって走り出した。
「見つかったってことか?」
「そうなるのかな」
暫く竜子さんの示した方向に走り続けると前方に狼の群れを見つけた。
「ゴブプリの騎獣の戦闘もおかしいけど竜子さんの索敵能力もおかしいわよね」
「竜子さんは出来る子だからな」
竜子さんはただのモフモフなだけじゃないんだぜ。
「騎獣のユニークスキルか?」
「そうなるのかしら」
「俺たちの騎獣には無さそうだな」
「まぁ、私たちの騎獣はギルドにいる数多くの一つだものね」
「ちょっと調べてみるか」
「そうね。私も調べてみるわ」
「よし!それじゃあ行こうか!!」
騎獣に乗ったままゴブプリが狼の群れに突っ込んで行った。
「おい!騎獣に乗ったまま行くな!」
「あいつ、完全に話聞いてなかったわね」
そのまま俺と白桜を追い越し虎ちゃんも追い越そうとした瞬間。
「グェぇっ!!」
虎ちゃんがゴブプリの襟首を掴んで止めた。
「えぇ……」
「そんな止め方できるのね」
「なんか掴んだら出来たわ」
ゴブプリがぐったりしている。勢いが良かったのでいい感じに首が絞まったみたいだ。
ゴブプリの騎獣はそのまま走り続けるが途中でゴブプリが乗っていないのに気づいたようでこちらに戻ってきた。
狼の索敵範囲外だったようで狼がこちらに向かってくる様子はみられない。
虎ちゃんが掴んだ襟首を離しゴブプリを落とした。ゴブプリがカエルが潰されたような声を出すが全員で無視する。
「さて、今回は虎ちゃんのファインプレイでお前の暴走が止まった訳だが」
「次は連携を試すから騎獣から降りて戦うって言ったよな」
ゴブプリに説教をしようとしたら俺たちを押し退けて白桜がゴブプリの目の前に立った。
「どうしてあなたはこうまで行動がゴブリンなのよ?なんなのバカなの?死ぬの?このままゴブリン亜種として狩ってあげましょうか?モンスターなんだから狩れるわよね?」
白桜が低い声で捲し立てるように話始める。
「オゥフ……」
「OHANASIAIの開始だな」
鬼だ。鬼がおる。この草原にはゴブプリを狩る1匹の鬼がおるぞ。
白桜のOHANASIAIでゴブプリの精神が抉れていくのがみえる。
ほら、もう涙目でフラフラし始めたぞ。
「なぁ、澪。これは止めた方がいいんじゃないか」
「お前これを止められるか?」
こうなった白桜を止めるのは困難だ。もし止めようとするならそれ相応の被害を覚悟しないとダメだ。
そして俺にその覚悟はない。
虎ちゃんが白桜とゴブプリをもう一度見る
「………無理だな」
「終わるまで待ってような」
2人で頷き合い視線をOHANASIAIをする2人から奥にいる狼の群れに向ける。
こっちには気づいてないみたいだな。うん。これが終わったら狩りに行ってやるから待ってろよ。
「………分かったわね」
「ハイ……」
どうやらOHANASIAIが終わったみたいだな。ゴブプリが膝を抱えて小さくなってしまった。
「今は大人しいけどどれくらい保つと思う?」
どれくらい保つか。どれくらい。ゴブプリだからなぁ。
「30秒のCMスキップしたら元に戻ってるだろうな」
「じゃあ、戦闘に入ったらすぐに元に戻るな」
「間違いない」
学ばないゴブリン。それがゴブプリだ。安心と実績のゴブプリ印だな。
「ちょっと試したいことがあるんだけどいいか?」
「ん?なんだ」
デッドエンド検証をクマさんにぶっつけ本番で試す訳にはいかないからな。
「パパンと戦った時、最後に出したアーツあるだろ。あれの検証をしたいんだ」
「パパン?あぁ、あれね。それで最後に出したアーツってあのトンデモ威力のやつね」
「検証って何をするんだ?」
「僕は何をすればいいんだい!?」
説明しようと思ったら突然のゴブプリ復活。だけど暴発しないでまだ何をするか聞いてくるからOHANASIAIの効果は持続しいるみたいだな。
「あんたはそこで静かにしてないさい」
「……ハイ」
何かやりたいんだろうけど白桜に止められてしまったな。そして膝を抱えて小さくなってしまった。
「改めて説明するとだな、あのアーツ、デッドエンドっていうんだがな。高威力の浪漫アーツなんだけどな、使うと問答無用の敵視を稼ぐみたいでさ。タメ中にボコられて即終了になるんだよ。今のままだと使い方が分からんのよ。でも俺はあの浪漫アーツを使いたいんだよ!その為には色々検証しないといけないんだよ!」
あの浪漫アーツを使い回したい。浪漫アーツをカッコ良く決めて悦に浸りたいんだ。俺しか使えない浪漫アーツで活躍なんて脳汁垂れ流し案件じゃないか。
「まぁ、協力はしてやるけどさ…」
「まずその恍惚顔で拳を握るのはやめなさい。モザイクかけないとBANされるわよ。もしくは某系の何かが多量に湧いてくるわよ」
それは色々とマズいぞ。そして俺はそんな酷い顔してのか?慌てて顔を撫でて表情を取り繕う。
「じゃあ、改めてどうするんだ?」
「まぁ、まずは基本に忠実に虎ちゃんが敵視稼いでもらってそれでデッドエンドを使うと敵視がどうなるかだな」
「よし。それじゃやってみましょ」
虎ちゃんを先頭に狼の群れに突っ込む。検証優先なので今回は虎ちゃんにかなり先行してもらっている。
「よし、行くぞ!アピール!からのヘヴィガード!!」
虎ちゃんがアーツを使用して狼の敵視を集める。
「検証開始だ!」
デッドエンドを使用する為に星墜しを振りかぶりタメに入る。すると狼が一斉にこっちに視線を向けた。
「明らかに敵視が澪に来たわね」
これでデッドエンドの敵視集めの効果はタンクのアーツ以上って事になるか。かなりだなこれは。
「ちなみにタメ中は俺動けないから。しかもキャンセル不可だからフォローよろ」
「ちょっと!?今それ言う?」
「HAHAHAHA!俺は紙装甲だからな。すぐに死ぬぜ」
狼が一斉にこちらに向かって来ている。
「むかつくほどにいい笑顔ね!」
白桜が魔法を詠唱し始める。
「一番目立つのは僕さ!」
狼の群れに向かってゴブプリが棒っ子を振り上げて走っていく。
「よし。これでゴブプリがサブタンクになるわね」
「偶には役に立つな」
ゴブプリと狼がぶつかる。と思ったら。
「あ、あれ?ちょっと?君たち?」
ゴブプリが棒っ子を振り回すが狼の群れはそのままゴブプリを無視してこちらに向かってきている。
「見事に総スルーされてるじゃないか!!」
「ビックリするぐらい役に立たないわね!!ウインドカッター!!」
白桜の魔法が戦闘を走る狼を切り裂く。
「流石に私1人でこの数を捌くのは難しいわよ」
「デスヨネー」
狼が近づいてくる。結構お口がリアルに出来ておりましてよ。涎まで再現しなくてもいいと思うぞ。
「グラビティスタンプ!!」
虎ちゃんが地面に剣を叩きつけると衝撃が走って狼の動きが止まった。
「よし。今のうちにやるぞ!」
「えぇ、そうね」
狼の動きが止まったこともあり虎ちゃんと白桜の2人で狼の群れの数を減らしていく。
そして俺はいまだに後方でタメ中。止まってるのに狼の視線は真っ直ぐ俺に向いております。絶賛的になっております。
「そろそろ麻痺が切れるぞ。まだ打てないのか?」
確かに狼が少しずつ動き始めている。
「もうちょいだな」
「長いわね」
俺もそう思う。
「デメリット増し増しだからこそのあの威力なんだろうな」
まさに浪漫の塊。燃えるぜ!
麻痺が切れると狼は殴っている虎ちゃんと白桜を無視して俺に向かって走り出した。
「虎紳士さっきのまた使えないの?」
「まだクールタイム中だ」
狼がこちらに来ないように2人で止める。
「流石にキツイわね」
「どんだけ敵視集めてんだよ。何度もアピール使っても全然こっちに敵視が向かねぇぞ!」
2人が必死に戦ってくれている。よし。頑張ってる2人にもっと頑張れるように情報を提供しよう。
「ちなみにタメ中に攻撃もらうとキャンセルになるから。よろしくな」
「ダメじゃねぇか!」
「どんだけのマゾ仕様なのよ!」
うむ。2人とも元気が出たみたいで良き良き。
「あっ!」
2人が懸命に止めてくれるが群れの1頭が2人を越えてこちらに向かって走ってくる。
う〜ん。これは厳しいな。
もう少しでタメが終わるがこの狼がこっちに来る方が早いな。
「僕を無視するなぁぁ!!」
ゴブプリが走ってきている狼を横合いから思いっきり殴りつけた。
「「「はっ?」」」
そしてそのまま動きの止まった狼を殴り続けている。
「僕を無視するなよぉぉぉ!!」
「我欲たっぷりの叫びだ」
俺たちに無視されるだけじゃなくってモンスターにも無視された形だからな。精神が耐えられなくなったんだな。
「でもゴブプリが初めて役に立ったわね」
槍が降ってもおかしくないな
「よし。溜まった。いくぞ!!」
タメが終わったので勢いよく星墜しを振り降ろす。
「デッドッ!!エンドォォ!!」
アーツの衝撃が残った狼の群れを飲み込む。
「僕の勝利だぁぁ!!」
ゴブプリが棒っ子を振り上げて叫んでいる。
「威力は凄いけど使い所が難しいわね」
「使うと100%敵視が向くな。アーツ使っても敵視戻ってこなかったからよっぽどだぞ」
「時間を稼ぐんなら敵視管理じゃなくて麻痺とかの状態異常を狙う方がいいな」
「確かにあの麻痺は良かったな」
ゴブプリを無視して3人で考察する。
「今の俺たちの能力だと格下でもない限りパーティでも使うのは難しいな」
「そうね」
クマくんにはデッドエンドなしで戦うしかないか。
浪漫ではなく堅実にやらないとか。いや、どこかで狙えるタイミングがあるんじゃないか。きっとそうに違いない。




