第1回配信 幼女(おっさん)街に行って冒険者登録するぞ
光が収まると大きな門の前にいた。
「新しいぷれいやーか?それにしても今回は随分ちっこいのが来たな」
周辺を見渡していたら門番(多分)に声をかけられた。小さいのは認めよう。そして讃えたまえ、このキャラクタークリエイトを!直感で作った割には出来がいいだろ?
「ここは始まりの街プエブロ。俺はこの街の警備をしているユルダってもんだ」
スルーされました。そして流れるような自己紹介をされた。おかしい、このキャラクターをみて何も感想がないのか?もっと別に言う事あるだろう?
「聞こえてるか?嬢ちゃん。まぁ、この町では好きに過ごしてもらって構わんが問題ごとは起こすなよ。そうなると俺たちの仕事になる。幾らぷれいやーでも嬢ちゃんみたいなちっこいのを相手にするのは気が引けるからな」
「あぁ、うん。まぁ、気をつけとくよ」
コイツはこのキャラクターの魅力がわからないらしい。仕方ない、そういう人も世の中いるよな。
「本当に頼むぞ。今では落ち着いたが最初ぷれいやーがこの街に来た時は本当に酷かったんだからな」
何か知らんが色々あったんだな。一応慰めといてやるか
「大変だな、おっさん。気にしすぎると禿げるから気をつけろよ」
「おっさんだと?俺はまだ28だ!それに禿げてない。まだフサフサだし。禿げる予定もない!」
おっ?俺より年下か。まぁ、このキャラクターだったらおっさんって言っても問題ないか。あと、これだけは言っておいてやろう。
「今は大丈夫でも油断すると一瞬だからな」
俺の従兄弟は君の歳の時にはもう毛根がBANされていたからな。油断はいけないぞ。
「いや、確かに風呂の時に抜け毛が増えたような…。しかしまだ生え際は後退していないし。まさか後頭部か?確認はしていないが、誰かに確認してもらうわけにはいかないし…」
おっさんよ。頭を触りながらブツブツ言うのは気持ち悪いぞ。だが、気持ちはわかるぞ。怖いよな。風呂の時の抜け毛ってさ。まぁ、それはそうとしてだ。
「おっさん。街の中に入っていいか?」
「鏡を2個使えばいけるか?だが、もし本当にそうだったら俺は受け止められるのか?……って、おぉ。ちょっと待て。嬢ちゃんはこの街は初めてだよな」
「おぉ、初めてだぞ」
「言葉使いも独特だよな。ぷれいやーって本当に分からん存在だ」
仕方がないだろう。中身はお前よりも年上のおっさんだ。俺はキャラクターは幼女だが幼女のRPをする気は全くないからな。
「まぁ、いいか。最初に来たやつは俺たちの詰所で登録をしてもらうことになっているんだ」
「拒否権は?」
「ない。それに登録しないと街に入れないぞ。それに嬢ちゃんもぷれいやーなんだろ。だったら冒険者登録とかしたいだろ。あれもここで登録しないと申請出来ないことになってるぞ」
おぉふ、これは登録しないという選択肢がないな。いきなり裏稼業プレイする気はないからな。する予定もないけど。
「じゃぁ、登録するけど何処に行けばいいんだ?」
「街に入って直ぐの所だけど、嬢ちゃん1人だと心配だな。俺が一緒に行ってやるよ」
中身はあんたよりおっさんだけどな。まぁ、親切で言ってるんだ。有り難く申し出を受けよう。
「頼むよ。おっさん」
「おっさんと言うな。ちょっと待ってろ。今代わりのやつを呼んでくるから」
門の隣にある警備の待機場所におっさんが走っていく。すまないが俺の中ではもう、おっさんはおっさんなんだよ。それに名前言ってくれたけど、俺覚えてないしな。
すぐにおっさんがもう1人を連れて走ってくる。もう1人は若いな。新人か?
「よし、俺は嬢ちゃんを詰所に連れて行くからお前はその間ここにいてくれ」
「えぇ、こんな可愛い子を連れてくんですか?それなら隊長、俺が行きますよ」
ほう、我がキャラクターの魅力に気づくか。しかしだ!
「お前の瞳は欲望に濁っている。悪いがお断りしよう」
「おっ、お前まさかそんな趣味だったのか?」
「えっ?ち、違いますよ。何言ってるんですか?」
幼女が魅力的だったとしてもYESロリータ、NOタッチ。この精神だけは違えてはいけないのだよ。
「お前に幼女はまだ早い。自分を律する事の出来ない者に幼女と共にいる資格なし!」
「嬢ちゃんの言ってることはよく分からんがお前は断られたんだ。大人しくここで仕事をしていろ」
「そ、そんなぁ」
新人君が絶望の表情を浮かべている。しかしこれは大事なことだ。
「俺と関わるにはもう少しお勉強が必要ということだ。坊や」
「嬢ちゃん年幾つだ?」
膝から崩れ落ちている新人君を置いておっさんと共に街に入る。
「あいつ普段は真面目なやつなんだけどな?なんであんなおかしな行動に出たんだ?」
「それだけ俺が魅力的だったということだ」
分かる奴には分かるんだよ。この魅力に。
「まぁ、そういう事にしておくか」
おっさんには理解できない世界なんだよ。
「おっさん隊長って言われてたけど偉いのか?」
さっき新人君に隊長って言われてたけどどうなんだ?
「ここプエブロには4つの門があってな。そこの一つ、東の門を警備している部隊の隊長ってだけだ。そんなに偉くはないぞ」
そう言いながら若干照れてるなおっさん。
「おっさんが照れても気持ち悪いだけの事が多いんだぞ」
「余計なお世話だ」
人が折角今までの経験から助言をしてやったというのに。
「ここだ。ここが俺たちの詰所だな」
おっさんに連れてこられたのは門から歩いて5分もしないところにあった。
「本当に近いな。これだけ近かったら案内必要ないんじゃないのか?」
「本来なら俺も案内なんてしないさ。だけど嬢ちゃんはなんだ、1人にすると何かが起きそうな気がしたからな。こういう時の俺の勘は当たるんだ」
連れてこられた詰所の中は意外と整理されていた。
「あれ、隊長こんな時間になんですか?ってその子、迷子ですか」
詰所の中には何人か警備兵がいた。俺を見てすぐに迷子扱いとは。
「違う。新しいぷれいやーだから登録に来たんだ」
「はぁ、こんな小さな子もいるんですね。ぷれいやーって本当に分からないもんですね」
俺を見て不思議そうに言う警備兵A。まぁ、NPCから見たらプレイヤーは謎の塊なんだろうなきっと。
「無駄口はいいから仕事をしろ。仕事を」
「へ〜い」
うん、緩い空気は流れてるがこのおっさんは部下には慕われているんだろうな。
「じゃぁ、取り敢えずここに座ってくれ」
おっさんから詰所の別室に誘導された訳だが。
「すまん、椅子が高かったな」
うん、俺の胸ぐらいの高さがあるな。だが
「大丈夫だ、問題ない」
「子供用の椅子持ってくるぞ?」
心配そうにおっさんがこっちを見てくる。
いや、本当に大丈夫だから。問題ないことを見せるために椅子に登る。座るではなく登るだ。まぁ、色んなVRゲームで幼女を使っていたんだ。これぐらい問題はないのだよ。
「本当に大丈夫そうだな」
椅子に登った俺を見ておっさんは頷く。だから大丈夫って言ったんだよ。さっきのセリフはやられるフラグの台詞ではあるけどな。
「じゃぁ、この石板に手を当ててくれ」
おっさんが机に石板を乗せる。石板の真ん中に手の絵が彫ってあるな。分かりやすくて大変よろしい。
おっさんの言われたように石板に手を当てる。すると石板が青く光る。そしてすぐに光が消えた。
「よし、登録完了だ。少し待っててくれ。今カードを発行しているからな」
「カード?」
何?免許証的なやつか?
「そうか、ぷれいやーだから分からんか。カードっていうのはパーソナルカードというやつでな、その人個人だけのカードだ。この世界の住人は必ず自分のパーソナルカードを持っている。それが通称カードっていうやつだ」
おぉ、免許証じゃなくて個人番号カード的なやつか。それにしても
「そんな大事なカードが何でこんな所で発行できるんだ?」
「こんな所って…。まぁ、そうだな。本来だったら生まれた時に役所で作られるんだがな。役所からぷれいやーが来たら俺たちで作れって命令がきてんだよ。だから俺たちが作れるのは嬢ちゃんみたいなぷれいやー限定だな」
なるほどな。まぁ、これはそういう設定なんだよな。これに深く突っ込んでも意味はないな。
「ほれ、出来たぞ。ちなみに登録すると冒険者ギルドとか商業ギルドとかの情報もこのカードに出るようになるからな。無くすなよ」
「一応聞くが無くすとどうなる?」
「面倒臭い手続きが1週間続くと思え」
「わかった。絶対無くさない」
1週間とかどんな地獄だ。ゲームの世界でも役所の仕事は遅いってことか?
「おぉ、そうしろ。その方が俺も面倒がなくていい」
カードを受け取る。カードを見ると
澪
しか書いていない。何?これだけなの。何かの間違い?バグ?
「あぁ、最初はカード見ると全員驚くよな。まだ、何もしてないんだ。何も書かれてないぞ。冒険者登録とかすると勝手に増えてくぞ」
良かった。バグじゃないならいいや。カードをしまうと大事なものリストに入った。良かった。これならまず無くならないな。
「これで終わりか?」
「そうだな。あとは自由にしていい。街の外でモンスターを狩るんだったらまずは冒険者ギルドで登録してからにしろ。冒険者のランク上げにモンスターの討伐数がいるから最初に登録しといたほうが無駄がなくていい」
「成る程。じゃあ、冒険者ギルドに行く事にする」
「そうしろ。場所はここから出たらデッカい道がある。それを真っ直ぐ行きな。大きな広場に出るから。その広場から見える1番デカい建物がそれだ」
親切なおっさんだったな。最初にこういう情報があると本当に助かる。
「ありがとうな、おっさん。お礼に良い事を教えてやろう」
「何だ?」
うん、興味津々だな。ちゃんと教えるから安心しろ
「ハゲは遺伝よりも日々の頭皮のケアが原因でなることが多いらしいぞ」
おっさんがキョトンとした表情になる。そして俺の言葉が理解出来たようで顔が真っ赤になっている。うん、ナイス反応。
「俺は禿げないから問題ない!!」
「ハハハ、世話になったな。おっさん。また会おう」
「おう、気をつけて行けよ」
詰所から出るとすぐに大きな道に出た。おっさんの言った通りに行くと大きな広場に着いた。デッカい噴水がある。NPCなのかプレイヤーなのか分からんが人が多いな。1番デッカい建物ねぇ。周囲を見渡すとすぐに見つかった。うん、確かにデカい建物だ。一個だけ周りの建物より倍以上の大きさがある。こんだけ目立てば誰でも分かるな。
建物には二つの剣がクロスしているレリーフがある。何か冒険者ギルドのマークとかって結構どのゲームでも似たり寄ったりだよな。まぁ、分かりやすくていいんだけどさ。
冒険者ギルドに入ると人が凄いいた。掲示板を見ているやつ。テーブルで複数で固まって作戦会議みたいなのをしてるやつ。併設の酒場か?酒飲んでるやつもいるな。人口密度高いな。
何か視線を感じるのだがどうした?
「幼女だ」
「マジ幼女だ」
「えっ?NPC?でもあの格好はプレイヤーだよな」
「実在したのか幼女」
人を珍獣のような言い方をするな。しかしプレイヤーなら幼女なんぞ珍しくもないだろうに。取り敢えず無視して冒険者登録をしよう。…と思うんだがどこでするんだ?取り敢えず受付に言って聞けば分かるか。大丈夫だよな。受付番号発券機とかないよな。
受付は何個かあって人のいない所に行く。上の方に新規登録とか看板あると分かり易いんだけどな。
「あぁ〜、いらっしゃい。一応聞くが冒険者登録で良かったか?」
俺が行った受付には冴えないおっさんがいた。うん、女の人が受付にいる所もあったが全部人が並んでたんだ。そんな中ポッカリと人のいない空間が出来ていたのがこの冴えないおっさんの受付だったという訳だ。にしても俺の関わるNPCおっさんしかいなくないか?何だ。俺がおっさんだからか?おっさんだからこうなるのか?
「返事をしてもらえると助かるんだけど」
おぉ、そうだった。今は登録が先だ。
「そうだな。一つ登録を頼むよ」
「う〜ん。君みたいな若い子がやる職業ではないんだけどねぇ。他の商業ギルドとかで登録して仕事を探したらどうだい?」
何?まさかの登録拒否?いや、待ておっさん2号。こんな形だが俺は歴としたおっさんだ。お前と同類なんだ!
「今まで色んな人を見てきたけど、流石に君みたいに小さい子はねぇ」
まさかの事態にアワアワしていると後ろから書類を持った女の人が近づいてきた。そしてその書類で2号の頭を一閃。
「何してるんだいエリオット。この子はぷれいやーだろう。ぷれいやーは見た目と中身が一致しないってわかってんだろうが。登録したいって来てるんだから、さっさと登録しておやりよ」
うん、この人は姐御だな。俺の中で今決めた。
「でも、リオさん。流石にこれはどうかと思いますよ」
俺を指差すな2号。子供の頃人を指差すなって習わなかったのか?
「あんたの考えなんてどうでもいいんだよ。やらないんならどっかに行きな。邪魔だよ」
そう言って2号を退かす姐御。強いな。退かされた2号はそのまま奥に行ってしまった。弱いな。
「すまないね。あいつも悪いやつではないんだけどね。普段はしっかりやってるんだけどねぇ。流石にあんたみたいな小さい子は初めてだったから混乱しちまったかね?まぁ、勘弁してやっておくれよ」
「いや、登録出来れば別にいいんだけど」
「そうかい、ありがとうよ」
ニッと笑う姐御。笑顔が眩しいぜ。
「私はリオっていう。あんたは?」
「澪だ」
「澪ね。よろしく。カードは持ってるね」
「さっき作ってもらった」
「じゃあ、それを貸しておくれ。手続きするから」
姐御にカードを渡す。そして姐御は何かの機械にカードを入れて入力している。一応ファンタジーの世界だと思ったけど随分ハイテクなのね。
「この機械が気になるかい?これはね。崩壊前の遺物で冒険者登録するのに利用されてるんだよ。原理なんかは分からないから説明できないよ」
あぁ、そういう設定あったね。納得して1人頷く。
「登録まで少し時間があるから冒険者について説明しとくよ」
「よろしく」
こういうのはしっかり聞いとかないとな。
「まず、冒険者はランクで分かれていてFからSランクまである。勿論最初はみんなFランクからだよ。ランクを上げるにはモンスターを狩って素材をギルドに納品するか依頼を受けて達成する必要がある。勿論依頼でモンスターの素材を要求するのもあるね。そうすることで冒険者はお金とギルドへの貢献度を手に入れる。で、貢献度が上がっていって一定以上になればランクが上がるってシステムだよ。依頼を受ける時は依頼票を受付に持って来ればいいし、モンスターの素材だったら向こうに素材受け取りのカウンターが別にあるからそこに持っていけばいいよ」
よくある冒険者ギルドのやつだな。
「Cランクから上がるには貢献度の他に試験があるから注意しな。あと受けられる依頼は自分のギルドランクより一つ上までだ。パーティを組んでいる場合は1番ランクの高い冒険者のランクまでになる」
「パーティだと一個上じゃないんだな」
「パーティだと、それ専用の依頼とかもあるんだけどね。個人よりも難易度は高くなってるからね。自分よりも格下のお守りをして上のランクの依頼なんて無理なんだよ」
「成る程。理解した」
「後は、依頼に失敗すると違約金が発生するし、連続で失敗するとランクを下げることもある。依頼とは関係なしにあまりにも悪質なことをすると除名処分になるから気をつけなよ」
除名処分とかあるんか。
「基本はこんなもんだね。さて登録も終わったからカードを返すよ」
姐御から貰ったカードには新しい表記が追加されていた。
澪 冒険者ランクF
うん、あっさりしたもんだよ。
「もし時間があるなら依頼でも受けたらどうだい?依頼はそっちのボードに貼ってあるから。ボードの上にランクが書いてあるから澪だったらEランクまでだったら受けることができるよ」
「見て、面白そうなのがあったら受けてみるよ」
「そうしな。素敵な冒険者ライフを」
手を振って姐御は奥に戻っていく。姐御かっこいいな。そして2号奥に行ったきり戻ってこないのな。
まぁ、いいや。ボード見て何か依頼受けてみよう。