第21回配信 イベント ゴブリン王の帰還 ④
「向こうから何かくるわね」
白桜が示した先から奥から一体やってくる。
「デカくねぇか?」
まだエリア外にいるよな。マップには映ってないもんな。その割にはシルエットがでかい気がするんだが。
「デカいわね」
「デカいな」
うん。近づいてきてるな。どんどんシルエットが大きくなってるな。
「まぁ、あれがゴブリン王なんだろうな」
なるほどつまりはあれがパパンって事だな。パパンデカイな。
「取り敢えずパパンを殴ればいいんだな」
パパンがエリアに入ってきたな。本当デカイな。3M以上あるよな。頭に王冠被ってるな。あれで王を表してるのか?デッカい剣持ってるな。防具は腰布だけなのな。おっし状況は把握した。殴りに行こう。
「ちょっと澪待ちなさい」
白桜に止められてしまった。
「どんなモンスターなのか分からないのよ。それなのにいきなり突っ込むのはバカのすることよ」
「バカとは失礼な。俺は脳筋なだけだ!」
近づいて力の限り殴る。これで全てが解決だ!
「澪………」
「お前はそういう奴だったな」
何だその残念なやつを見る目は。
「一番槍は僕がもらう!!」
あっ、ゴブプリが行った。有刺鉄線棍棒振り被って走ってるな。なんであの走り方しかしないんだろうな。あいつ。
「取り敢えずあれだ。親子の感動の再会だな」
「あなたどうしてもゴブリン王とゴブプリを親子にしたいのね」
「プリンスって王子だろ。であれは王。つまり親子だ」
うん完璧な理論だ。
ゴブプリがパパンに殴りかかろうとしているところでゴブリン王の一閃。直撃し吹っ飛ぶゴブプリ。光にはならないから死んではいないな。
「……あれが感動か?」
黙った俺は悪くない。
『再会時に息子が親父に棍棒で殴りかかるって…』
『親父はそんな息子を大剣で薙ぎ払う』
『ゴブリンの親子ってバイオレンス』
『モンスターだもんな』
パパンが吹っ飛んだゴブプリにゆっくり近づいていく。表情が歪んでるな。あれは笑顔か?笑顔だったら大分醜悪だぞ。ゴブプリの目の前に辿り着く。大剣を大きく振り上げる。そして追い討ちの振り下ろし。さらにパパン連打連打。砂煙が激しいな。全く見えなくなったぞ。
「おう、情熱的な挨拶だな」
「そうだな。あまりにも情熱的でゴブプリ死にそうだけどな」
確かに死にそうだけど光らないな。光らないってことは死んでないって事だもんな。あんだけ攻撃くらってるのに死なないって事はパパンは攻撃力が低いのか?いや、あんなデカいパパンの攻撃力が低いわけないよな。まさか息子だから手加減してるって事はないだろ。
「あら、某さんが助けたみたいね」
白桜が指差した先にはゴブプリを肩に担いでダッシュする落武者が一人。砂煙に紛れて救出してたのか。まぁ、あの連打を全部受けて死なないのはないよな。某はゴブプリのこと気に入ったのか?良いタイミングの救出ではある。あるんだがなぁ。
「絵面的には人攫いだな」
落武者が人を肩に担いで全力ダッシュだろう。犯罪の匂いしかしないよな。
「そのまま持っててくれていいんだけどね」
白桜、その冷めた眼で見ながら言うのやめてあげて。
「あれは放置でいいだろう」
「そうね。あれはもう邪魔しなければいいわ」
「邪魔したらどうするんだ?」
またOHANASIAIでもするのか?
「知りたい?」
白桜が壮絶な笑顔を向ける。この話題はやめよう。うん。
「いえ、結構です」
人ってこんなに怖い笑顔が出来るんですね。メンタル弱かったらトラウマになるぞ。
「……よし。それじゃ改めてパパンに挑むか!」
元気よく話題を変えよう。俺たちはイベントをやってるんだからな。うん。みんなでパパンを倒そうじゃないか。
『白桜さん笑顔怖い』
『黒桜さん顕現』
『黒桜さんに逆らっちゃダメだぞ』
お前らこのコメントを白桜も見てること忘れてないか。ほら今もコメント欄見てるぞ。
「ふふっ」
「「!!」」
あぁ…。これはマズいぞ。非常にマズい気がする。ちょっと距離取ろうかな。ん?虎ちゃんも距離取り始めてるな。顔が引き攣ってるぞ。
「澪。このままだとマズい感じがするからさっさとゴブリン王のところに行こう」
虎ちゃんが小声で言ってくる。
「そうだな。正直パパンよりも今の白桜の方が怖い」
「あの状態に比べたらまだ切れてRPを忘れてくれた状態の方がいいよな」
「そうだな。今の状態は非常にマズい」
よし。状況の確認は出来た。俺たちのやる事は決まった。虎ちゃんと頷き合う。
よし。目標前方でまだ振り下ろしを繰り返しているパパン!!
「「突撃ぃぃぃぃ!!」」
虎ちゃんと二人で駆ける。大声で叫んだからか周りのプレイヤーもチラホラとパパンに向かっている。
「お前らも白桜が怖かったんだな」
わかるぞ。あの笑顔は怖いよな。
「多分。それは違うと思うぞ」
諸君らもあの笑顔を見て恐怖したんだろ。勿論俺はマジでビビったぞ。
パパンはまだ地面を連打してる。やはりパパンと言ってもゴブリンだな。どうやって距離を詰めようかと思ったけどゴブリン脳に助けられて楽に距離を詰められたな。
よし俺の距離に入ったぞ。おっし、殴るぞぉ!
「テメェは息子にどんな教育しとるんじゃあああ!!」
パパン。テメェの教育方針を否定してやんよ!いつまで地面耕してんだコラァ!!
「テメェの脳みそも耕してやんよ!!ビートッダウン!!」
「うちの澪が随分とガラの悪い子になってしまったな」
『見た目は可愛いのに。もう少し幼女的な行動をしてもらっても全然構わないんだか』
『澪ちゃんRPしないって言ってたからな』
『やってくれたらご褒美なんだけどな』
『何でも言うこと聞きますからやってください』
『今何でもって言った?』
『構わぬでござるよ!』
『安定の某さんだw』
「中身を知ってる身からすると、あいつが幼女みたいな言動とったら爆笑ものなんだけどな」
周りの奴らも続々と殴りに来てるな。みんなパパンの教育方針に不満があったんだな。
殴られまくって漸くパパンがこっちに標的を変える。
「また振り下ろしか!?」
振り下ろしは早いかもしれないけど範囲が狭いから避けられるぞ!
「「プギャっ!!」」
あっ、何人か巻き込まれたな。避けなさいよ。振り下ろしなんて威力高いに決まってるんだから。
パパンが同じ位置に何度も振り下ろす。
「うっわ、エグッ」
最初の振り下ろしをくらったプレイヤー達は硬直してるようで何度も振り下ろしをくらっている。そしてそのまま光になって消えていった。
「あの攻撃は絶対避けなきゃダメだな」
あれは助からんわ。ゴブプリは某の人攫いがあったから助かったんだな。
「澪。お前は紙装甲なんだからあんまり前に出過ぎるなよ」
虎ちゃんが盾を構えながら近づいてくる。
「白桜はどうなった?」
見た感じ近くにはいないみたいだけど。
「あぁ、一緒には突っ込まなかったからな。まだ向こうにいるぞ。ほら、あそこを見てみろ」
虎ちゃんが示した先に白桜がいた。
「うわぁ……」
黒い笑顔で魔法撃ちまくってるよ。
「あいつもストレス溜まってたんだろうな」
「ゲームってストレス解消とかになるはずなのにな」
「全てゴブプリが悪いことにしよう」
あの笑顔の矛先がこっちにならんようにしないとな。
「そうだな。うん。きっとそうだ」
「虎ちゃんあの振り下ろしはガードできるか?」
「う〜ん。一発二発は防げると思うけどな。連撃になると厳しいな」
「じゃあ、あの振り下ろしは回避一択だな」
メイン盾が無理なら全員無理だな。
今のところパパンは振り下ろししかして来ないな。最初ゴブプリを薙ぎ払ってたけどあの攻撃は最初だけなのか?全然使って来ないところを見ると最初だけっぽいけど油断は出来んかな。
まぁ、この手のボスは体力が減ると行動パターンも増えるからなぁ。行動パターンが変わるタイミングに気をつけないとな。色々考えると面倒くなってくるな。どうするかなぁ。距離取って様子見るのも手だけど。
「まぁ、考えても分からんから殴っとくか!」
考えるのは俺の仕事じゃないしな。
「お前はもう少し考えような」
考えるんじゃない。感じるんだ!何を感じるかは分からんけどな。
パパンの振り下ろしは真正面にしか来ないみたいだな。振り下ろし場所が変わる時はご丁寧に体の位置を変えてるしこれは確実だな。今の行動パターンの間は真正面に行かなきゃ問題なしだな。
しかしこう見ると近接プレイヤーが多いのが分かるな。パパンの周囲にスッゴイ群がってるな。俺も群がるぞぉ!
「俺だってやるんだぁぁ!!」
「王冠被っただけで王なのってんじゃねぇぞ!ゴラァぁ!!」
過激なプレイヤーが多いな。眼血走ってないか?最初からパパンへのヘイトが高い気がするけどみんなどうした?
そしてパパンの正面にいるプレイヤーが多いな。だったら俺は正々堂々とパパンを後ろからバッサリやったろう!
「命取ったらぁああああ!!!」
パパンを後ろから殴る。後ろに位置取りしとけばパパンの攻撃は届かないからな。殴っても殴られない。セーフティゾーン万歳!
「後ろは安全だぞ!後ろから殴れ!」
「テメェの尻を4つに割ってやんよ!!」
おっ、他のプレイヤーもセーフティゾーンに気づいたか。そうだぞ。後ろはセーフティだ。
尻を4つに割られるのはやだな。
殴り続けていたらパパンが震え始めた。なんか嫌な予感がするな。
こんな如何にもな時に殴り続けるほど思考停止ではないからな。俺は脳筋であって思考停止ではないのだ。脳筋と思考停止は違うからな。脳筋は相手をどの筋肉で倒すかは考えてるからな。良い子のみんなは間違えるなよ。
周りのプレイヤーは殴り続けてる奴が多いな。皆の衆達者でな。俺は一旦逃げるぞ。
震えが止まって大きく仰反ってから本日2度目のパパン咆哮。そして薙ぎ払い。パパンの周囲にいたプレイヤーが吹っ飛ばされる。ガードした虎ちゃんも吹っ飛ばされてるな。薙ぎ払いはノックバックもあるのね。
薙ぎ払われたプレイヤーに振り下ろし攻撃してるな。そこから相変わらずの連打と。
あっ、攻撃もらったプレイヤーやられたな。
薙ぎ払い→ノックバック→振り下ろし→連打って即死コンボじゃないか。攻撃パターン1個増えただけで極悪になったなパパン。
虎ちゃんは振り下ろしは受けてないな。あのコンボはメインタンクでもダメだろうな。
あの薙ぎ払いはもらったら振り下ろしが自分に来ないようにお祈りするしかないな。
でも俺は見たぞ。あの薙ぎ払いは真後ろには当たり判定がないという事を!つまりだ。
「今まで通り俺の立ち位置はセーフティゾーンだ!」
誰も俺を止められないぜ!ヒャッハー!!
薙ぎ払いの時に少し硬直がある。その硬直している間に自分の立ち位置をパパンの真後ろに変える。他のプレイヤーも気付いているみたいでパパンの真後ろに移動しているのが多い。
よし。全員でぶん殴ろう!
パパンがまた震え始めた。パパン第3形態か。よし何するか分からんから離れよう。一緒に後ろからパパンを殴っていた諸君さらばだ。
「また何か来るぞ。距離取るぞ!」
「真後ろも危ないかもしれないしな!」
前回の教訓が活きてるみたいだな。今回は距離取るプレイヤーが多いな。
パパンの全身が真っ赤になる。パパンが顔真っ赤勢になったな。これはパパンは煽り耐性が低いということか。よしちょっと煽っとくか。
「や〜い。お前の息子ゴブプリ〜!!」
『煽りが雑w』
『しかし事実だw』
パパン大咆哮。煽りが効いたか?
『あの雑な煽りが効いた!?』
『やはり事実だからか?』
パパンは大剣を地面に突き刺した。そして一度屈む。起き上がると手には大きな岩を持っていた。
「おぅ、パパンその岩をどうするつもりだい?」
『岩を持ったらやることは一つだよな』
『そうだなやることは一つだな』
パパン第一球振りかぶって、投げたぁ!!
遠距離で魔法を使っていた集団の方に岩が着弾。あそこはきっと阿鼻叫喚なんだろうな。
パパンがまた大剣を持って攻撃し始める。俺の煽りよりも遠距離からの攻撃の方がパパンのヘイトが高かったらしいな。
つまりまた後ろはガラ空きだ。殴るぞぉ!!
またパパンの後ろから殴る。パパンも旋回しながら攻撃してくる。同じ位置にいるとすぐに薙ぎ払いの範囲に入りそうになる。実際移動が遅れて薙ぎ払いの範囲に巻き込まれたプレイヤーがちらほらといるな。巻き込まれないように気を付けないとな。
「某くん。さっきは助けてくれて有難う」
「なに、ゴブプリ殿とは同じ戦場を駆けた盟友故気にしないでいいでござるよ」
「君もゴブプリって呼ぶんだね」
「澪殿から直接名付けられたのでござるよ。とてつもないご褒美でござるよ。某も何か名付けて欲しいでござるよ」
「そ、そうかい?」
「で、これからどうするでござるか?」
「勿論ゴブリン王を僕が倒すさ」
「ふむ、倒すと言うでござるが何か策はあるでござるか?」
「僕が行けば全てが解決するさ!」
「そうでござるか…………これがゴブリン脳でござるか。これはなかなかでござるよ」
「ん?どうしたんだい某くん」
「いや、何でもないでござるよ」
「それじゃ、行こうか」
「虎ちゃん無事みたいだな」
パパンの後ろ後ろにと移動していたら虎ちゃんに会った。元気そうでなにより。
「おう。お前も大丈夫そうだな」
「白桜は無事かね?」
何回かパパンの岩石投げがあったけど。
「いや、一緒にいないから分からん」
虎ちゃんも知らんか。
「パパンが来てから全員バラバラに動いているな」
「あれはパーティ単位で固まってたらダメなやつだからな」
「ところで虎ちゃん」
折角だ。実はちょっと気になることがあったから聞いてみよう
「なんだ?」
「パパンから大分離れた位置でベ○立ちしてる集団がいるんだがあれは何だと思う?」
そうパパンが来てからずっと距離を取ってなにもしないで○ガ立ちしてる集団がいるんだよ。
「まぁ、何となく予想はつくけどな」
流石虎ちゃんは分かるのか。
「でも澪聞かない方がいいと思うぞ」
「何故?」
「いや、あれきっとお前が原因で来た奴らだぞ」
へっ?どう言う事?なんか虎ちゃんの目が可哀想なやつを見る目になってるけど。
「多分あれな。最初上のエリアにいたロリコンドリアだと思うぞ」
「げっ!?」
あいつらか!!
「装備も他のプレイヤーに比べて良さそうだしな。多分そうだと思うぞ」
確かに装備整ってるのが多いな。
「でも何でなにもしないでべ○立ちしてるんだ?」
「それは知らん」
ですよね〜。
「まぁ、気にしない方がいいと思うぞ」
「そうだな。気にしないことにする」
今はパパンを殴る事に集中しよう。
大分パパンも傷だらけになってきたな。体力ゲージはないから分からんけど見た目に変化があるのは有難いな。
おっ、またパパンが震え始めた。また何かするんだろうな。
「またか。じゃあ、俺は距離取るわ」
「はいよ。またな」
虎ちゃんとはまたここでお別れだな。
パパン咆哮。さてどんな攻撃がくるか。
………………………なにもして来ないな。どうしたパパン?
ん?後ろが騒がしいな。
なんか集団が走ってくるな。一直線にこっちに来てるな。おう、ゴブリンズじゃないか。
仲間を呼ぶなんて卑怯だぞパパン!早めに距離を取っていたから他のプレイヤーよりも早くゴブリンズと遭遇してしまった。
ゴブリンズはパパンの真後ろから出てくるのか。まさかの後ろからの攻撃対策が仲間を呼ぶ事とは。
ゴブリンズは上位種がいないから楽に倒せるけど数が多いな。ゴブリンズに気を取られるとパパンの攻撃範囲に入りそうで怖いぞ。実際ゴブリンズと戦ってた他のプレイヤーがパパンの攻撃くらって吹っ飛んでるし。
これは足を止めたらあかんやつだな。姐御との特訓の成果が唸るぜ。俺は止まらないぞ!
移動しながらゴブリンズを倒すがゴブリンズ無限湧きだな。パパンの真後ろからワラワラ出てくるし。ゴブリンズが邪魔で全然パパンに近づけんぞ。ぐぬぬ……。
「味方のピンチに颯爽と現れる。これこそがヒーローと言うものだよ!!」
「あっ?」
ゴブリンズを有刺鉄線棍棒で殴り倒しながらゴブプリ登場。
「お前人攫いタクシーで担ぎ込まれてから何してたんだ?」
「?人攫いタクシー?よく分かんないけど僕の活躍はこれからさ!」
ゴブプリがゴブリンズと戦い始める。まぁ、うん。頑張ってくれ。
「じゃあ、俺はパパンのところに行ってくるから。あとよろしく」
「えっ?澪?ここは一緒に戦うところじゃないのかい?」
そんなの知らんがな。今はパパンに近づくチャンス!俺はパパンに向けてダッシュだ!
「ちょっと澪!?」
「油断するとパパンの一撃が飛んでくるから気をつけろよ」
さらばゴブプリ!ゴブリンズの相手は任せた。同郷なんだろ。積もる話もあるだろうからゆっくりすればいいじゃないか。俺はその間にお前のパパンをぶん殴ってくるから。
パパンに向かって駆ける。パパンの真後ろに着くように距離を詰める。ゴブリンズの邪魔がないのであっという間にパパンの元に辿り着く。それではやるぞ。
「ウッドブレイカー!」
テメェのあんよを切り倒してやんよ!
パパンがグラつく。ダメージが蓄積されてきてるな。これはチャンスなのではないか。
「チャンスだ!畳み掛けるぞ!!」
どっかのおっさんプレイヤーが叫ぶ。それに合わせて周りのプレイヤーがパパンに群がり次々に殴っていく。
「ヒャッハァァーー!!」
「報酬だ!報酬を寄越せよ!!」
多人数クエストっぽくていいね。ちょっと世紀末入ってるやつが何人かいるけど気にしないでおこう。
参加しているプレイヤーが勢いに乗ってパパンを殴っている。中にはパパンの後方から無限湧きしているゴブリンズを殴りに行ってるプレイヤーもいるな。
ゴブプリだけだとあっという間にゴブリンズに飲み込まれて終了だけど他のプレイヤーもいるなら大丈夫だろう。
「さぁ、みんな!ここにいるゴブリンを倒すぞ!僕に続けぇ!!」
「某が加勢するでござるよ!!」
「ヒャッハァァーー!!」
あぁ、うん。二人仲良いね。そのまま付き合っちゃえよ。まとめて破棄してやるから。
そして後ろにも世紀末なプレイヤーがいるのな。でも何となく集団で殴りに行く時にそのセリフを叫びたくなる気持ちは分からんでもない。
「これが武の力さ!」
「ヒャッハァァーー!!
ゴブプリよ、その頭が頭痛で痛いみたいなアホな言動は何だ?周りもテンションがおかしくなってるからスルーしてるけどさ。
「FFなんてないんだから撃って撃って撃ちまくるわよ!!」
「「「イエスマム!!」」」
パパンに属性関係なしの様々な魔法が飛んでいく。魔法使い達が一箇所に固まってるな。
それは別にいいんだが何で白桜が仕切ってるんだ?
「あれに属性の相性なんてないみたいだから一番威力の高い魔法を撃つわよ」
「イエスマム!!」
後方の魔法使い達が一糸乱れぬ動きで魔法を放っている。撃つ魔法は違うけどさ、何あの纏まり方?みんな今日初めて会った人たちでしょ?何でそんなに纏まれるの?体育会系なの?魔法使いなのに体育系?それとも白桜軍曹のブートキャンプ的なやつにでも入った?
パパンの正面には虎ちゃんがいた。凄いどっしり構えてるな。パパンの攻撃をうまく防御してるな。振り下ろしは受けないでしっかり避けてる。技術的には凄いんだろうけど地味だ。安定感抜群だけど地味だ。堅実といえばいいのかねぇ。虎ちゃんのプレイングって玄人好みするプレイだよな。
よし。俺もパパンを殴ろう。俺は紙装甲だから後ろからヌルッと殴るけどなっ!
ここで一つ疑問があるんだ。大体のプレイヤーはパパン討伐に頑張っている。頑張ってるんだけどさ。
「あのベ○立ちしてるおっさん達は本当に何がしたいんだ?」
ずっと一定距離からこっちを見てるだけなんだよ。気にしないようにしてたけど気になるんだよ。やっぱり。
『我々は幼女を観察するために来た者』
『我々はただ幼女を観察するのみ』
『幼女をひたすらに観察する。とても良い報酬です』
あぁ、うん。返事して来れたな。はい確定しました。ロリコンドリア達です。知ってたけどさ。知ってたけどさぁ!!
『メーデー!メーデー!!畜生!!バケモンだ!!どうなってやがる!!』
ん?なんか毛色の違うコメント君が現れたな。
『衛生兵!衛生兵!早くこっちに来てくれ!!』
『こいつはもうダメだ!置いていこう!』
『いやだ!こいつは俺の相棒なんだ!こんなところに置いていけるか!!』
『俺はもうダメだ…。お前だけでも……』
『エリーック!!』
「ん〜、突然夜9時ぐらいから始まるB級洋画が始まったけどなんだ?」
突然過ぎて対応に困るんだけど。どう反応するのが正解なんだ?
「このコメント君は何を期待してるんだ?俺はどうするのが正解だ?」
分からん時は聞くのが正解だぞ。分からんで勝手に行動して大惨事は慣れてきた新人によくある事故だ。
『どうした小僧。まぁ、落ち着けよ』
『そうだぜ。焦りは何も生まない。ここは一先ず俺たちと一緒に幼女ウォッチングしようぜ』
『そうだぜ兄弟。ここにいるってことはお前も幼女が好きなんだろ?』
『うるせぇ!!こっちはお前達が急に抜けたからキツくなってだんだよ。ここに来て戦線が崩壊してとんでもないことになってるんだよ!!』
おっ?どういうことだ?
『あ〜、つまり俺たちが澪ちゃんを見にエリア移動したから人が足りなくなって大変て事か』
なるほど。ベ○立ちおじさん達がいなくて向こうは大変という事か。帰ってもらって構わんのだが。
『そういう事だ!早く戻ってこい!本当大変なんだか……、あー!!』
『やられたか』
『しかし我々は幼女を遠巻きに見ることが至高』
『俺たちの欲望のために死んでくれ』
嫌な欲望だなおい。
「澪!ちょっとこっち来て!」
うん?白桜が向こうから手招きしてるな。あのブートキャンプゾーンに行くのはなんか嫌なんだけど。
まぁ、行かないと行かないで怖いから行くけどさ。だからその黒い笑顔でこっち見るの止めてくれ。
パパン勝負は一旦お預けだ。暫く他のプレイヤーにフルボッコにされるがいい。




