第19回配信 イベント ゴブリン王の帰還 ②
〈イベント ゴブリン王の帰還 初級エリア フェイズ2開始〉
「おっ、進んだな」
さてフェイズ2だ。フェイズ2。早くゴブリン来ないかなぁ。
「やる気を出して武器振り回してるところ悪いんだけど。澪ちょっと周り見てみなさい」
「んっ?」
周りを見ろとはどういう事だ?別に変わったことは………。
「人増えてないか?」
最初に比べて明らかに人が増えてるよな。そして。
「なんかこっちをみてる気がするんだが」
なんだろう。あんまりよくない視線を感じるぞ。
「コメント見てみなさい」
「コメント?コメントがなんだっていうんだ?」
仕方ない。どれどれコメントがどうなってるって?
『澪ちゃんがいるっ!!』
『行けば必ず会えるなんて』
『幼女がっ、幼女がっ!!』
『なんで俺は最初からここに来なかったんだ!?』
『某さんは最初からこれを考えていたのか』
『流石ロリコンドリア頭領だ』
あぁ〜……。本当に来たんだ。
「凄い数来たな」
「どうなるのかしらね?これって」
「見てるだけみたいだし大丈夫じゃないかな。彼らに僕の華麗な戦いをお見せしようじゃないか!」
ゴブプリが有刺鉄線棍棒で素振りをしている。お前の戦い方って華麗の正反対に位置してると思うのは俺だけだろうか。いや、二人も可哀想なやつを見る目になってるからきっと俺と同じ思いだな。
「うん、まぁ頑張れ」
俺にはこれぐらいしか言えんよ。
ゴブリンが出てきたな。数は1グループ6匹か。2匹増えた程度ではなぁ。ちょっと物足りないよなぁ。まぁ、でも取り敢えず狩るか。
ゴブリンの群れに斬り込む。一撃で狩れるのは変わらずだな。
「全て倒してしまっても構わんのだろ?」
「澪。それやられるフラグだから止めとけ」
一度は言ってみたかったセリフなんだよ。
「大丈夫。ゴブリンだし。現実にフラグなんてあるわけないだろ。あれはフィクションでこそ輝くものだ」
攻撃する度にゴブリンは倒れていく。増えても6匹だからな。やっぱり問題ないな。
「そう言って油断しているとヤラれるぞ」
ヤレるものならヤッてみろ。俺に敗北を教えてみるがいいわ!
「ぬぉっ!?」
1匹のゴブリンが反撃してきた。避けると同時にバックステップで距離を取る。当たらなかったけどビックリしたな。
「もう少しでフラグ回収するところだったわね」
「まぁ、油断するとそうなるな」
まさか反撃されるとはな。このゴブリン只者ではないな。
「って、コイツちょっと違うか?」
なんか他のゴブリンよりも体ががっしりしてるし装備もちょっと良さげだ。
「あぁ、そうね。これは……ゴブリンファイターね。一応ゴブリンの上位種になるわね」
なんと上位種も出るようになったか。ゴブリンばっかりだと面白くないからな。少し手応えがあるヤツが来たって事だな。ウェルカムだ。
「澪。ちょっと待った」
バトルアックスを構えて突っ込もうと思ったら虎ちゃんに止められた。
「なんだ?」
「お前ばっかりやるな。俺たちにもやらせろ」
「そうね。さっき沢山ゴブリン狩ったんだからここは譲るべきよね」
二人ともちょっと視線が怖いよ。はい。大人しく引きます。
「どうぞ」
バトルアックスを降ろして後ろに下がる。うん。引き際は肝心だよね。
「よし。やるか」
虎ちゃんが武器を構えてゆっくりと近づいていく。なんか出来る男みたいでカッコいいな。もふもふだけど。
「フォローしましょうか?」
「いや、最初は一人でやってみる」
「そう、じゃあ次に来たら私一人でやるわよ」
「了解」
『二人の間で話が決まったな』
『これに対して澪ちゃんは何も言わないのか?』
『さっきの二人の様子からしたら言えないだろ』
『そうだな』
よく分かってるな。今回は俺は何も言わないぞ。言わないっていうか言えないぞ。
『二人は良いとしてゴブプリはどうした?』
ん?そうだ。あいつは何やってんだ?
「あれ、いない」
周囲を見渡してもゴブプリの姿が見えない。あいつさっきまでここで素振りしてなかったか?
『いないw』
『まさかのイベント中に迷子』
『このイベントに迷子になる要素があったか?』
『ないな』
「帰巣本能でも刺激されたか」
仲間を沢山見て帰りたくなったのか。理性でなく本能が勝ってしまったか。
『帰巣本能w』
「まぁ、いいや。その内光に包まれて出てくるだろ」
『死に戻りが確定している件について』
『しかしそう思ってしまうな』
『どこかでゴブリンムーブしてるってことだよなw』
『澪ちゃん放置でいいの?』
「別にいいだろ。子供じゃないんだから。まぁ、ゴブリンではあるけどな」
見えない範囲でのゴブプリの行動には責任は負えないからな。見える範囲でも負う気はないけど。全てヤツの自己責任です。
「それよりも虎ちゃんの戦いでも見ていよう」
その方が何倍も有意義だ。
虎ちゃんがゴブリンに囲まれているな。タンクだから殲滅速度はそんなに早くないからな。囲まれるのは仕方ないな。
「囲まれているのに凄い安定してるな」
ゴブリンの攻撃を丁寧に処理してるな。必要最低限の動きでいなしている。囲まれてるのに冷静な立ち回りだ。
『燻し銀な戦い方だ』
『派手さはないけど上手いな』
『流石紳士と名乗るだけあるな』
そこは紳士関係あるのか?
おぉ、シールドバッシュしてる。弾かれたゴブリンに追撃の一撃。危なげなくゴブリンの集団を処理したな。
上手い戦い方だ。凄いと思う。思うけど。
「モフモフなのに戦い方がモフモフしてなかった」
折角白モフになったんだから、もう少しモフモフした戦い方はなかったのか?
『モフモフした戦いとはw』
『分からん』
『俺たちには難易度の高い問題だ』
『お客さまの中にケモナーはいらっしゃいませんか?』
『残念だったな。ここにいるのはロリコンドリアだけだ!』
『間違いないw』
「肉球パンチとかして欲しかった」
『肉球パンチw』
『それは幸せのパンチ』
『あのグッドデザイン賞から繰り出されるパンチの事か』
『あれは確かにモフモフした戦い方だ』
「俺の手は肉球じゃないぞ」
虎ちゃんが手を見せる。うん知ってた。普通の人の手だ。そこが肉球だったらなぁ。
「そう言えばゴブリンファイターどうなった?」
結構いい動きしてたのに気付いたらいなかったのだが。
「一番最初に処理してたわよ」
「マジ?」
どんな動きするか見たかったのに。なんで俺は見逃したんだ?見逃し配信とかないのか?
「あなたがゴブプリを探してる間に倒してたわよ」
「本当に最初だ!」
おのれゴブプリ。どこまでも俺を邪魔する。
光に包まれたゴブプリが現れる。
「まだ、僕は負けた訳じゃない!!」
すぐに走っていなくなるゴブプリ。棍棒振りかぶって走って行ったな。
「状況が分からんがあの状態で戻ってきたって事は負けたって事だよな?」
虎ちゃんが戦ってる時にいなくなったからな。虎ちゃんは状況が分からんよな。まぁ、俺もよく分からんけど。
「死に戻りだからね。完全に負けてるわね」
「POPと同時に敵に向かって走るって完全にゴブリンムーブだよな」
極まってきてるな。
「みんな知ってるか?あれ一応ウチのヒーラー自称してるんだぜ」
『知ってるw』
『行動パターンがヒーラーというかプレイヤーですらない事実よ』
『ゴブリンの名に恥じぬ行動で大変満足ですw』
プレイヤーとしては恥となる行動よ。
「追いかけるか?」
気にする虎ちゃん。友達思いのいいヤツだよな。モフモフだけど。
「放置してもいい気はするわね」
心底どうでもいい顔をしている白桜さん。
「澪はどうしたい?」
どうしたいと言われるとなぁ。どっちでもいいというのが正直な思いなんだけどさ。
「何してるか分からんから一応確認だけしに行くか」
変な被害が飛んでくると嫌だからな。
「その前に出てきたゴブリンズを倒してからだな」
おおぅ。またPOPして来たか。フェイズ2になってからPOP間隔短くなったか?
「それじゃ、行きましょうか」
今回のゴブリンズは上位種がいなかった。残念。見せ場もなくあっけなく全滅させてしまった。
「追いかけるにしてもあいつは何処に行ったんだ?」
虎ちゃんが周囲を見渡している。ゴブプリは見える範囲にはいない。だが安心しろ。俺はあいつが走り去るのを見ていた。
「俺に任せろ。あいつは向こうに行った」
「澪。そっちじゃないわよ」
白桜に止められてしまった。あれ?違ったか?
「微妙に方向が違ったか?」
まぁ、多少の誤差はあるよな。白桜はしっかり者だからな。ちゃんと覚えてたんだな。
「こっちよ」
白桜が逆方向に歩き始める。
「あれ?逆方向」
「安心しろ。澪に案内は望んでないから?」
虎ちゃんが白桜に続く。
『真逆の逆方向w』
『澪ちゃん逆方向w』
『そう言えば方向音痴だったw』
完全に俺が間違ってる感じになってる事になってるけどさ。流石に逆方向はないんじゃないか。
「待て。白桜が間違ってる可能性だってあるだろ」
「何言ってるのよ。あなたが間違ってるのよ」
「これに関してはお前の信用はゼロだ」
それだけ言って二人は進んで行く。
「俺が当たってる可能性もあるんじゃないのか?」
二人とも俺を無視して進むのはよくないぞ。俺の意見を完全に無視する事は腑に落ちないが仕方ない。追いかけるか。
「俺が正解だった場合お前らに謝ってもらうからな」
すぐにお前らは俺に全力で謝罪する事になるからな!
「すみませんでしたぁ!!」
はい。白桜が言った方向にゴブプリがいました。全面的に私が悪かったです。
「澪が方向で正解を言う事なんてないからな」
「分からなくなったら貴方が言った逆の方を行く。これが一番確実よ」
な、なんだと…。
「で、ゴブプリは何をやってるんだ?」
「戦ってるみたいだけ……ど」
どうせいつものゴブリンムーブだろ。
「ってマジか?」
そこには衝撃的な光景があった。信じられない光景だ。ゴブプリは一人でゴブリンの上位種と戦っていた。
お互いに全く同じ武器を持って。
「ブッ、ブハハハハハハハハハ!!同じ武器持ってるじゃないか!なんだよ黎。中身だけじゃなくて装備もゴブリンに近づけてたのかよ!!」
「ちょっと澪。可哀想だから笑わないであげなさいよ」
「そうだぞ。本当のことでも言わないでやるのが優しさだ」
二人とも必死に笑うの堪えてるのが一目瞭然なんだが。
「あれを見て笑うなって言うのか?あいつ態々怪しい露店であれ買ったんだろ?手間暇掛けてゴブリンと同じ武器を」
笑うなって言うのが無理な話だ。そうか今回はこういう手法で俺を笑わせに来たのか。やるなぁ、ゴブプリ。
二人も笑いを堪えられずに爆笑してるぞ。よかったな。
『衝撃の事実w』
『僧侶らしくない武器だとは思ってたがゴブリン武器だったか』
『そして只今一騎討ち中とは』
「ところであれは何ゴブリンだ?」
虎ちゃんが戦ったゴブリンファイターではないな。ご新規さんだな。
『あれは確かゴブリンウォーリアーだな』
『動きは遅いけど耐久が高くて一撃がデカいヤツだね』
「へぇ、いつもあの有刺鉄線棍棒装備してるんだ?」
『いや、ゴブリンって同じ種族でも持ってる武器が違うんだよね。だから今いるのが偶々同じ武器だったってことだと思う』
「なるほど。運命の出会いってヤツだな」
よし。ここはゴブプリの熱い戦いを見ておこう。邪魔しちゃいけないからな。
「あ、やられたわね」
ゴブプリがゴブリンウォーリアーに頭を殴られて終了。ゴブプリが光に包まれて消えた。
「多分さっきのがあるからゴブプリの2連敗ってことでいいか?」
「多分そうね」
ゴブリンウォーリアーが勝利の雄叫びを上げている。残念ながら何を言っているのかは分からんが喜んでいるようで何よりだ。
「俺たちで倒してしまうか?」
虎ちゃんが武器を構える。う〜ん、どうしようか?
「ところで何で周りのプレイヤーは手を出さなかったのかしら?」
そう言えばそうだな。何でゴブプリに一騎討ちさせてたんだ?
「まぁ、聞いてみればいいか」
え〜っと、近くにいるプレイヤーはっと。
「お〜い。ちょっと聞きたいんだけど。何であそこで戦ってたヤツのところに行かなかったんだ?」
如何にも戦士って感じの装備の見た目好青年プレイヤーに聞いてみる。うん。正統派なキャラクターメイキングだ。俺の周りにはいないキャラクターだな。
えっ?ゴブプリは見た目王子だって?あいつはもう例外だからいいんだよ。
『澪ちゃんに声をかけられるとは』
『羨ましい。俺もそこに行きたい』
『現地にいるけど声をかける勇気がない』
『全員で声をかければいけるか?』
『行ける!!』
「いや、来なくていいから。集団で来られても困るだけだから」
「えっ?集団?何が?」
おっと、コメントへの返信なんて分からないよな。混乱させてしまったか?そして突然幼女に声をかけられたら戸惑ったか?まぁ俺の近くにいたのが運の尽きだな。
「集団はどうでもいいんだ。それよりもあそこで世紀のゴブリン合戦やってるけど、他のプレイヤーは何で見てるだけなんだ?」
「ゴブリン合戦って…。まぁ、あれだよ。なんか凄い勢いで突っ込んで来て戦い始めるからさ。ちょっと引いちゃって……。なぁ」
それを聞いていた周りにいるプレイヤーも頷いている。
周りがゴブプリのあまりの行動にドン引きして距離を取っていただけか。
「なんかすまんな。ウチのゴブリンが迷惑かけたな」
「いや、うん。まぁ、驚いたけど。迷惑ではなかった…かな?」
周囲のプレイヤーも苦笑いしてるし。配慮ある行動ありがとうございます。
「え〜。ゴブプリの一騎討ちは周囲のプレイヤーのドン引きから起こったモノと判明した訳だがどうする?」
このままゴブプリに一騎討ちさせるか集団でさっさと倒してしまうか。イベント的にはさっさと倒したほうがいいんだろうな。
「どうしようかしらね?」
「その前に周りのプレイヤー的にはあのゴブリンウォーリアーはこっちで倒していいのか確認した方がいいんじゃないか?」
そうだな。最初はゴブプリが獲物を横取りしたみたいな形になってるからな。さっきの戦士君に聞いてみるか。
「なぁ、あのゴブリン、こっちで倒してもいいか?」
「あぁ、別にいいよ」
ふむ。周囲のプレイヤーも頷いて同意してくれているな。
「よし。あのゴブリンウォーリアーの生殺与奪権はもらったぞ」
こうなったら面白い方向に持って行きたいよな。
「コメントの諸君はどう思う?」
『ゴブリン一騎討ち所望』
『ゴブリン合戦見たい』
『白桜さんの戦いも見たいんだが』
う〜ん。ゴブプリとの一騎討ち希望が多いかね?
「ゴブプリとやらせるか?」
「いいんじゃないか?」
虎ちゃんはOKと。
「白桜の戦いが見たいって意見もあるけど?」
「別に私は他でもやるからここはゴブプリでいいわよ」
白桜もOKだな。
「じゃあ、ゴブプリが復活したらやらせるか」
「「異議なし」」
「ところで澪」
「ん?なんだ虎ちゃんよ」
「ゴブプリが復活するまでの間、あのゴブリンウォーリアーどうするよ?」
どうするって?どうするも何も……。
「あぁ…」
うん。そうだよな。ゴブリンだもんな。相手がいなかったら別のヤツに行くよな。本能一直線だもんな。うん。そして俺もガン見してないか?俺に狙いを定めたか?ガッツリ威嚇してるな。幼女見ながらグルグル唸ってると怪しいヤツだと思われるから止めといた方がいいぞ。
「俺狙われてるか?」
一応確認しておかないとな。自分の思い込みで動くと大変な目に遭う事が多いからな。
「狙われるな」
「スッゴイ威嚇してるわね」
うん。お前らもそう思うか。俺もそう思う。それならやる事は決まったな。
「倒すか」
向こうから来るなら問題ないよな。正当防衛だよな。
「何ぼそっと言ってるのよ」
「だってあれが復活するまで待つのとか面倒臭いし」
「もう少し堪え性をつけなさいよ」
「ゴブプリのために堪えるのはちょっと」
他が理由ならもう少しは頑張るけど。
「お困りの様でござるな」
む、某が。さっきからずっと視界の端にいるという微妙な距離にいるとは思ったけど。
『某さんが行ったぁ!!』
「そんなに困ってないから来なくていいぞ」
『某さんが逝ったぁ!!』
膝から崩れ落ちたな。SAMURAIだから防御が薄いのか?
「そうだ。某を囮にすればいいんじゃないか?」
防御が薄くても多少は時間稼げるだろ。
『鬼の所業w』
『エグい死体蹴りw』
ゴブリンウォーリアーの進行上に某を置いてっと。うん、これでヨシ!!
『本当にやりやがったw』
『某さんの尊い犠牲に敬礼!』
ゴブリンウォリアーが崩れ落ちてる某に殴りかかる。
『某さぁぁぁぁん!!』
『ちょっと、某さん?殴られてる。殴られてるよ?』
『まさかのノーガードw』
殴られ続けてるけどすぐには死なないな。
「ゴブリンウォーリアーって一撃がデカイって誰か言ってなかったか?」
某が殴られ続けるけど生きてるよな。
『澪ちゃん。ゴブリンウォーリアーは攻撃力高いよ』
『多分某さんの防御力が高いのが原因だと思う』
「ん〜。あんなんでもトッププレイヤーだもんな」
『しっかりトッププレイヤーなんだけどね』
『後は初級エリアだから余計に硬く見えるってのはあるかも』
なるほど。それはあるかもな。
あっ?某が光に包まれた。
「やられたか」
『結局誰も助けなかったw』
『某さぁ〜ん!!』
『某を倒したとしてもすぐに第2、第3の某が現れるでござるよ!』
『某さん大丈夫そうだな』
『やられても復活するからな。モンスターから見たら第2、第3の某さんになる……のか?』
『あいる びー ばっくでござるよ〜』
戻ってくるなら第2、第3じゃなくて第1のお前だと思うんだが、まぁいいか。
「某を生贄にしてゴブプリを召喚するぜ!!」
「それって物凄い弱体化してない?」
「デメリットでしかないな」
光と共に某が消えた。そしてすぐに新しい光が出現してゴブプリが復活した。
『本当に某さんが生贄にされたw』
「まだだ!まだ僕の心は折れてはいないぞ!!」
復活したゴブプリがすぐに突っ込もうとしてる。
「ちょっと待て。虎ちゃん頼む」
「はいはい」
虎ちゃんがゴブプリの襟首を掴んで持ち上げる。何も言わなくても分かってくれる虎ちゃんナイスです。
そして手足をバタバタさせるゴブプリ。前回も見たなこの構図。
「何をするんだ虎紳士!僕はあいつを倒さなきゃいけないんだ!!」
ゴブプリが手足を激しくバタバタさせてる。こういう玩具昔あったよな。
虎ちゃんがどうするよこいつ?って感じで見てくる。うん。あまり関わりたくない様な感じだよね。でも一応友人だからそのままキープしててくれ。白桜がちょっと距離取ってるのが気になるけど。もうちょっと近づいて来いよ。
「まぁ、落ち着けゴブプリ。俺に考えがある」
「何だよ澪。僕は早くあいつと戦わなきゃいけないんだ!」
ずっとバタバタしてるな。しかしギャーギャー五月蝿いな。ちょっと静かにならんのか。
「虎ちゃん。これ少し静かに出来ないか?」
「う〜ん。そうだな……。よし!」
虎ちゃんがゴブプリの襟首をしっかり握って。
『振り回し始めた!!』
ゴブプリをグルングルン振り回し始めた。
「あ〜〜〜!!」
『エグい』
『攻撃判定じゃないからイケるのか』
『あれは逝くな』
『新しいPKがここに誕生した』
少しずつ静かになってきたな。
「静かになってきたと言うか弱ってきたの間違いじゃないかしら」
その可能性もあるか。おっ、静かになったな。
「虎ちゃん。そろそろいいんじゃないか?」
「そうか?よし」
虎ちゃんがゴブプリを投げ捨てた。ゴブプリがピクピクいってるな。まぁ、静かになったからよし!
『ボロ雑巾だw』
『これはひどいw』
『衛生兵!!衛生兵!!』
『残念だがその衛生兵が倒れてるんだよな』
『打つ手なしw』
「お〜い、ゴブプリ。話を進めるぞ」
まだピクついてるけど話は聞こえるだろ。
「お前とゴブリンウォーリアーを一対一でやらせてやるから少し待ってろ」
あのピクつきは了承のピクつきだな。うん。きっとそうだ。
「よし。そういう事でここにいるコメントの諸君。ゴブプリにタイマンさせるため周りのゴブリンを排除してもらっていいか?」
『よしきた!』
『ゴブリンウォーリアー以外倒せばいいんだな!』
『あの状態でゴブプリは戦えるのか?』
「戦えないならゴブプリがヤられるだけだ」
戦いとは非常なモノなのだよ。きっと。
周りのゴブリンが狩られていく。うん。ゴブリンウィーリアー以外はいなくなったな。
「よし。ゴブプリ行け!」
促してもピクついて動かないな。
「俺に任せろ」
虎ちゃんが来た。任せろと言われれば任せるがどうするんだ?
ゴブプリの襟首を掴んで。そこ掴むの好きね。持ち上げて。
『投げたぁ!!』
『ゴブプリをダイレクトにシュート!!』
うん。エキサイティングだ。
丁度ゴブリンウォーリアーの目の前に落ちたな。虎ちゃんナイスコントロール。
「はっ!?僕は一体?」
おっ、落ちた衝撃で目を覚ましたな。そのままやられてもよかったんだけどな。
「ゴブプリ。お膳立てしといたからさっさとリベンジマッチしろ」
『手荒いお膳立てw』
「あれにはこれぐらいで丁度いいんじゃない?」
白桜の意見に虎ちゃんも頷いてるな。俺も同意だ。
ゴブプリが立ち上がって有刺鉄線棍棒を構える。ゴブリンウォーリアーも同じく構える。本当に同じ武器だな。
「はい。それでは始まりました。世紀の一戦。ゴブプリ対ゴブリンウォーリアー。今回は負けた方が有刺鉄線棍棒を2度と使用出来なくなる有刺鉄線棍棒・コントラ・有刺鉄線棍棒マッチになります。全国のお茶の間の皆さんこんにちは。実況の澪です。今回は解説に虎紳士さんをお迎えしております。虎紳士さんよろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いします」
「本日はもうお一方。スペシャルゲストとして白桜さんもお迎えしております。白桜さんよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
『急に中継が始まったw』
『コントラマッチってプロレスかw』
『コントラマッチって何だ?』
『簡単に言うとプロレスである試合方法で負けた方がマスク剥がされるとか髪の毛切られるとかのルールがあるやつだな』
『はぁ、そんなのがあるんだ』
『詳しくは調べてくれ』
「本日は3度目の戦いになります。ゴブプリ対ゴブリンウォーリアーになります。虎紳士さん、今回はどのような戦いになると予想されますか?」
「ゴブプリに見せ場があるといいですね」
「最早負けることは確実といった感じでしょうか。白桜さんはどう思われますか?」
「ゴブプリは学習しないからね。出来れば派手に散って欲しいわね」
「なるほど。白桜さんもゴブプリが負けると予想されていますね。私もゴブプリには負けて欲しいです。その方が面白いから」
『パーティメンバーが味方じゃないw』
『誰からも期待されないゴブプリ』
『お前は勝つと思うか?』
『いや、全く』
「いきなりゴブリンムーブだぁ!!ゴブプリが棍棒を振り上げて走っていきます。この動きは完全にゴブリンの動きですね。完コピしています」
「完コピというか既にあいつがゴブリンなんじゃないのか?」
「私もそう思うわね」
「ゴブプリ何も考えずに真っ正面からぶつかりに行きます。ゴブリンウォーリアーはどう対処するのでしょうか?おぉっと!ゴブリンウォーリアー、ガードせずにそのまま受けた!」
「大したダメージにはなってなさそうだな」
「ゴブプリ、チャンスと見たのか再度棍棒を振り上げて殴りかかったぁ!!ゴブリンウォーリアーこれも受け止めている。どうするゴブプリ?おぉっとゴブプリ足を止めたぁ!殴り合うつもりなのか!?連打だ!しかしゴブリンウォーリアー全部を受け止めているぞ!」
「一撃が軽い奴が一撃重い奴に足を止めて戦うとかダメだろ」
「間違いなくヤられるやつよね」
「ゴブプリ調子に乗って連打を続ける!!」
「はははは!どうした!何も出来ないのかい?このまま僕が勝たせてもら……プギリxqKateふるkoszまさしea!!!」
「ゴブリンウォーリアー動いた!!一撃でゴブプリが吹っ飛んだぁ!!」
「これは決まったかしら?」
「ゴブプリダウン!!立てるのか?」
「ヒーラーなんだから回復すればいいのにな」
「あれにそこまでの頭があるとは思えないわね」
「おぉっとゴブプリ光に包まれたぁ!!ゴブリンウォーリアー勝利の雄叫びを上げる!」
「一撃でやられたわね」
「見せ場なかったな」
「ここで決着!!ゴブプリ対ゴブリンウォーリアーの有刺鉄線棍棒・コントラ・有刺鉄線棍棒マッチは1分15秒でゴブリンウォーリアーの勝利となりました!」
「さて、茶番も終わったしやるか?」
「そうね。思ったより楽しめなかったしね」
「じゃあ、コメント諸君。周りのゴブリン討伐の協力感謝する。あとは普通にやってくれ」
『了解』
『ゴブプリ瞬殺だったなw』
『ヤられた瞬間が見せ場だったな』
では猫耳フードを被って準備完了。
「うぉりゃああああ!」
バトルアックスで薙ぎ払う。一撃が重いのはゴブプリで確認済みだからな。足は止めない。
ゴブリンウォーリアーが有刺鉄線棍棒を振り抜く。動きが早くないから避けるのは簡単だ。これを真っ正面から受けるゴブプリは頭がおかしいと思うんだ。
「ファイアランス!!」
ゴブリンウォーリアーから距離を取ったら白桜が魔法を撃ってきた。新技だな。炎の槍(直訳)だなんてカッコいい技を覚えたな。ゴブリンウォーリアーに刺さって燃えてるし。威力も高そうだな。
ゴブリンウォーリアーが白桜に向かって走り出した。今ので敵視が白桜にいったみたいだな。
虎ちゃんが間に割り込んできた。ゴブリンウォーリアーはそのまま振りかぶって虎ちゃんを殴りつけてきた。
おぉ、しっかりガード出来てる。流石メインタンク。ゴブプリとは違うぜ!
攻撃した後の硬直で後ろがガラ空き。大変美味しく頂きます。
「背後からの傷は士道不覚悟じゃあ!!」
ゴブリンウォーリアーの背後から斬りつける。
「背後からの攻撃は1.3倍ダメージだ!!ビートッダウン!!」
アーツも決めて大ダメージ。フゥゥゥゥゥ!!
「澪はあんな事言ってるが攻撃方向でのダメージ補正ってあるのか?」
「あるけど詳しい倍率は出てないわよ。適当に言ってるだけでしょ」
「そんなもんか」
「そんなものよ。こっちも続くわよ」
「おうよ」
虎ちゃんと白桜も追撃している。ダメージもしっかり入ってるしゴブリンウォーリアーの攻撃は虎ちゃんがしっかりと防いでくれている。これはそんなに苦戦しずに終わりそうだな。俺たち3人のコンビネーションいいんじゃないのか?
「僕が決めるっ!!」
「「「あっ?」」」
いつの間にか復活したのかゴブプリが乱入してきた。何かゴブゴブ言いながらゴブリンウォーリアーの頭を殴りつけた。そして倒れて光に包まれるゴブリンウォーリアー。
消えていくゴブリンウォーリアーを唖然としながら見てしまった。目の前には有刺鉄線棍棒を掲げて悦に浸るゴブプリがいる。
「うわぁ……」
「最悪ね」
「人様の獲物を横取りとかマジかよ」
無言で近づいていく虎ちゃん。
「どうだい虎紳士。僕の活躍を見てくれたかい?」
「あぁ、お前のゴブリンムーブならしっかり見たぞ」
「えっ?」
虎ちゃんがゴブプリの襟首を掴んで持ち上げてこっちを見る。白桜が首を掻っ切るジェスチャーをとる。それを見て顔を青くさせるゴブプリ。
うん。ここは俺がはっきり言ってやろう。とびっきりの笑顔を作ってっと。
「有罪」
「アアoiteangaeシゲオughauegha!!」
虎ちゃんがゴブプリを回し始める。まだ元気があるな。もう少し回してもらうか。
「……………………」
静かになったな。さてどこかいい所はあるかなぁ……っと。うん。あそこだな。
「目標2時方向ゴブリン集団!!」
「目標2時方向ゴブリン集団!!」
しっかり虎ちゃんが復唱してくれる。うん、ちゃんと理解してくれてるな。
「撃てぇぇぇぇ!!」
「そおぉぉぉおい!!」
虎ちゃんがゴブプリをゴブリンの集団に投げ込む。複数のゴブリンを巻き込んでの着弾。ナイスだ。
今回は入念に回したからゴブプリは復活しないな。よし。
「じゃあ、俺たちは向こうのゴブリンの集団を狩るか」
「それがいいわね」
「よし、行こう」
『ゴブプリ放置w』
『仕方ないんや。ゴブプリはそれだけの事をしたんや』
『あっ、ゴブリンの集団で光が……』
『無茶しやがって……』
『さらばゴブプリw』
『またすぐ復活するけどな』
『ゴブリンムーブは終わらないw』




