配信番外 おっさんの飲み会
今日は当初から言っていた配信を肴にしながら飲む日だ。
配信し始めてからそこそこ日が経っているじゃないか。と声が聞こえてきそうだがそれは許してくれ。おっさんたちはすぐに集まれないんだ。
「しかし今更だが何で俺の家になるんだ?」
「仕様がないだろ。配信流しながら飲める場所は藤の家しかないんだから」
はい、そうです。今日は俺の家で飲むことになった。理由は上記によりお分かり頂けるだろう。俺は納得できないがな。
ちなみに中の人を説明しておこう。白桜が島、虎ちゃんが塚ちゃん、黎が西、俺が藤だ。よろしく頼む。
「まぁ、気にするな。ほれ場所代も持ってきた」
そう言って西が焼酎を持ち出す。それはお前が飲みたいやつじゃないか。俺は焼酎は飲めないって知ってるよね。
「まぁまぁ、配信付けるぞ」
勝手にテレビを操作する塚ちゃん。勝手知ったる他人の家だなおい。まぁ、いいけどさ。
「各自酒持ったな。じゃあ、乾杯の挨拶を家主の藤よろしく」
俺か?おのれぇ。俺たちの中では乾杯の挨拶は先に言い出した者の勝ちシステムがいつの間にか出来上がっているのだ。この流れでは今回は俺がしないといけない。仕方がないな。
グラスを持ち全員を見る。こういうのは雰囲気作りが大事だからな。
「え〜、皆様本日はお日柄も良く、無事この日を迎えられた事を大変嬉しく思っております。今日は初めての配信を……」
「「「カンパ〜イ!!」」」
はい予定調和、予定調和。
「ゴブリンムーブきたw」
「いきなり棍棒持って走り出しているし」
「島のRPが早速崩れたな」
「いきなりこれをやられてRP保てるやついるか?」
本日のハイライトその1。西のゴブリンムーブ。画面で見ると良くわかるこの酷さよ。外面と行動のギャップが酷い。
「そもそも何でお前はこんなゴブリンムーブを繰り返すんだ」
島からの疑問。それは俺も思った。
「いや、なんかゲームの世界だからなのか本能の赴くままに行動したくなるんだよな」
疲れか?日々のストレスで歪んでしまったのか?
「そうか。なんと言うか…頑張れ」
無難な慰めしか出来ない僕を許しておくれ。
「おぅ、だから俺はこれからも行動を変える気はない!」
「少しは自重しろ」
永久ゴブリン発言いただきました。その内討伐依頼出すぞこの野郎。
「お前らの俺への対応ってさ、かなり辛辣じゃない?」
「お前がゴブリンムーブを続ける限り俺たちの対応は変わらない」
塚ちゃん一刀両断。
「じゃあ、仕方ないな」
「仕方ないんか!?」
少しは行動を改めようとしないのか?
「相手はお前達だしな。ゲームでの行動を変えようとは今の所思わないからな」
「他の人がいたらどうするんだ?」
「それは普通にやるさ。ゲームとはいえ知らん人に迷惑はかけられないからな」
何故その真っ当な感覚を俺たちに使えない?
「またゴブリンムーブだよ」
本日何回目か数えるの忘れたなハイライト。またもや西のゴブリンムーブ。
「やられっぷりはいいよな」
「ここまで来ると名人芸だよな」
「お前ら俺が死んだ時に四天王ごっこやってたのか」
「ノリが良くて大変いいよな」
こういうのが打ち合わせなしで出来るのは付き合いが長いからだよな。
「くそぉ、俺も四天王やりてぇ」
「お前がゴブリンムーブをどうにかしない限りお前の立ち位置は絶対変わらないな」
「こうして画面で見るとまだ動きが荒いな。もう少しどうにか出来そうだもんな」
狼との戦いを見てるが動きの改善点がたくさんあるな。
「今でも随分人から外れた動きをしてると思うんだけど」
「幼女でこの動きはホラーだよな」
うるさい。人を化け物みたいに言うな。あぁ、やっぱりまだ改善の余地ありだな。これは今度姐御と特訓だな。
「そういや東の森での無限ゴブリンって結局なんだったか分かった?」
只今画面一杯のゴブリンで提供しております。結構なグロ映像ではないだろうか。
「あぁ、騎士団で聞いたけど何か調査中て言われたな」
「魔法使いギルドでもそう言われたな。俺たちが行く前からゴブリンの異常増殖の報告はあったみたいだな」
「神殿ギルドは何か対策しないとって動いてるみたいだけど下っ端の俺には情報は来ないみたいだな」
みんなちゃんと調べてるんだな。
「冒険者ギルドはどうなんだ?」
「あれからゲーム出来てないから聞けてない」
不規則勤務の切ないところよね。休める時に休まないと体が保たないのよ。
「「お疲れさんです」」
はいどうも。今度冒険者ギルド行った時に聞いてみるか。
「配信終わったけどどうする?」
「酒も切れたな」
結構酒があったと思うんだけどな。目の前には空き缶と空瓶があるだけだな。
「明日の仕事は?」
「休み」
「同じく」
「飲んだ次の日は休まないと体がキツい」
明日は全員休み。
「ちょっと酒買ってくるか」
「そうするか」
塚ちゃんと西が立ち上がる。
ですよね〜。おっさん達の夜はまだ続きそうだ。




