第18話 お帰りなさい
◇◇◇◇◇◇
ミレッタの一撃により始まりの災厄が撃破された瞬間、頭に声が響いた。
──ワールドクエスト終了──
勝利条件を達成しました。
貢献度上位者は以下の通りです。
1位:フィン
2位:ミレッタ
3位:マリエラ
4位: ──以下該当者なし。
ワールドクエストにて貢献度1位を獲得しました。
以下から報酬を選択して下さい。
●ユニークスキル⦅全身全霊⦆の獲得
●スキル⦅怪力⦆の獲得
●スキル⦅強靭⦆の獲得
●スキル⦅駿脚⦆の獲得
●スキル⦅軽技⦆の獲得
●スキル⦅隠身⦆の獲得
●スキル⦅自動HP回復:小⦆⦅自動MP回復:小⦆の獲得
●スキル⦅体力増大:小⦆⦅魔力増大:小⦆の獲得
●耐性⦅痛覚5⦆⦅熱5⦆⦅冷気5⦆の獲得
●耐性⦅痛覚5⦆の獲得
既に獲得済みのスキル・耐性は関連既存スキルと統合されます。
⦅全身全霊⦆…次の一撃だけ自身の攻撃力を倍化する。
⦅怪力⦆⦅強靭⦆⦅駿脚⦆⦅軽技⦆⦅隠身⦆…攻撃、防御、敏捷、技力、隠密を一時的に1.5倍にする。
─────
フィンの目の前に、メッセージウィンドウが表示される。
フィンの貢献度は、ミレッタを抑えて1位であった。フィンはそのことに少し考えを巡らせるも、今はまずスキルを選ぶことにした。
並んだスキルはどれも有用なものばかりであるが、中でも⦅全身全霊⦆、⦅自動HP回復:小⦆、⦅自動MP回復:小⦆の3つはかなり良いスキルであるように思えた。
──だが、フィンは迷わず⦅駿脚⦆を選択する。
◇◇◇
スキル⦅駿脚⦆が選択されました。
本当によろしいですか?
◇◇◇
「それで頼む。」
◇◇◇
スキル⦅駿脚⦆を獲得しました。
同種スキルの競合を確認したため統合します。
ユニークスキル⦅韋駄天⦆を習得しました。
お疲れ様でした。ではまた、次の災厄でお会いしましょう──。
◇◇◇◇◇◇
その言葉を最後に、声は聞こえなくなった。
(とりあえず、ここまでは予定通り、いや、予定以上だ。まさかこんなに早く⦅韋駄天⦆が手に入るとは思わなかった……あとは──)
「おめでとうフィン。そしてお疲れ様、流石は私のパートナーだわ……。」
ミレッタがフィンに声をかけながら近づいて来る。
まだ彼女の⦅覚醒状態⦆は解けていない──。
「ああ、だが災厄を倒せたのは間違いなくお前のお陰だ。ありがとうミレッタ。」
「うふふ。いいのよ……ところで私──⦅ご褒美⦆が欲しいって、言ったわよね? 私が欲しいものは、情報よ。だから、教えてくれないかしら──。あの時なぜ、私の前から消えてしまったの? 随分探したのよ?」
──やばい。
「消えた……何のことだ? あれは、たまたま⦅転移⦆が失敗したに過ぎない。俺も随分探したぞ?」
「あらあら……、⦅転移⦆が失敗するだなんて……。」
ミレッタはそう言ってから手を上に翳すと、その掌から次々に様々なものを出現させて見せる。花瓶、金貨、王冠、鎖、ナイフ、そして最後に小さな杖を出してフィンにその先端を向けた。
「うふふ、転移について一番詳しい私に対して、あくまでそんな嘘をつくのね。じゃあ、質問を変えるわ。」
(──やはり、こいつは……。)
「……貴方は誰? どうしてフィンの姿を、フィンの魂をしているの? 私のフィンは、何処にいるの?」
そう言って、ミレッタはフィンの瞳を深く覗き込む。
「……何を言っているか、全くわからないが……。」
「ふぅん、そう……。」
(──気がついている。)
「偽物に用は無いわ。そして、このメッセージを彼に伝えて──。」
「愛しのフィン、必ずまた会いましょう。」
ミレッタがその手をフィンに翳したところで、彼の意識は完全に途切れた。
◇◇◇
床も壁も天井もない白い空間で、フィンは目覚める。ここは──
「くそッ、やっぱ詰んでたか…」
どうやらフィンはあの魔女に消されたらしい。せめて痛みなく一瞬のうちに消滅させてくれたことが、救いといえば救いであった。
『おかえり〜。割と、頑張ったんじゃない? 速攻で帰ってくると思ってたからお茶用意してたのに、もう。冷めちゃったじゃん』
ルシフェルがそんな風に声をかけながらフィンに近づいてくる。
「──ルシフェルっ! あんなの聞いてな……いって、ルシフェル!?」
フィンは振り返って仰天する
『──ん?』
彼は、三対六枚の翼を持つ姿──いわゆる識天使の姿でフィンの目の前に現れたのだった。
「ん、じゃねぇ! びっくりさせんなよ!」
『……ああ。これ? おっと忘れてたよ、あんまり遅いから、ちょっと他の世界へ出かけてたんだった。』
「それが、本当の姿?」
『ううん。違うよ? あれ、違わないのかな? ん〜どうだろう?』
「いや、俺に聞かれても……。」
『私はね、 “必要な時” に、 “必要な姿” になれるのさ。』
「じゃあ今、俺にそれを見せたのも……、必要だと感じたから──ってことか?」
『ふーん。どうしてそう思うのかな?』
「いや、ルシフェルがそう言ったからだけど?」
『──ぷ、あはははは! フィン! 君は本当に面白いねぇ!』
その後もしばらくルシフェルは笑い転げている。どうやらフィンの返事がよほどツボにハマったらしい。二度目の “死” を迎えて帰ってきたフィンを前に、自然体そのものである。
もう少し遠慮ってものを──いや、それは俺も同じこと。平然と自分の “死” を受け入れられているのだから。
「そりゃまぁ、葬式みたいな顔されてても困るわな。」
フィンはボソリとそうつぶやく
「──え!? いまなんて? 葬式だって!?」
それは気が付かなくてごめん、ご愁傷様。なんて言いながら、ルシフェルの大笑いはまだまだ終わらないのであった。
神様の笑いのツボってのは、全く理解ができないな。と、フィンは一人思うのであった。
◇◇◇
ここまで読んでくれてありがとうございます♪
── 2022.3.2 読みやすさ改善のため改稿しました( ᐢ˙꒳ ˙ᐢ )




