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捨てられた王女は魔道具職人を目指す  作者: 月輪林檎
最終章 マリーの進む道

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叙勲

 王城に着くと、マリーは馬車を降りた。ここで憂鬱そうな顔をしていれば、他の人達に怪しまれると思い、いつも通りの表情になる。

 そんなマリーの元に、カレナとネルロがやってきた。


「マリーさん」

「あっ、先生! 良かった……知り合いがいて……」

「マリーちゃんも叙勲されるのね。まぁ、カレナの話を聞いたら、納得だけど。それにしても、そのドレス似合っているわね」

「ありがとうございます。コハクが選んでくれたんです。お二人も似合ってます」

「ありがとうございます。取り敢えず、待機室に移動しましょう。案内して頂けるようですので」

「はい。分かりました」


 マリー達は、衛兵に付いていき、待機室へと向かった。待機室には、既に数名の姿があった。その中に、一人だけ、マリーの知り合いがいた。


「ザリウス先輩。先輩も叙勲されるんですね」

「ラプラスか。ああ、最後まで、最前線で戦い続けたからかもしれないな。学生という身分も相まって、叙勲という事になったんだろう」

「あっ、そういえば、ザリウス先輩は一緒に帰らなかったですもんね」

「まだ、俺は戦えたからな。自慢出来るのは、この体力と馬鹿力くらいなものだ」

「あははは……」


 そんな話をしていると、衛兵が部屋に入ってくる。マリーとザリウスの視線もその衛兵に向いた。また叙勲される人を連れてきたという訳では無く、一人だけで入ってきた。


「これより叙勲を行います。お一人ずつご案内しますので、付いてきてください。まずは、マリー・ラプラス様」

「!!」


 マリーは、叙勲が一人ずつ別部屋で行われる事と真っ先に自分の名前が呼ばれた事の二つに驚いた。そんなマリーの背中を、カレナが軽く押す。


「何かあれば、大声を」


 カレナの耳打ちに、マリーは小さく頷いてから、衛兵に付いていった。


「まさか、一人ずつとはね。マリーちゃん、大丈夫かしら?」

「さすがに、何もないと思う。でも、マリーちゃんの声が聞こえたら」

「分かってる」


 二人のこそこそ話は、ザリウスの耳には届かなかった。だが、二人の様子から、マリーに何かあると察し、先程までと違い油断のない体勢で待機した。


────────────────────────


 衛兵に付いて歩いているマリーは、自分の左脚を触る。ゴムの感触の中に、金属の硬さを感じる。


(大丈夫。仕込みは、ちゃんとしてきた。何があっても、対応は出来る。先生達もいるから、そこまで逃げれば良い)


 マリーは、自分にそう言い聞かせて、叙勲されるという緊張とは別の緊張を落ち着けた。そうしていると、衛兵が一つの部屋の前で止まった。


「こちらになります。私の案内は、ここまでですので、ここから先は、お一人でお願いします」

「はい」


 マリーの返事を聞いた衛兵は、扉を軽くノックする。すると、扉が開いて中の様子が見えるようになった。マリーは、その中に脚を踏み入れる。マリーは、臆せず堂々と歩いて進んで行った。

 中は、左右に多くの人達が並び、正面の少し高い場所に王妃とリリーが並んでいる。リリーは、マリーが来た事に内心大喜びだったが、それを表情には出さないようにしていた。

 マリーは、周囲からの注目を浴びながら、王妃と同じ高さまで上った直後に、膝を突いて頭を垂れる。

 そのマリーを見下ろしながら、王妃は、隣にいた従者の持つ台から一枚の紙を手に取る。口を開いて、一度硬く閉ざす。それを見て、重鎮達は一瞬怪訝な表情になる。

 王妃は、一度深呼吸をしてから口を開く。


「この度の我が国サリドニア防衛。誠に大義である。其方、マリー・ラプラスは、学生の身にも関わらず、戦場で傷付いた者達に失った四肢を与え、生きる意志を持たせた功績を称え、功労勲章を贈る」


 王妃は、紙を台に戻して、そこから一枚のメダルを持ち上げる。


「面を上げて、立ちなさい」


 王妃の言葉に、マリーは顔を上げてから立ち上がる。マリーは、改めて王妃の顔を見る。最後に見たのは、産まれた直後なので、見覚えはない。

 だが、王妃は、マリーの顔を見て、一瞬だけ表情を硬くさせた。その事に正面から見ていたマリーだけが気付く。だが、マリーからは何も反応はしなかった。

 王妃は、マリーの胸元に勲章を付ける。その際、マリーと顔を近づける事になった。


「この後、時間を下さい」


 マリーが返事をする前に、王妃は顔を離す。ずっと近づいていても不審がられるからだ。マリーの傍にリリーがやって来て、その手を取り、外まで誘導していった。マリーが、リリーと一緒に部屋の外に出ると、衛兵が膝を突く。


「マリーさんは、私の部屋で過ごすので、案内は結構です」

「かしこまりました」


 マリーは、リリーに手を引かれて王城を歩いていく。


「申し訳ありませんわ。さすがに、私も断り切れなくて……」

「ううん。気にしないで。一応、私も対策はしてきたから、何があっても大丈夫なはず」

「マリーさんを害する気はないはずですわ。お話をしたいとおっしゃっていましたわ」

「う~ん……リリー以外の王族って信用出来ないんだよね。てか、王城って壊れてるはずだよね? リリーの部屋は大丈夫なの?」

「私の部屋は、お父様達の部屋から離れた場所にありましたの。だから、無事でしたわ」

「そうなんだ」


 王城の復旧は、まだ終わっていない。瓦礫の撤去が終わったところで止まっている。今日の勲章授与があるからで、明日には復旧が再開する。


「ここが、私の部屋ですわ」


 リリーが扉を開けて促すので、マリーは中に入る。


「うわぁ……広いなぁ」

「マリーさんの部屋とそう変わらないですわ。そこのテーブルに着いてくださいまし」


 マリーとリリーがテーブルに着くと、メイドがお茶を入れて置いていく。


「あなた達は出ていて構いませんわ。友人と二人にさせてくださいまし」

「かしこまりました」


 メイド達は一斉に部屋を出て行った。扉が閉まった後に、リリーは席を立ち、扉を開けた。そこには、メイド達が聞き耳を立てている姿があった。


「二人っきりにさせてくださいまし!」

「「かしこまりました!」」


 メイド達は笑顔で部屋の前から去って行った。


「申し訳ありませんわ。私が友人を連れてくると言ったから、メイド達が興味を持っちゃいましたの」

「へぇ~、可愛がられてるんだね」

「そうですわね。取り敢えず、お母様が来るまで、お話しましょう!」


 学院でマリーに会えない分、リリーはマリーとの時間を楽しむ気満々だった。


「そういえば、お姉様のドレス、とてもお似合いですわ!」

「ありがとう。リリーもお姫様みたいだね」


 マリーからそう言われると、リリーはとても嬉しそうに微笑んだ。


「まぁ、さっさと脱ぎたいって言うのが本音だけど」

「勿体ないですわ! このまま絵画に飾りたい程ですのに」

「リリーは大げさだなぁ」

「そんな事ないですわ! 私の中では、そのくらい美しいですわ!」

「えぇ~……まぁ、気が向いたら、またリリーの前で着てあげるよ」

「嬉しいですわ!」


 そんな姉妹の会話を、二時間程楽しんでいると、部屋の扉がノックされる。

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