幕間(2)
改稿しました(2023年7月18日)
マリー達が、キマイラと戦っている頃、カーリーは、学院での仕事に追われていた。その仕事は、授業と資料の整理だ。この資料は、ただの資料ではなく、学院の図書館にある古代資料だ。古代資料は、読める人が限られているので、学院は、これを機にカーリーに頼んで、整理して貰う事にしたのだ。
カーリーも学院の教師なので、仕事と言われれば断れるわけもなく、今日も今日とで資料整理に追われている。
「古代文字を扱える教師がいないって、この学院はどうなってるのさね……」
この学院には、現在古代文字を扱える教員がいない。そのため、古代学の授業は古代文字を扱える教員が辞めてから、カーリーが来るまで、受講することが出来なかった。
「はぁ、これは、古代生物についてだね」
カーリーは目の前にある本を持ち上げて、その題名を読み上げる。そして、中身の確認をする。
古代資料の整理は、種類別に分けるほかに、内容の確認が主である。
「ふむ、絶滅していない生物についての記述が多いね。マリーにも読ませたい一冊さね……古代文字について、教えるのも一興だね」
カーリーは、悪い笑みを浮かべる。古代文字は、様々な種類があり、習得はかなり難しい。だが、古代文字を覚えられると、こういった有益な情報なども得ることが出来るため、なるべくなら知っておいた方がいいのだ。
「まぁ、もう少し色々な事を知ってからにしておくさね」
そう言いながら、図書館から出て行く。少し疲れたため休憩しにいったのだ。その休憩でお茶を飲んでいる最中……カーリーの使っていたグラスがいきなり割れてしまった。
「? そこまで使い込んでいないはずだがね?」
そのグラスは買ってから一ヶ月も経っていない、ほぼ新品のグラスだった。
「不吉だね。何か、嫌なことがありそうだ」
カーリーは、顔を歪めながら、割れたグラスを片付ける。
「マリー、無事に帰ってきておくれ。お前は、私の大切な娘なんだ。親より早く死んだら許さないよ」
カーリーは、野外演習が行われているサリドニア大森林の方を、ただ見つめて祈っていた。
カーリーの祈りは、マリーの元まで届くだろうか……