秋葉原ヲタク白書94 ヲタサー姫の稲妻
主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。
相棒はメイドカフェの美しきメイド長。
この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナのためのラノベ第94話です。
今回は、真夜中のパーツ通りで検査官が稲妻に打たれ即死、背後にプルトニウムの闇マーケットの存在が浮上します。
秋葉原の地下に潜った盗難プルトニウムを追い、国の捜査官が派遣されますが、実は彼が推すメイドの素顔は…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 パーツ通りの惨劇
「え?いつになるかわからないょ。オフィスに戻らなきゃならない…またその話?他のメイドに浮気なんかしないが、タマにはリアルなビジネスもやらないと…神に誓って他の御屋敷に御帰宅など…」
次の瞬間、真夜中のパーツ通りに光が溢れ、1直線に稲妻が走り歩きスマホの男を直撃!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日の御屋敷。
あ、ココは僕の推し(てるメイド)ミユリさんがメイド長を務める御屋敷。
"ヲタク道"の街道筋?にあるので"ロードハウスバー"とも呼ばれる。
「稲妻銃殺人事件本部ってのが立ち上がったらしいょ」
へええ、と御屋敷にドヨめきが起こる。
「稲妻に撃たれた?となると、今頃、万世橋は雷神に事情聴取をしてるのかな?」
「ゼウスとか、インドラとか?でも、ホントに雷神の仕業かな。裏通りみたいなパーツ通りに落雷なんて変だな。中央通りに出れば、いくらでも高層ビルがひしめいてるから普通ならソッチに落ちるでしょ」
「でも、全身に火傷の痕があったんだって」
「まさか…人工の稲妻?ソレなら殺人事件だね?」
「やはり、そうなる?」
ソコへ溜息をつき御帰宅して来たのは、新橋鮫の旦那だ。
万世橋の敏腕刑事だが…僕は、彼には色々と貸しがアル。
「稲妻が直撃したのは、被害者の右の腰あたりナンだ。骨盤に10億ボルト」
「そりゃ…相当痛そうだ」
「痛がる間も無く即死でしょ?」
「うーん。でも稲妻は立った人間の下半身は直撃しない。少なくとも火傷の痕って上半身から始まらないと」
「そーなんだょなー。ところが、稲妻は垂直ではなく地面と平行に走ってる。まるで銃撃を受けたみたいナンだ」
「スタンガンやテーザー銃じゃないの?」
「ソレが、テーザーで撃たれた跡は見当たらないし、スタンガンによる火傷とも違う。あぁどーしよー?」
珍しく新橋鮫が頭を抱えるw
「大丈夫かょ鮫の旦那。きっと特殊部隊用の未知の武器に違いない。冷凍光線が故障中で多分まだ実験段階の稲妻銃を撃ったンだろう」
「ますます大丈夫でなくなった。実は、被害者は、エネルギー関係の検査官で、日頃から科学研究所の類を闊歩してる輩ナンだ」
「おぉ。お役所の検査絡み案件w」
「SNSを見ると、被害者の周りは、妻や友人も物理学者ばかり。誰が人工稲妻を発明してもおかしくない環境だw」
「ソレだ!検査官に美人妻!コレで役者が揃ったな」
「いや、誰も未だ美人とは…」
「被害者は不倫をしている!ソレがバレて、美人妻が怒りの稲妻を見舞ったに違いない」
誰に?笑
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ホントに美人!
冗談を真に受け万世橋が美人妻の事情聴取を行うコトにw
僕も言い出した責任とらされマジックミラー越しに参戦。
妻が美しい顔を歪ませ吠えるw
「どーゆーコト?夫は落雷に打たれて死んだんじゃナイの?」
「あなたは物理学者だ。パーツ通りで稲妻に撃たれる奴がいると思うか?」
新橋鮫がパーツ通りの写真を見せる。
「…いいえ。コレなら周りのビルに落雷するでしょう」
「ですから、ご主人を殺したのは、未知の、恐らく実験段階の電気兵器ではナイかと考えています」
「私、容疑者なのね?だから呼ばれたの?」
「えっと、夫婦喧嘩で何度か警察が出動してますょね。バーで夫の浮気を責めて騒ぎも起こされてます。で、今回そのケリをつけたとか」
「あの夜に私が言ったコトは本気じゃない!だって、浮気したのは夫じゃナイから…浮気をしてたのは私。同僚のホセノと夜遅くまで残業してたら男女の関係に。夫には薄々バレてました」
おお。ヤハリ不倫だw
スゲェな、ヲレって。
マジックミラー越しに咳払い←
「あら、誰かしら?」
「夫を責めるコトでっ!自分の不貞から目を外らせようとしたのかwソレで浮気を追求したのか?」
「ホセノに聞いてみて。彼は、私の恋人でありアリバイでもある。あの夜は一緒にお食事してた。店の人が覚えてるわ」
「店の名前は?」
「仮に、私が未知の電気兵器で夫を殺したくても出来ないわ。私の専門は宇宙学。ホセノもそう。宇宙の本質には迫れても、LIPCの仕組みを理解スル役には立たないわ」
「LI PCって?」
「レーザー誘起プラズマチャネル。エレクトロレーザーよ。いわば稲妻銃ね。夫を殺したと思われる武器」
そ、そんなモノがあるのか?
「奥様は、そのLIPCにお詳しいのですか?(新橋鮫が謎の敬語w)」
「だ・か・ら!私は宇宙学者。私だって雑誌で読んだだけよ。でも、エレクトロレーザーは実験段階だけど、開発中のスタートアップなら何社か知ってる」
「そのスタートアップで秋葉原にラボがある会社を御存知ですか(だからヤメろ敬語w)?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
またAMCだ。
"秋葉原ミリタリークラスター"とは、アキバの地下に展開スル、旧軍関係の兵器技術を母体とする軍需関係のスタートアップ群だ。
その内の"稲妻兵器部門"?を紹介されるw
「おお!貴方がテリィたんですか?ウチの"タイムマシン屋"がヤタラとお世話になってるそうで。あれ?お連れの美人メイド長は?お休みですか?コロナ?」
「いえいえ。元気に営業中なので、是非お屋敷へ御帰宅ください!ところで、稲妻銃は…」
「スパーキーは稲妻銃じゃない。いわば巨大な電撃砲です」
「スパーキー?ソレは軍事用?」
「いつか契約を取れたらと思ってます。ただ、軍用機にLIPCを搭載するには装置が巨大過ぎる。そこへギーリ検査官が登場して」
「何かの検査を受けるコトになっていたのですか?」
「ええ。生前は…ってか、昨日お会いしたばかりでしたが、重要な検査を受ける予定でした」
「彼の検査を?」
「はい。スパーキーは巨大なシステムで発電と蓄電池系統の小型化が急務です。唯一の解決策は原子力だが、小型の原子炉は作ったが、テストには核分裂性物質が必要です」
「それってウランとか?」
「プルトニウムです。実は、ギーリ氏は弊社のプルトニウム格納施設の検査に来てた。検査に通れば、軍関係の大型契約も夢ではナイ。念のために先に言っておきますが、弊社では、誰も彼の死を望んでおりません」
「検査に不合格でも?」
「不合格は合格の母。大歓迎です。改善点がわかり前進できる…さぁ。これがスパーキーだ。脅威のワンダー砲。人類最後の希望です」
「エヴァかょ。車に積んで自走砲化してあるのは、どこかに運んでテストするためですか?」
「ええ。習志野の射爆場で試射する予定でした。ただ3日前に搭載してから動かしてません。だから、凶器じゃナイですょ」
「シャーシ表面の汚れが模様になってる。昨夜は雨で、これは最近雨に打たれた跡だと思うけど…でも、このガレージは屋根付きだしな…」
「この車が濡れたのは、誰かが雨の中を運転したからでは無いですか?」
「まさかそんな…発射されたかログで調べてみましょう。ややっ!何もナイ!」
「良かった。砲撃記録はナイのですね?」
「いいえ。ログ自体が真っ白になっています。30分おきに電荷レベルを記録するハズが今朝5時以前のログがない」
「誰かが消去した?」
「防犯カメラ映像で誰がやったか確認してみます」
「当然ソッチも消去されてるでしょ。コレは、内部の者の犯行だ。ソイツは運転席の引き具合とミラーを直した角度から考え、恐らく身長は190は下りませんね」
「御社に高身長の該当者は?」
「そこまでの高身長となるとウチの従業員にはいません。でも、出資者なら…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
教わった出資者は、大企業の幹部だったが、何と居留守を使われ、僕達は追い返されるw
私が犯人ですと名乗ったようなモノだが、怒った新橋鮫が任意同行を求め結局、取調室←
またまた僕はマジックミラー越しに見物w
敏腕刑事の新橋鮫と若手の二人掛かりだ。
「犯人の肉体的特徴が貴方に合致するとわかり、事情を聞きに直ぐ職場を訪ねたが、貴方は御不在だった」
「人を電撃ショックで襲えば動揺もスルでしょう。出勤する気にならなかったとしても、不思議ではありません」
「お腹が痛かったンだ」
「吐き気はどうですか?その原因は様々。ウイルス性食中毒、ショック、罪悪感、急性放射線障害症候群」
「最近、放射性物質にさらされたコトは?」
「まさか。あり得ない」
「あり得るでしょ。アンタのオフィスで警察手帳を見せたら、主任技師が案内してくれたがコレを見つけた。線量計だ。被曝量を調べる装置ですょ」
「エレクトロレーザーの改良に必要なプルトニウムだが、合法的な手段では調達出来てないそうだな。主任エンジニアから聞いたぞ。だったらなぜ、線量計が必要ナンだ?」
「ってか最近、半島へ御出張されたそうですね」
「ソレが?」
「半島から戻った貴方は、抜き打ち検査に来たギーリ氏に"マズいモノ"を見られた。線量計じゃないょ。"例えば"誰かが闇で手に入れたプルトニウムとかさ。ギーリ氏に問い質されたアンタは…彼を殺した」
「夕べ、アンタがスパーキー搭載のバンで首都高の料金所を通った時の写真だ。アンタは電撃砲を秋葉原に持ち込み、ソレでギーリ氏を殺し、バンはガレージに戻してログを消した。別に認めナイならそれで結構。だが、我々はこの線で捜査を始める。ソレからじゃ一切取引には応じられない。何か話すなら今だけだ」
出資者は、ガッカリと首を垂れる。
「殺すつもりはなかった。何日か病院送りにするつもりだった。時間を稼ぎたかっただけだ」
「時間稼ぎ?何のために?」
「プルトニウムを探すためだ。アンタらの言う通り、半島に行って、闇マーケットのトレーダーに賄賂を払ってプルトニウムを買い、密輸した。ところが、そのプルトニウムが1週間前に盗まれたンだ!もし他社が、スパイを使いウチの開発を邪魔したのならまだ良い。もしも、盗んだのがテロリストなら大変なコトになる。何十万人も殺せるプルトニウムなんだ!」
第2章 消えたプルトニウム
翌日。
万世橋のマジックミラー越しに新しい役者が登場スル。
実は、僕は昼間は趣味でサラリーマンをやっているが…
第3新東京電力に勤務してるが、弊社と大変関係の深いお役所の人間だ。
そして…どうも面識がアル。こりゃちょっち彼の前に姿は見せられない。
「おはよう、諸君。捜査官のダーコだ。国家レベルの核安全保障を担務する部局におり、以後のプルトニウム捜査を引き継ぐコトになった。さて、最悪のシナリオは、プルトニウムがテロリストの手に渡るコトだ」
「我々は、何を想定すべきですか?つまり核爆弾によるテロとか?」
「盗まれたのは、本格的な核爆弾が作れる量じゃない。懸念は"汚染爆弾"だ」
「"汚染爆弾"?」
「そうだ。普通の爆弾の周囲をプルトニウムで覆って起爆する。爆発と共にプルトニウムが巻き散らかって、何千人もを被爆させ、秋葉原を何十年にも渡り汚染し続ける」
「ターゲットは…秋葉原?」
「もちろん、爆破の標的はどこでもおかしくない。しかし、テロリストなら間違いなくココを狙う。格好の標的だ。我々が特殊装備でプルトニウムを検知する。以後の捜索は私が指揮する」
「了解した。所轄は、窃盗犯を探し、ソコからプルトニウムの行方を探ろう。先ずは、プルトニウムが盗まれたラボ周辺の交通カメラの映像確認を急ぐ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
先手を取ったのは万世橋だ。
所轄の意地に掛けて、膨大な量のラボ周辺の交通カメラ画像の精査に人海戦術で臨み、遂に怪しい宅配業者のバンの特定に成功する。
応援に駆り出された担当官の話。
「きっかけは、宅配業者が使うナビのソフトウェアがアップデートされた、との新聞情報でした。宅配ルートを最適化するためのアップデートです。時間と燃料を節約スルため、極力左折は避ける機能が加わったとのコトでした。ところが、私が分担したビデオに堂々と左折する宅配業者のバンが映っていたのです。しかも、犯行当夜の午前3時頃、現場に近い蔵前橋通り交差点の角でした」
コレぞ所轄魂だw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
で、問題のバンは地下駐車場で見つかる。
化学防護服で完全装備の男達が取り囲む。
ダーコ捜査官指揮下の対放射能特殊部隊w
あ、僕は捜査官と顔が合うとマズいので、現場にはミユリさんに行ってもらったのたが…
おおっ!激レアな婦警さんのコスプレだっ!深刻な現場に何かそぐわない気もしたけどw
「安全が確認されるまで離れてろって言われたぞ」
「あれが例のバンか」
「宅配会社の報告書だと、外神田で盗まれ2日後に積荷を略奪され見つかったらしい。でも、積荷の略奪は恐らく偽装で、狙いはバンそのものだろう」
「会社は、その点は余り気にしてない。車両が戻れば、洗車して一刻も早く業務に戻すだけだ」
「仮に、あのバンでプルトニウムが運ばれたのなら、既に今日の配達に使われてたカモだ。その前に突き止めて良かった」
「放射線検知!」
良く通る女子の声に、白い化学防護服の男達が一斉に振り返る。
ややっ?!声の主はコスプレ婦警だ。スマホを振りかざしてるw
「何だって?」
「そのスマホは何だ?」
「このスマホには、ガイガーカウンターの機能を持たせるアプリがダウンロードされています」
「そ、そんなスゴいアプリがあるのか?何処で手に入れたンだ?」
「第3新東京電力勤務の主人が…なんちゃって正確には御主人様ナンだけど1度逝ってみたかったこのセリフ…とにかく!カメラのレンズをホイルで覆って調べるんだけど、コレで大丈夫かしら?貴方、専門家でしょ?」
ミユリ婦警wに気圧されるターゴ捜査官←
「あ、あぁ。ま、まぁな。上手く覆えてる。ソレでOKだょ貸して…α線を検知。荷台の数値はさらに高い。やはり、このバンはプルトニウムを積んでいたようだ」
「近づけるか?」
「短時間なら危険は無い」
「参りましょう!」
「待て!流石に婦警は近づくな。俺も、もう1人子供が欲しいから…所轄が行って調べてくれ」←
「報告書の走行距離から盗難に遭ってから何キロ走ったかがわかる。盗難場所からラボ。そして発見場所までの距離を実際の走行距離から差し引くと25キロ余る」
「途中で何処かに立ち寄り、プルトニウムを下ろしてるな」
「タイヤの溝に砂利が詰まってます。ココまでの道は全て舗装路なのに。おい、放射線の心配はクリアになった!急いで万世橋の鑑識を(現場に)入れろ!」
「もう入ってます!この砂利の構成は…一連の神田川護岸改修で使われたモノと同じだ。プルトニウムを見つけたければ、神田川護岸の砂利道を探してください!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
問題の砂利道は、嫌森神社隣の建設現場。
またまた先手を取ったのは所轄の万世橋。
化学防護服の集団が、川沿いに移動スル。
「事務所ビルの新築現場だが、施主はペーパーカンパニー。事実上の施主は、地主でもあるフィシ。爆弾製造で7年服役の前科がアリます」
「プルトニウムが隠されているかもしれない場所に爆弾作りの名人かょ。こりゃ偶然じゃナイだろ?」
「フィシは?」
「えーっと、最近全く見かけません。誰も見てないのでは?」
野次馬が口を挟む…やや?お隣の嫌森神社の権宮司テラィだ。
テラィは地元のストリートギャングなのだが実家は神社でw
婦警コスプレのミユリさんを見て目を丸くスルが、睨まれて大人しくなる。賢明な男だw
「放射線検知!」
またまた良く通る女子の声に、白い化学防護服の男達が一斉に振り返る。
ミユリさんがスマホを振りかざすのを見て、全員マスクの下で渋い顔だw
「新築ビルの前で放射線を検知。みなさん、御参集ください!スマホの電波を探してたらガイガーアプリが作動しました。敷地の奥は数値がさらに高い」
「見せて。α線だ!安全な数字だがギリギリだな。チームを呼べ。プルトニウムはビルの中だ」
「違います。あのハッチの下では?」
「砂利道にハッチ?シェルター?奴は"世界の終末に備える人"か?」
「とにかく、シェルターに入ってみよう!」.
「参りましょう!」
「待て!今回も婦警は近づくな。俺もちょっち…おーい、所轄!入って調べてくれないか?」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
新橋鮫が地下シェルター?から戻るw
「やはり、フィシの地下作業場だった。プルトニウムの痕跡こそナイが、ココ1週間以内に爆発物を作ってた形跡がアル。しかし、隈無く探したが、爆弾本体は見つからなかった」
「フィシを探し、爆弾製造の依頼主を聞き出しましょう」
「それは無理だ。奴は死んだ。片目を撃ち抜かれて」
さしもの"婦警ミユリ"さんも地下シェルターに死体と聞き、息を飲む。
あれ?ダーコ捜査官も思い切り後ずさりしてるけど、大丈夫か?コイツw
「爆弾製造の依頼主が口封じに殺したのだろう。死体の腕に"1926"の刺青があった」
「西暦か?1926年?大化の改新っていつだっけ?」
「1926は、ストリートギャングのコードです。アルファベットの19番目はS、26番目はZ。だから、1926は"SZ"で"Sieg Zeon"だわ!」
こうなると"婦警ミユリ"の独壇場w
「な、何だ?その"ヂークジオン"って?」
「アニメ世代の"ハイルヒトラー"です。右手を上げるポーズも同じ」
「"テスラー総統ばんざい"と同じ類か?」
新橋鮫からの思わヌ"ヲタクなツッコミ"に"婦警ミユリ"の顔も思わズ和み…かけたがソレも一瞬で、再び険しい表情を浮かべる。
何しろココは殺人現場w
「つまり、フィシは爆弾魔でヲタク至上主義のギャングだった、と逝うワケですね。どうやら"汚染爆弾"を持ち逃げした誰かを探すには"ヲタク検知アプリ"が必要みたいです」
第3章 純ヲタク共和国?
その夜の御屋敷。
「フィシは、ストリートギャングの純ヲタク共和国の所属。出所したら共和国とは縁を切ると誓約して仮出所したハズ」
「そんな誓約で、縁が切れた奴がいた試しがナイ。みんな塀の中での保護と引き換えに、一生働かせられるのがオチだ。で、連中は、どの程度の過激派?」
「元は、キリスト教原理主義の一派らしいンだけど、今は、地上に"ヲタクの国"を実現するため"リア充の根絶"を唱えているわ」
新橋鮫が、情婦のジュリに話を聞いている。
ジュリはストリートギャングのヘッドの妹w
"ギャング業界"の事情に詳しい。
「ヲタク版のタリバンが、モノホンの大量破壊兵器を手にしたワケか。大規模避難や大量破壊などあらゆる悪夢が予想されるなw」
「まさに、キチガイに刃物。ヲタクに大量破壊兵器だね」
「でも、爆弾自体は誰かのために作らせたのカモしれないわ。いずれにしろ、連中は異様に指揮系統が厳格で、テロ行為には最高幹部の許可がいるハズょ」
「最高幹部?共和国なら元首かな?」
「カルマって男で、コイツも今、塀の外にいるわ。故殺で20年服役し、2年前に仮釈放されて地下に潜った。多分逮捕状とか出てルンじゃナイの?ダーリン」
「もちろん、出てる。そのヘイト馬鹿の素性も参考で付いてるが…こんな奴が最高幹部とはな。高校中退してから逮捕歴しかナイょwよっぽど周りの奴が冴えナイ奴ばかりだったンだな」
「差別主義は、リアルでもヲタクでも負け組の受け皿だ。他では優越感に浸れない連中ばかりが三密になって、ドングリの背比べをしてる」
「いずれにせよ、カルマは所轄である我々で探そう。爆発前に何としても捕まえたい。最善を願いつつも、最悪に備える必要がある。所轄の意地にかけ奴を追う」
「あら。カルマの監房から没収した物品リストがついてるじゃない」
「やや?全長15ミリのロボットアニメのミニチュア10体とカラー塗料だと?え?マニアックな実験機タイプまで色を塗って楽しんでるぞ?このリストを作った奴も重度のヲタクだな」
「フィギュアに色付けをして遊ぶの?」
「その手の色付けされたミニチュアは、卓上戦争ゲーム"テーブルウォーゲーム"の駒として使われる。通常は、歴史上の戦争、例えばナポレオン戦争とかを模したマニア向けのゲームだけど、アキバではロボット戦争アニメの世界観を2次使用して行われるコトが多い」
「いずれにせよ、カルマは禁制品を監房に持ち込んでまで、何としても自分の趣味を続けたかったワケで、その情熱自体は見上げたヲタク魂だ。ひょっとして今も楽しんでるのでは?」
「この機動兵器のミニチュア、宇宙戦争末期に登場した、かなりマニアックなモノょ。買える店は限られてるわ」
「取扱店を昼過ぎまでに訪ねて、ソレらしき客が来たかを聞こう。それまでは、ゲームのサイトや掲示板をチェックしてトーナメント戦の写真に誰か写ってないかを調べる」
「お?またまた人海戦術でパソコン作業か?よし!このヤマは万世警察で上げるぞ!おい、テリィ。細かい指示をくれ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌々日の万世橋の取調室。
「確かに、今にして思えば"宇宙要塞バ・アオキ・スー攻略戦トーナメント"に出たのは失敗だった。まさかサツにもヲタクがいるとはw」
「しかも、宇宙艦隊を温存し過ぎて、敵のモバイルスーツ隊を制圧する絶好の機会を逃したのが痛恨だった」
「うっ!そ、そこまで…」
純ヲタク共和国元首のカルマはネカフェに潜んでいたトコロを早朝強襲され連行される。
「その人種差別ポイ刺青も消すべきだったな。偽名を使っててもアンタが誰か、直ぐにバレバレだ」
「うーん…しかし、大袈裟過ぎないか?ただの仮釈放違反だろ?」
「ソレが…他にも色々あるンだ。フィシを覚えてるか?」
ココで新橋鮫が(恐らく)現場写真を見せる。
あ、僕はまたもマジックミラー越しだょw
「こ、殺されたのか?」
「おいおい。何トボけてんだょ?」
「俺はやってない!俺の仲間も関わってない!」
「ソレを鵜呑みにしろと?」
「殺す理由がない。俺達はフィシと組んで儲けてたンだ」
「爆弾作りでか?」
「何だソレ?スマホを売ってたのさ、スマホ!フィシは、指先が器用で、機械の分解や組み立てが上手かった。特にスマホ」
「刑務所内では貴重品だ」
「奴はスマホをバラして小さな部品に改造、道具ナシで組み立て可能なキットにした。その部品を獄中に持ち込んで、組み立てては売りさばいて目下、大儲けの最中だった。なのに…何で奴を殺す?」
「汚染爆弾を作らせ、口を封じた」
「何?ダーティペア?まだ悪役やってるのか?」
「汚染爆弾。プルトニウムで覆った爆弾。大量破壊兵器ょ」
「おいおい!俺達が核テロリストだとでも?わかってナイなぁ。刺青やヲタクの誇りなんていうのは全部ハッタリだ。見せかけ。ヲタク達を手なずけ、リア充を取り込むためだけの方便だ」
「共和国が差別主義者じゃナイと信じろと言うのか?」
「俺達の頭にあるのは誓って"金"だけだ。麻薬や禁制品で上手いコトお咎め無しで儲けているのに、汚染爆弾なんかぶっ放したら社会の敵になる…」
「もうなってるょ!」
「えっ?ホントか?と、とにかく、警視庁に潰されちまうょ」
「なら、誰が爆弾を作らせた?」
「誰でもあり得る。フィシとつるんでた大麻農家や新左翼の変人。あ、あと半島人」
「半島人?」
「数週間前、共和国に2、3人が接触してきた。安いスーツを着込んで爆弾が欲しいと。車を吹っ飛ばす程度のものだ。フィシに話すと伝えたが、連中は結局、怖気ついたのか現れなかった」
新橋鮫が頭を抱える。
「バカだな。半島の連中は、お前から爆弾の作り手を聞き出したかっただけだ。ソレで奴等は、フィシに汚染爆弾を作らせ、口封じに殺した」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
カルトを拘置した新橋鮫が、マジックミラーの裏側にいる僕とジュリの前に顔を出す。
しかし、今もジュリはセーラー服だw良く万世警察の中に入れたな。アラサーなのに←
「ジュリ、どう思う?」
「ストリートギャングは大抵"嘘か死か"がモットーよ。警察の聴取なんかで真実は話さない」
「僕は、ウォーゲームでのカルトの戦いぶりを動画で見たが、嫌な奴だが信じて良いと思う」
「爆弾を欲しがってた半島人の話?」
「ウォーゲームでは、決して派手な勝利を狙わず、戦力の温存を図る。損害を避ける余り勝機を逃すコトもしばしばだ。テロリストと真逆の行動様式だ。奴の半島人の話は調べる価値がアル」
ソコに、新橋鮫へ電話だ。
みるみる顔が険しくなる。
「何か収穫ありか?」
「おう。コレ以上、起訴材料が出ナイならコッチに全員集合だ。公衆電話から匿名女性の通報があった。秋葉原のモスク爆破を企む者がいると。爆発物の特徴からして汚染爆弾だ」
「モスク?」
「タクシーに爆弾を隠し、今日攻撃予定だそうだ。今、秋葉原周辺の全モスクの監視カメラ映像が署のセキュリティ監視センターに送られて来てる。ターゴ捜査官にも伝えた。全員でモニターに張り付こう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
監視センターでは、所轄に先を越されてばかりのターゴ捜査官が失地回復で張り切り中w
「ウチの全チームが出動してる。タクシー約1000台と4ヶ所のモスクを調べるだけの放射線検知器を配置した…ん?コレじゃないか?このタクシーは空車なのに乗客を拾わず、モスクの周囲をグルグルと走ってる。ズームできるか?」
ドライバーの顔がアップになる。
うーんイカにも悪そうな人相だ。
「絶対間違いない!周辺に避難指示を出せ!モスクにSATを送れ!全員良く聞け!今からレベルゼロの動員をかける!」
ターゴ捜査官自ら叫びながら現場へ飛び出して逝き、たちまち監視センターは空っぽだ。
僕は、マジックミラールームを抜け出し、監視センターに残ってた新橋鮫に話しかける。
「ここ1時間位のこのエリアの全映像を見たいな。特に…このカメラ55103を」
「このタクシーじゃナイと?」
「いや。多分ソレだとは思うけど、見かけ以外の動きもアリそうで」
「爆弾以外の動きか?」
「とにかく、カメラ55103を見せてくれ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
約10分後。現場は膠着してイルw
「強盗団!お前達は完全に包囲した!大人しく武器を捨てろ」
「フフン。お前達こそ武器を捨てろ。外の汚染爆弾には気づいてるな?俺達を見逃さないと起爆して秋葉原を放射能で汚染するぞ」
「く、くそっ!」
黒装束に目出し帽で強盗団にターゴ捜査官が押されている。
半包囲しつつもジリジリと後退、強盗団はバンに乗り込む…
僕は無線でターゴ捜査官に大事を伝える。
聞き終えた彼は大声で強盗団を一喝する。
「お前ら!お前らの爆弾が汚染爆弾じゃないコトがわかった!例え起爆しても、このママ銃撃戦に突入し、今日死ぬのはお前とお前の手下だけだ!どうする?!」
一瞬の静寂の後、強盗団が銃を捨てる。
「降伏する。我々の負けだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
目出し帽を取ると、全員がアジア系で不気味に沈黙を守り、訓練を受けた兵士のようだ。
彼等を万世橋の留置所に収監して、関係者がゾロゾロとウォールームに集まり談笑スル。
しかし、あんな奴等、よく捕まえられたなw
「処理班が信管を抜いた後、汚染爆弾でないコトを確認した。普通の爆発物だった。所轄の読みの通りだ」
「強盗に本物の汚染爆弾は必要なかった。らしく見せかけるだけで足りるからな」
「だが、なぜ汚染爆弾じゃナイとわかった?」
「色々と辻褄が合わなかった。水曜の午後、ほぼ無人のモスクを爆破する奴っているか?そもそも、汚染爆弾を使うならなぜ爆心地近くのビルで強盗を働く?」
「ソレに、ビルに入る映像を見てみたら制服警官3人が入って行ったが、所轄の制服警官は、通常ペアで動くから3人組は余りにも怪しい」
「な、なるほど」
「元々は簡単な論理ナンだ。タクシーをあそこに止めた者は、犯行の最中に被曝したくは無いだろう。その時点で、コレはテロ攻撃ではなく、強盗だと判断した。周辺から人々を避難させて、世界のダイヤ市場の25%を支配する国際ダイヤモンドカルテルの極東本社オフィスに侵入し、ダイヤ3億ドル相当を盗もうとしたワケだ。恐らく貧しい半島のために外貨を獲得しようとして」
ココで、新橋鮫が本題に入るw
「コレが真相だとして、もう一つ疑問が生まれた。この強盗計画は、汚染爆弾の脅威を前提とし、半島が外貨獲得を目的として練られたモノだ。だから、先ず半島人は稲妻砲の出資者からプルトニウムを盗んだ。でも、半島人は誰からプルトニウムの情報を得たのだろう?」
「ラボの人間かもな。調べてみよう」
「必要ない。出資者が供述した。プルトニウムを密輸した時、東京港の放射線アラームが作動した記録が残ってる。検査は、ターゴ捜査官、アンタの部局の仕事だが、現場でアラーム解除を指示したのはアンタらしいな」
「おいおい。現場じゃアラームの誤作動なんて日常茶飯事ナンだ。手間を省いただけだょ」
「フフン。そんなの氷山の一角だ。アンタ、肩書きを悪用して、プルトニウムの闇マーケットでトレーダーをやってるだろ?もしかして、今回の半島からのプルトニウム密輸から強盗団の汚染爆弾騒ぎまで、全部アンタが描いた絵じゃナイのか?」
「馬鹿を言うな。所轄の分際で…ん?先日の生意気な婦警か?」
「念のため、ターゴ捜査官のコト、調べました。最近、ヲタクな彼女が出来たのね。(外神田)2丁目にオープンした半島系の御屋敷のメイドちゃんでネームはリィラ。アジアンビューティーだけど、彼女の従兄弟は、半島の特殊部隊で今回の強盗団盗の一味だそうょ」
「ソ、ソンなコトが何故わかる?」
「半島系のヲタクの中には、メイドさんをやってる子もいるの」
「アンタが半島から来たヲタサー姫の罠にハマったのか、元からアンタの描いた絵だったのかは、もう重要じゃナイ。リィラ自身がアンタを強盗団に紹介したと認めたからな」
「匿名での爆弾通報もリィラだ。彼女は、一度打ち解けると案外口数の多い女でな。プルトニウムを隠してる東京港の倉庫についても話してくれた」
「か、彼女を逮捕したのか?」
「数時間前にな…そして、今度はアンタだ」
第4章 ヲタサー姫に恋してた
ヲタサー姫は、ヲタクばかりのサークルに舞い降りた女子のコトだ。
ヲタクにとり初めて目にするリアル女子だから、大抵はモテモテだ。
"アキバのメイド"は日本を代表するブランドだから、世界中からヲタクが押し掛ける。
そして、多くのヲタクは、御屋敷デビューした時に御給仕してくれたメイドに恋をする。
つまり、そのメイドが彼のヲタサー姫だ。
そんなヲタサー姫宛の手紙が手元にある。
僕は、話しかける。
「ヲタクの症状は断続的だ。誰もにヲタクが出る日とリアルに帰る日がアル。今日は今のところ、君にヲタクは出てない。それで思い出したが…この手紙は、きっと君にヲタクが出た日に描かれたモノだ」
「…私が、その手紙を捨てたのには理由がアル」
「確かにそうだろう。でも、自分で読まないと決めたのなら、何故シュレッダーにかけなかった?燃やして灰にするコトも出来たハズだ」
「面倒臭かったンだ」
「違うだろう?君は、自分にリアルに帰る余地を残したかったンだろう?ソレは、とても良い直感だ。その直感には、素直に従った方が良いと思うょ」
僕は、彼に手紙を手渡す。
でも、彼は受け取らない。
「ターゴ捜査官」
「もう捜査官じゃない」
「開封はしてないが、この中身は紙1枚に数百字を手書きした手紙だ。僕もヲタクだからわかるが、ヲタクが進み廃人となると、簡潔な文章を書くコトは不可能となる。かなりの自己鍛錬が必要となる」
「いくら懸命に描いたって、支離滅裂は支離滅裂なのだょ、テリィたん」
「君は、その封筒の上で手紙を描いた。封筒に残った跡からして、数回は書き直しているょね?」
「だから?」
「僕の経験上、ヲタクは自分の書いた言葉を見直さない。だから、その手紙は、君が自分を律するコトが出来ている時に描かれたハズだ。君自身にもわかっていたろ?」
「私自身が?」
「捜査官になるホド優秀なら、容易く見抜けたハズだ」
「じゃあ、私は何故手紙を捨てたのかな?」
「切り捨てたハズの自分の中のヲタクから、和解を試みる手紙が来たと恐れたのだろう。古傷をえぐられるから…」
「ソレはイケないコトか?」
「何も。だが、君はヲタクで、その手紙は君がヲタクである謎を解く、最後の鍵だ。良いヲタクは、決してリアルへ帰る鍵を捨てたりしない」
彼は、深い溜息をついて暫く俯いていたが、ふっと顔を上げ、穏やかな笑みを浮かべる。
「私は、君を潰しておくべきだった。私達が原子力発電所で出会った、あの日にね」
おしまい
今回は海外ドラマでよくモチーフになる"盗難プルトニウム"をネタに、稲妻砲を開発するスタートアップの面々、稲妻砲に打たれる検査官、盗難プルトニウムを探す捜査官、その影で暗躍する半島系の強盗団などが登場しました。
海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、めっきり秋めいたマスクの似合う秋葉原に当てはめて展開しています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。