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結局求めているものは

作者: アコヤ貝

桃太郎 18歳 男

犬 成犬 性別不問


桃「はあ……」


犬「どうしたんですか?桃太郎さん」


桃「ああ、犬か。寝なくていいのか?」


犬「それはこちらのセリフですよ。明日は鬼ヶ島での最終決戦ですよ。何総大将が夜更かししてるんですか」


桃「いや、それがさ……よく、わかんなくなっちまったんだよ」


犬「は?」


桃「鬼は確かに悪いことをしている。倒すべき存在だ……だが、俺が倒せる存在なのかなって」


犬「何を仰ってるんですか!?お爺さんとお婆さんを守るために、村の皆を守るために戦うって言ってたじゃないですか?」


桃「その気持ちは変わらないよ……でも。本当に、それが俺にできるのかなって。ただ1人で訓練してただけの、桃から生まれたってだけの縁起の良さだけが取り柄の男に」


犬「なんでそんな急に弱気になってるんですか?」


桃「ここまで来て、俺は分からなくなった。なぜ、鬼と戦うのか、こんな少人数で、なんで……」


犬「……少し、昔話をしましょうか」


桃「なんだ?」


犬「私たち犬は本来群れで生活する生き物です。ですが、私はある日そっと群れを離れる事を決意しました」


桃「なんでだ?」


犬「体が、戦いを、闘争を求めていたからです」


桃「どういうことだ?」


犬「日々の生活の糧を求めるために狩をする以外にも、湧き上がる闘争心がありました。……それは、恐らく猿にも雉にもあったのでしょう」


桃「そうなのか?」


犬「でなきゃ、いくらお腹が空いていたからってきびだんご1つで貴方についていきませんよ」


桃「……それもそうだな」


犬「それに、闘争心が湧き上がったのは桃太郎さんも同じなのでは?」


桃「犬、それは……」


犬「鬼と戦って自分の力を試したい。だから貴方は1人で行こうとした。違いますか?」


桃「……違わない。確かに私は、鬼の存在を聞いた時、湧き上がる何かがあった。本当は村で徒党を組む話もあったが、それらを切り捨てて一人で来た。最も、流石にまずいと思って君たちを味方につけた訳だが」


犬「桃太郎さんが怯えてるのは、震えてるのは、恐怖だからじゃない。……武者震いなんじゃないですか?」


桃「……ああそうだ。俺は、戦いたい。鬼と戦いたい」


犬「なら、やるべき事はただひとつじゃないですか」


桃「ああ、ねるか!って、もう朝日が」


犬「全く、少し、話しすぎましたね」


桃「ありがとう。犬。勝って、帰ろうな」


犬「ええ。勝利は私たちのものです」


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