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♪♪♪♪ ハッタツショウ害シャノ唄 ♪♪♪♪   作者: 動物の世界で人間らしく
第一章 何かを隠して生きる。
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000 Epigraph


『これから将来《さき》、五年十年と経つて、稀《たま》に皆さんが小学校時代のことを考へて御覧なさる時に──。

`

 ――あゝ、あの高等四年の教室で、瀬川といふ教員に習つたことが有つたツけ――。


 あの穢多《えた》の教員が素性を告白《うちあ》けて、別離《わかれ》を述べて行く時に、正月になれば自分等と同じやうに屠蘇《とそ》を祝ひ、天長節が来れば同じやうに君が代を歌つて、蔭ながら自分等の幸福《しあはせ》を、出世を祈ると言つたツけ。


 ――斯《こ》う思出して頂きたいのです。


 私が今、斯《こ》ういふことを告白《うちあ》けましたら、定めし皆さんは穢《けがらは》しいといふ感想《かんじ》を起すでせう。


 あゝ、仮令《たとひ》私は卑賤《いや》しい生れでも、すくなくも皆さんが立派な思想《かんがへ》を御持ちになさるやうに、毎日其を心掛けて教へて上げた積りです。

 せめて其の骨折に免じて、今日迄《こんにちまで》のことは何卒《どうか》許して下さい。』


 斯《こ》う言つて、生徒の机のところへ手を突いて、詑入《わびい》るやうに頭を下げた。


『皆さんが御家へ御帰りに成りましたら、何卒《どうぞ》父親《おとつ》さんや母親《おかつ》さんに私のことを話して下さい。


 ――今迄、隠蔽《かく》して居たのは全く済すまなかつた、と言つて、皆さんの前に手を突いて、斯うして告白《うちあ》けたことを話して丁さい――。


 ――全く、私は穢多《えた》です、調里《ちょうり》です、不浄な人間です。』




 島崎藤村『破戒』より──。

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